遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

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注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!


20話 新たな仲間と新たな地

「少し、相談させてほしい」

 

返事を待たず、遊介はその場に背を向け、仲間の元に駆け寄った。

 

そして今交わした話を端的に述べ、状況を確認する。

 

光の世界は新たな危機に直面したと言ってもいい。

 

遊介がどのような選択をしたとしても光の世界は、そして自身のチームが戦いに巻き込まれることになったのは事実。選べるのは相手だけ。エデンと戦うか、解放軍と戦うか、己の信念を突き通すため、2団体を相手どるか。

 

いずれにしても、先は地獄になることは間違いない。

 

遊介は仲間に今示されている選択肢ではなく、

 

「唐突で申し訳ないんだけど質問させてほしい。みんなは、この先、イリアステルの作ったこの世界でどうしたい? ヌメロンコードを使ってまで存続させたい? それとも別の願いに使ってこの世界終わらせたい?」

 

と訊いたのは、ある意味英断だったかもしれない。どこの味方をするかと訊けば、他人のことを考えてエデンを選ぶ人間が多いだろう。それも間違いではないことも遊介は承知している。しかし、今生存率の話をしても、確率の変動こそあれ、どこかと命懸けで戦わなければならない運命にある事実は変えられない以上無駄だと判断した。

 

故に今問うべきは、自分の仲間が、この世界の行く末に対し、どのような意見を持っているかだ。その質問であれば、解答者は自身の考えを吐露するだろうと遊介は考えた。

 

「……そうだな」

 

冗談交じりにではなく真剣な表情の遊介を見て、重要なことだと察したマイケルが最初に口を開いた。

 

「俺は正直この世界はどうでもいいな。続くも消えるも、正直どうでもいい。すぐにでも死ぬ覚悟はあるからな」

 

マイケルはいつも通りの表情で、

 

「だが、イリステルは倒さなくちゃならねえ。それは事実だ。間違いない。そうしなきゃ平和にはならない。だから倒さなくちゃならない。だから倒すまでは何でもやってやるくらいのつもりだ」

 

としっかり答えた。

 

いつもは冗談交じりの物言いを好むマイケルの答えを耳に入れた他の仲間も、この質問の重要性を感じ取る。

 

そこに、ユートが戻ってきた気配を感じる。

 

もっともその姿は今までとまるで別人のものだった。

 

「少しいいか?」

 

「……お前は?」

 

遊介はその男を睨みつける。当然のように会話の輪の中に戻ってきたその男を警戒している。

 

「……そりゃ驚くよな」

 

しかし、睨みつけられているそのトマト頭の男子は、動じることはない。

 

「なんて説明すればいいのか……」

 

「そうだ。ユートを関係者だってことは見た目で分かる。雰囲気が似ているからな。でも、お前は別人だ」

 

「分かってるよ。警戒されるのも当たり前だ」

 

遊介があと少しでデュエルディスクに手を伸ばそうとする中。

 

「待って、彼は味方よ」

 

瑠璃が口を開く。

 

「根拠は?」

 

「私が命を賭けて保証する。私たちには秘密がある。ここで彼と、遊矢と戦わないでくれたら、私とユートの秘密を告白するわ。それで今は納得して」

 

「……良いだろう。なら今は彼をユートの代理として話を聞こう」

 

遊介はそれで一応の納得を見せた。

 

今の一連の動作を見てブルームガールは、遊介の変容に気づく。今、遊矢と紹介された少年を警戒するその目は、光の世界攻略前に見せた真顔と比べ圧が比べ物にならなかった。

 

ブルームガールは己に置かれた環境の中で、強い人間が放つ圧、オーラのようなものを感じ取れる感覚が、他人より少し敏感に近くできる。今の一連の動作だけでも、前の遊介とは違うことが分かった。少し胸がうずいた理由は本人でも分からないが。

 

遊矢はユートの代理として発言を許されたことで、口を開く。

 

