遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

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注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!

いよいよユートと、エクシーズ遊介の戦いが始まります。

2月16日追記 当初出した内容に余計な文章が入っていました。現在は修正済みです
また最後の攻撃のダークリベリオンエクシーズドラゴンとダークレクイエムエクシーズドラゴンの攻撃の順が逆になっていました。こちらも訂正しています


17話 レクイエム

ユート LP8000 手札5

モンスター

魔法罠

 

エクシーズ遊介 LP8000 手札5

モンスター

魔法罠

 

(エクシーズ遊介)

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  □   □     EXモンスターゾーン 

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

(ユート)

 

エクシーズ遊介は愉快な顔で殺意を思いっきり向けている目の前の男に向けて、

 

「さあ……お前の怨みを俺にぶつけてみろ。お前が正しいっていうのなら、俺は死ぬべきだよな? だから勝利の女神とやらに占わせようぜ! どっちが正しいかをさ!」

 

と、挑発の1つの完成形かのような身振り顔つきで言い切った。

 

ユートはあからさまな挑発になる男ではないが、今はそもそも堪忍袋も木っ端みじんの状態である。

 

「殺すぞ……貴様は。たとえ誰に恨まれようとも」

 

ユートはデッキから最初の5枚をドローし、そしてエクシーズ遊介もまた5枚のカードをドローした。

 

因縁の戦い。

 

この戦いの結果はおそらく、エクシーズ世界の人間ではない人間には恐らく何も影響を与えないだろう。

 

しかし、この場の瑠璃にとっては大切な一戦である。

 

あの日、死んでいった多くの共に見てほしいと切に願う、復讐の機会。

 

「デュエル」

「デュエル」

 

戦いは始まった。

 

 

ターン1

 

 

「復讐を願う人間を迎え撃つにはしっかり準備をしなくちゃな。俺が先行でやらせてもらうぜ」

 

エクシーズ遊介の宣言。返答は待たずエクシーズ遊介はカードの操作を始めた。

 

「俺はマジックカード『ナンバーズゲート』を発動! 手札のモンスター2枚をオーバーレイユニットとし、エクストラデッキからランダムに『No.』と名のつくモンスター1体を特殊召喚する。俺は手札の、HM(ヒートマスター)・シールダー2体を素材にする」

 

宣言したモンスターのカード2枚を天に向けて掲げると、その2枚はひとりでに宙に浮き、炎の如き2つの攻防として、黒い螺旋を描く渦の中へと消えていく。

 

そしてデュエルディスクから、ランダムに決定されたモンスターが自然に現れる。

 

「……当たりだ。刮目して見てもらおう」

 

天を指さす。エクシーズ遊介のその行為にユートは警戒をしながら、エクシーズ遊介が指さした先を見る。

 

そこには太陽があった。

 

実際は違う、太陽ではなく別の星が光を見せているだけである。しかし、その後信じられないのはそれを覆う機体が現れたのだ。

 

「あれは……?」

 

「お前は見たことはないだろうよ。これはクリスがもしもの時に備えて家族にしか明かしていなかった武器だ」

 

「……お前が奪ったのか」

 

「そうだ。なかなか強いぜ。まあ、召喚が大変なんだけど。来い! ナンバーズ9! 天蓋星ダイソンスフィア!」

 

そう、今現れたのは星とその機体がまとめて1体で数える信じられない存在だったのだ。

 

No.9 天蓋星-ダイソン・スフィア 攻撃表示 ランク9

ATK2800/DEF3000

 

ユートはそのモンスターを初めて見た。

 

そもそもクリスという人間は弟2人とは違い人前でデュエルをする人間ではなかった。弱かったからではなく、彼はそもそも科学者だったからだ。その機会がなかっただけである。

 

故に彼がエースとしたモンスターを見たことがあるのは、ミハエル、トーマスの2人だけだ。本来は彼らの父も知っているが、すでに亡くなっている。

 

「さて、ナンバーズゲートを使ったターンは俺は通常召喚はできない。俺はこれでターンエンドだ」

 

ユートはその動きに不審さを感じた。

 

「伏せカードもないとは、生温いって?」

 

エクシーズ遊介はユートの真意を悟ったような言葉を告げる。

 

しかしユートは反論しなかった。ただ目の前のエクシーズ遊介を殺すために今の手札でできることを考え始める。

 

エクシーズ遊介 LP8000 手札2

モンスター ① No.9 天蓋星-ダイソン・スフィア

魔法罠

 

