遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。
これでOKという人はお楽しみください!
エンタメデュエル編です。
アクションデュエルにいい思い出がない方もどうかお付き合いいただければ幸いです。
クロスオーバーということで1回はやっておきたいデュエルなのですが、本編でできるタイミングがなさそうなので、この番外編でやってみたいと思います。
今回、かなり長めになっています。ご留意ください。
アクションデュエルのルールは通常のデュエルに、アクションカードという特殊なカードが加わることで成立するデュエル形式である。
特殊なフィールド内に4枚のアクションカードという特殊なカードが散らばり、プレイヤーはデュエルを行いながら、そのカードを探し当てることで、自らの戦術にそのカードの効果を組み込むことができる。アクションカードは魔法、罠の2つが存在し、何が地面にばらまかれるかは、デュエル開始時ランダムに決定される。カードは裏向きで配置されるため、実際に拾うまではそのカードの正体も分からない。
魔法のアクションカードを拾った場合、そのカードを発動できるタイミングで任意に発動できる。ただし罠のアクションカードを拾った場合、即時にその効果が発揮されるため、注意が必要である。大体が拾ったプレイヤーへのデメリットであるからだ。
アクションカードは、1ターンにお互いが1枚まで発動できるという条件がある。故に同じターンに同じ人が2枚以上のアクションカードを使うことはできない。さらに手札に持っているアクションカードは、次の相手ターン終了時に除外される。たくさん持って、溜め置きはできない。
故にアクションカードを拾いに行くのは、通常必要になった時に、ということになるだろう。
突然の乱入者、ヴィクター。
誰もが、誰だあいつ状態になるだろうと思われた。
しかし、ここでマイケルがとんでもないアドリブをぶち込む。
「出やがったなぁ、エリアマスターを狙う悪い奴」
などと、ヒーローショーっぽくことを運ぼうとする。遊介はそれだけでも予定外のことで、頭が一杯なのに、
「ああそうだ。俺は悪だ。エリアマスターをぶっ殺しに来たんだからな」
ヴィクターがそのマイケルのアドリブに乗り始めたのだ。
しかし、2人のやけに呼吸のあったアドリブが功を奏し、場がおかしな空気になることもなく、
「がんばれー、ユーヤくん」
「あの感じ悪い男倒しちゃってー!」
「エリアマスターを守って!」
と、会場をさらなる盛り上がりを見せる。
「やるね、君」
遊矢の賞賛は、場を見事盛り上げて見せたヴィクターのエンタメ力に対して。そして、ヴィクターも別段嫌そうな顔はしない。
「まあ、これでもプロを目指してるんでね。勝ちにはこだわるけど、最低限の盛り上げはしてやるさ。マナーってやつだよ」
「……じゃあ、気が合いそうだな」
「気が合う? やめとけ、榊遊矢」
「なんで」
「俺はお前みたいに優しくない。アイツをぶっ殺しに来たのは事実だからな。定期テストだ。腑抜けになってないか」
「それは、穏かじゃないな」
「なら、公開処刑をお前が止めてみろ。俺を満足させたらいいこと教えてやる。だから、付き合えよ。準備運動」
「それはもちろん。デュエルを拒みはしないさ。けど……準備運動で終わりになっちゃうかもよ?」
「言うねぇ。なら、期待してるぜ」
ヴィクターは指を鳴らす。
それはデュエルの始まりを意味した。ヴィクターのデュエルディスクにはすでに、アクションフィールドがセットされていて、今の合図でそれが発動されたのだ。
世界が塗り替わる。
選ばれたのはアクションフィールドは『聖域の浮島』。緑と神殿の跡の瓦礫が散らばる、空中の8つの浮島。広さもそれぞれ違い、それぞれの浮島には、白い柱が折れた残骸がところどころに見られる。そして最も大きい浮島には、屋根が吹き飛んでいるものの、何らかの儀式が行われた大広間のある、石材づくりの建物も見える。
「てめぇ! 勝手にフィールド決めんな!」
マイケルの声に、
「こういうのは速いもん勝ちだ!」
