遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。
これでOKという人はお楽しみください!
「あれは……」
Dボードに乗って数時間。先ほどのシンクロ遊介との戦いもあり、遊介はようやく光の世界にたどり着こうとしていた。
しかし、その遊介が見たのは、何者かの広範囲の攻撃によって多くの被害を被った光の世界だった。
誰かが戦っている。
遊介は急いで、現場へ赴こうとしたが、そこに一通のメールが来る。
『来るな。危険だ』
ユートからのメールに不穏な何かを感じ取った遊介だったが、今は1人ではなくエリーが後ろに控えている。無謀ではなく彼女の安全を優先し、ユートの警告に従うことにした。
上空からユートを探し、その戦いの行方を見守る。
ユート LP3800 手札3
モンスター ③ ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン
② ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
魔法罠
エクシーズ遊介 LP0(特殊効果でデュエル続行) 手札0
モンスター
魔法罠 ④ セカンドオーダー・混沌の種
(エクシーズ遊介)
□ □ ④ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ ③ EXモンスターゾーン
□ □ □ ② □ メインモンスターゾーン
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
(ユート)
圧倒的なユート攻撃でエクシーズ遊介のライフは0になったはずだった。
しかし、エクシーズ遊介は、イリアステルのセカンドオーダーのカードにより存命を果たす。
プライドを捨て、惨めに血反吐を流してでも生き残る。執念とも言うべき生への執着は外道なデュエルを辛辣な目で見ていた観客を黙らせていた。
「『セカンドオーダー・混沌の種』を破壊する方法は1つ。このカードにカウンターを5個乗せること。このカードは俺のターンに1度、カオスナンバーズを召喚しなかった場合にカウンター3つ、俺のフィールドのカオスナンバーズが破壊されたら1つ、俺がダイレクトアタックを受けたら2つ、このカードにカウンターが乗る」
「つまり、カオスナンバースをお前は呼び続けるということか」
「ああ、だがデメリットばかりじゃない。このカードがある限り、ランクアップ無しでこのカードの効果でカオスナンバーズを呼びだせる。カオスナンバーズの力は俺達がよく知っているだろう?」
ただでさえ強力なナンバースのランクアップ体、もはやその脅威度は語るに及ばない。
ここから先の激戦をユートは予想せざるを得なかった。
「遊介……ずいぶんと憐れな姿になったな。昔のお前はそんな奴じゃなかった。誰よりも、デュエルで笑顔を、そう思っていたやつだった」
「はっ、昔の話だ。今の俺はその頃のクソみたいな甘ったるい自分を許せないくらいだ」
「俺はお前を許さない。何があったにしろ、お前は許されないことをしたのは事実だ。だが、それでもあえて、昔友だったお前に問いたい。何があった」
「語るに及ばす。ユート、同情しようと言うならやめておけ。今お前の目の前にいるのは別人だ」
「……そうか。なら、そうしよう。俺ももとより、何を聞いたからと言って手加減をするつもりはない。俺はカードを1枚伏せて、墓地のクラックヘルムを除外し効果を発動する。エンドフェイズ、幻影騎士団、ファントム魔法、罠カードを1枚回収する。俺は、このターン使った『RUM-幻影騎士団ラウンチ』を回収し、ターンエンドだ」
少し怒りの矛を収めていたユートだったが、その目にはすでに殺気が蘇っていた。
「そう、そうだ。その顔だぜユート」
エクシーズ遊介は、そんなユートの顔を見て満足げに笑っていた。
ユート LP3800 手札3
モンスター ③ ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン
② ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
魔法罠 伏せ1
(エクシーズ遊介)
□ □ ④ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ ③ EXモンスターゾーン
□ □ □ ② □ メインモンスターゾーン
□ □ ■ □ □ 魔法罠ゾーン
(ユート)
ターン5
「俺のターン!」
すでに意識を手放してもおかしくないほどのけがを負っているエクシーズ遊介は、それでもその声から闘志を失っていなかった。
エクシーズ遊介 LP0(特殊効果でデュエル続行) 手札1
モンスター
魔法罠 ④ セカンドオーダー・混沌の種
「まあ、ここからさらに怒らせることになるけどな……へへへ」
すでにライフは尽きている。体は限界を迎えているが、エクシーズ遊介は、ユートの激昂を思い浮かべるとにやけが止まらなかった。
「さあ、ここからこのデュエルの第2幕だ!」
そしてドローした1枚に手を出すことなく、最初に目を向けたのは墓地だった。
「俺は墓地の、ヒートマスター・シールダーの効果! 俺のLPが相手よりも下回っている時に、墓地のこのカードを特殊召喚できる! 蘇れ! ヒートマスター・シールダー!」
「1ターン目に墓地へ送っていたカードか!」
「そうだ」
「ようやく奪ったモンスターではなく、自分のカードを使う気になったのか」
「いいや、あくまで布石だよ。蘇れ、俺の炎の戦士たち!」
墓地から蘇ったのは、円形の炎の盾を持つ、赤い鎧を身に纏った戦士2人。
HM・シールダー レベル4 攻撃表示
ATK0/DEF2200
(レベル4モンスター2体……!)