「俺たちは自分達の世界を救うためにここに来た。元々命を賭けてここまで来たつもりだ。だから、イリアステルと戦う。そしてヌメロンコードを使って、イリアステルが壊したすべての世界の状態を、襲撃の前まで逆行させる。イリアステルが来ない、本来の世界に戻すつもりだ」

 

「それはユートも?」

 

「ああ。何年も一緒に戦ってきた仲間だ。気持ちは同じさ」

 

遊矢の主張はエデンと真っ向から対立している。そして、

 

「私も同じよ。遊矢と同じ」

 

瑠璃もその意見に同調している。

 

遊介は次にヴィクターの意見を思い出す。闇の世界で共に戦っている時、ふと、ヌメロンコードをどう使うかについて話したことがある。

 

その時、ヴィクターが言ったのは、

 

「イリアステルと戦うのは当然だ。だが、どこかと波長を合わせるのはごめんだね。俺は勝利にはこだわってるが虐殺者じゃないという自負も持っている。どっかのRPGで聞いたいのちだいじにっていうのは大切だぜ。だって死んだら何もできないじゃんかよ。だから他人を殺してまで、自分の願いを叶えたいとは思わない。てか、そもそも、倒しに行こうってのが間違いだろ。イリアステルの目的がヌメロンコードの起動である以上は、必ず奴らと戦うときは来る。その時に負けなければそれでいい。……ああでも、エデンの酔狂な連中みたいにこの世界にずっといたいとも思わねえ。それってイリアステルが用意したこの世界に腑抜けにされて、結局負けてるような感じがするからな」

 

という話だった。

 

最後に遊介はブルームガールの方を見る。

 

ブルームガールは俯いて、自身の答えを言うか迷っていた。

 

「……聞かせてほしい」

 

遊介はそう言うが、ブルームガールはそれでも口を開こうとはしない。

 

理由を尋ねようとはしなかった。今遊介は欲しいのは、光の世界の代表としてどのように動くか。そのためにもブルームガールの考えをしっかり聞いておきたかったのだ。

 

「……私ね。この世界が好きなの」

 

「うん」

 

「だから。その……終わらせるのはもったいないな、ていう気持ちはないわけじゃない」

 

ブルームガールがこう述べることに遊介は反論はしない。

 

「怒らないの?」

 

「……まあ、会長の家がとんでもなく厳しいのは有名だからね。帰りたくないって思うのは当然だと思うし」

 

「安心して。それでも私はエデンの味方にはならないわ」

 

「それはなぜ?」

 

「私1人の家に帰りたくないっていう願いは、ユートや瑠璃、遊介が持っている願いなんかに比べれば小さいって分かってる。この世界はまやかしだし、あの犯罪者集団が用意したものだし、この世界は存在すること自体が間違ってる。それは確かだと思うから」

 

そこまでは言っていないのだが、と口を挟まず遊介はブルームガールの決意も聞いた。

 

「ありがとう。とりあえず、光の世界の方針は、イリアステルと戦って、この世界を終わらせるってことで良いよな?」

 

光の世界のエリアマスターである遊介の言葉に異を唱える者はないかった。

 

遊介はその答えを持って、再び彩と良助がいる場所へと戻った。

 

良助も彩も、遊介を緊張の面持ちで迎える。

 

遊介が出した結論は。

 

「悪いが、俺はどちらかの味方にはならない」

 

意外な答えだと、良助と彩の顔が言っている。

 

「お前……」

 

当然の話である。今の言葉は、そのまま光の世界の総意として受け取られかねない。そして相手は2人とも巨大組織の中で大きな権力を持っている2人。悪化を辿ればその2組織との戦争になる可能性だってある。

 

安全策を考えればどちらかの味方になる事が正しい選択だろう。

 

「遊介、本気?」

 

「ああ」

 

「薫ちゃん、悲しむと思うけど」

 

