遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

34 / 53
注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!

今回アンケート機能を試しに使ってみたいと思います。説明書は見ましたが、実際に使ったことはないのでどのような感じか、まだ研究している段階です。皆さんもご協力お願いします。

あとがきの最後に表示されるそうです。


19話 虚構世界の蝕毒

「あ……ああ……」

 

大空に手を伸ばすエクシーズ遊介。そしてそれを道端の汚らしいゴミのように見るユーリ。

 

デュエルを見守っていた光の世界の戦士たちも、戦いが終わったその場に駆け付けていた。

 

「君さ……残りの命、賭けるんじゃなかったっけ?」

 

「……はぁ?」

 

倒れている状態から上半身を起こそうとしたが、それは叶わず仰向けになりながら、掠れた声で答える。

 

「あのな……自分から自殺の可能性……つくるかよ……」

 

「つまり、君は嘘をついたわけだ」

 

「……今更だぜ。俺は裏切者だ。嘘の1つや2つ気にかけるつもりはない。……それより、……驚いたな。融合の世界の人間か……。はぁ、なるほど、ユートは死んだって聞いてたんだけど、妙な方法で生きながらえているらしい」

 

「……もう一度立ちなよ。僕は嘘は嫌いなんだ。自分で言ったことを嘘にしないためにも、君はここで殺す」

 

「それはやめとけ。……時間だ」

 

ユーリは向こう側の空を見る。

 

空中を走り、ものすごいスピードで迫っている集団を確認する。

 

「あれが、エデンの。なるほど、もしかすると君の目的は、そもそもユートではなかったのかな?」

 

「光の世界の連中を釘付けにするのが……俺の仕事だ。仲間が死ぬかもしれないデュエルをするなら、ハルトの挑発に乗ったお人よし連中なら。逃げずに見守るだろうと思ったのさ。現に、サイバース遊介の仲間は誰一人逃げずに、このデュエルを見ていた」

 

「光の世界の人間を交渉の場に引きずり込むと。へえ、なかなか考えるじゃないか」

 

「人なんて、ものは、どう動くか分からない。確実に人を動かすには洗脳しかないだろうが、可能な限り手を打つことで、可能性を上げる方法ならいろいろある」

 

「つまり、エデンが彼らと話すことができた時点で、君たちにはメリットがあると?」

 

「少し違う。話せなければメリットがない」

 

「ふうん。まあ、そこらへんは僕には関係ないな」

 

「なんだよ、ユートはあんなに必死に、あいつらを守ってやってるのにさ」

 

「僕は遊矢の敵を排除するだけだ。それ以外は別の奴らが考えればいい」

 

「は……心酔ねぇ。冗談だろ。てめえ、外道のくせによ」

 

「僕は遊矢の熱狂的なファンとでも言っておこうか」

 

つかみどころのない紫の装束を纏った彼はそう言うとエクシーズ遊介から遠ざかっていく。

 

ユートではない何者か、ユーリの姿を見て、ブルームガールとマイケルは警戒する。その顔を見てユーリは、まだユートしか知らない、という事実を思い出し、まだ意識を取り戻さないユートを感じると、

 

(遊矢、変わってほしい。僕はこの手の説明は苦手だ)

 

と自らに向けて言い、再び近くの路地裏に引きこもった。

 

瑠璃はそれを見て、

 

(そろそろ、この人たちにも真実を告げるべきね)

 

心の中から聞こえる声に頷いた。

 

 

 

目の前に出現した謎の少年に釘付けになっていたブルームガールとマイケルは、背後から迫る二人の影に気が付かなかった。

 

肩をトントン。

 

死んだ? と一瞬背筋に悪寒が走る2人。

 

しかし、振り向いた瞬間、死の恐怖はすぐになくなった。

 

「ただいま」

 

「ゆ……本物?」

 

「……ああ、あそこに倒れてるの偽物だもんな。でも証拠もある」

 

後ろにまるで懐きすぎの犬のようについてくるエリーを見て、ようやくブルームガールは、その男の存在に気を許した。

 

「遊介!」

 

「ただいまー」

 

マイケルも久しぶりの再会に喜びの笑みを浮かべる。

 

「お前……無事だったか!」

 

「ああ、3か月くらいだっけ? あれから。いやあ、面目ない。怖い龍使いに誘拐されちゃって」

 

「心配したぜぇ……まぁ、元気に返ってきたからどうってことねえな」

 

遊介は後ろにいたエリーを引っ張って前に立たせる。

 

