遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。
これでOKという人はお楽しみください!
光の世界争奪戦編です。
光の世界はかつてない混沌の中にあった。
これまでは、光の世界に危害を加える人間は個人、もしくはグループ単位の民間人襲撃だった。イメージとしては襲撃と言うより殺人事件、もしくは未遂と言う位置づけとして考えた方がいいレベルのものだった。
しかし今回は違う。
解放軍の襲撃はこれまでのような戦って勝てば済むという事はなく、戦っても戦って次が来る。最終的に解放軍が撤退を決断するか、どちらかが全員死ぬまでこの戦いは終わりはしない。
「……ぐぅ……!」
歯を食いしばりながら次のデュエルに向かうブルームガール。
これまでの散発的な襲撃への対応だけでもとんでもない疲労を感じていた彼女は今回のこの襲撃に、過労で死ぬのではないかというレベルで戦っている。彼女のモチベーションは、デュエル自体はやることに疲労はあれど苦がないという点。そして、夜に飲む一杯の背徳感を持つなオレンジジュース一杯。
他人から見れば弱いものだが、ブルームガールにとっては、戦うに十分な理由である。
そのモチベーションも50人を超える数を倒せば、徐々に減衰するのも無理はない。
現状、住人は、エリアマスターが座すはずの屋敷に全員避難させ、デュエルができ、保有LPが8000以上あるデュエリストは、
「ここで戦わなかったら光の世界が地獄になってどうせ死ぬから、生きたければ手伝え」
と言う、ブルームガールの脅迫によって外へと強制出撃させる。そして住人の避難先の入り口にあたる大神殿を守るように、『players』のデュエリストは仁王立ちし、デュエルを受け続けた。
幸運かな、光の世界でのルールは1体1のデュエル以外を行うことができないよう遊介が設定している。仮にルールブレイカーを持っていたとしても、そのアイテムは一つの効果にしか使えないため、LPが減らないというルールをアイテムで無効にしている以上、1VS1を無効にすることはできない。ちなみにルールブレイカーは、効果の重ね掛けはできない仕組みになっている。
大神殿前が制圧されないように、ユート、瑠璃、マイケル、ブルームガールを中心に光の世界のデュエリストの徹底的な防衛。そしてそれを崩すべく戦力を投入しているのが解放軍と言う構図になっている。
当然解放軍の方が数が多いが、戦える人間が相手1人につき1人ずつと限られるため、戦況は停滞を見せていた。
戦線の最前線に到着したアゼルは驚愕したものだ。数では圧倒的有利にも関わらず、とくにたった4人のデュエリストが合計すでに200近くのデュエリストを倒してなお防衛状態を維持し戦いづつけていることに。
マイケルは最前線に来たくせに、自分で戦おうとしないアゼルに挑発をかける。
「腰抜けかてめえ、雑魚の相手はやり飽きた。てめえが来い!」
その言葉は、アゼルにとっても、そして防衛を続けている4人にも言葉以上の深い意味をもつ言葉である。
防衛側の、ユート、瑠璃、マイケル、ブルームガールは、すでに精神力がいつ尽きるか分からない状況である。解放軍とて多少の実力者の集まりであり、勝ちを取るには簡単な相手というわけではない。彼らにとっては、もう大将首を取ることで相手の士気を下げ撤退を狙いたいというのが本音である。
対してアゼルも自分で戦いに出るわけにはいかない。
すでにアゼルも幹部を招集し、勝負に出たいと思っていた。本当はアゼルも自分で戦いたいところである。しかし、そうはできない理由がある。
以前、ある工場跡でエデンとの全面戦争になった際、アゼルはリーダーであるリボルバーとデュエルを行った。お互い、保有LPのうち、8000を賭けた真剣勝負だった。アゼルとて解放軍のリーダーであり、それ相応の実力は持っていた。