ユートは警戒する。
エクシーズ遊介とは昔何度も戦った仲だ。故にその戦術も知っている。HM(ヒートマスター)モンスターは特殊召喚に長けたシリーズであり、さらに、炎属性のエクシーズモンスターのエクシーズ素材になったときに、エクシーズモンスターに特殊な効果を加えるモンスターが多い。
「来るか」
「ああ。俺はレベル4のシールダー2体でオーバーレイ!」
2人の炎の戦士は上空へと飛び、黒い螺旋の中へと吸収されていく。
ユートは当然、ヒートマスターのエクシーズモンスターを警戒した。
しかし、そんなユートには想像し得ないモンスターが現れる。
「満たされぬ魂を乗せた方舟よ。光届かぬ深淵より浮上せよ! 現れろ、ナンバーズ101、サイレントオナーズ、アークナイト!」
「何!」
No.101 S・H・Ark Knight ランク4 攻撃表示
ATK2100/DEF1000
暗黒の渦から現れたのは天の箱舟だった。そしてそれは――。
「なぜ……」
ユートの逆鱗をさらに露骨に逆撫でするカードだった。
「何故お前がそのカードを……持って……るんだぁああああ!」
この怒りは竜の咆哮のごとく、人間を畏怖させるに十分な力強さがあった。
その叫びに、エクシーズ遊介は悪びれも一切せずに答える。
「あの日。遊馬と凌牙がアルターとの最終決戦に挑んだ。お前はそれは知っているだろう。なら簡単なことだ。俺はその2人の最期を看取ったんだよ。その後このカードを頂いた。それ以外に考えられるか?」
「まさか……あの2人が……負けたのか……」
「ああ、負けたよ」
「……お前は、何をしていた」
「……ただ、見てただけだ」
「何もせずにか。助けも求めず?」
「そうだ。命乞いをした俺は見逃される代わりに、目の前でやられる2人を見た。……ああ、安心しろ。あの2人はエクシーズ最強と呼ばれるにふさわしい戦いを見せた。アルターのLPを半分も削ったんだ。誇るべきだ。恨むなら俺だ。俺のような裏切り者が近くにいたから、あいつらは負けた。2人じゃなく3人ならチャンスがあったかもしれない。その可能性を俺は否定したんだ」
毛細血管が何本か切れた。否、実際は切れていないが、その程度起こってもおかしくないほどの激情がユートの中で発生する。
「貴様!」
「今更だろ! さあ、デュエルを続けるぞ」
まるでユートが怒り狂っている姿が愉快であると訴えるように笑うエクシーズ遊介。そして呼び出したナンバーズの力を惜しみなく使い始める。
「ナンバース101、アークナイトの効果を発動! オーバーレイユニットを2つ使い、相手フィールドの特殊召喚された攻撃表示モンスター1体をこのカードをオーバーレイユニットとする! エターナル・ソウル・アサイラム!」
箱舟の砲台から鎖のが放たれ、ダークリベリオンを巻き取った。箱舟の鎖は竜の抵抗すらもものともせず、その身の中に収納していく。
そして、ダークリベリオンを養分とし、オーバーレイユニットを1つ復活させた。
「く……!」
しかし、これで終わらない。だからこそ、ユートの表情は曇る。
そう、これほど強力な効果でも、まだ、カオスナンバーズではないのだ。
エクシーズ遊介はカオスナンバーズを呼び出す手筈に入った。
「俺は混沌の種の効果を発動する! このカードがフィールド上に存在するとき、同じナンバーのカオスナンバーズを、ランクアップマジック無しに呼び出すことができる! 俺はナンバーズ101、サイレントオナーズアークナイトを、カオスエクシーズチェンジ!」
箱舟は天高く浮上する。そして、その中核から、何かを撃ち出した。
それが人型のモンスターであるのは地上に降臨してからの話である。ナンバーズ101のカオスナンバーズは変形ではなく、覚醒であるのだ。
「満たされぬ魂の守護者よ、暗黒の騎士となって光を砕け! 降臨せよ! カオスナンバーズ101、サイレントオナーズ、ダークナイト!」
巨大な赤黒い槍を持った、暗黒の騎士が、ユートの前に立ちはだかる。
CNo.101 S・H・Dark Knight ランク5 攻撃表示
ATK2800/DEF1500
「く……」
ユートが歪んだ顔になっているのは、当然そのモンスターの効果が予想できたからだ。基本的にカオスナンバーズは、元のナンバーズの効果を強化した効果を持つ。
ならば当然、
