遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。
これでOKという人はお楽しみください!
エデンとの戦いに備え、風の世界との同盟を結ぶことに決めた遊介たち。そのためにも急ぎ風の世界へ赴こうとしたのだが、エデンとの決戦とは別に、遊介たちには解決しなければならない問題があった。
忘れてはいけないのが、今はイベント期間中ということ。
イベントのおさらいを簡単にすると、今回のイベントは大掛かりなチーム戦となっている。それぞれの世界に属するデュエリストが、他の世界のデュエリストを倒すたびにポイントを入手できる。そのポイントを世界ごとに集計し、合計が最も高い世界のデュエリストには、優勝賞品が贈呈される。逆に一番少なかった世界については、そのエリアマスターが優勝した世界のエリアマスターに、世界を無条件で譲渡しなければならないペナルティを持つ。ちなみにエリアマスターが倒されると、倒した世界に通常の1000倍のポイントが入るため、エリアマスターの敗北は決して許されるものではない。
そしてこのイベントにはさらに特殊なギミックが設けられている。イリアステルから、アルター自身が7名の強力なデュエリストを派遣して、各地のデュエリストを殺しまわるということ。そしてもう1つは、稼いだポイントで、自分のデュエルを有利にできるアイテムを購入できるという点だ。
現在、このイベントのせいで、光の世界は窮地に立たされている。
1位の水の世界がポイント数、7829点に対し、光の世界は567点。ちなみに5位の炎の世界は2600点であり、現状では光の世界は絶望的なのである。
理由を述べるのに苦労はない。光の世界がこのような無様を晒している理由は単純な人手不足である。
光の世界のエリアマスターが擁するデュエリストチームは10人にも満たない少なさなのに対し、土の世界を統べる解放軍や、水の世界を統べるエデンは、それぞれ組織として戦える人間が500名を超えている。単純にエリアマスターの影響力が及ぶ組織内の人間に戦闘を命じるだけでも、その効率は単純に50倍以上の差があるのだ。
そして野良デュエリストは長いものに巻かれて身を守る人間が多い。戦える人間が土や水、闇の世界に流れて行く。光の世界では戦っても弱かったり、戦えなかったりする弱者。戦力不足は当然ともいえる。
さすがにこのような絶望的な差では、いくら労働時間を増やして戦いに乗り出しても、逆転などできるはずもないのだ。
さらに光の世界には、弱いもの狩りをするデュエリストが外から多数押し寄せてくるのが日常であり、遊介率いる『players』のデュエリストはその対応に追われ続けている。治安維持を行う代わりに、光の世界の運営を住人に任せるという契約で、光の世界において高い方針決定権力を持つことになっているメンバーは、日々弱い者いじめを得意とする外のデュエリストから、住民を守らなければならないのだ。
そんな事情もあり遊介たちは、風の世界にはすぐに行けない。少なくとも綿密な計画を立てて、風の世界への旅は可能な限り時間をかけずに行くことになっている。
その準備が整うまでの間は、遊介たちは通常営業なのだ。
「バトル! デコードトーカーで、ダイレクトアタック!」
遊介はまさに今その仕事に従事中である。野生のデュエリストを指さし、己のモンスターに止めを刺すように促した。紫の戦士が手に持つ大きな剣を振るい、敵のLPを0にする。
「ぐああああ」
この世界では敗北は死と同義。自身が持つ命をすべて失ったものはその場で光となって消える。
「……あいつ……」
LP4000で戦い、死んだということは、すでに追い詰められていたにも関わらず、ここに攻め入って何とか勝利を得ようとしていたということ。しかし、遊介には同情の余地はなく、他人を襲った人間を無事に生かしておくつもりもなかった。
「マスター?」
デュエルが終わってもしばらく動かない遊介を見て、エリーが心配の面持ちで話しかけてくる。
「ん?」
「いかがなさいました?」
「あ、いいや。俺は問題ない」
「もしかして、殺してしまったことを悔いておられるのかと」
「……俺もそこまで善人じゃないよ。戦う気のない住人を襲って殺そうとした人間だ。同情なんてしない」
「でも……辛そうです」
「そうか?」
遊介はそれを自身の辛さとは微塵も思っていなかった。