「エリーも無事だ」

 

エリーは特にブルームガールに向けて、

 

「ただいま帰還しました!」

 

と嬉しそうに報告する。ブルームガールもそれを見て、ほわわんと笑い、

 

「よかったぁ……」

 

と胸をなでおろすことになった。ハルトとの戦いの際、無謀にもブルームガールに挑みかかったのに無事だったのは、ブルームガールの手加減と必死の説得があったからに他ならない。エリーが今の命があるのはブルームガールのおかげなのである。

 

なので、命を救おうと手を尽くした人間として、エリーが無駄死にをしなかったことに安心したのだろう。

 

「しかし、遊介。闇の世界にいたんだってな」

 

「マイケル。お前も来るか。あそこ地獄だから」

 

「地獄っつっても、お前死んでないだろう?」

 

「そうじゃないんだなぁ、あそこの厳しさは一言では語れないね。でもまあ、その話はまた今度。今はお客が来るみたいだし、そっちに専念しよう」

 

遊介は一通り再会の挨拶を済ませると、喜ぶ2人を差しおいて前に出る。

 

「なによぉ、つれないわね……」

 

というブルームガールの小さな声は遊介の耳にはかろうじて届かなかった。

 

しかし、ブルームガールがこれ以上追及しなかった理由は明白である。今は浮かれている場合ではない。エデンの人間がここに迫ってきているのだ。

 

遊介はここにくる道すがら、すでに状況を把握していた。

 

ユートが戦っていたのはエデンの所属である3人目の遊介。一日で同じ顔と2人分で会うとは、いよいよ死ぬかもしれないという予感を遊介は抱かざるを得ない。

 

それはさておいて、遊介は途中からであるがユートとエクシーズ遊介の戦いを見ていた。

 

その時に目にしたのは、周りを破壊しまくる2人の間を縫って、危険地帯を1人でデュエルの観戦のために走っている3人目の男。

 

今はデュエルが終わったことで決着がついたこの場に姿を現していた。

 

遊介はプレイヤーネームを聞こうと思った矢先、その必要はなくなる。

 

「遊介。光の世界のお前ってことは、俺のダチの遊介だよな?」

 

遊介は声と今の反応で正体を察した。

 

「松! 松なのか、なぜ松がここに? 自力で――」

 

「いきなりボケるな、シリアスな場面なのに調子狂うだろ、それよりデュエルするか?」

 

「……今の切り返し、本物だ。生きてたのか」

 

「ああ。なんとか」

 

リンクヴレインズでは見た目と名前が変わるため、入る前にすでにお互いを確認する方法は話し合っていたのだ。俺と松の場合は、片方がボケて、もう片方がそれにツッコミを入れた後、唐突に「デュエルするか?」と訊くこと。

 

とうとう使わずして3月経過してしまったが、ようやく、遊介は求めていた友人のうち1人の無事を確認できたのだ。

 

「元気だったか?」

 

「ああ。大変だったぜ生き残るの。そりゃあもう、本1冊書けるくらいの武勇伝だ。お前に聞かせてやりたいぐらいだ」

 

「なんだよ、俺だって負けてないっての」

 

「ああ。見てたぜハルトとの戦い」

 

「は? アレ見てたのか?」

 

「無様に転げまわってたな。マジウケた」

 

「お前な、死ぬか死なないかだったんだぞ、こっち」

 

「へへへ。いやあ、あれから有名人だったぜ。光の世界のエリアマスターはあの天城ハルトを倒した実力者。それはそれは、お前を殺して名声を得たいなんて狂乱した連中がどれだけ湧いたか」

 

「嬉しくないだろそれ。こっちの身にもなれ」

 

「は、まあ、そう思うと姿を消してたのは正解だったな。ったく、ハルトの野郎も馬鹿だよな。あそこでアルティメットさえ出さなければどうにでもなってただろうに。てかアルティメットは敗北フラグ、それ一番言われてるから」

 

「ああ……やっぱ気づいてた?」

 

「当たり前だ。冷や冷やしたぞ。ああ……もう死んだかもあいつって」

 

「それはまあ、俺も正直……あのデュエルを見返すとそう思う」

 

「はは、まあ、よかったぜ。ところで後でデュエルな。久しぶりにお前とやりたかったんだよ」

 

再会を喜びあう2人。

 

ところが、この場にもう1人が現れたことでそうもいかなくなった。

 