「ダークナイトの効果! 1ターンに1度、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体をこのカードのオーバーレイユニットにする! ダークソウルローバー!」
このような効果を持っているのは道理だ。
凄まじいエネルギーを内包した槍が、不可視の速度で投擲され、ダークレイクエムに直撃する。先ほど圧倒的な力を見せた竜があっけなく、目の前の黒騎士に吸収されていった。
そしてユートのフィールドには、モンスターが居なくなる。
「さて、ユート? お前を守るモンスターはいなくなったわけだが……」
「……ああ」
「無様だな。さっきまであんなに頼もしかったのに、今じゃ、ただの弱い獣程度にしか見えないもんだ」
エクシーズ遊介は歪んだ笑みと共に、
「バトル! 俺はサイレントオナーズダークナイトで、ダイレクトアタック!」
再び槍が投擲された。その槍はユートが躱す余裕を全く与えることはなく、槍の攻撃を受けたユートがさらに傷を負う。
悲鳴はあがらない。あげられないというのが正確だろう。
衝撃により飛ばされたユートは宙を舞い、受け身も取れずに失墜する。
「……あ、ぐ」
ユート LP3800→1000
すでに体は限界に来ていた。立ち上がろうとしてもふらつき、再び膝をつく。
「はぁ……ぐぅ」
命懸けの戦いである。それはLPという数値の話ではなく現実に起こる。肉体が耐えきれずデュエルの決着がつく前に死亡するケースは、この世界では珍しくない。
いつもは胸をときめかせながら脳に入れる瑠璃の声も、今は、叫んでいる事実だけ分かり内容が頭に入ってこない。
「おいおい、ユート。まだまだこんなもんじゃないだろう?」
煽るエクシーズ遊介。しかし、煽らずともユートはまだ立ち上がる。
エースモンスターを完全に奪われている状況であったとしても。
口を開くことなく、自身の存在を自覚することで精一杯になりながらもまだ闘志は失われていない。
エクシーズ遊介が再び接近していた。
繰り出される一撃をまともに顔に受け、それでもユートは意識を手放さなかった。
さらに打ち出される拳と脚の攻撃は十を超える。ここで止めを刺そうと、エクシーズ遊介は容赦なく意識を奪いにかかる。
それを躱し、受け止め、しなし、捌き、
「ぐ……ぁあ!」
体のどこにそんな力が残っていたのかと、エクシーズ遊介が問いたくなるような大跳躍で再び距離をとった後、近くの路地裏に逃げ込んだ。
当然エクシーズ遊介はそれを追いかける。しかし脚力はユートの方が遥かに上だった。しばらく続いた鬼ごっこはユートに軍配が上がる。
「ち、俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
デュエルでは悪意ある時間稼ぎは反則行為としてペナルティにつながる。エクシーズ遊介は仕方なくターンエンドを宣言した。
エクシーズ遊介 LP0(特殊効果でデュエル続行) 手札0
モンスター ⑤ CNo.101 S・H・Dark Knight
魔法罠 ④ セカンドオーダー・混沌の種 伏せ1
(エクシーズ遊介)
□ □ ④ ■ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
⑤ □ EXモンスターゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ ■ □ □ 魔法罠ゾーン
(ユート)
ターン6
何とか時間を稼いだユートは自分にターンが回ってきたことを確認した。
「俺の……たー、ん」
すでにカードを引き抜く腕に力はほとんど入っていなかった。
ユート LP1000 手札4
モンスター
魔法罠 伏せ1
ユートはデュエル初期から持っている魔法カードを見る。
エクシーズ遊介と戦うと決まったときに咄嗟に入れた1枚だった。相手がエクシーズ使いではなければそもそも機能しないし、機能してもそれで戦況が大きく変わることはあり得ない。
しかし、ユートは考えていたのである。万が一、ダークリベリオンが相手のエクシーズ素材にされてしまったら、戦いが圧倒的に不利になり、さらに対応する術がなくなってしまうと。そしてエクシーズ遊介の実力をよく知っているユートは、ダークリベリオンを封じる方法として、その方法を使ってくるのではないかと予想した。