(エクシーズ遊介)

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  ①   □     EXモンスターゾーン 

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

(ユート)

 

 

ターン2

 

「俺のターン!」

 

デッキの1番上のカードを引き、今ある6枚で、目の前に現れたナンバーズを倒す方法を考えるためカードに注目する。

 

ユート LP8000 手札6

モンスター

魔法罠

 

ナンバーズとはエクシーズ世界で、最強格のモンスターとされる107枚のカード。特にナンバーズはランクが高くなるにつれ効果が凶悪になっていく傾向にある。

 

今呼び出されたモンスターのランクは9。一筋縄ではいかないことは間違いない。しかし、今は罠は伏せられていないので、今後防御を固められる前に攻撃すべきだとユートは、このターンの方針を決める。

 

その間3秒。

 

「ユート!」

 

瑠璃とブルームガールの声が重なり、ユートの声に聞こえる。それは決して応援というトーンではなかった。

 

ユートは手札から目を話し、エクシーズ遊介を見ようとする。

 

すぐに悲鳴の理由が分かった。何故かエクシーズ遊介が目の前に近づいている。

 

握り拳をすでに打ち出していて、油断していたユートはそれを防ぐ手段はない。

 

激突。ユートの内臓に衝撃が走った。

 

「が……!」

 

腹から広がる痛み、それを歯を食いしばり耐え、二回目襲い掛かる拳を前に後ろに跳んでそれを躱した。

 

「貴様……!」

 

エクシーズ遊介は悪びれることなく、

 

「知ってるか? ユート。この世界では、デュエル中に気絶したらそいつは負け判定になるらしいぜ?」

 

デュエルを見ていた周りの人間は、勝ちのために手段を選ぶ様子のない彼に怒りを覚えた。特に瑠璃はデュエルに介入しようとしていたが、

 

「来るな! 大丈夫だ!」

 

ユートは強く言い切って、敵への警戒度を最大まであげた。もう一度、たった一瞬だけカードを見て、その後すぐに注意をエクシーズ遊介へと戻す。

 

再び殴りかかってくるエクシーズ遊介の拳を三回捌くと、続けてくる蹴り上げを再び後退することで躱す。

 

「どうした? お前はやってこないのか?」

 

「下らん。貴様の挑発に乗るものか!」

 

ユートは目の前のエクシーズ遊介の目的を冷静に捉えようとする。

 

(暴力はデュエルタクティクスに乱れを起こそうとするためが第一だろう。俺とてレジスタンスとして戦ってきた。多少痛みを与える程度で俺を気絶させることはできないのは奴だってわかっているはず……だからと言って、肉体へのダメージを与えるのは止まらないだろうな。プライドを守るということを知らないあいつには、自分が追い詰められた時の保険用に、俺に深刻な肉体ダメージを与えておくこともするはずだ)

 

気絶によるユート敗北、そしてデュエルによる勝利。その2つを同時に狙うことでユートに確実に勝利しようとする。

 

それがエクシーズ遊介の戦い方なのだ。

 

「俺はファントムナイツクラックヘルムを召喚!」

 

幻影騎士団クラックヘルム 攻撃表示 レベル4

ATK1500/DEF500

 

再び迫っていたエクシーズ遊介の行く手をふさぐように、ユートは自らのモンスターを呼び出した。

 

「さらに自分フィールド上にファントムナイツが存在するとき、手札のサイレントブーツを特殊召喚する!」

 

幻影騎士団サイレントブーツ 攻撃表示 レベル3

ATK200/DEF1200

 

ユートの味方をするモンスター2体がエクシーズ遊介の行く手を塞ぐ。エクシーズ遊介はそれを躱そうと走るが、モンスター2体は幻影と言えど騎士、ただのカード使いでは、振り切れない。

 

「俺はさらに装備魔法『レイズウイング』をサイレントブーツに装備する!」

 

「あ……?」

 

「この世界で手に入れたカードだ。このカードはフィールドに存在するレベルが存在するモンスターに装備する。装備したモンスターのレベルを1つあげる」

 

幻影騎士団サイレントブーツ レベル3→4

 

「レベル4モンスター2体……!」

 

エクシーズ遊介は悟った。これで条件が整ったことを。そしてユートもそれが分かっている。エクシーズ遊介が己のエースを召喚することを分かったことを。

 

それでも、ユートは自身を曲げる事はしない。

 