と反論したヴィクター。マイケルは気に入らない顔をしながらも、エリーに台本を見せそのまま進める事にした。その一部始終を遊介は遠くから見ていて、
(大変そうだなぁ)
と、呑気な感想を抱いていた。自分が出る必要がなくなったが故の気持ちの余裕が生まれたと言える。
そして遊介は聞き覚えのない掛け声を聞くことになる。
「地を駆けろ、空を舞え。縦横無尽に動き回って、戦いの地で奇跡を掴め!」
マイケルに続きエリーが、
「ここれこそ、デュエリストの心技体、すべてが問われるデュエルの進化体!」
と言いなれないその台詞をしっかりと口にする。
「アクション!」
マイケルの掛け声に、
「デュエル!」
「デュエル!」
ヴィクターと遊矢が応えることで、デュエルは始まった。
アクションカード 4枚散布
遊矢 LP4000 手札5
モンスター
魔法罠
ヴィクター LP4000 手札5
モンスター
魔法罠
(ヴィクター)
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
(遊矢)
「そういえばいいのか? アクションデュエル、俺はかなり得意だよ?」
「榊遊矢。お前の得手不得手なんて承知のうえだ。気にすんな」
ターン1
「だが、そっちの得意なフィールドに乗ってやったんだ。先攻はもらうぜ?」
ヴィクターが先攻を宣言しデュエルは始まる。
遊矢は、まだ自分のターンにもなっていないにも関わらず、Dボードを使い上空へと飛翔する。
「お? 早速アクションマジックか?」
「ああ。やっぱりアクションデュエルは、アクションカードをとった方が便利だからね」
上昇していく遊矢を見て、ヴィクターもDボードを引き寄せる。浮島と別の浮島の間の距離はそれほどないが、人間の跳躍で隣に跳ぶのは明らかに不可能なほどは離れている。移動にはDボードかモンスターを使用するしかない。
ヴィクターは自分のDボードを近くに呼び寄せると同時に、
「俺はモンスターを裏側でセット!」
裏側守備表示でモンスターを召喚する。そして、それだけでは当然止まらない。
「さて。たっぷり苦しんでもらおうか!」
ヴィクターはDボードに乗り、先に飛翔した遊矢の後を追いながら、己のターンの続きを行った。
「永続魔法、『レベル制限B地区』を発動!」
「はぁ?」
遊矢が驚きの声をあげる。記憶の共有によって知っている、ユートが見た以前のヴィクターのデッキからは想像もつかないカードが発動されたからだ。
以前のヴィクターは徹底的に攻撃をして、相手のLPを削り切るという戦法だった。しかし、発動された『レベル制限B地区』は、ヴィクターの得意とする高レベルモンスターのアドバンス召喚と相性が悪い。
「この魔法は存在する限り、レベル4以上のモンスターを強制的に守備表示にする」
「意外だな。それじゃあ、君もやりづらいんじゃないか?」
「馬鹿かお前。このカードを発動してるんだ。それなりの戦術は使う」
ニヤリと笑うヴィクター。
その真意をはかるのは解説役のマイケルだった。ちなみにエリーが質問する形で、その解説は行われる。
「あの魔法、どういうつもりでしょうか?」
さすがに疑問を口に出すだけなので、言葉に詰まったりはしない。しかし、急な代役のはずのエリーもしっかりやっているようで、遊介のとなりに座っているブルームガールは大変満足気である。
「まあ、間違いなくロックデッキだろうな」
マイケルは、今のヴィクターの戦術を予想する。
「相手の攻撃を制限するカードで徹底的に身を守って、その間チクチクと効果ダメージを与えたり、デッキ破壊をしたりする戦術だ」
そしてヴィクターが、
「さらに俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
という動きを見せると、さらにマイケルは解説を重ねる。ちなみに、マイケルの解説は、アクションデュエル中の2人には聞こえないようになっている。
「どうせあの伏せカードも、相手を動かさないためのカードだ。間違いない。あの裏側のモンスターも厄介だろうぜ。ワームか、効果ダメージ系か」
ここでいうワームというのは、デッキ破壊系を意味する。
そして戦いを見守っている、ヴィクター戦経験者の遊介は少し違和感をもった。