その女は急に現れると、仰向けになっているエクシーズ遊介を持ち上げる。

 

「どこへ行ってた?」

 

「お、お前と一緒に、同盟をうまく進める準備だぁ」

 

「独りで独走してたのにか?」

 

サングラスをかけているその女は侍女らしき人間を2人侍らせていた。しかし、その必要はないのではないかと思うぐらい圧倒的な存在感を醸し出している。

 

「無様に負けやがってぇ! うおおおおおお」

 

「お……おおお……! いてぇええ……」

 

「まあ、有用なパシリはまだ生かしておくか。けどね、これ以降一人で突っ走るのは禁止! いいわね」

 

「はぃぃ」

 

先ほどまで外道の固まりそのものだったが、今の彼はあの女に尻に敷かれているような態度を見せている。酷い態度の変わりようだ。

 

そして松がその女の正体を口にする。

 

「彩。喜べ、いいタイミングで遊介がご帰還だ」

 

松がそう言うと、

 

「なんであんたもココにいるのよ」

 

と悪態をつきながらも嬉しそうなサングラスを外す。

 

「遊介、久しぶり」

 

「声からして彩なんだが、お前、サングラスかけるような女だったか」

 

「似合ってるでしょ。にい?」

 

「薫の真似すんな。……やっぱ、本物かよお前」

 

「そうそう。本物。そしてエデンのリーダー、プレイヤーネームをリボルバー。あんたがサイバースデッキ使うだろうと踏んで、わざわざこの名前にしたんだよ」

 

「……物好きだな。もっと女らしい名前にしろよ」

 

天然のニコニコ顔を見てそちらも本物であると遊介は信用する。

 

「見たわよ、あの公式放送。もう有名人じゃない。行方不明だったくせに」

 

「悪かったな。誘拐されたんだよ」

 

「エリアマスターが誘拐とか、ふふ……はははははは」

 

「笑うな!」

 

「ははははは! 超ウケる」

 

「ウケるな」

 

「いやあ、ははは。もう、私もずっと探してたんだよ。あの時も放送あったからすぐに部下を向かわせたのに。あんた行方不明になっちゃうんだもん」

 

遊介は彼女についている侍女の1人を見る。そういえば、とあの戦いの後に、海堂とヴィクターによって厄介払いされたレディを発見し、なんとも言えない気持ちに遊介はなった。

 

「でもまあ、無事だって信じてたしね。あんた昔から悪運だけは強いから。本番に弱いタイプだけど」

 

「うるさいな、現実になりそうだからやめろ。ここで本番に弱いタイプとか、死ぬっていってるようなものだろ」

 

「えへへーバレた?」

 

3人で集まって、内容はともかく話をする。少し前では当たり前だった光景が、遊介にはなんとも嬉しかった。

 

自分がこの世界に来た目的である2人にようやく出会うことができたのだ。

 

これで、遊介も憂いはなく、戦いに専念できると確信する。

 

「とりあえず2人とも無事で何よりだったよ」

 

「ああ」

 

「そうね」

 

遊介は

 

「後はこれから先、協力してイリアステルを倒せば元の世界に帰れる。……なんて、そう簡単な話じゃないだろうけど……」

 

友人の無事を確認する。そもそも遊介が来る必要のないこの世界へ来た理由はもう達成された。遊介にとっては、残りはこの世界から脱出することとなる。

 

故に、遊介は次の、そして最終のビジョンを提示する。

 

しかし、遊介がその提案をした時点で、2人の顔が一瞬曇ったのを遊介は見た。

 

「どうしたの?」

 

何かまずいことを言ってしまったか。と焦る遊介。

 

なんと切り出せばいいか、次の言葉に少し迷った。

 

その様子を見て、良助は言った。

 

「いや、まあ、お前のせいじゃない」

 

そして、彩に目線を向ける。彩は、

 

「私のせい?」

 

と不服を申し立てるが、

 

「当たり前だろうが。遊介に言ったらドン引きされるぞお前」

 

とその不服申し立てを退けようとする。

 

当然遊介にとって気になるのは、何を言ったら自分がドン引きすると予想されるのかだ。

 

通常の敵ではいざ知らず、彩とは昔からの付き合いである。隠し事をするような仲ではないと信じ、彩に訊いた。

 

「俺がドン引きすることって?」

 

彩は一瞬迷った様子を見せたが、隠し事をするのは後の悔恨になると判断し、意を決した。

 

「遊介。エデンの目標って知ってる?」

 

「いや」

 