「いやあ、こんなに大変だったとは思わなかったよ。ブルームガールがおサボりのエリアマスターを怒るのは無理ないな」
「そうですね。これで今日は何人目でしたっけ?」
デュエルの回数は既に20人を越え、それ以上は数えるの忘れてしまっているところだ。
当然デュエル中は頭も使う、そして戦いなので体力も使う、ダメージを受けたら体が痛む。精神的にも肉体的にもかなりダメージが積み上げられているところだ。
しかし、遊介はそれだけではない辛さを感じていた。ちょうど、この瞬間も。
闇の世界ではしょっちゅうデュエルをしていたがそれでも辛くはなかった。労力をかけた分、相手と仲良くなることもしょっちゅうで、デュエルでは情報を得たりや自身の強化へとつながったりと得るものも多かった。
しかし、今は違う。敵はほぼ全員ルールブレイカーを持っていて、せっかく遊介が保有ライフを減らさないようにルールを設けているのに、その意味がない状態なのだ。そして人目のつかないところで一般人を襲い、証拠を残さないようにその一般人を殺していく。
それを守るために遊介は戦わなければならない。しかしそうすると、目の前で人が死んでいく。保有ライフがなくなり、泣きそうな目で消えていく。
遊介は彼らの持つ思いを知るはずもない。望みを知らない。ただ非情に徹して、滅ぼすべき悪として彼らの命を摘み取ったのだ。
同情など許されるはずはない。しかし、人を殺すというこの行為を可能な限り避け続けて、罪悪感から逃げ続けてきた遊介にとっては、光の世界を守るためとはいえ、何度も人殺しをせざるを得ない状況はとても辛かった。
「マスター……」
「大丈夫だよ」
遊介は後ろを振り返る。
そこには、今殺してしまった男に襲われていた光の世界の住人が2人。
「大丈夫?」
「あ……その」
襲われていたのは女性2人。その2人から見れば遊介はまさに救世主に見えただろう。
「お救い頂きありがとうございました!」
目を輝かせながら遊介に近づく2人。
さすがにサインを求められるようなことはないが、持っていたバッグから1つ何かを差し出される。
「これは?」
差し出されたのは柑橘系の果実。みかんともオレンジともいよかんともそれない形状であるが、光の世界の特産品と言える甘みの強い生食に適したものである。
「今日を含め、いつも私たちを守っていただいているお礼です」
遊介は後ろめたさを感じながらも、相手の好意を無下にすることも躊躇われたため、その果実を受け取った。
この行為から分かるように、遊介の光の世界における評判はそれほど悪くない。
それは、ブルームガール達がなかなか姿を見せないエリアマスターの遊介を庇っていたことが要因として大きいだろう。
『遊介はハルトとの戦いで大きな傷を負い、今は意識を失っていて、目を覚ますために時間がかかる』
『自分達が光の世界を守るのは遊介が、光の世界のある少女を救いたかったからであり、彼女の故郷を守ろうという意思を尊重してのことだ。故に、私たちの誠意は彼の真意であるとご理解いただきたい』
このようなメッセージ、そして実際の行動をしてきた仲間たちが遊介の帰る場所を守っていてくれたのだ。
そして実際、先日の解放軍の撃退が功を奏し、パトロールにも先日から合流を果たし、治安維持の仕事をしているところを見せることで、光の世界の住民は遊介のことを認め、徐々に話かけるようになってきていた。
「いつもおつかれさまです」
「いいや、これくらいは、当たり前です。気にしないで」
「いえいえ、皆さんにはいつもお世話になっていますから。その、最近は助けられた時のために、常にお礼を持ち歩く人も多いんですよ。それくらい皆さんには期待もしているし、感謝もしているんです。光の世界を守ってくれるって」
「それは」
それだけの力があるかと言われれば、遊介はイエスとしっかり答えられない。今の光の世界は、他の世界から来る、大規模侵攻に耐えられるだけの力はない。それは、先日の解放軍の襲撃の際も分かっていたことだし、現状の戦力分析をするまでもなく客観的に見ても明らかだ。
故に、
「が、頑張ります」
としか、遊介は返答することができない。
しかし、女性2人はその答えに嬉しそうにはにかむと、その場を後にした。
デュエルを疲れで一瞬ふらつく遊介。
「お具合が悪そうです……」
「大丈夫。気にしないで」
「お辛そうです……一度お休みになるのはいかがでしょう」