ユートにとってこの戦いは鎮魂の意味をもつ。理不尽に殺された同胞たちの怒り、憎しみを少しでも、その原因である目の前の遊介にぶつけ、魂の安らぎとする。

 

故にその方法は、相手と同じ外道な方法であってはならない。自分のまま、エクシーズ世界で生きてきた自分が復讐をすることで意味を成す。

 

ユートはそんな風に考えている。

 

「俺はレベル4モンスター2体でオーバーレイ!」

 

先ほどまでユートを守っていたモンスターは黒の妖光を纏い地上に現れたブラックホールの中へと飛び込んでいく。

 

その瞬間、とびかかってきたエクシーズ遊介の渾身の拳をディスクをつけていない腕で受け止め、そして再び距離をとり、時間を稼ぐ。

 

「漆黒の闇より……愚鈍なる力に抗う――反逆の牙! 今降臨せよ!」

 

そして、言葉通りの漆黒の渦から現れたのは、ユートのエースモンスター。長い戦いを支え続けた最高の相棒。

 

「エクシーズ召喚! ランク4! ダークリベリオンエクシーズドラゴン!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃表示 ランク4

ATK2500/DEF2000

 

今度ユートの前に現れたのは竜。これではさすがの遊介も接近は諦めざるを得ない。

 

一方ユートは、現れた自身の相棒を見て、攻勢へと転じるようとする。

 

「ダークリベリオンエクシーズドラゴンの効果! オーバーレイユニット2つを使い、相手モンスター1体の攻撃力を半分にし、下げた数値の分だけ、このカードの攻撃力を上げる! トリーズン・ディスチャージ!」

 

黒竜の翼から雷撃が天高く放たれる。

 

その雷撃が確かに届き、その力を削いでいく。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ATK2500→4100

 

No.9 天蓋星-ダイソン・スフィア ATK2800→1400

 

「なるほど……さすがだぜ。たった1ターンであいつを殺す算段が整えられるとは」

 

「バトル! ダークリベリオンエクシーズドラゴンで、ダイソンスフィアを攻撃!」

 

間髪入れずに、そのままバトルフェイズに入り、攻撃を仕掛けるユート。

 

この攻撃が通れば強力な先手であることは間違いない。

 

しかし、ユートも少しは予感していた。

 

あのエクシーズ遊介が、どうあっても勝とうとする容赦のない状態であったその男がそう易々と攻撃を通すはずがないと。

 

「そう簡単に攻撃は通らないさ」

 

凄まじい風が吹いた。その風は人を軽く吹き飛ばすような風だったが、自然現象ではない。なぜならユートのドラゴンのみを的確に狙い、攻撃を始めようとしたその竜を止めるためのものだったからだ。

 

「攻撃が無効にされた……天蓋星の効果か……!」

 

「ご名答。あの星は、自らに襲い掛かる攻撃を無効にできる。1度だけだけどな。でもお前が天蓋星を見た時点で、ダークリベリオンで攻めてくるのは分かってたからな。これで十分だと思ったが、お前……面白いくらいその通り動いてくれたよな」

 

頭に血が上っていたかと一瞬自身を顧みて己の中で暴走している熱をようやく実感する。しかし少し冷静になった頭で考えてもここまでのデュエルの運びは、たとえ冷静でもそうしただろうと納得できるものだった。

 

「俺はバトルフェイズを終了。カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

ユートはカードを伏せ、エクシーズ遊介の直接の攻撃に備える。

 

「いいのかユート。こんなんじゃ、あんなにキレてた割には大したことないって評価をするしかなくなっちまうな」

 

エクシーズ遊介のユート煽る言動は止まらない。

 

しかし、攻撃が止められることも了承していたユートはさして怒りはしなかった。むしろ目の前の未知の脅威の力の一端を暴けたことで、対応ができると前向きに捉えている。

 

ユートは、問題は次のターンであると考える。

 

体に少しずつ痛みが走っているが、いまだ思考は衰えない。目の前のナンバーズが攻撃無効だけではない、何かそのモンスターをランク9にしている効果があり、それが次のターンで見ることができるかと期待した。

 

敵を知れば戦い方も見えてくる。それは相手がたとえどのような敵であっても同じこと。ユートは実践からそれを知っている。

 

(さあ……どう来る……?)