「エデンはね。この世界を永続させて、そこに永住したい人々が所属するグループなの」

 

「……それで?」

 

「察しなさいよ」

 

「……まさか……帰りたくない?」

 

「……ぶっちゃけ、まだ迷ってる。けど、永住に意見が偏ってるから、私はエデンのリーダーをやってるの」

 

信じられないことを聞いた、と一瞬思ったが、遊介は特にドン引きまではしなかった。

 

むしろ、自分の視野の狭さを痛感する。

 

終わりは、イリアステルを倒し、そしてこの世界を終わらせる事。それがゴールだと思い込んでいた。しかし、違う。確かに終わりだけを語るのならばその方法はいくらでもある。

 

良し悪しを考えないのならば、全員が一斉に自殺をすればそれは1つの終わりだ。彩が言った永住を決断しこの世界の住人となるのも、一つの結論として成り立つ。終わりの形はいろいろあるのだ。

 

しかし、一つの決断には当然反対意見が出る。どんなに多くの人間が支持する決断だとしても、反対勢力は必ず存在する。

 

遊介は決して永住が悪しき思想だとは思わなかった。

 

当然この世界はデュエルができる人間にとってはいい世界だ。楽しい世界だ。遊介は、彩がこの世界を気に入るだろうことは分かっている。昔、カードを親に没収されたときの悲しみ様を知っているからだ。彩の家は厳しい環境であり、彩にとっては耐えられない世界であることは分かるのだ。

 

「永住か……」

 

「悪くないと思う。生きていくには十分な環境がここにあるもの。それに、エデンには、帰らないって人だけじゃない。帰れない人だっている」

 

「帰れない?」

 

「とっくに故郷がイリアステルに滅ぼされている人々がいる。帰っても、その世界では食っていけない。そういう世界からこの世界に逃げ込んだ人もいる」

 

遊介には想像しえない世界だった。しかし、筋は通っている事は分かる。遊介はイリアステルの目的と、これまで行ってきた所業を、総統であるアルター本人から聞いている。故に納得できないことはない。

 

そういう人たちにとっては、この世界こそ希望そのものである。

 

しかし、一方で、遊介も思っているがこの世界の在り方が気に入らない人間もいる。

 

「遊介、彩の言葉に耳を貸すな。今頭イカれてるから」

 

良助もその1人だ。

 

「何よその言い方ー」

 

「事実だろ。てめえ、デュエルして死ぬんだぞ。そんな世界に永住する奴いるか?」

 

「私は別にいいけど」

 

「いいわけないだろ。デュエルは人殺しの道具じゃない。お前も人が死ぬのを望んでるわけじゃないだろうが」

 

「まあ、それはそうだけど」

 

「なら、俺は一刻も早く、この世界を終わらせるべきだと思う」

 

遊介はその意見も否定しない。むしろ遊介がその考え方に近いと言える。

 

遊介にとってデュエルとは娯楽である。そしてエンタメである。決して命を賭けて行うものではない。故にこの世界で起こっているデュエルの在り方自体を遊介は否定的に見ているのは間違いない。

 

だからこそ、何かとんでもないことになる前に、この世界を終わらせたいと思っているのだ。特に、彩や良助など、大切な友人が死なない前に。

 

しかし、彩は退かない。

 

「でも、それじゃあ、うちに逃げ込んだ。故郷のない人々はどうなるの!」

 

そして良助も譲歩をする気はなかった。

 

「そいつらは仕方がない。この世界と共に死んでもらうしかないだろ」

 

「ひとでなし」

 

「彩。この際、遊介がいるから、あえて言葉にするぞ。故郷がある人々にとっては、この世界は紛い物だ。この世界に招かれているのは、エクシーズ世界や融合世界みたいに故郷が滅ぼされている人々ばかりじゃない。俺達だって、帰るべきも元の世界があるだろ。みんなもきっと心配してる」

 

「でもでも、それって見捨てるってことでしょ」

 

「どのみちこの世界が続く限りは、イリアステルのルールの中で無駄に命が消えていくだけだ。お前だって分かってるだろ。イリアステルを倒さない限りはこの世界は終わらない。元の世界に帰れない」

 

「でも倒したら終わっちゃうんでしょ。私はともかく、行き場のない人々を見捨てるのは間違ってると思う」

 

「……それは俺達には関係のない話だ」

 

喧嘩が始まりそうな流れに不穏な空気を、遊介は感じた。

 