故に1枚だけこのカードを入れていたのだ。
「速攻魔法、『スペースサイクロン』! 相手のエクシーズモンスターのオーバーレイユニットを1つ取り除く! 俺はオーバーレイユニットにされた、ダークレクイエムエクシーズドラゴンを取り除く!」
ユートはカードの宣言のために声をあげ、エクシーズ遊介もその声に気が付いた。
「レクイエムを……?」
その目的が分からないエクシーズ遊介は困惑する。
ユートは、先のターン手札に戻したランクアップマジックを掴み、
「墓地の装備魔法、『レイズウイング』の効果! このカードを除外し、墓地に存在するエクシーズモンスターを効果を無効にし、攻撃力を0にすることで特殊召喚する! 墓地のダークレクイエムエクシーズドラゴンを特殊召喚する。この時、そのモンスターのランクは1つ上がる!」
ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク6 攻撃表示
ATK3000/DEF2500
「……まさか」
エクシーズ遊介はイリアステルの力を使っている。それは異次元の力、本来エクシーズ世界には存在しないいわゆるチートカードと言ってもいい。
しかし、次元を超えて生きてきたのは当然ユートも同じだ。その中で育んだ絆があった。背負ってきたものがあった。
「俺は『RUM-幻影騎士団ラウンチ』を発動! オーバーレイユニットのない闇属性モンスター1体を進化させ、ランクの1つ高い闇属性エクシーズモンスターを特殊召喚する。俺はランク6になったダークレクイエムを素材に、ランクアップエクシーズチェンジ!」
宣言の直後、ユートから強大なエネルギーが発生し、大風を巻き起こす。しなれかかっていた髪が再び逆立ち、鎮魂の竜は暗黒の渦の中へと消えていく。
ユートの目が、赤く輝いた。その口上のみ、ユートだけではない、何者かの声が重なる。
(ユート、俺とお前の絆、見せてやろうぜ!)
(ああ、お前の力を借りるぞ……遊矢)
「二色の眼の竜よ! その黒き逆鱗を震わせ、歯向かう敵を殲滅せよ!」
その声によって現れたのは、新たな黒竜。それも二色の眼を持った威圧的な巨大竜だった。
「現れろ、ランク7! 怒りの眼輝ける竜、覇王黒竜、オッドアイズ、リベリオンドラゴン!」
覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン ランク7 攻撃表示
ATK3000/DEF2500
「ぐ……反動か……」
心臓が鎖で締めあげられる感覚をユートは気合だけで押しのける。
再びエクシーズ遊介に立ち、新たに呼び出した黒竜の力を示す。
「オッドアイズリベリオンドラゴンは、エクシーズモンスターを素材としてエクシーズ召喚されたターン、1ターンに3回攻撃を可能とする!」
「さ、3回って、てめえ、また訳のわからないでたらめな効果持ってきやがって!」
「さあ、覚悟はいいな!」
目の前の黒い騎士を滅ぼすのに十分な力をもち、それが3回の攻撃を可能とする。カオスナンバーズを破壊し1回、そしてダイレクトアタック2回。これによりセカンドオーダー・原初の種には5つのカウンターが乗り、破壊されることでデュエルは終結する。
「お前……まさか、ここまで読んでたのか」
「読んでたわけじゃない、だが、お前もレジスタンスなら、分かっているだろう」
彼らレジスタンスは常に最悪の状況を考えながら行動する。たとえ自身の大切な仲間を奪われようとも、それでも戦い最終的には奪い返す。全てはイリアステルを倒すため。
まさにこのターンのユートはそのレジスタンスの精神を示したのだ。
「くそ……!」
「今度こそ消えろ! バトルだ! 覇王黒竜オッドアイズリベリオンドラゴンで、ダークナイトに攻撃!」
覇王黒竜はその翼からさらに、エネルギーを放出する。目の前の敵を滅ぼすために。
「反旗の逆鱗! ストライクディスオベイ!」
牙は間違いなく突き立てられた。暗黒の騎士は、混沌の闇へ消えていく。
(勝)覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン ATK3000 VS CNo.101 S・H・Dark Knight ATK2800(負)
「がは」
混沌の種カウンター 0→1