 

 

ユート LP8000 手札2

モンスター ② ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン

魔法罠 伏せ1

 

(エクシーズ遊介)

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  ①   ②     EXモンスターゾーン 

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ ■ □ □   魔法罠ゾーン

(ユート)

 

 

外野から見れば、この戦いに誇り高さなど微塵もなかった。ユートがただただ損をする一方である。殴られ、そして煽られ、とてもデュエルの正しい姿とは言えないものだった。

 

故にその戦いを見守るブルームガールや瑠璃が何度も介入を試みるがその都度、マイケルが止めていた。黙ってみてろと。これは、たとえ何の見返りがなくても、ユートが望んだ戦いだからと。

 

マイケルはまるで同じような経験があるかのように語っていた。

 

一方戦っている当事者2人の間では、

 

「無念を受けろ、だったか?」

 

「そうだ」

 

「確かに俺は結果的に殺してしまった。だが、それでも、確かに救われた命はあった。俺はそう思ってる」

 

「……お前1人せいで多くのレジスタンスの人間が死んだ」

 

「それは違うな。その犠牲のうえで、俺の命が助かったと言うべきだ。人の命を大切になんて常識論を語るのなら、それは喜ぶべきことだろう?」

 

あまりにも他人をないがしろにしているように聞こえる供述に、ユートの怒りのボルテージはさらに上がっていく。

 

 

ターン3

 

 

「俺のターン。ドロー」

 

エクシーズ遊介のターンが再び始まる。

 

エクシーズ遊介 LP8000 手札3

モンスター ① No.9 天蓋星-ダイソン・スフィア

魔法罠

 

「始めるか。俺はマジックカード『サイクロン』を発動する。その効果で相手フィールドの魔法、罠のうち1枚を破壊する。俺は破壊するのは当然お前がさっき伏せたカードだ!」

 

ちょうどいいカードをデッキから退いた遊介は、ユートにとって不快な笑みを浮かべながらそのカードを発動する。ユートが防御用に伏せてあったカードは残念ながら破壊されてしまった。

 

「く……」

 

これでユートも防御することが厳しい状況に。しかし、ダークリベリオンの攻撃力はいまだダイソンスフィアを上回っている。その点は戦闘破壊は免れるはずだと、ユートはまだ強気でいられた。

 

「だが、お前のドラゴン、攻撃力4100かぁ。こりゃまいった。戦闘破壊は無理そうだなぁ……戦闘破壊は」

 

「何が言いたい」

 

「今の言い方なら簡単だろ。そもそも、戦闘破壊なんてする必要ないってことだ!」

 

エクシーズ遊介はダークリベリオンを突破できないことを承知していても、それすら予想通りだと言わんばかりの表情を浮かべながら、声を大にして言い放つ。

 

続く内容は、呼び出したダイソンスフィアが真に恐れられる驚異的能力の話。

 

「さあ、ユート。死ぬなよ?」

 

「舐めるな!」

 

「いいや、次の一撃は重いぜ。ダイソンスフィアの効果。相手フィールド上に、自身よりも攻撃力が高いモンスターが存在するとき、オーバーレイユニットを1つ使って発動する。このターン、ダイソンスフィアは相手へ直接攻撃ができる状態になる!」

 

「な……に?」

 

直接攻撃。それは攻撃力で敵を制圧するユートが対応を苦手とする相手。ユートは相手の攻撃を、ダークリベリオンの攻撃力の高さ、自身の攻撃力をあげてカウンター、といった方法で基本は攻撃を防ぐ。

 

しかし、効果ダメージや直接攻撃など、攻撃力を参照しない効果を使われてしまうと、そのような攻撃を防ぎ方はできない。

 

「これでこのターンダイソンスフィアはダイレクトアタックできる。当然、この後攻撃力を上げてもな?」

 

エクシーズ遊介はさらにカードを発動する。

 

「俺はマジックカード『反転炎上』を発動! 自分フィールドの攻撃力が元々の数値より低いモンスター1体を選択。選択したモンスターの攻撃力を元々の攻撃力まで上昇させ、さらにその効果で上昇した分の数値を、攻撃力に加算する。俺のダイソンスフィアの下がっていた攻撃力の数値は1400。よって、その2倍、2800の数値をダイソンスフィアの攻撃力に加える!」

 

No.9 天蓋星-ダイソン・スフィア ATK1400→4200

 

目の前に攻撃力4200のダイレクトアタック可能なモンスター。それは通常のLP4000デュエルだったらたった1撃で相手のライフを0にできる火力を持った1撃必殺の砲台だ。

 