「どうしてそこでその名前が出てくる」

 

「だって薫ちゃん、私が保護してるから」

 

脅しの材料を提示する彩。遊介は内心驚いて、大声を出し混乱しそうになったが、一呼吸自身を落ち着かせる。

 

「俺が同盟を組まないと、薫をどうするって?」

 

「殺すかもよ?」

 

「そこまでして俺らと同盟を組む必要はお前らにはない。殺したければとっくに処理してるだろ」

 

「あなたね……自分の妹の話なんだから、処理とか言わないでよ。ちょっとドライじゃない?」

 

「いや。お前は薫を殺さないよ。もとより解放軍と対立している理由が、役立たずの処理の仕方についてだ。エデンはそれでも殺さない。対して解放軍は殺して糧にするってスタイルだろ? それくらいの情報は闇の世界にいても入ってくるよ。そのスタンスが本当なら、お前が役立たずの薫を殺すことはない。役に立つなら、それこそ人数的に劣っているエデンには必要な人材として数えられる。俺はそう予想している。……まあ、個人的に、お前を信じているってのもあるけど」

 

「……何よぉ、そんな言い方。ずるいじゃない」

 

良い負かしたことへの優越感を示す笑みを浮かべながら、遊介は続ける。

 

「俺がエデンと同盟を組まないのは、終わりの時が来た時に決定的な対立が生まれるからだ」

 

「やっぱり、この世界を終わらせるの?」

 

「ああ。それは変わらない。俺達が生きるべき世界はこの世界じゃない。元の世界に戻りたい、元の世界を救いたい、俺のチームにいるのは俺含めそんな連中だからさ。だから理想が相容れない」

 

「……そう。残念。遊介なら、良助と違って分かってくれると思ったのに」

 

「悪いな」

 

エデンとの対立の理由を言い終わった遊介に、今度は良助が、

 

「なら、俺の味方になれないってのは?」

 

「むやみな人殺しもダメってこと。目的のために手段を択ばないっていう方針は、不必要な犠牲を積極的に許容することだ」

 

「ああ、まあ……」

 

「それは、たとえ最後の形が同じでも、納得できない結果になると思う。少なくとも俺のチームにとっては」

 

「……つくづくお前は格好いいねー」

 

「格好つけているつもりはないんだけど、まあ、俺たちは俺達で納得いく結果を求めてるってことだな」

 

生まれた対立。

 

この世界に来る前は間違いなくこの3人は同じ道を歩いていた。親友だった。

 

しかし、この世界に来てそれはなくなり、今は3人の道は分かれてしまった。

 

「だから、まあ、お互い、自分の納得いくような形でやっていこう。俺達3人は恨み合うわけじゃなくて、競い合うってことで。そうすれば後悔なんてしないさ。俺だって自分の道が正しいなんて自身はないから、それぞれで正しいと思ったようにやればいい」

 

良助は遊介が出した結論に、一応の納得を示す。

 

「まあ、それしかないよな……」

 

一方で彩は納得がいっていないようだった。

 

「どうして、遊介まで反対するのよぉ! もう……なんで、私に味方してくれないの……」

 

顔を見れば一目瞭然。この結果が納得いかないと非常に『激おこ』な顔をしている。かなりの年数を一緒に過ごした友人として、その顔はこの後かなりまずいことを言おうとしているのが一目でわかる。

 

「遊介のわからずや。そんなに喧嘩がしたいなら受けて立とうじゃない!」

 

感情をフルオープンにして声を荒らげ始める彩。そしてその内容が予想しない方向へと飛躍していく。

 

「ちょっと待て、俺は何も喧嘩したいってわけじゃ」

 

「ふん、遠慮することないわ。私とそんなに対立したいって言うならね、良助も入れてあんたら2人、もう許してください彩様、って言うまで、徹底的に負かしてやるんだから!」

 

さりげなく巻き込まれた良助が、

 