しかし、結果は惨敗。
LP的には大差はなかったが、最後にアゼルのフィールドには何も残らず、リボルバーのフィールドには、攻撃力の高いドラゴン3体が並んでいる状態で幕引き。完全制圧を遂げられてしまったのだ。
アゼルは自分でも情けなく思いながら、無様に逃走し何とか命を繋ぎとめて今に至る。つまり、アゼルのLPは既に4000。
そしてアゼルは目の前で抗戦を続けているデュエリストを見て、
(負ける可能性を否定できない)
と考えている。そのため、自身の生存をまで捨てきれない身ではむやみに戦いに出るわけには行かなかった。
しかし、このままでは戦況が動かないこともアゼルは承知している。1名を除いて、幹部が到着するまでには相当の時間がかかる。
「おい、聞いてるのか?」
大神殿前、マイケルの叫びが多くのデュエリストの耳をつんざく。
しかしアゼルは反応は返さず、到着した自分の部下を順序よく、光の世界のデュエリストとの戦いに割り当てていく。
このボディーガード4人で押し寄せるメディアを止めるような構図であり、誰かが勝手に通り抜けられそうなのだが、それを許さなかったのはマイケルが組み込んだ大神殿の防御扉である。光の世界のデュエリストが10メートル以内に存在する場合に限り、大神殿の入り口を完全閉鎖し、閉鎖したデュエリストを倒さない限り扉が開くことも壊すこともできない仕様になっている。
技術上と材料の問題で10メートル以内という制約がかかってしまったものの、先に説明した光の世界のルールに加え、この防御扉の使用を組み合わせることで、光の世界は少ないデュエリストでエリアマスターの居城を守る事を可能にしている。
今回、扉は、『players』のデュエリスト全員を倒さない限り壊れない仕組みになっているため、解放軍はこのように時間をかけてでもこの4人を攻略するしかない。
事前調査が足らなかったことを後悔したアゼルだったが、一度責めた以上、単なる撤退はアゼルとしても気持ちはよくない。
「アゼル」
幹部の一人が到着した。光の世界までは一緒に来ていた良助だ。
「……遊介は?」
「どっちのだよ」
シンクロ遊介に遊介と戦うように指示したのはアゼルである。光の世界のマスターを光の世界に誘導し、あわよくば、その力を確かめろという指示。
「シンクロ遊介は?」
「ああ。負けたよ」
「……あいつが?」
「ああ。手は抜いてたみたいだが、前に比べて強くなってたとさ」
「なるほど。で、サイバースの遊介はこっちに来てるのか?」
「まあ、光の世界の危機をそのままにはできないだろうさ。そんなの格好悪いだろって」
「なんだそりゃ」
「俺に訊くなよ。あいつはそういうやつなんだ。それより、シンクロ遊介はダウンした。しばらくはこっちに来れないぞ」
「……そうか」
すでに差し向けたデュエリストはあらかたブルームガール率いる防衛軍に倒され、場は膠着状態。
「あれは……?」
瑠璃がその男の到着に気が付いた。
アゼルと親し気に話している状況から、その男が幹部に近い存在であることを予想した。ユートにその予想について耳打ちをする。
そしてその話はマイケルやブルームガールの耳に届く前に、先にアゼルと良助が前に出てくる。
良助はブルームガールをどこかで見たことがある気がする、と妙な感覚を覚える。
(まさかな……)
その正体が気になるところであったが、良助はその好奇心を封じ、デュエルディスクを構える。
「解放軍、プレイヤーネームまっつん。まあ、ふざけた名前であるのは許してほしい。命懸けになる前につけたネームだからな」
名乗りを挙げる良助、戦おうと準備をしていた解放軍の一般兵たちもその手を止める。