(随分と、おとなしいな……デッキの方針、いつの間にか変えたのか)
Dボードの腕も遊矢は十分であり、ヴィクターは追いつくことができない。最初の浮島への上陸は遊矢に譲り、ヴィクターは他の島を目指す。
ヴィクター LP4000 手札2
モンスター ① 裏側
魔法罠 ② レベル制限B地区 伏せ1
(ヴィクター)
□ □ ② ■ □ 魔法罠ゾーン
□ □ ① □ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
(遊矢)
最初の浮島に上陸した遊矢は、アクションマジックを探すものの、その島にカードは見つからない。仕方なく、次の島を目指すことにする。
ターン2
「さあ、ここからは榊遊矢、渾身のエンタメデュエルの開幕だ!」
遊矢の会場に向けての宣言に、闘技場でデュエルを見守る観客のボルテージはあがっていく。
「俺のターン!」
遊矢は攻勢に転じるべく、起点となるカードを引く。
遊矢 LP4000 手札6
モンスター
魔法罠
遊矢の初陣、記念すべき最初を飾るのは、
「まずは先駆け! 俺のデッキのスピードスター! エンタメイト、ディスカバーヒッポを召喚!」
なんと、ただのカバだった。
EMディスカバー・ヒッポ レベル3 攻撃表示
ATK800/DEF800
遊矢は呼び出したそのカバに乗り、カバは喜んで駆け出すと島の端っこまで猛スピードで走る。その間に遊矢はもう1体モンスターを呼び出した。
「そしてエンタメイトの召喚に成功した時、僕らを支えてくれるお姫様の登場だ! エンタメイトヘルプリンセスは、特殊召喚できる!」
モンスターの召喚の時にわざわざ差し込むこのセリフは榊遊矢が心がけるエンターテイメントのデュエルの一環。呼び出すすべてのモンスターはこのエンタメの登場人物で、できる限り名前を憶えて帰ってもらいたい。そんな遊矢のこだわりが、モンスターを印象付ける紹介文を言うという行動に結びついている。
カバは飛ぶ。一応モンスター扱いなので、その跳躍力は一級。一番近い浮島へは容易くジャンプで届く。そして、その空中で、遊矢が呼び出したお姫様(黒)がフィールド上に呼び出された。
EMヘルプリンセス 守備表示 レベル4
ATK1200/DEF1200
次の浮島に到着し、遊矢は愉快なカバから降りる。そして、周りを見渡し、手札のカード1枚に手を伸ばした。
「そしてこの瞬間! 先ほど呼び出したヒッポの効果を発動! 彼はもちろん今みたいに、俺を連れて行ってくれるけど、当然それだけじゃない! ディスカバーヒッポの効果で、このターン俺は通常召喚に加えて、レベル7以上のモンスターをアドバンス召喚できる!」
そして、右手に1枚のカードを持ち、天へと掲げる。たった1枚に大胆すぎる動作。しかしこれも遊矢が観客の注目を集めるためのパフォーマンスであり、その1枚はそれをするにふさわしいモンスター。
「俺はフィールドのヒッポと、ヘルプリンセスをリリース! これより出でしは、かくも珍しき、二色の眼の竜。俺のエース登場に大きな拍手をお願いします! 来い、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」
遊矢が呼び出した2体のモンスターは大きく跳躍し、光り輝く粒子となった。やがてその粒子が召喚のゲートを創り、その中から、オッドアイの眼を持つ竜が降臨する。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃表示 レベル7
ATK2500/DEF2000
赤い鱗、巨大な宝玉、何より主の紹介の通り二色の眼を持つ、走行型のドラゴンがフィールドに現れた。会場は遊矢の宣言通り、大きな拍手に包まれる。しかし、そんなことは意に介さずヴィクターは、自身のカード効果を適用した。
「だが、そのモンスターはレベル7だよな! レベル制限B地区によって、そいつは守備表示になってもらうぜ!」
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃→守備表示 DEF2000