遊介は思う。どちらも間違っていないと。

 

(確かに、ジレンマだな……)

 

この世界の終わりは、恐らくヌメロンコードの発動である。そしてヌメロンコードに、願いを言うことでこの世界は終わりを迎えるのだ。ヌメロンコードが叶える願いは1つ。終わるはずの世界で永住できるだけどリソースを願うか、全ての人々の帰還を願うか。

 

2つの願いは決して両立しない。リソースを願えば、元の世界への帰還の道は閉ざされる。逆に帰還を望んでしまうと、それを望まない人々も帰還させる。特定の人間のみを帰還させることは不可能だ。それは複数の願いになってしまう。1つの願いにするには、1人を帰還させるか、生存者というひとくくりにして、帰還させるかしかない。

 

「関係ないって、冷たい」

 

「他人を慈しむのは自分が生きていてこそだ。まずは自分が生きていてこそだろ」

 

「良助、あんたってやつは」

 

「どうとでも言えよ。俺はどんな手段を使っても、帰るぞ、絶対」

 

遊介の目の前で起こる2人の対立。

 

その目は通常の喧嘩のようでいて、そんな雰囲気ではないように、遊介には感じられた。

 

(2人は対立関係……そういえば……)

 

先ほどシンクロ遊介と戦った時に聞いた話を思い出す。

 

良助は解放軍の所属だった。そして彩はエデンのリーダー。そして遊介は解放軍とエデンが戦争をしているのは知っている。

 

故に2人の道はすでに分かたれているのだ。

 

友だから、ずっと同じ道を歩んでいると思っていたのは、自分の傲慢な思い込みだったと遊介の身に染みる事実。

 

この3か月。リンクヴレインズの中で生きてきた中で選び取った2人の答え。

 

このままいけばいずれ殺し合いになる。その可能性だって捨てきれない。遊介の中に、どんどんと嫌な予感が生まれてくる。

 

「ねえ遊介」

 

彩からの言葉は、その嫌な予感に拍車をかけるに等しいものだった。

 

 

「ねえ遊介。あなたは、私と良助、どっちの味方?」

 

 

遊介はすぐ答えられなかった。

 

「私はこの世界を最後の希望にしている人を見捨てられない。だから、この世界を永住できるものにするために、願いは使いたい」

 

彩の声。

 

「俺はそんな奴らを労う余裕はないと信じてる。今生きてる奴、生きていけるやつを死なさないために、さっさと決着をつけて元の世界に帰りたい。お前との夢もあるしな」

 

松の声。

 

「ちょっと、それ出すの反則!」

 

「ならお前は、3人でプロになるのをあきらめるのか! 親を見返してやるって言ってただろ」

 

「プロならこっちの世界だって出来るもん。ハードル上がるけど」

 

「それに死ぬかもしれない世界を永続させてどうする」

 

「死なないように制度を整えればいいのよ」

 

「無理だね。死人は絶対出る。デュエルで死ぬとかマジ勘弁だ」

 

2人とも間違っているとは言えなかった。

 

良助は家に帰りたいだけだ。それは遊介だって、その他多くの人々だって分かっている。

 

しかし、彩は、家のない人々の受け皿となるべきだと言っている。それもいい。たとえ元の世界に帰れなくても、この世界で生きることはできる。

 

 

「遊介、ね、分かってくれるでしょ。私の味方よね」

「遊介、耳貸すな。俺達は俺達でイリアステルを倒すぞ。このイカれた女は好きにやらせておけばいい」

 

 

「……」

 

2人とも確たる信念を持っている。

 

遊介はその2人と自分を比較した。

 

自分の覚悟は、あまりにも曖昧で脆いことが分かる。

 

イリアステルは倒す。その意気込みは持っていた。しかし、それは自身の敵であると意識したが故にそう思い込んでいたにすぎない。元の世界に帰りたいという意識も、視野が狭かったが故にそれしか考えられなかったという、思い込みだった。

 

――否。

 

遊介には、現実世界への帰還を目指さなければいけない理由が3つある。

 

1つ。現実世界では薫が待っている。今頃嘘つきである兄を恨みながら待っているはずであり、遊介には彼女の怒りを受け止める義務がある。

 

2つ。プロデュエリストの夢だって、この世界でもできるというが、それは違う。あの世界だからこそ叶えるべき夢である。プロの輝く姿に夢をもらったように、今度は自分が幼い子供たちに夢を与えられたら、どれほど格好いいかと憧れた。だからこそ目指すのだ。故にデュエルがすべての世界ではなく、デュエルが夢である世界でなければ、真に夢が叶ったとは言えない。