「2回目! ストライクディスオベイ!」
続けて攻撃をしようとするユートに、エクシーズ遊介が介入する。
「墓地にナンバース101が存在し、オーバーレイユニットを持った状態でダークナイトが破壊されたとき、ダークナイトを墓地から蘇生する! リターンフロムリンボ!」
「な……」
この瞬間、このデュエルは終わらないことが確定した。
だからと言って、ユートが攻撃を止める筋合いはない。
(勝)覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン ATK3000 VS CNo.101 S・H・Dark Knight ATK2800(負)
混沌の種カウンター 1→2
そして、エクシーズ遊介の身を守る者はいなくなる。
「3回目! ストライクディスオベイ!」
地面を抉りながら迫る竜の攻撃を止める術はエクシーズ遊介にはない。
「があああああ!」
その攻撃を受け、エクシーズ遊介は地面を情けなく転がっていく。
混沌の種カウンター 2→4
しかし、まだ死なない。エクシーズ遊介はすぐさま、ゾンビのように安定しない動きであっても立ち上がる。
「まだだ……まだだ……へへへ」
ニコニコ不気味に笑いながら。
ユートもすでに体が限界に近づいてきている。恐らくあと1度強い衝撃を受けるだけで意識を手放してしまうだろう。
「俺は……これでターンエンドだ」
互いはいつ意識がなくなってもおかしくない境地にいた。2人を動かしているのは、勝利への執念のみである。
ユート LP1000 手札2
モンスター ⑥ 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン
魔法罠 伏せ1
(エクシーズ遊介)
□ □ ④ ■ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ ⑥ EXモンスターゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ ■ □ □ 魔法罠ゾーン
(ユート)
ターン7
もはや互いに余計な言葉を挟む余力はなかった。
「俺は、まけねえ……はぁ……ぁぁ!」
もはやカードドローの宣言もせず、デッキからカードを引くエクシーズ遊介。
エクシーズ遊介 混沌の種カウンター 4(5で敗北)手札1
モンスター
魔法罠 ④ セカンドオーダー・混沌の種
「俺は伏せカードを発動する。『強欲な瓶』。さらにデッキから1枚ドローする。そして手札は2枚だ……墓地のマジック『ナンバーズゲート』の効果。このカードを除外し、手札のカードを2枚墓地へ送る。エクストラデッキからランダムにナンバーズ1体を特殊召喚する。おれは今ある手札2枚を墓地へ!」
カウンター5つ目がかかった最後のモンスター、
「……悪くない。俺が呼ぶのはこいつだ、現れろナンバーズ96、ブラックミスト!」
呼び出したのは、形のない、悪意に溢れた黒い霧。
No.96 ブラック・ミスト ランク2 攻撃表示
ATK100/DEF100
そして当然、デュエルに勝利するため、混沌の種をそのモンスターに蒔く。
「俺は、セカンドオーダー・混沌の種の効果で、ブラックミストをカオスエクシーズチェンジ!」
黒い渦を通過し、その霧は悪意の塊として形を得た悪魔へと変生した。
「現れろ。カオスナンバーズ96 ブラックストーム!」
叫ぶその声はどこから出ているのか。エクシーズ遊介は既に理性をほとんど失い、勝利の身を追い求める獣となったからこそ出せる力というべきか。
悪魔はその声に応え、禍々しいその姿を現した。
CNo.96 ブラックストーム ランク3 攻撃表示
ATK1000/DEF1000
「ブラックストームの攻撃。ブラックストームはオーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を0にし、相手の攻撃力分の数値を自らの攻撃力に加える!」
CNo.96 ブラックストーム ATK1000→4000
覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン ATK3000→0
そしてユートにとどめを刺すべく、彼の方に向けて走り出す。
「やれブラックストーム!」