その行動を見た、光の世界のデュエリストたちも、まっつんと名乗る男が解放軍の中でも相当な実力をもつ存在であることを察する。
大神殿を守る4人のデュエリストのうち、リーダーの代理をしているのはブルームガールである。その使命を自覚しているが故に、彼女はいち早く良助の宣言に対し、言葉を返した。
「今度はあなたが相手?」
「その通りだ。名前を聞いていいか?」
「聞いてどうするの? 意味ないと思うけど」
「仮にも解放軍ブランドを持ったデュエリストを相手にここまで持ちこたえているんだ。そんな相手と戦うのに、相手の名前を知りませんじゃ格好がつかないだろう?」
「意外、下調べで知ってるものかと思ってたけど」
「別に必要はない。どんなデッキを使うかだけ知っていれば事は済む。それがどんな名前の誰が使うかは当日の楽しみとっておいた方がモチベも維持できるってもんだ。これでもこっちだって命懸けなんだから。普通に考えたら、1つの楽しみでも持ってないとな」
良助は笑いながらデュエルディスクをいじる。すでに戦う気満々で誰と戦うか品定めをしている状態だ。
一方で光の世界のデュエリストたちは解放軍の戦力をあまり知らない。
解放軍は基本幹部以上の戦力をあまり公開したがらない。幹部以上が戦う場合、原則味方以外の観測者を生かしてはおかない。たとえたまたま見てしまったという人間であってもだ。
見た人間が死ぬのだから、彼らの戦力を知る生者はほぼいない。なぜなら幹部が敗北を見せたのは、リンクブレインズが始まってからただ一度。リボルバーとエクシーズ遊介率いるエデンの戦士たちにのみだ。
故に一般的には解放軍の幹部が使うデッキがどのようなものかは周知されていないのだ。
それはブルームガール達にも言えること。すなわち、まっつんを名乗るデュエリストがどのようなデュエルをするのかを把握していない。
「私が相手になるわ」
相談もなくブルームガールが相手に立候補する。
良助は名乗りを上げた乙女に向き直り、
「なら、まずはお前からだ」
と良助は戦闘態勢に入る。そして呼吸を整え、気を整える。
次の瞬間。先ほどまで穏やかだった良助の気配が一気に豹変する。恐ろしい闘気、ユートが纏うような殺気のように鋭利ではないものの、人を畏怖させるに十分な気配を漂わせていた。
ブルームガールは今から戦う相手の様子を、
(……ヤバい、これ、結構強いタイプだ)
と最大の警戒をした。
場に静寂が流れる。マイケルもアゼルも、今から戦おうとした2人を止めることはない。ユートと瑠璃は、その間妙な動きをする人間がいないか警戒をしている。
この場に妙な動きを見せる人間はいなかった。
――ただし、後からこの場にやってくる人間はその限りではない。
「まあ、待てよ」
戦いが始まろうとしているところに横やりが入る。
誰だ、と怒りを露わにしようとした良助は、その男を見て叫ぶのを中止した。何故よりにもよってその男がそこにいるのか、良助には理解できなかったからだ。
ブルームガールは一瞬、笑顔になりかけた。
しかし、醸し出す雰囲気が明らかに違うのですぐに警戒を強めた。
「光の世界の諸君は初めまして、そして解放軍の馬鹿どもは久しぶりだな。自己紹介は要るかい?」
ブルームガールとマイケルはそれに頷くが、他の人間は頷かなかった。
「エクシーズの遊介」
良助がその名を述べ、エクシーズ遊介と思われる人間はへらへらと笑いながらその名前が正解だと言う。
「そう。覚えていてくれたのか。嬉しいね」
アゼルが口を開く。
「忘れるはずがないだろう。俺たち解放軍の幹部を2人殺した男」
「あの工場跡での戦いは面白かったな。今でも鮮明に覚えている」
エクシーズ遊介はアゼルに向かって、忌々しい思い出を掘り返すようにねっとりと話し始める。