少し具合が悪そうに呻く赤い竜。しかし、これが具合が悪くなったのではなく、単に守備表示になり攻撃ができない合図である。
「大丈夫だ。お前の力で、アレを突破するぞ!」
わざわざ呼び出したエースモンスターが守備表示になったにも関わらず、意気消沈しない遊矢。それは今、自身のエースモンスターを縛る枷を外す方法がすでにあるということだ。
「そう簡単に相手のペースには乗らないよ! 俺は魔法カード『巨竜の羽ばたき』を発動! フィールド状のレベル5以上のモンスター1体を手札に戻して、フィールド上の魔法、罠カードをすべて破壊する!」
ちなみにオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンには翼はない。
「羽ばたきぃ?」
「……まあ、そこはね」
にこにこしながら華麗にスルーする。当然魔法に、翼という条件はないため、発動に問題はない。二色の眼の竜は地面を思いっきり蹴り跳躍、その風圧で、別の小さめの浮島に上陸したヴィクターの魔法と罠を見事に吹き飛ばしていった。遊矢はその風を利用し、さらに浮島をアグレッシブに移動する。
「やるねえ、そうじゃなくちゃ」
ヴィクターはにやりと、デュエルが盛り上がってきたことに笑みを浮かべる。
「でもどうすんだ? 通常召喚も使った。これじゃあ、次のターン攻撃し放題だなぁ?」
ヴィクターはその浮島から離れようとはしない。アクションカードも取った様子は見せず、その上、自らのロックカードを破壊されているにも関わらず、弱気にもならない生意気な口を動かすヴィクター。
遊矢はそれに指を振って応えた。
「お楽しみはこれからだ!」
どこかで聞いたことがある決め台詞を恥ずかしがることもなく叫ぶと、2枚のカードを見せびらかす。
「せっかく呼んだオッドアイズは跳躍してから戻ってこない。そんなのつまらないだろう? ご注目! スーパースターを呼び戻す! その方法は、摩訶不思議なペンデュラムの力!」
「……なるほど、ペンデュラム召喚か」
ヴィクターの言う通り、榊遊矢が今から行うのが、彼が得意とするペンデュラム召喚。ペンデュラムモンスターと呼ばれる特殊なモンスターを2体、自分の魔法、罠ゾーンの右恥と左端にセットする。そのカードに書かれているスケールという数字2つの数字の間のレベル数を持つモンスターを、手札、もしくはエクストラデッキにいる表側表示のペンデュラムモンスターを特殊召喚する方法。
「その通り! 俺スケール6のエンタメイトリザードローとスケール8のエンタメイト、オッドアイズユニコーンで、ペンデュラムスケールをセッティング!」
見せびらかした2枚は共にペンデュラムモンスター。そして、6と8のスケールをセットしたことで、レベル7のモンスターをペンデュラム召喚できるようになる。
「さあ、再びの登場だ! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク! ペンデュラム召喚! 舞い戻れ! オッドアイズ・ペンデュラムドラゴン!」
天空に光の軌跡が描かれる。円を示したその輝きの輪の中から、先ほど跳躍した竜は再び現れた。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃表示 レベル7
ATK2500/DEF2000
「なるほど、ペンデュラムか……」
ヴィクターは子どもがおもちゃを発見したときのように欲に満ちた笑みを浮かべる。
「喜んでもらえて何より」
「ちげえよ。ペンデュラム使い。一度戦ってみたかったんだ。いい得物がかかったぜ!」
その口ぶりは本当に悪役を演じているかのように遊介には映った。
一方に遊矢は、ヴィクターの勝利願望の奥深さなどいざ知らず、
「さあ! 楽しもう! バトル!」
と、デュエルをノリノリで続行する。
「俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで、その裏側守備モンスターに攻撃!」
遊矢の元に舞い戻ってきた竜は、主の攻撃宣言に応え、自身の力を口元に集中させる!
そして大きく跳躍、狙いはヴィクターのいる浮島。黒と赤の螺旋を描く炎を打ち出す!