すでにユートは前がよく見えていない状況である。しかしそれでも、デュエルはできる。
「トラップカード『幻影騎士団ウロング・マグネリング』……その攻撃を……無効にする。 その後……この……カードを特殊召喚する!」
トラップで窮地を凌ぐユート。
幻影騎士団ウロング・マグネリング レベル2 攻撃表示
ATK0/DEF0
LPはいまだ尽きない。それに安心するユート。
愛おしい声を聞いた。何かを叫んでいるような気がしたが、内容は聞き取れなかった。
しかし、その声によって眩暈を振り切った。
目の前にはエクシーズ遊介の姿があった。
とどめを刺すつもりだと悟り、ユートは防御の体勢と取ろうとする。しかし、体の動きは既に鈍っていて、間に合わない。
繰り出される拳。顔に思い切り当たった。
もはやユートに抵抗する術はない。
続けざまに繰り出される暴力をユートは受けるしかなかった。
そして体を持ち上げられる。
――とどめをさされた。
ガラス張りの大きなショーウインドウへと投げられる。ガラスは激突と共に割れ、奥へと転がり込んだ。
ユートは気を失った。そして、二度と目覚めることはなかった。
「は、ははははははははははははははははははははははははは!」
笑い声が上がった。
起き上がってこないユートに背を向けて、勝利に酔いしれ始める。
「どうやら俺は正しかったみたいだな! ユートぉ!」
エクシーズ遊介は叫んだ。勝利に酔いしれる。
その男が彼の前に現れるまでは。
「ねえ、君」
ユートが飛んで行った方向から何者かの声が聞こえてくる。
それはしかし、それは決してユートではない。そこから現れたのは、怪しい姿をした謎の男。ゆっくりと、優雅に、しかしなんとも言えない覇気を漂わせながら歩いてきた。
「……誰だ……お前」
「これから死ぬ人間に名乗っても意味はない、故に手の内を明かしても……構わない」
エクシーズ遊介は知るはずもない。
その男の存在こそ、ユートが異世界を渡り歩き得た新しいの力の一端である事を。
「遊矢が苦しんでいるんだ。友達のユートがいじめられてるのが嫌だって」
「遊矢……?」
「よくもユートをいたぶってくれたね。そのせいで遊矢が辛そうで辛そうで……、僕、それが悲しくて、我慢できずに遊矢よりも先に出てきちゃったよ。でも、君がその力を使うなら、僕も出てきていいだろう?」
その男は愉快に笑いながら、しかしただならぬ妖気を携えていた。
「本当は黙って見ている予定だったけど、ユートも意識を失ってしまったし。仕方ないから、君のような外道は――」
次の瞬間、エクシーズ遊介は戦慄した。
その男が笑顔の裏で抱えた、
「僕が直接……地獄に墜としてあげようと思ってね!」
他人の不幸を愉悦に感じる悪魔のような感情の吐露、そして歪みに歪んだ表情を見て。
エクシーズ遊介はデュエルディスクを見る。
なんと驚くべきことに、このデュエルはユートではなく、今目の前にいる男が自動的に引き継いでいることになっているのだ。
「てめえ……!」
勝利をもぎ取った喜びを汚され、心穏やかではいられないエクシーズ遊介は、目の前に現れた紫の敵に殴りかかる。
しかし、打ち出された拳を軽々躱す、その男は
「消耗した体で僕に殴りかかるなんて……馬鹿の極みだね?」
と言いながら、決して反撃をしなかったユートと違い、思い切り殴り返してきた。
腹に重い一撃、
「が……ぁぁ」
そして数度の追撃、
「いいね……もっと顔を歪めなよ!」
「ぶ、がふ……」
エクシーズ遊介が瞬く間に追い込まれていく。
「ああ……いけないいけない。あまり暴力を振るうと遊矢に失望されちゃうなぁ」
膝をついたエクシーズ遊介を背に距離を取ると、
「安心しなよ。きちんとデュエルで決着をつけてあげよう」
と、再び向き直った。
エクシーズ遊介 混沌の種カウンター4 (5で敗北)手札0
モンスター ⑦CNo.96 ブラック・ストーム
魔法罠 ④ セカンドオーダー・混沌の種
(エクシーズ遊介)
□ □ ④ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
⑦ ⑥ EXモンスターゾーン
□ □ ⑧ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
(ユート?)