2人、異常な殺気を帯び始めたデュエリストがいた。しかし、エクシーズ遊介はその殺気にまるで気が付いていないような素振りを見せ、そして、
「何しに来た?」
良助の問いに答える。
「なあに、そう怖い顔するなよ。今回俺が先行したのは警告をするためだ。エデンはいつでも解放軍との戦いを始める準備があるが、今日は邪魔しないでもらいたいらしい。もうすぐここにエデンの連中が来る。それもお姫様を含めた本隊。あと30分もすれば到着するだろうな」
30分、アゼルが他の幹部の到着に予定していたのは40分。差の10分のみで今ここにいる解放軍を皆殺しにできるはずだとアゼルは、悲観的な予想を立てざるを得なくなった。
「何のために?」
その問いを発したのはブルームガール。それに光の世界にとっては驚きの回答をエクシーズ遊介は用意していた。
「光の世界、お前らと同盟を組むためにさ」
「同盟?」
「今までの防衛システムは見た。少数精鋭なんて馬鹿げたことをしているが、その割にはしっかり頑張っているみたいだ。だが、戦いは所詮数だ、解放軍は今回様子見程度で来てたから凌いでいたけど、奴らも本気で戦えば、光の世界の防衛なんて夢物語だ」
「ずいぶんと舐められてるみたいだけど? まるで私たちが負けるみたいな」
「可能性の話だ。気を悪くしたのなら謝る。けどな、こういうのは最悪の事態も考えて動くべきだぜ。例えば、お前らが過労死することとか、死ななくても過労で判断力が落ち、デュエルに負けるとか十分あり得るだろう?」
ブルームガールは反論できなかった。
結局は光の世界でまともに戦力になる人間は著しく少ない。強い奴が戦い続けばいいという理論は、その強いのがロボットであれば何の問題もないが人間であるならばその理論には、疲労度と言う決定的な陥穽がある。
「でもおかしな話ね」
ブルームガールは疑心暗鬼全開の顔でエクシーズ遊介を見る。そして同じような顔をしてアゼルはエクシーズの遊介に疑問を投げかける。
「確かに。俺も不可解に思える。なぜなら、今のエデンに、光の世界と同盟を組むことのメリットはない」
同盟と言うのは自分と相手の立場が同じであるという前提のもとに成り立つ。しかしエデンは既に名前が知れた巨大組織。ユートも瑠璃もマイケルもブルームガールもそれぞれ十分に強いデュエリストではあるが、同等なデュエリストならエデンにも何人もいる。故に今の光の世界とエデンとではとても戦力的に対等とは言えない。
優勢であるのならそれこそ今解放軍が行っているように、光の世界を制圧してしまえばいい。それだけの戦力を持っているのだから、その方が同盟の時に必要な立場の譲歩もなく、自分達の利益につながるようなことをすべて行うことができるはずだと。
「俺もそれは重々承知してるんだけどな。でもまあ、恨みばかリ買うのも良くないってうちのお姫様がね。だからたまには友達を増やそうってことで同盟って形にしたんだ。別に利益ばかりを求める最短距離じゃなくても得るものあるだろう。たまには友達百人できるかな? なんて酔狂なことも、日々に潤いを与えてくれるもんだ」
「戯言を」
「アゼル君。そう怖い顔をするなよ。ところでどうするんだ? このままエデンとやり合うってんなら、俺は一向に結構だが、そっちはそんなことはないのだろう?」
「……」
アゼルの顔色は悪くなったのをマイケルは見逃さなかった。チームメイトにのみ聞こえる小さな声で、
「どうやら、現状解放軍とエデンの戦いは、エデン優勢ってところだな。そんな奴が同盟を組んでくれるとは、願ってもない話だが?」
「……どうかな」
ユートの思考回路は戦場経験者であるが故、罠の可能性を自然に考える。
「エデンになんのメリットもない同盟を組むことに意味があるか?」
「さっき酔狂って言ってたじゃんか」