「いや、一度戻ってくるよう連絡受けているから」
既にお日様が天高く昇っている時間。遊介はこの日、朝から37人の人間を人間を相手取り、ようやくお昼の休憩を得ることができた。
「エリー、無事?」
「はい!」
「遊介に変なことされなかった?」
遊介に不要な容疑をかけようとしているブルームガール。
今日も光の世界の住人の憩いの場になっている食堂の片隅、『players』専用のブースのところで、遊介は、自身をパシるブルームガールと、先ほどから一緒にいたエリーと共にお昼ご飯を食べているところである。
「あのですね……サボりのおしおきは受けるので、これ以上俺の悪評をたてないでくださいますかね?」
「あら、そんなこと言える立場なのかしら? 私たち、あの仕事を貴方の代わりにずっとやってきたんだけど?」
「だからやってるじゃないですか……。頑張ってるよ、俺も」
「だめよ。私たちが倒した合計人数456人は最低限貴方に倒してもらわないと。それまで私たちは優雅な休息の日々を過ごすの」
「それって、1人でやった数じゃないんじゃ」
「はいそこうるさい。あなたエリアマスターでしょ。みんなに力を示さないと」
「だからって俺も人間なんだよぉ」
「エリーもかっこいい遊介の事見たいものね?」
自分の賛同者を得ようと言葉巧みに自分を有利にしようとするブルームガール。
「あ、それは……そうですけど」
そして純粋であるが故に、その口車に乗っかってしまうエリー。
「ほらー」
「ほらー、じゃなくて。もう疲れた……」
「ダメよ。このままだとイベントで負けちゃうんだから。せめて光の世界に来た連中は皆殺しにしないと」
「会長、皆殺しって、せめて全員倒すとかもっとおしとやかな言葉を使わないと……」
「良いじゃない。事実を隠す必要はないわ」
遊介は目の前の会長の強メンタルを少しは見習わなければと思う。たった数日程度で、先ほどの殺人行為に心を病んでいては、これまで光の世界を守るために同じ行為をしてきた仲間たちの中で戦う権利はない。
当然、デュエルで人を殺すことは正当化されるべきではないと遊介は思っている。
しかし、一方で光の世界を守るためには、外敵との衝突は避けられない。敵がルールブレイカーを持っている以上、保有ライフをかけたデュエルは避けられず、どちらかが傷つくしか戦いを終わらせる方法がない。
「はぁ……」
「なあにため息ついてるの?」
「いやあね……やっぱ、目の前で人が消えるのは辛いわ……」
「そう? 相手は関係ない人間を殺そうとしてるう奴よ。向こう側だって覚悟の上で襲い掛かってる。そう思った方がいい。心病んじゃうわ」
ブルームガールが治安維持の仕事を行う際の心構えを聞いても、遊介は首を傾け、心病んじゃうかも、と冗談を呟く。さすがにまだ心を病むとは思わないくらいには元気なものの、ブルームガールのように割り切る事は易々とできそうにはなかった。
「まあ、お礼を言われるのは悪い気分はしない」
「良い人も多いでしょ」
ブルームガールのこの言葉を聞き、遊介は先ほどもらった柑橘類の果実を手にする。
「さっきもらったんだ。確かに、会長の言う通りだな」
「でしょでしょ? よく食事のおすそ分けとかもらうのよ。いやあ、この世界のスーパースターって感じがして、いい気分よ」
「会長、そこはみんなの温かい心が身に染みるとか言った方が」
「もちろん。そう思ってる。これも遊介があの時、ハルトを倒したついでに、光の世界を賭けデュエル禁止エリアにしてくれたおかげかもね」
「俺の?」
「原則ここではデュエルをしても保有ライフは減らない。そのせいかこの世界は比較的に温厚な人が集まってくるから、暮らしている人はみんないい人ばかり。私としても心地いいわ。それは貴方がそういう世界にしたことが、きっかけであることには間違いないもの」
「それは、まあよかったよ。本当はエリーが死なないようにするための応急措置だったんだけどな」
しかしブルームガールに褒められた気がして、遊介は悪い気はしなかった。
「お姉さま。おそらく心労は1.5人分抱えています。どうかこの後お休みはいただけませんか?」
エリーがさりげなく、ブルームガールをお姉さま呼びしているのは、彼女なりのブルームガールへの敬意の表し方のつもりである。
自分を0.5人扱いをしていることを聞き過ごせなかったブルームガールは、