「お前、別にお前のやり方を認めてないわけじゃ……」

 

と言い訳をしようとするがもう遅い。

 

「うるさい! こうなったらエデンは今から、全戦力を解放軍と光の世界全面戦争を開始するわ! 誰が正しいかデュエルで決めようじゃない」

 

「ちょっとまて、落ち着けって」

 

「こっちは頭きてんの! せっかく3人そろって、遊介と良助と一緒にこの世界堪能できるのを楽しみにしてたのに!」

 

「それはそれで、これはこれ」

 

「この女心も分からないポンコツ男子どもめ。今に見てなさい、泣かしてやるんだから」

 

それだけ言うと、彩はせっかく連れてきたエデンの精鋭たちに帰還命令を出した。そして横たわっているエクシーズ遊介を拾い上げ、

 

「競争って言ったわよね。遊介。なら私はあなたたちと戦うわ。そして、いつか私の言うこと聞かせてやるんだから」

 

と言い捨て、Dボードに乗り、去っていく。

 

「ありゃ、完全に目的見失っているな」

 

良助は彩の状況を分析する一方で、遊介はほんの少し後悔する。

 

(俺達とこの世界で一緒に戦うの、結構楽しみにしてたんだな……それは悪いことをしたかも……)

 

遊介は少しの後悔と後ろめたさを感じながらも、それでもこうなるしかなかったと自分に言い聞かせる。元々3人がリンクブレインズの世界で辿ってきた道は異なる。故に思想が異なってくるのは当然の結末だ。

 

「……しかし、やべえことになったな」

 

良助は遊介を見ながら、これから起こることの予測を立てる。

 

「彩の奴、ああなったら絶対にやるぞ」

 

長い友人関係の中で、本当に泣かされたことが何度かある良助と遊介は、今回もまた少し頭に痛みを覚えることとなった。

 

「どうする?」

 

「どうするも何も、戦うしかないだろう。いや、俺はイリアステルを誰が最初に倒すか競争しようって意味で、競い合いって」

 

「たまに独りで妄想突っ走るのがよくないよなあいつ。まあ、こうなったら仕方ないな……お互い気張ってあいつの機が治るまでがんばろうぜ」

 

良助もこの場を後にする。どこかに連絡をかけながらDボードに乗って、去っていった。

 

予期せぬ形で、戦いの幕は開いてしまったのだ。

 

 

 

話し合いの結果を語る前にお腹をすかせたエリーのために、光の世界の神殿近くにある定食屋に寄った遊介とそのチームメイト。

 

神殿も近いので、『players』のチームメイトもよく使用するためか、ブルームガールやマイケルにとっては第2のアジトのような感覚で、この店のテーブルを使用することも多い。

 

「こんなの前にあったっけ?」

 

「あんたが行方不明になってから、結構光の世界に来る奴多くなったの。いまここはデュエルが苦手だったり、覚悟のない奴の逃げ場になっているわ」

 

「へえ……それで、そうやってきた連中がやりたいようにやってるわけね」

 

「そう。ここも、料理が得意な有志数名がやってくれてるの。しかも、私たちには一日一食、ただでおすすめランチも出してくれているわ。これがおいしいのよ。カロリー気にせず惜しいものを食べられるって、こんな幸せなことはないってね……」

 

今の一言をよく理解しようとした遊介はブルームガールこと生徒会長が自分の家でどれだけ縛られた生活をしていたかを察することができる。

 

「せんぱ……ブルームガール、家が相当お厳しいんだね」

 

「そりゃあ、そうよ。カロリーコントロールは基本だったもの。少しでも親が決めた体重を越えたら体重が規定値を下回るまで家から追い出されたし」

 

「追い出されたことあるんだ」

 

「ケーキなんかを食べるってなったら、追い出し覚悟だったわ。あと買い食いとか」

 

「1グラムもだめ?」

 

「ダメ」

 