「螺旋のストライクバースト!」
放射された煉獄炎は、その狙いを外すことなく、ヴィクターのいる島に着弾。
「ぐおお」
ヴィクターの周りの空気を熱しながら、モンスターを焼きつくす。
浮島は頑丈にできているため、竜の炎では壊れないのだが、当然これほどの炎に晒され、裏側のモンスターは無事では済まない。
現にヴィクターのモンスターも、炎が止んだ時に、その存在は既に見当たらなかった。
「あれ……?」
裏側モンスターと戦闘をする時は、戦闘時にモンスターは表側になり、相手に何者かは示される。しかし、まだそれがない。
ましゅー!
可愛らしい声が遊矢の耳に届く。ヴィクターの声ではない。残念ながら彼では、妖精のようなその声を出すことは不可能だ。
では何者か。
ましゅましゅ!
その声がさらに大きくなり遊矢に届く。まるで近づいてきているような。
白い物体が遊矢に襲い掛かってきた。
「なぁ……?」
さすがの遊矢もそれには驚く。白い物体が自分に目掛けて飛んできているのだ。そのスピードはものすごく、見事に遊矢に激突する。
「ぐあ!」
その白い物体はとても柔らかく、激突しても衝撃波ともかく、少しの痛みしか感じない。しかしダメージは間違いなく受けた。
「お前が攻撃したのは、マシュマロンだ。戦闘破壊に耐性をもつモンスターの中では、最も有名かも知れないな。裏側守備のこのカードに攻撃したお前は、マシュマロンの効果によって、1000ダメージを受けるわけだ」
遊矢 LP4000→3000
「なるほどね……2段構えか」
「ロックデッキかと思っただろ? だからお前は魔法、罠を破壊した時点で安心した。甘いなぁ、榊遊矢」
今までロックデッキという印象を与えることで、そのロックを破壊することで有利に転じると思われた遊矢が、まさかの自分のターンで先にダメージを受けた。
予想だにしない展開に、会場は大盛り上がり。エリーは夢中でそのデュエルを見ている。
(意地悪いなあいつ)
遊介はそんなことを思いつつ、そのデュエルに見入っていた。
一方ダメージを受けた遊矢は、
「いやあ、マジか……」
と、ダメージを噛みしめ、メインフェイズ2へと移行する。
「ペンデュラムゾーンのリザードローの効果! もう片方のペンデュラムゾーンにいるエンタメイトを破壊する。カードを1枚、ドローする!」
もう片方、EMオッドアイズ・ユニコーンを破壊し、デッキからカードを1枚ドローした遊矢。
「いくぞ、オッドアイズ!」
人間離れしたジャンプでオッドアイズの角の上に乗ると、自身がいる広めの浮島を移動し始める。
「俺はこれでターンエンド!」
「おいおい、エンタメデュエリスト。そんな無様じゃ面白くねえぞ!」
煽るヴィクター。しかし、ムキになることはない。余裕の笑みで、
「なあに、まだまだ。君のエンタメには負けないよ」
と、ヴィクターに言い切った。
遊矢 LP3000 手札1
モンスター ③ オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
魔法罠 ④ EMリザードロー
(ヴィクター)
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ ① □ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ □ ③ □ □ メインモンスターゾーン
④ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
(遊矢)
ターン3
「このターンでぶっ殺す!」
ヴィクターは高らかに勝利宣言をした。
「俺のターン!」
ヴィクター LP4000 手札3
モンスター ① マシュマロン
魔法罠
ヴィクターは遊矢に走れと言っておきながら、自身は余裕綽々、動くことなく自身のカードを動かし始める。
「俺は、召喚僧サモンプリーストを召喚! このカードは召喚した際、守備表示になる!」
呼び出したのは、紫のローブを着こんだ魔法使い族のモンスター。
召喚僧サモンプリースト レベル4 守備表示