「エリー、ダメよ。ちゃんと2人前って言わないと」
「でも、私はまだ半人前ですので」
「あなたも私たちのチームの一員なんだから、もっと胸を張って張って!」
エリーを手招きして自分の近くに来させると、背骨を押し、無理やり胸を張らせる。
その様子に遊介は失笑する。
「ますたー?」
「何よ?」
「ごめんごめん。その……まあ、平和なもんだなっておもってさ」
「平和ねえ、あなた、さっきまで何度も戦ってきたくせに」
「まあ、それはそれ。エリーや会長が仲良く話しているのを見ると、まあ、前にハルトと戦った時には想像もできなかったなって」
「ああ……」
ブルームガールは、少し微笑んで、
「そうね。本当」
遊介に同意を示した。
再び外に出て、パトロールを行う遊介。
光の世界の主街区は7日に1回の夕方市場で盛り上がりを見せている。この市場では、郊外で育てられた作物の販売や他の世界からの輸入品等の販売が行われ、それに加え、酔狂な者たちの大道芸や、趣味、道楽の成果を披露する小さなイベントが開かれたりする。
何かと物騒なこの世界で、これだけ大きい平和的なイベントを開催できているのは、現状光の世界と水の世界の2つだけだろう。そのほかの世界ではこれだけ平穏さを感じられるイベントは開かれない。
これは『players』は関係なく、光の世界の住民が自発的にやり始めたものだ。日々物騒な世界でも楽しみを創ろうという有志が最初に射的の露店を出し始めたのがきっかけで、そこに集まり始めた人を狙って他の店が出店し始めることで大きくなっていったという経緯がある。
市場がある数時間は多くの住人が外に出るため、当然心無い襲撃者によるデュエルのできない一般住民を狙う機会は増える。そこで、この瞬間だけは、遊介だけでなく多くの『players』全員が外に繰り出しパトロールをすることになっている。
しかし、実際には襲撃件数は、市場開催時はだいたい0の時が多い。理由は一般の襲撃者の心理状態にある。
この世界で強いデュエリストは、解放軍やエデンなどの生活基盤が整っているチームにスカウトされているため、野良になることはほとんどない。仮に片方の組織で自身との相性が良くなくとも、もう片方の組織に行けば良い話だ。
ではどのようなデュエリストが野良になり、明日が困るような貧困者になるかと言うと、その多くはそれほど強くないからある世界に属して戦うことを積極的にできない弱者だ。
本来はエデンや光の世界は、少なくとも、戦いたくない人間を強制的に戦わせることはしないのだが。彼らはどこかに根を下ろしたらその地域のために戦うことを強要されたり、自分に不都合な要求をされる可能性を捨てきれず、その恐れから、どこかの世界に拠点を置くこともできないのだ。それは戦うことを諦め、誰かに縋りつくしか選択肢がない弱者にはあり得ない選択。まだ、デュエルに対して持っている無意識の矜持から自分で稼ぐ手段を捨てきれない人々のみが陥るジレンマである。
この世界はデュエルができなければ、この世界の金にあたるデュエルポイントも稼ぐことができない。基本的には3日につき1人には勝利しなければ十分な食事にもありつけない。孤独となったデュエル弱者層は、自身よりも弱い人間、もしくは元々戦えない人間に無理矢理勝負を挑み、金を稼ぐしかないのである。
話を戻すと、そのような弱者層は、基本報復を恐れ、自身の襲撃を悟らせないように、狩りは人気のないところで内密に行うものである。故に、市場のような元々人が大勢いる場所では目撃率も高まることから、結果的に襲撃の実行に踏み切れない連中が多い。
故に市場の開催は結果的に、非デュエリストとして、助け合って生きていこうとする住民達の身を守っている結果になっている。『players』のパトロールも最近は、光の世界に住む人間と交流を深める機会として機能している面が大きい。
遊介もその例外ではない。
今日で2回目の参加である遊介も、すでに街の人間からは歓迎を受けている。
特に元々光の世界に住んでいた原住民の子供からは懐かれている。エリーを守った格好いいお兄さん的ポジションだ。
「ユースケさーん」
地元の子供のうち、特に懐いているエリーの知り合いに声を掛けられるのも、遊介はようやく慣れてきたころだった。
「ん?」
「俺達の輪投げすごくうまくなったんだよ!」
「そうなのか?」
「おう。見てみて」