「きびしいなー」

 

他のメンバーがその話を聞いて絶句する。瑠璃だけが頷いてその話に聞き入っていた。

 

ブルームガールはこの話はやめやめと言わんばかりに話を変更する。それはおあつらえ向きな話題があるからだ。まさしく目の前のユートの代わりに座っている少年の話である。

 

「遊矢だっけ? あんた、何者?」

 

後で言う、という瑠璃の話をうまくとった話の転換であり、誰も反論は入れない。

 

「俺かい? 俺はその……どこから話せばいいのかな……?」

 

榊遊矢。ペンデュラム召喚を主に使うデュエリストであり、エースモンスター、オッドアイズペンデュラムドラゴンと魔術師、エンタメイトシリーズの使い手であり、歴代主人公の中でも最も得意的なエンタメデュエリスト。

 

しかし、ユートやハルトなどの様子を見ても、どうも自分の知っている存在とはすこし背景が異なるようである。

 

「まず、俺はこの世界の住人じゃない」

 

「知ってる、ユートもそうだったし」

 

「まあ、そりゃあね」

 

「私が聞きたいのは、ユートとどういう関係なのか、ということよ」

 

「それは、そうだな、遊介の話と照らし合わせてみると分かりやすいと思うよ?」

 

遊介の名前が急に挙げられ、当の本人は口に入れようとしたスプーンを一時停止する。

 

「俺?」

 

「ああ。お前も、他の世界の自分がいるだろ?」

 

「ああ、あのおかしな連中か……」

 

「俺にもいるんだよ。俺と同じ存在が。名前は少し違うんだけど。エクシーズ世界の俺がユート、融合世界の俺がさっきエクシーズ遊介を倒したユーリ、そしてもう1人、まだ出てきてないけどシンクロ世界のユーゴ。事情があって、今は1つの体を4人で共有してるんだ」

 

「え……超常現象」

 

「まあね。でも、事実なのはさっき見てもらったとおりだよ」

 

「まあ、さっき見せてもらったしね」

 

「ああ。俺達4人の目的は共通している。イリアステルを倒して自分達の故郷を救う」

 

「じゃあ、その……お前の中の人も」

 

「ああ、エクシーズ世界も融合世界も、シンクロ世界も、かなりひどい状況だ。俺は実際その世界を行ってみてきたから。柚子と一緒に」

 

新しい名前が出て来たところで、瑠璃が話に入る。

 

「柚子っていうのは私の友達。今呼ぶね?」

 

「呼ぶ?」

 

瑠璃は腕につけた紫のブレスレッドと見せる。

 

ブレスレッドは光を帯び始め、やがてその光があたりを包み込み、人の視界を白く塗りつぶす。

 

それは一瞬の話。光はすぐに収まり、瑠璃が座っていた場所に別の女の子が座っていた。この時間差では、瑠璃が別人になったとしか考えられない。

 

紫のしなやかな髪は、いつの間にか桃色に変化し、髪を後ろで2つに束ねているところも瑠璃とは違う性格を示している。

 

「もしかして」

 

否、もしかしなくても話の流れとして、彼女が柚子と言う存在なのだと。

 

「初めまして。でも、みんなのことは、瑠璃を通して知っているわ。柚子って呼んで。私もみんなのこと、瑠璃と同じ呼び方で呼ぶから」

 

「もしかして……」

 

「ええ。私、遊矢と同じなの」

 

それはつまり、瑠璃や柚子も、遊矢とユートの関係と、同じ関係であるということ。

 

「つまり君の中にも、その……言い方は良くないかもしれないけど、他の人格が?」

 

「ええ。後は融合世界のセレナ、シンクロ世界のリン。私たちは遊矢と同じように、ペンデュラム世界から、イリアステルを倒すために来たの」

 

世の中いろいろな人がいるもんだな、くらいの感覚で遊介はそれを聞き、

 

「その……今まで隠してたのは」

 