ターン8
エクシーズ遊介は新たな敵であるその男を見る。
全てが変わっている。口調も、雰囲気も、姿も、服装も、デュエルディスクも。
「僕のターン!」
エクシーズ遊介のディスクはその男を、ユーリと名付けていた。
ユーリ LP1000 手札3
モンスター ⑥ 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン
⑧ 幻影騎士団ウロング・マグネリング
魔法罠
「ぐ……ふ……」
「意識はしっかり保っておいてね。君のような人間には本来見せたくないんだけど、ユートをいじめた罪は重い。遊矢ほどではないけれど、同じ体の同居人としての仲間として、彼のことも気に入ってたんだ。それを汚された今の僕は、君を本気でひねり潰さないと気が済まないから。途中で意識が飛んで終わりなんて、くだらない終わりは許さないよ」
大口をたたくユーリ、エクシーズ遊介は少なくともユートに関係する人間だと理解する。
しかし、デュエルを引き継いでいる以上、デッキに変わりはなく、それならば対応のしようもある。とエクシーズ遊介は考えた。
その考えは間違いである。
その証拠はすぐに示された。
「僕は魔法カード『融合』を手札から発動する」
「ゆ、融合? そんな……」
「そんなカードはユートのデッキに入ってなかったって? はははははははははは! 愉快な反応をありがとう!」
ユーリはエクシーズ遊介の反応を面白がった。
「僕たちは体を入れ替える。遊矢という人間の肉体を軸に、今この体には4つの魂が宿っている。僕はその1つ。僕たちは自由に外界に晒す姿を入れ替えることができる。今この体はユートが使っていた状態から、僕が使っている状態に変わったのさ。そして、それはデッキでも同じことが言える。デュエル中に入れ替わったら、フィールド、墓地のカードは変わらないけれど、手札とデッキのカードが変わる。だから、今僕の手札に存在するカードは、僕のデッキのカードということさ」
「馬鹿……な……」
「いいね、その顔。人の情けない顔は僕の大好物だ。もっと晒してくれよ!」
ユーリは愉悦を思い切り感じている愉快な笑みを浮かべながら、モンスターの融合を始めた。
「僕が素材にするのは、今、僕のフィールドに存在する闇属性モンスター2体」
呼び出すのは、ユーリのエースモンスター。ユートがエクシーズドラゴンをエースにするのと同じように、ユーリにも相棒とする竜がいる。
「闇に身を委ねた魂たちよ! 今ひとつとなりて、災禍の渦の地獄から、新たな脅威を生み出せ!」
右の手の平と左手の平を合わせて、竜の降臨を宣言した。
「融合召喚! 出でよ。全てを蝕む毒龍。スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!」
現れたのは闇の竜。しかしユートのように秩序だった闇ではなく、すべての飲み込み、食らい尽くす、災禍の象徴のような、毒々しい体をした竜だった。
スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃表示
ATK2800/DEF2000
新たな竜、その攻撃力は貧相なことに2800しかない。
エクシーズ遊介は一安心する。
しかし当然、攻撃力の低さで安心したわけではなかった。恐らく攻撃力は何とかなるから呼んだのだと予想する。
それが罠だ。攻撃力だけでは、ブラックストームは倒せない。
CNo.96には、戦闘破壊されないという効果がある。これが混沌の種と非常に相性がいい。破壊されなければカウンターも乗らない。故にデュエルにも絶対に負けない。
その効果があるからこそ、エクシーズ遊介は未だ負けを考えていなかった。
「……ああ、安心して。実は彼の出番はまた今度になりそうだからね」
ユーリのまたも真意を掴みづらい言葉をエクシーズ遊介は聞いた。
「どういうことだ」
「君はどうあがいても勝てない。例えば……仮にそのモンスターが破壊されないみたいな効果を持っていたとしてもね」
エクシーズ遊介は自らの目論見を言い当てられ、嫌な予感を増大させる。
ユーリは語った。
「君のような外道だ。最期の砦は、カウンターを乗せないためのクソみたいな方法で身を守ることだろう? 安心しなよ。その程度、ユートだって悟ってたさ。一応彼の名誉のために言っておくけど、彼の手札には、すでに君のナンバーズを攻略する手段は整っていた。どのみち君はデュエルでは負けていたさ」
「なんだと……」
「僕が出て来たのは、本当にただのピンチヒッターだよ。ノックアウトで僕の保有LP8000持ってかれるのも気に入らないし。それにデュエルは楽しくやらなきゃね、ノックアウトなんてつまらない結末より、飛び切りの見せ場を作って、相手を絶望させてこそ、エンターテインメントなデュエルだろう?」
ユーリは再び手札に手をかける。