「そんな言葉を信じていい状況ではない。俺達は解放軍相手であれ、エデンであれ、俺達が相手をするには強大すぎる相手だ。心を許したら、決定的な隙を与えることになる」
「……まあ、お前の言うことも分かるが、警戒したところでどうするんだ?」
「……そう……だな」
結局エクシーズ遊介の言う通りなのだ。光の世界は4人では守り切れない。今のように時間を先延ばしにすることが精一杯であり、巨大な軍事力に匹敵するエデンや解放軍と戦うには、やはり戦える者の数が少なすぎる。
「ユート、なんか怖えぞ、さっきから」
「そうか?」
「ああ、殺気を隠しきれてない。いつもは一流なのに、今日はどうもクールさが欠けてる二流の顔だ」
「マイケル、俺はな」
「悪いってわけじゃない。お前、たぶん因縁があるんだろう? あいつと」
マイケルはすべてを察したかのような言葉をユートに向け、ユートは図星であるが故に何も言い返せなかった。
一方アゼルも迷うことをやめ、解放軍に指示を出した。
「撤退だ」
「逃げると?」
「エクシーズの遊介。俺達はまだ死ねない、だからこそ罵声でもなんでも浴びせると良い。生きるためにわが身可愛さで逃げる弱者とな」
「笑いはしないさ。俺も同類だし、その言葉もよくわかるつもりだ」
「ほう?」
「行けよ。うちの姫が来る前に姿を消せ。そうすればまだ長生きできるぞ?」
アゼルは、それを侮辱の言葉と受け取り、歯を食いしばりながらもエクシーズ遊介に背を向けた。
「俺はここに残っていく」
良助はアゼルに言う。
「本気か? 死ぬかもしれないぞ?」
「いいだろ、ここで起こった事の顛末も知っておいた方が、情報として有益だろ。光の世界が同盟を組むか組まないか、その結果を知る必要があるだろ?」
「そうだな。じゃあ、頼みたい」
「なあに、いざとなったら地上でダウンしているシンクロの遊介に敵なすり付けて逃げてくる。心配するな」
「……生き汚いな、お前」
「いつも通りって言え」
アゼルは少し笑い、解放軍は引き揚げさせ、そして自らDボードに乗って光の世界の外へと向かい始める。それを見送った良助はディスクを構え警戒は解かないものの、一歩引き様子を見るというスタンスを示した。
「なるほど、まあ、良助ならうちの姫もむやみに襲わないか」
エクシーズ遊介はそんな独り言を述べた後、光の世界の4人の方を向く。
「さて、目的は伝えた通り、うちとそっちのチームの同盟だ。せっかくだから光の世界のマスターである俺の偽物にも意見を伺いたかったんだが、まだ戻ってきてないのか」
ブルームガールが遊介の代わりと言わんばかりにエクシーズ遊介の前に出る。
遊介と同じ顔で同じ体つき。しかし、目の前の存在は自分の知っている遊介とは違う。妙な気持ち悪さをブルームガールは感じた。
そしてその感情を表現した顔を、同盟を疑う顔をとったエクシーズ遊介は、
「そう怖い顔しないでくれ、裏はあるけど、お前達を殺したいわけじゃないんだ」
と、反論する。
「そうかしら?」
「お前らほどのデュエリストをみすみす殺しはしない。いつか来るイリアステルとの最終決戦のために、貴重な戦力としてうちも数えてるんだよ。今回の同盟は、どちらかと言うと最終決戦までエデンとお前らが、殺し合わないようにするためのものだ。それに嘘はない」
今まで言葉に詰まる様子も、嘘を言っている様子もないエクシーズ遊介。
「ずいぶんと評価高いじゃない」
「まあな。エデンだって何も殺したがりなわけじゃない。味方が一人でも多い方がいいというのは当然の考えだと思っていたんだけどなぁ」
親しみやすいようににっこりとブルームガールに話かける。
しかし、ブルームガールは警戒を解かない。友好的な表情を見せることはない。
エクシーズ遊介の事は、同じ世界で生きてきたユートや瑠璃から話を聞いているからだ。
エクシーズ遊介が、ユートや瑠璃、そして世界そのものを売った裏切者であることを聞かさされている。