リンクブレインズの世界では、モンスターの攻撃を受けると、ある程度痛みを伴うようになっている。当然それは一度に受けるダメージが多ければ多いほどその痛みは増していく。以前サイバースの遊介がハルトの銀河眼の光子竜達の攻撃を受けて瀕死になった思い出は深く頭の中に残っている。

 

そして今のユートにはそれを防ぐ手立てはない。

 

歯を食いしばり、攻撃を前に身構えるユート。

 

それを見て、

 

「へえ、こりゃ珍しい。勝利の女神はお前を見放したのかな。攻撃を受けるしかないとは情けないなぁ、ユート!」

 

と大声をあげ、

 

「なら、容赦なくお前を潰してやるさ! バトルフェイズ。ダイソンスフィア、ダイレクトアタック!」

 

天に届くようにエクシーズ遊介は叫んだ。

 

それに呼応するかのように、ダイソンスフィアからは何かが放たれる。

 

それは言うなれば流星群。天からの攻撃は、数多の光芒となり、ユートに向けてだけではなく、光の世界全体に降り注ぐ。ユートの逃げ場をふさぐために。

 

「瑠璃、みんな! 建物の中へ逃げろ!」

 

ユートは味方に忠告すると、自身は何とか直撃だけでも避けようと走り出す。

 

「無様だなぁ、ユート!」

 

それが最高に愉快そうにエクシーズ遊介は笑った。

 

しかし、ユートにとっては失神しないことが何より気を付けなければならないことだ。街を走りながら雨のように降ってくる攻撃から何とか逃げ続ける。ダベリオンもその攻撃を破壊しながらユートを守り続けていたが、なんにせよ数が多すぎる。

 

「く……!」

 

迫る一撃を飛んで躱そうとするが当然着弾と共に爆発。

 

その爆風に吹き飛ばされ、近くの建物に叩きつけられた。

 

ユート LP8000→3800

 

「がぁ――」

 

瞬間、意識が8割持っていかれた。それでも瞬間唇を噛み、2割の意識を残し、朦朧としながら地面に寝転ぶ。

 

意識を暗黒へと落とそうとする誘惑を怒りで振り切り、再び意識を完全に覚醒させた。

 

「俺はこれでターンエンド。さすが、まだ生きてんのか。普通の人間ならここで意識を手放すんだけどな」

 

「お前……俺以外にもこんな戦い方をしているのか!」

 

「さすがに味方にはやってないけど、敵にはやっているよ。痛みで顔が歪む、怒りで思考が歪む。意識が朦朧とする。それらすべては俺の勝利へとつながる。単純な話だ。マナーは守っていないが、ルールに違反しているわけじゃない。この世界で俺を咎められる人間は誰もいない。俺は生きるために勝つ。そのために最も相応しい手段をとっているだけだ」

 

「お前……く……」

 

眩暈がいまだつづくユート。

 

エクシーズ遊介は、

 

「エンドフェイズ、ダイソンスフィアの攻撃力は元々の数値に戻る」

 

No.9 天蓋星-ダイソン・スフィア ATK4200→2800

 

と、必要な処理を淡々とこなして自分のターンを終了させた。

 

エクシーズ遊介 LP8000 手札1

モンスター ① No.9 天蓋星-ダイソン・スフィア

魔法罠

 

(エクシーズ遊介)

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  ①   ②     EXモンスターゾーン 

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

(ユート)

 

 

ユートは今にも意識を手放しそうだった。

 

過去、ハルトと戦った時の、瑠璃や自身が知る遊介がこれほどの痛みをもってしても自身の信念を貫いた。それがどれほどの偉業だったか改めて思い知る。

 

ならば自分のこんなところで止まっていられないと、ユートは思った。

 

自身が戦うのが、イリアステルへの怒りだと言うのなら。

 

その怒りはこんなものではないと己を鼓舞する。

 

レジスタンスとして戦ってきた日々を思い出す。地獄のような戦いの日々。思い出も、友も、すべてを奴らに奪われ、戦火の炎を起こす薪としてくべられた。

 

あの時に誓ったのだ。あいつらを必ず地獄へ叩き落とし、無為に死んでいった彼らを少しでも慰めようと。

 

「人ってのはあらゆる他を食い物にしながら、ただ生きようとする他の生物と同じ生存本能を持っている」

 

エクシーズ遊介は、痛みに耐えるユートを見ながら語る。

 

「何を……知ったような口を……」

 