ATK800/DEF1600
「サモプリの効果! 1ターンに1度、手札の魔法カードを墓地へ送る。デッキからレベル4モンスターを1体特殊召喚する! 俺は手札のこのカードを墓地へ、聖鳥クレインを特殊召喚!」
召喚僧はその名の通り、召喚を司る僧侶。その力によって、魔力の提供を受ければその召喚の力を発揮する。その魔力によって呼び出されたのは、白い翼を広げた鳥だ。
聖鳥クレイン レベル4 攻撃表示
ATK1600/DEF400
「聖鳥クレインは特殊召喚に成功した時、カードを1枚ドローする!」
ヴィクターはカードを1枚ドローし、
「さあ、行くぜ!」
と、気味の悪い笑顔を見せて、今ドローしたカードではないもう1枚を手に取る。そのカードは今や、この世界におけるヴィクターの代名詞と言えるカード。
「刮目しろ! 魔法カード『アドバンス・サモン・フォース』を発動! このカードはフィールド上のモンスターをすべてリリースして発動する! リリースしたモンスターの数によって効果が変わる。1体のみの場合、デッキからレベル5、もしくは6のモンスター1体をアドバンス召喚扱いで召喚する。2体以上であれば、レベル7以上のモンスター1体をアドバンス召喚扱いで召喚する」
そしてヴィクターは指を3本立てる。
「俺は3体のモンスターを全てリリース。2体以上のリリースのため、俺はデッキからレベル7以上のモンスターを、通常召喚扱いでアドバンス召喚する! この時3体以上をリリースしている場合、当然3体リリースの召喚として扱われる!」
この効果を強調した理由は呼び出すモンスターの名前を聞き、デュエリストは誰もが納得する。
「出でよ! 神獣王バルバロス!」
3体のリリースの後、召喚されるのはすさまじい出現の瞬間、その威圧で戦いの場を凍らせるほどの、とてつもない力を感じさせる獣王。
神獣王バルバロス レベル8 攻撃表示
ATK3000/DEF1200
「あれは……」
「エンタメデュエリストでも見たことあるか。そうだ。これこそ、お前はあの世に送る俺の切り札。さあ、アクションカードは見つかったか? 死ぬぜ?」
遊矢は己の竜に乗りながら、
「でも、オッドアイズは倒せても、俺はまだ死なないな」
とペンデュラムドラゴンに乗りながら、目的の場所まで己のモンスターを走らせる。既に遊矢の目には最初のアクションカードが見えていた。
「間に合うと良いけどな?」
しかし、このままなら、間に合うのはあくまでオッドアイズに乗っていたらの話。ヴィクターには、遊矢の敗北が見えている。
その理由は、当然、今召喚した、バルバロスだ。
「バルバロスの効果! モンスター3体をリリースして召喚に成功したとき、相手フィールドのカードをすべて破壊する!」
観客が騒然とする。その効果は破格にもほどがある。サンダーボルトとハーピィの羽箒。その破壊力抜群の2枚を1つに纏めた効果だ。それは少しでもデュエルの心得があれば、その効果がシンプルかつとんでもない効果だと分かる。
「な……!」
「さあ、その竜から降りてもらうぜ! 榊遊矢!」
獣王が咆哮をあげる。それに伴い嵐が吹き荒れ始める。獣王の持つ槍に、圧倒的な風圧の竜巻が宿り、稲妻が轟いた。
再び、荒ぶる闘志を爆発させた獣王は、竜巻を己に集約させ、身に纏いながら天を駆ける。
その行き先は当然、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン・自身の持つ槍と、神に仕える獣として持つ権力を使った怒りの乱槍。
たとえ竜とて逃げ場はない。その槍は、竜巻は間違いなくその竜を捉える。
しかし、竜は己の破壊を悟り、遊矢を無理やりひっぺ剥がすと、
「オッドアイズ?」
呻きながら、体を回転、尾で遊矢を向かっていた方向へ弾き、同時に獣王の攻撃から逃がした。
獣王の蹂躙。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンは為す術なく破壊され、そして、その余波でペンデュラムゾーンにいた、EMリザードローも木っ端みじんとなった。