「ああ……なるほど。そういうことか」
エクシーズ遊介は、ブルームガールの警戒の理由を察し、そして恐ろしい殺気を向けている男と女、2人を見る。
「ユート、俺に言いたいことがあるんだろう?」
エクシーズ遊介は誘い、そしてユートはそれに応えるためにブルームガールのさらに前に出る。
「……遊介」
「ああ、お前らと一緒に育ち、あの世界を愛して、戦っていた同士、それが俺だ」
次の瞬間。
ユートから、放たれた怒気はこれまで誰も見たことのないほどだったと断言できるだろう。
その雰囲気だけで、ブルームガールが言葉を失い、引け腰になる。
ユートはそれでも怒りのままに叫ぶことなく、目の前のエクシーズ遊介に問いを投げた。
「……あの日、イリアステルに最後の全面決戦を挑もうとした時のことだ」
「ああ、覚えてる」
「お前はそこにいなかったな」
「ああ、いなかった」
「アジトで皆、ようやく一息の休息を得て、最後の戦いへの休養を取っていた」
「……ああ」
「だが、最後の攻撃を仕掛ける直前、そのアジトは壊滅した。今まで場所はバレていなかったのにも関わらず」
「ああ」
エクシーズ遊介は、そんな話題でもニコニコ笑っていた。
ユートは声を震わせながら問う。
「……俺は信じたくはない。だが、あの日、唯一いなかったお前が怪しいと俺は睨んでいる」
エクシーズ遊介は、表情を変えないまま、
「ああ、俺が教えたよ。アジトを」
と、まるで当たり前のことを言うかのように、淡々と口にした。
「貴様……!」
ユートの怒りが空気を凍らせていく。
ただ1人、その空気に怖気づくことなく告白を始める。
「あの日、俺はイリアステルに襲われた。それも、あのアルターに」
「……」
「俺は死にたくなかったからな。命乞いをした。そしたら、アイツは、アジトの場所を教えたら、生かしてくれると言った」
「……貴様」
「だから俺は躊躇いなく教えたよ」
「貴様、貴様ぁ……!」
「死にたくなかった。俺は死ぬわけにはいかなかった。俺はな」
そして、エクシーズ遊介の顔が豹変する。笑顔だが、しかしそれは邪悪なものだった。
「当たり前だろぉ! なんで世界のために自分を犠牲にする必要がある? 俺は生きたい、まだ死にたくなかった! だからお前らを売ったんだよ!」
ユートが叫んだ。今まで我慢していた怒りをぶつける。
それはどれほどの怒りだろうか、ブルームガールも、マイケルも理解できなかった。
ただ1人。瑠璃だけが理解できる。
そのアジトは凄惨な光景だった。皆殺し。一言で表せばそう表現するしかない。襲撃を受け手救援に向かったデュエリストは、その光景を録画した最後の記録映像を見て、絶句しなかった者はいなかった。
そこにはイリアステルの連中共に、エクシーズ遊介の姿があった。
最後の戦いの前夜、友や家族との別れの宴、しかし、いまだ希望を失っていなかった仲間の姿。
そこに攻めてきたのだ。当然戦う準備がまだ万全ではないレジスタンスの人間を完全準備を終えていたイリアステルの人間が蹂躙していく。
戦う者も、戦えない者も関係なく、ただ命を奪い続けるイリアステルの軍勢。
そしてさらに、その中に混ざり、内部構造を秘密の避難通路まで教えてイリアステルを誘導し、自らも昨日までの仲間だった人間の命を奪い、カード状の謎の紙を生み出してくエクシーズ遊介。
そこの管理を任されていたクリストファー・アークライトはそのエクシーズ遊介の手で殺された。
セカンドオーダーと名のつく、イリアステルのカードを使っていたのだから、もはや裏切りに疑いようの余地はない。
回想をしていた瑠璃に、目の前にいるユートとエクシーズ遊介の声が届く。
「お前のせいで……どれほどの命が奪われたと思っている!」