「そんな卑しい側面を理性が見たくないがために、お前らは絆というものに縋りつく。他者と協力、協働、それは見た目はとても美しい。それに縋って、自身の嫌な側面から目を離す」

 

「レジスタンスの仲間を、そのつながりを、偽善だというのか!」

 

「俺も絆が良いものだとは思うさ。だがそれはあくまでいい方向に働いたらだ。望まぬ同調を強いられ、望まぬ圧力をかけられ、それでも絆に縋りついたら、仲間外れが怖くて、裏切りへの報復が怖くて、抗えない」

 

ユートは反論しなかった。それは事実だ。そのような人間の悪性は望まずとも生きていれば必ず出会う。

 

「お前はレジスタンスを、故郷を守るために集まり、共に志を共にする連中だと信じて疑わなかったようだがな。本当にそうだったと言い切れるか。レジスタンス全体が?」

 

それはユートとて人であり、さらに幹部などの人を統べるような立ち位置にはいなかったから分からない。

 

「当然違うだろ。イリアステルにどう命乞いすればいいか考えている奴も、俺が見ただけでも3割は超えてた。自身の保身のために仕方なく、現状一番安全なレジスタンスに身を置きながらも、どうやってこの先を生き残ろうかと奴らは必死に考えてた。本当は行きたくない戦場にデュエリストだからと駆り出されて、その中で味方に見つからないように無様に逃げ回って、何とか命を繋いでた。それは間違っていないと思うぜ。なんにせよ、死んだら終わりだからな」

 

エクシーズ遊介は自身も含まれる連中のことを、愉快に紹介した。それがユートにとってどれほど不快なことと知りながら。

 

ユートの中で3つの魂があらぶり始める。

 

特に、その中の一人は我慢できないと、ユートに『代わる』よう要請していた。あの野郎、一発ぶん殴らせろと。

 

しかし、ユートはそれを拒んだ。これは、これだけは、たとえこれから協力し合うと誓い合った友でも任せられない自分の戦いだと。

 

「なあ、ユートそれでもお前は、俺が間違っていると言えるか? 生きたいと思ったから、生きる選択をしたこの俺が。なあ!」

 

エクシーズ遊介は偽ることなく本心を叫んだ。

 

ユートはエクシーズ遊介が言ったその事実を嘘だとは思わない。しかし、仕方なかったのだ。戦える人間が一人でも多く戦場に立ち戦わなければエクシーズ世界は滅ぶしかなかった。人々は死ぬしかなかった。

 

だから戦ったのだ。勇敢な戦士たちは、自身の命を犠牲にしてでも未来を勝ち取れるのならばと、己を犠牲にしてきた。

 

そんな格好いい人々の姿をユートは知っている。

 

だからこそ、そのように生きた人々の犠牲を無駄にする、あのエクシーズ遊介が許せない。

 

「ああ。お前は間違っている。故郷のために必至に戦った人々がいた。その行為がたとえ無駄に終わるかもしれないと知っても、希望が欠片ほどあるならまだあきらめないと必死に戦った、レジスタンスの仲間たちがいた。お前はそれを――」

 

眩暈は収まり、意識が再び完全に覚醒する。

 

「その人々の願いを踏みにじったんだ! 俺はそれが許せない。だからお前を、ここで罰する!」

 

エクシーズ遊介はその答えを聞き、笑った。

 

「そうじゃなくちゃな」

 

と言いながら。

 

 

ターン4

 

 

「俺のターン!」

 

怒りを籠めカードを思い切り引き抜いた。

 

ユート LP3800 手札3

モンスター ② ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン

魔法罠

 

次の戦術は考えるまでもなかった。

 

結果的に自身のエースが場に残ったことで余計な手間をかける必要もない。すでに、目の前にそびえ立つあのモンスターを倒す準備は整っている。

 

後は、決して消えることのない己の怒りをぶつけるのみだ。

 

「墓地のサイレントブーツの効果を発動する! このカードを除外し、デッキから速攻魔法、『RUM-幻影騎士団ラウンチ』を手札に加える!」

 

「ランクアップマジック……!」

 

そのカードの脅威は、エクシーズ世界で生きた人間なら知っている。それは強力なエクシーズモンスターをさらに強化する、エクシーズ世界のデュエリストの切り札。

 

ユートはそれを躊躇うことなく発動した。

 

「俺は手札に加えた『RUM-幻影騎士団ラウンチ』を発動! このカードはオーバーレイユニットを持たない闇属性エクシーズモンスター1体を、ランクの1つ高い闇属性モンスターへとランクアップさせる! 俺はダークリベリオンエクシーズドラゴンを進化させる! ランクアップエクシーズチェンジ!」