「なら、行こうか。そうだ、エリーは別行動だからいないぞ」
「知ってるよ。今、ブルームガールさんとデートなんだろ」
「いや、デートというよりは……?」
午後は1人で行動している。というのも、エリーは、先ほどの食事の後、どこかへと連れていかれてしまった。本当はこの後デュエルの特訓でもお願いしようかと思っていた矢先だったので、少し拍子抜けだったのだ。
「エリー姉ちゃんのこと、責任取れよー」
「責任……?」
「なんだよ、気に入って自分のチームに勝手に入れやがって。もう結婚だろー」
「お前らぁ、何を訳の分からないことを」
「なんだよ、捨てるのかー!」
「それは……」
「うわあ、サイテーだぁ」
「……ほら、早く輪投げの店行くぞ!」
実際に付き合ってみると、ハルトと一緒に居た時には分からなかったことだが、なかなかに年上を恐れない悪ガキであることが分かった。遊介は、日々子どもの相手をしていたエリーの気苦労を多少感じつつ、彼らに連れられ走り出す。
――必要もほとんどなく、彼らが自慢げに輪投げを自慢する露店にたどり着いた。
ちなみに商品は大した事はない。2日に1回なので、毎回毎回商品を用意していては大変なので仕方がない。しかし、そこはさすがうまく考えられていて、参加料は少なめに、何度も挑戦できるようにして、5投でいけるかいけないかぐらいの点数を超えたら、参加料の1.5倍のお菓子をもらえるという方針になっている。この子供たちは既に何回か参加して、ようやくお菓子を1つ手に入れているので、すでに店主の思惑に乗っている悲しき生き物である。
しかし、とうぜんそれに乗っからない人間もいる。
見慣れないおしゃれな服を来て、最高得点をどや顔でたたき出し、お菓子を1回で受け取るスーパースター。
「何やってるの、会長?」
「ふぇ……」
恥ずかしそうに振り返る女性は、まさに遊介が名指しで呼んだレディだ。
「な、なんでここに……!」
「いや、この子らが……」
と遊介は子供たちを指さそうとする。
いない。
先ほどまで周りにうろうろしていた、遊介をからかった子供たちは既に見る影もない。
「……本当だよ?」
念押しをする遊介に、ブルームガールは、少し顔を赤くしながら、
「あいつらぁ……後でエリーと一緒に、食堂の下ごしらえの刑ね……!」
ととても悔しそうな顔をして物騒なことを呟く。
「それはともかくとして、遊介、今暇?」
子どもの未来は決して明るくなさそうだが、それは残念とも思わず諦め、
「あ、まあ」
と、レディのお誘いに乗り気であることを示す。
「まあ、見回りはやりながらだけどね。一緒に回らない?」
「いいけど、会長はいいの。この後予定もあるんじゃ」
「どうせ後で、アレがあるから呼びに行く予定だったけどね。でも始まるまでまだ時間があるから、一緒に行動すればいいじゃない?」
「それはそうだ」
「でしょ? さ、いきましょ!」
ブルームガールは遊介の手をやや強めに握ると、市場の中を引っ張り始めた。
アレ、という具体性が伏せられた謎のイベントについて不穏なものを感じたものの、遊介はブルームガールに抵抗せずその楽しみに付き合い始める。
途中で書かれていた掲示板の中で、そのアレに関するヒントが隠されていたのを、遊介は幸運にも見逃さなかった。それ故に、その時間が来るまで、ブルームガールに思いっきりお付き合いをすることに決めたのだ。
『光の世界エリアマスター復活記念! この機にエリアマスターをもっと知ろう! 初のエンタメデュエル大会! ??? VS 遊介』
何故か自分が、勝手に戦うことになっていることに理不尽を感じながらも、遊介はブルームガールに逆らうという無駄なことは、今の良い機嫌を損ねないためにも、しないことにした。
(デート編に続く)
この機会になってしまいましたが、UAが10000という大台に乗りました。
日頃から呼んでいただいている皆様には、この場を借りて心よりお礼を申し上げます!
そこで、今回は記念番外編として、このような番外編を書かせていただくことにしました。この番外編は、今回の日常辺、デート辺、エンタメデュエル編の3話に分けて投稿する予定です。
久々の投稿が、またもデュエル無しになってしまったのは非常に心苦しいのですが、実はすでにデュエルの内容だけは書き終わっています。あとは、その他の部分を順次書いていくので、デュエルが見たいという方はあともう少しお待ちください。