「はぁ、知るかよ? なんで他人のために命を捧げなきゃいけないんだ! おれはな、お前らのように高尚な意思なんか持ってないんだよ!」
「だからと言って、仲間を殺すと分かっていたはずなのに、お前は!」
「じゃあ、なんだ。俺が死ぬのが正しいってのか? お前らのために命を捧げろと? 冗談じゃない! なんで俺が死ななければいけないんだ」
「お前が……教えさえしなければ……レジスタンスはまだ戦えた。次の日、惨めな結果を迎えることはなかったかもしれない!」
「は、はははははははははははは」
「何が可笑しい!」
「勝てないってわかってただろ、ああそうか。お前は馬鹿だから、頭がお花畑、希望だのなんだの戯言を並べるのが得意な馬鹿だから分からないか。でも普通の人間だったら分かってただろ。エクシーズ世界に攻めてきた、『本当のイリアステルの戦士』に勝てるはずはないって。そんな中で生きる道がある、そう手を差し伸べられた時、普通の人間はそれに縋るもんだろ!」
「お前のせいで、死んだ。死んだんだ。お前が……」
「俺は死にたくなかった。死ぬわけにはいかなかった。だからお前らを売ったんだ。それが事実だ」
ユートはこれ以上、恨み節を述べることはなく、デュエルディスクを構える。
「勝負だ遊介。多くの同胞の無念を受けろ!」
「……ああ、いいぜ。俺だって、お前の怨みが筋違いとは思っていないからな」
「保有LPのうち、全てを賭けろ」
「俺のは8000だ。8000ならいいか?」
「……お前はここで殺す」
ユートの見せる凄まじい怒り故か、光の世界の損得的に負けたら損しかない本来なら無駄な戦いを止める者はここにいなかった。
「……そろそろ、サイバース遊介も戻ってくる頃か。せっかくだ。仲間の無様な敗北をしっかり見てもらって、エデンとの同盟を有利に勧めようかな?」
「安心しろ、お前はもう、二度とその目に光を入れることはない」
裁きの戦い。因縁の戦い。
ブルームガールや良助が知らない世界で起こった惨劇の清算が始まる。
というわけで次はユートVSエクシーズ遊介です。
瑠璃VSハルトに続き、2回目の内部抗争です。まあ、でもエクシーズ遊介の初陣はこうしたかったので、同じ世界の抗争続きなのは仕方ありません。遊介シリーズの中にも悪い遊介がいるという感じにしたかったのです。
しかし、またもエクシーズ決戦ではつまらないので、次回のデュエルでは少し変わったことをしようと思います。ただし、17話だけでそこまで行くか分からないので、18話まではお待ちいただくと思います。そろそろ、ユートだけでなく、彼の中にいるという設定の彼らの出番も作りたいなぁ、と思ったり。
前回からだいぶ時間が空いてしまいました。それについては本当に申し訳ないと思っています。ちょっと最近は忙しい毎日を過ごしていて、単純に続きを書く時間がなかったです。1月中に出した私の他の作品は、これ以外すべて、去年までに作った書き溜めなので、実は今年度最初の執筆作品だったりします。
さて、次回ですが、またも時間が空きます。2月の中旬ごろになるかと。その時期まではとても忙しいのでご容赦いただければと思います。
2月の中旬ごろからは、また一気に投稿スピードを上げて投稿していく予定です。3月中には25話くらいまで行くスピードで書く予定でありますので、ご期待ください。
(アニメ風次回予告)
これは戦い。デュエルを行いながらも交差する拳と拳。なぜならお互いの目的は戦いの勝利のみ、それがどのような勝利であっても、そこに意義があるのなら。たとえ誇り高い決闘とは言えなくとも、己が怒りをぶつけられたのならそれでいい。
「無念の魂の安らぎのため、裏切者は今裁かれる」
次回 遊戯王VRAINS ~『もう1人のLINKVRAINSの英雄』~
「レクイエム」
イントゥ・ザ・ブレインズ!