 

「く……」

 

エクシーズ遊介の顔が、デュエルに入り初めて歪む。

 

エースと切り札の違いは、エースとはは場を優勢に持っていくための自分の得意な戦術の核になる存在、切り札とは、相手を確実に殺すための存在。

 

ダークリベリオンがエースなら、今から呼び出されるのは切り札である。

 

それは、このデュエルに相応しい名を冠する、ユートの怒りそのものだった。

 

「煉獄の底より……未だ鎮まらぬ魂に捧げる――反逆の歌! 永久に響かせ現れろ!」

 

ユートのドラゴンが、変化していく。黒竜だったそれよりも、さらに禍々しい姿となっていく。

 

「ランク5! ダークレクイエムエクシーズドラゴン!」

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃表示

ATK3000/DEF2500

 

ユートの怒りの具現化とも言うべきその竜は、場に現れた瞬間その猛威を振るっていく。

 

「ダークレクイエムエクシーズドラゴンの効果! オーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を0にし、下げた数値分、このカードの攻撃力に加える! レクイエム・サルベーション!」

 

「なんだと! なんてインチキな」 

 

翼に装備された闇の水晶から、暗黒の鎖が放たれる。それはあまりに巨大でどうにもならないはずのダイソンスフィアを確かに縛りあげた。ダイソンスフィアはその輝きを完全に失っていく。

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ATK3000→5800

 

No.9 天蓋星-ダイソン・スフィア ATK2800→0

 

「ぐぅ……まじか……」

 

「俺はお前を許さない。俺が受けた痛みなど生温い。貴様には血反吐を吐くほどの一撃を食らわせてやる! バトルだ!」

 

その攻撃宣言はもはや、竜の咆哮だった。それほどの激しさを伴っている。

 

しかし、エクシーズ遊介もそれに怯むことはない。

 

「そう易く攻撃は通さないぜ。ダイソンスフィアの効果を発動!」

 

と、攻撃を防ごうとするが、

 

「そうはいかない」

 

ユートはまさにそれを狙っていた。

 

「ダークレクイエムの効果! 相手がモンスター効果を発動したとき、オーバーレイユニットを1つ使い、発動した効果を無効にし破壊する!」

 

ダイソンスフィアを縛っていた鎖の影響か、効果発動を無効にするとともに、ダイソンスフィアはその機体にひびが入り始め、そして溶岩に飲まれるかのように、端から破滅の炎が機体を覆っていく。やがて炎と共にその存在は抹消されていった。

 

「くそ……」

 

「さらに、この効果を使用したのち、墓地のエクシーズモンスター1体を特殊召喚する! 蘇れ、ダークリベリオンエクシーズドラゴン!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃表示

ATK2500/DEF2000

 

「な……」

 

エクシーズ遊介にとっては衝撃の展開だろう。

 

たった1ターンで、ここまで形成が逆転したのだから。

 

「お前を守る者はいない。無念の魂の安らぎのため、裏切者は今裁かれる」

 

「てめえ……!」

 

苦悶の表情を浮かべるエクシーズ遊介にかける慈悲は微塵もない。

 

「バトルだ! 俺はダークレクイエムエクシーズドラゴンでダイレクトアタック!」 

 

上昇するその竜は翼を大きく広げた。翼ややがてステンドグラスのように美しく輝く。

 

「鎮魂のディザスターディスオベイ!」

 

そして、牙に圧縮されたエネルギーを携えて、その竜はエクシーズ遊介に襲い掛かった。

 

竜の攻撃、突き立てられる牙をまともに受け、

 

「がああああ!」

 

エクシーズ遊介は悲鳴をあげる。

 

エクシーズ遊介 LP8000→2200

 

「ダークリベリオンエクシーズドラゴンで、遊介! 貴様にダイレクトアタック! 反逆のライトニングディスオベイ!」

 

「や、やめ」

 

「これがお前が抱えた多くの怨みだ。あの世に行って詫びるがいい!」

 

その牙が――。

 

寸分狙いを違うことなくエクシーズ遊介に刻み込まれ、そしてそのまま、地面を引きずりながら、近くの建物に激突した。

 

エクシーズ遊介 LP2200→0

 

 

 

終わりは意外にもあっけなかった。

 

当然この程度でユートの怨みが晴れることはない。

 