この事実を今まで隠していたのは、瑠璃もユートも、この事実を知ったときに遊介たちが、自分たちのことを気味悪がったり怪しんだりする可能性を考えてのことだった。

 

しかし、それは杞憂である。

 

「そんなことで驚いたりしないよ。むしろこんな小さなチームにずっと付き合ってくれている時点で、恩しか感じてないし、君達が良い奴だってわかるから」

 

屈託のない真剣な目での言葉。それを受けた柚子は、瑠璃が危惧した心配がないことが分かって、自然と気が少し抜けた顔になる。

 

「これからもよろしく。柚子」

 

「……ええ。こちらこそ」

 

「もちろん遊矢も」

 

「ああ。任せてくれ。ユートが回復するまで、しっかり代役務めるからさ」

 

頼もしい2人が新たに仲間になった感覚で、ブルームガールやマイケル、エリーは、危機的状況でありながらも、暗く沈んだ顔にはなっていなかった。

 

 

 

光の世界の課題は、とうとう敵対関係になったエデンとどのように戦っていくかという点である。

 

「どうします……?」

 

エリーの疑問に、言い対策案を出せる人は1人もいない。

 

遊介も頭を傾けるくらいしかできない始末だった。

 

しかし、ここで遊矢がふと、このような言葉を口にする。

 

「炎の世界のジャックアーロンは……?」

 

「それは」

 

実を言うとジャックが支配する炎の世界は既に立ち入ることができないでいる。理由は定かではないものの、ジャックからただ1言、『来るな』とだけ、ブルームガールに伝えられている状況だ。

 

「そうか……結局俺ら、数がいないからピンチなんだし」

 

遊介と違い、他の仲間は自分が負けるという考えを一切持っていないところ、頼もしい仲間だと遊介は思う。

 

「水の世界はエデン。地の世界は解放軍、闇の世界は海堂がいるしな。あとは、風の世界」

 

風の世界は、エリアマスターをリンクブレインズでは無名のデュエリストが努めている。

 

「仲間を増やすという点では、風の世界に行って同盟を取り付けるのがいいんじゃないか?」

 

「そうだな……他は敵だらけだし、唯一仲間として期待できるのは、風の世界の人間か」

 

マイケルがそう言うと遊介を見る。

 

遊介もそれに反論することはなかった。

 

「なら。すぐにでも行動しよう。エデンはいつせめて来るか分からない。さっそく行動開始だ!」

 

光の世界のデュエリストは、遊介の帰還により新たな戦いへと乗り出すことになった。

 

 

 

******************************

 

風のせかいにて。

 

「……恐らく光の世界の人間はここに来る」

 

「にいさま。その……」

 

「安心しろ、零羅」

 

眼鏡をかけた、威厳ある男が弟をなでる。

 

そして目の前に並んだ己の部下たちに告げた。

 

「迎え撃つ準備だ。光の世界の連中を測ってやれ」

 

******************************




続編遅くなりましてごめんなさい。本業が忙しく執筆する時間が取れませんでした!
今月中にもう1話は最低でも出しますので、お楽しみにお待ちください。

今回で遊介とエデンが戦うことになってしまいました。
次回からは風の世界編です。以前お話した通り、初デュエル同士でやります。
ちなみに味方側はエリーちゃんが参戦予定です


(アニメ風次回予告)

暴風吹きすさぶ渓谷。目の前に現れた嵐の壁は、あらゆる侵入者を拒む鉄壁の防御壁。遊介たちはそれを越え、新たな仲間を探すため、門番を名乗る男との戦闘に挑む。敵は鉄壁の武者たち、それらを貫かんと、天使たちを従え、少女は叫ぶ。

「私も、もう足手まといにはなりません!」

次回 遊戯王VRAINS~『もう一人のLINKVRAINSの英雄』~

   「ランサーズの試練」

   イントゥ・ザ・ヴレインズ!

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