 

3つ。そもそも、デュエルは生き死にをかけたものであってはいけない。人々を楽しませるエンターテイメントであるべきだ。それだけは、生死をかけて戦い、痛みを知っているからこそ言える言葉だ。

 

故に遊介はこの世界を否定しなければならない。

 

覚悟とは違くとも、自分が戦う理由はこれだけで充分だと、遊介はそれだけは確たる信念として持っている。

 

ならばエデン、つまり彩とは分かり合えない。

 

ならば解放軍と足並みをそろえるか、と言われれば、それは違うとも遊介は思っている。

 

解放軍は過激だ。先ほど良助も言った通り、どんな手段を使ってでも、と言うことを真に実行している。

 

最終的な目標がイリアステル討伐だといっても、その過程で、命を生贄に捧げることを必要悪として良しとする風潮は遊介にも認められない。

 

やり方は考えるべきだ、と遊介は考えている。

 

何も最短の近道で目標は達成できなくとも、最善の道を諦めてはいけないのだ。特に人命がかかっているのならば、時間よりも命を優先して然るべきである。

 

解放軍はそこが欠如している。仮に彼らと足並みをそろえたら、と遊介は後ろにたつ自分の仲間たちを考えた。彼らが生贄に選ばれてしまった時に自分は耐えられない。

 

世界の脱出は目指す、しかし犠牲は少ない方法で。

 

遊介が目指す最善はこれだった。

 

故に遊介もまた、彩や、良助と足並みをそろえることはできない。

 

遊介が、己の信念に基づくならば。

 

――しかし、そう答えようとしてさらに迷いが遊介に生じる。

 

今の遊介はエリアマスター。メンバーや光の世界を守る義務がある。

 

ここで2人と決別していいのか。2人とも巨大組織の幹部かリーダーを務める存在。

 

ここで対立の姿勢を見せたときに、解放軍とエデンの2つを敵に回す可能性はないか。もしそうなったら、この決断のせいで、メンバーが死ぬこともあり得る。そうなったら死んでも悔やみきれない事態となるだろう。

 

故に今はどちらかの理想に基づいて動くべきかもしれない。エリーを、ブルームガールを、ユートや瑠璃、マイケルを守るならば。そして自分を生き残らせるためならば、強い組織に身を置くことも必要である。

 

(どうする……俺……?)




果たして早めにとはなんだったのか。結局前回からほぼ1週間後の日の投稿になりました。

今回の話はここまでです。

全然進みませんでしたね。もうちょっといけるかなぁ、と思ったのですがそうでもなかったです。

今回の話でついに遊介も、親友と対立する未来を選ばなければならなくなってしまいました。しかし、作者的には行き当たりばったりではなくこれは計画通りです。むしろこのために番外編を挟んだと言っても過言ではありません。遊介は、誰の味方で、誰の敵になるのか。それをはっきりさせることでいよいよ、リンクヴレインズでの戦いを過酷なものに変えていきたいと思います。

そして今回で19話。予定だと25話か26話で2回目のボスバトルなので、そろそろそちらのデュエル構成を考えなければ。もう対戦カードは決まっているのですが、デュエル構成だけは毎回直前になってから考えてます。これまでのアニメシリーズや、wikiなどで使いたいカードについて勉強する時間が必要なので、構成を考えるのは直前になってしまいます。ちなみに次のデュエルですが、デュエル初披露同士の対戦カードになる予定です。お楽しみにお待ちください。ただし、次の話もストーリー中心になると思います。

(アニメ風次回予告)

1つの決断、それは新たなる敵を生み出すことに他ならない。光の世界の戦士たちは、勝利のために強敵渦巻く新天地へと赴く決断をする。拭えぬ不安、悪魔の囁きに心を狙われる彼らに、瑠璃は一つの事実を告げた。紫だったその髪を桃色へと変化させて。

「私は、遊矢と同じなの」

次回 遊戯王VRAINS~『もう一人のLINKVRAINSの英雄』~

   「新たな仲間と新たな地」

   イントゥ・ザ・ヴレインズ!

(調査)遊介くんは大変な分かれ道の直前に立たされています。皆さんならどの選択肢を選びますか?

  • 彩の味方(エデン側)につく
  • 良助の味方(解放軍側)につく
  • 俺は俺の道を行く。(2人と敵対)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。