しかし、一つの決着はつい――。

 

 

 

「まだだぁ! まだ死ねるかよぉ!」

 

「何……!」

 

 

ユートは遊介が倒れていないこと、そして未だデュエルが続いていることに驚いている。

 

「どうなっている……?」

 

エクシーズ遊介は、ダメージを受けた箇所を手で抱えながら、

 

「まだ死ねない。死ねない。死ねないんだよ。だから、俺は命乞いをした。その時手に入れたカードだ」

 

あるカードがすでに発動されていた。

 

 

『セカンドオーダー・混沌の種』

 

 

「この永続魔法は、俺のLPが0になるとき、墓地のナンバーズを1体除外することで、相手ターンでも手札から発動できる。自分はライフ0でもデュエルを続行できる。この効果は無効にできず、このカードは自身の効果以外でフィールドから離れない。そしてこのカードが存在する限り、ライフが0でも俺はデュエルを続行できる。まだ効果はあるがそれは後で説明しよう」

 

ユートは執念とも妄念とも言うべき、生への固執を遊介が見せていることに恐ろしさを感じた。

 

「ははは、ユート。ああ。お前の勝ちだ。実力勝負じゃ俺はどうあってもお前に勝てない。そんなの分かってる。守屋遊介という男は英雄なんかになれない。自分が抱えられる量以上の願望を抱いたら、必ず破滅するような、奇跡なんて起こせやしないただのモブキャラだ」

 

「そんなことはない。現にあいつは、サイバース使いの遊介は」

 

「ハルトに勝ったか。それは偶々、ハルトがプレミしたからだ。どちらかと言えば、それは遊介の奇跡じゃなく、ハルトの不幸と数えるべきだろうよ。俺は遊介だ。よくわかる。己の願望を持っても、それを叶えるだけの力がないのが守屋遊介という男だ。それはたとえどの世界の俺でも変わらない。いずれ、サイバース遊介も、自身の弱さを呪う日は必ず来る。俺が保証してやる」

 

ユートは反論をしようとしたが、その前に再びエクシーズ遊介の口が開いた。

 

「だから俺は無様に命乞いをした。自分の力量を分かっているから、それでも生きたかったから、俺はプライドなんかそこらのネズミに食わせた。全部、全部を売ったよ。そうやってここまで生き延びてきたんだ」

 

エクシーズ遊介がこの世界に来て初めて、

 

「お前の恨みなんかになぁ……負けてられねぇんだよ!」

 

怒りの形相で叫んだ。

 

「ここからはエクシーズ世界の戦いじゃねえ。俺とお前の戦いだ。俺はどんな手を使ってでも、お前を潰すぜ、ユート!」

 

「遊介……!」

 

昔はあんな奴じゃなかった、そのような感傷は一瞬ユートの中に湧き、そしてすぐ枯らした。

 

あれは敵だと、ユートは再び己を敵意で満たす。

 

戦いは新たなる局面へと動こうとしていた。




ちょっと長くなってしまいましたが、前後編の分けるほどではなかったのでまとめました。ユートVSエクシーズ遊介の戦い前半です。

前半はユートが自身の怒りを遊介にぶつけるというテーマで進んできました。
本来ユートは今回のように力押しばかりをするようなデュエルをするわけではありません。ダイソンスフィアの攻撃もいつもなら警戒して然るべきなのです。しかし、今回はユートが怒っている状態と言うことを加味して、他にやりようがあった可能性を捨て、小細工を弄さず、ただ本気の殺意をみせるような形で書いてみました。

一方エクシーズ遊介の戦い方は、奪ったものを最大限利用して、ユートの怒りを煽ることができるようなカード選びにしています。なので、デッキにあまり個性を出さないことで、人のパクり感が少しでも表現できていたらと思います。

そして次回、遂に決着です。
最近は長いデュエルばかり書いていて、正直大変ですが、18話も頑張りたいと思います。次回もお楽しみに!

(アニメ風次回予告)

全ては奪ったものだった。ある日を境に奪い続けて、己の命を長らえさせてきた。告白する敵に、復讐者は共感の意を示さない。なぜなら秘めたその思いは1人のものではない。その魂に輝きが灯り、次元を超えた絆を示す。

「君がその力を使うなら、僕も出てきていいだろう?」

次回 遊戯王VRAINS~『もう1人のLINKVRAINSの英雄』~

   「捕食者 VS生誕する混沌」

   イントゥ・ザ・ヴレインズ!
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