「僕は、捕食植物(プレデター・プランツ)・サンデウキンジーを召喚」
ユーリが呼び出したのは、見た目は植物でありながら、見目恐ろしさを感じてしまう存在。
捕食植物サンデウ・キンジー レベル3 攻撃表示
ATK600/DEF200
「サンデウキンジーの効果。このカードと僕の手札、フィールドのモンスターを融合させる」
「また融合かよ……」
「当然。言っただろう、君はちゃんと地獄に送ってあげるとさ」
ユーリは融合素材とするフィールドに2体を順番に指さす。
「僕はスターヴヴェノムとサンデウキンジーを融合する!」
2体は、光の渦を描き溶けあい、一つとなっていく。
「飢えた牙持つ毒龍よ。奈落へ誘う香しき花よ。今一つとなりて、思いのままにすべてを貪れ! 融合召喚! 現れろレベル10! グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!」
先ほどの毒竜が、さらに禍々しい姿となり、生物を本能的恐怖へと誘う形で降臨する。
グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃表示
ATK3300/DEF2500
竜の降臨。そして先ほどの宣言。
勝つつもりでいたエクシーズ遊介は、すでに自分の最期を予感せざるを得なかった。
そしてそれは現実になる。
ユーリは召喚した自身の切り札の力を解放した。
「グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンは1ターンに1度、相手モンスターを1体対象にして、そのモンスター効果を無効にして、攻撃力を0にする効果を持つ。僕は当然、君のブラックストームを対象に発動する!」
竜が携えている触手が伸び、ブラックストームにかじりつく。その箇所から力は封じられ、暴虐の嵐を起こすほどの力を持ったモンスターは無力化された。
CNo.96 ブラック・ストーム ATK4000→0
「効果も無効にした今、そのナンバーズを守るものは何もない。どうだい、今の心境は?」
エクシーズ遊介は既に言葉を失っていた。無様を晒し、醜い姿を見せ、圧倒的優位を持って勝利を求めたデュエルだったにも関わらず、最後は絶望しか残っていない。
「あはははは! いいよその顔。そうだ。それだよ。ああ……こんな顔をしてくれるなら、最初から僕が戦いたかったなぁ。その方が、感慨深かっただろうに。まあ、君のその顔を見れただけで、慰めとしようかな」
ユーリは、空気を味わう深呼吸を披露し、そして、宣言する。
「バトル、僕はグリーディーヴェノムフュージョンドラゴンで、ブラックストームを攻撃」
その竜から茎が伸び、蔓が伸び、その一つ一つの先から、口に向けてエネルギーが放たれる。放たれたエネルギーは竜の前で集約され、破滅の業火にも負けない、絶命の光を解き放つ。
その光を浴び、最後のカオスナンバーズは呑まれ消えていく。
(勝)グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン ATK3300 VS CNo.96 ブラック・ストーム ATK0(負)
そしてエクシーズ遊介もまた、自らの最期を自覚した。
「ああ……ああああああああああああああああああああああ!」
悔しさに塗れた無様な叫び声をあげるしかなかった。
混沌の種カウンター 4→5(破壊) エクシーズ遊介の敗北が確定
まずはお詫びを。
23日に投稿する予定が、パソコンの動作不良により、遅れてしまいました。
申し訳ありませんでした。
さて、今回は少し長くなってしまいましたが、ユートとエクシーズ遊介の決着の回です。
ちなみに今回の中ではユーリが登場しましたが、彼の設定は漫画版のアークファイブを参考にしています。遊矢が大好きです。しかし、彼らしい残虐な性格も含めたいと思い今回の話で出たような性格になっています。
今回は特に複雑なデュエルタクティクスを実行したわけでもありませんが書くのに多大な時間がかかりました。なぜかというと、デュエルの内容を何度も変更したからです。ユートが弱い感じは出さないように、かつユーリが出る必要性のある流れはどういう流れかを考え、今の形に落ち着きました。しかしこう、振り返ってみると、そんなにユーリは戦っていないので、タイトル詐欺になってしまったかもしれないですね。
次回はデュエル無し回になりそうです。ストーリーをまた大きく進めたいと思います。
(アニメ風次回予告)
追い求めた2人。自身が戦う意味は友のために他ならない。しかし、すでに道は分かたれていた。歪みが渦巻くリンクヴレインズの毒は、自身の周りを確実に蝕んでいた。
「ねえ遊介。あなたは、私と良助、どっちの味方?」
次回 遊戯王ヴレインズ ~『もう1人のLINKVRAINSの英雄』~
「虚構世界の蝕毒」
イントゥ・ザ・ヴレインズ!