「さあ、綺麗になったな、フィールドが! さあ、終わりだ。エンタメデュエリスト! 会場を盛り上げられないまま死ね! バトルだ」
ヴィクターは、弾き飛ばされ地面を転がっていた遊矢を指さし、
「神獣王バルバロスで、榊遊矢にダイレクトアタック!」
巨大な槍の刺突が遊矢に襲いかかる。
通常のデュエルでは、手札にどうにかするカードがない以上、遊矢の負けは決定的だ。
しかし、先ほど、オッドアイズはなぜ遊矢を弾き飛ばしたのか。
それは、その先に希望があったから。
アクションカード。奇跡を起こす1枚である。
「ありがとう、オッドアイズ! お前のおかげで命拾いしたよ」
「は?」
既に槍の先が目の前に迫っているにも関わらず、臆することなく、遊矢は地面からカードを拾い上げる。
「……よし!」
表を見てニヤリと笑った遊矢。
「アクションマジック、『聖域の守護結界』を発動! このターンお互いが受ける戦闘ダメージは半分になる!」
浮島全体に綺麗な光の粒子が漂い始め、全員の体を軽くする。
本来は致死的な攻撃となる獣王の槍も、この光粒子により、遊矢の受けるダメージは減る。
獣王の槍は軌道を変え、遊矢は直撃を何とか避けることに成功した。しかし、かすっただけでもそこはさすが獣王の槍。それだけで、人間が耐えるには厳しいダメージが遊矢に襲い掛かった。
「ぐ……!」
見事に吹き飛ばされたものの、体を回転させ、着地は何とか様になった。
遊矢 LP3000→1500
「ふう……」
「ち、耐えたか、エンタメデュエリスト」
「まあね。いやあ、危なかった。アクションデュエルじゃなきゃ終わってたよ」
ヴィクターは自身の攻撃を防がれてなお、
「アドバンスサモンフォースによって召喚されたモンスターは、エンドフェイズに手札に戻る。俺が召喚した神獣王バルバロスは手札に戻る。俺はこれでターンエンドだ」
デメリットで自分のモンスターがいなくなっても、気丈を振る舞い、余裕の笑みを消すことはなかった。
「フィールドがなくなったな。今度はこっちのターンだ。ここから俺の逆転劇を楽しんでくれよ!」
「ふん、好きにしやがれ。1ターンでLP4000、減らせやしねえよ」
「どうかな?」
遊矢も未だ闘志尽きることなく、フィールドに何もない、手札がたった1枚のこの状況で、
「まだまだ、お楽しみはここからだ」
再び会場を盛り上げようとした。
まだ3ターンしか経っていないという状況を忘れ会場はさらなる盛り上がりを見せる。
そしてマイケルやエリーもまた、解説を続ける。
「大変ですね。2人とも、フィールドに何もいません」
「ああ、次のターン。遊矢が何を仕掛けてくるかによって、このデュエルは決まるぜ」
デュエルは佳境を迎えようとしている。
ヴィクター LP4000 手札2
モンスター
魔法罠
(ヴィクター)
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
(遊矢)
ターン4
再びDボードを呼んで遊矢は飛び乗る。新しいアクションカードを探しに行くため。アクションデュエルの回数でヴィクターを遥かに上回っている遊矢は、次のアクションカードが落ちている場所にも、心当たりはあった。
「俺のターン!」
遊矢 LP1500 手札2
モンスター
魔法罠
Dボードに乗り、目指したのは浮島でも一番大きな島。すなわち儀式用の大広間がある神殿がある地。
新たなアクションカードを手に入れるまで、遊矢は止まらない。一方のヴィクターも動き始めたところを見て、
「さて、一気に行くよ。俺はマジックカード! 『ペンデュラム・コール』を発動する! 手札を1枚墓地へ送って、カード名が異なる魔術師2体をデッキから手札に加える! 俺はデッキから、曲芸の魔術師と黒牙の魔術師を手札に加える!」
ヴィクターもDボードに乗って、最大の島を目指している。遊矢のこの動きだけで、容易に次の展開が予測できる。
「ペンデュラムか!」
「その通り! 俺はスケール2の曲芸の魔術師と、スケール8の黒牙の魔術師で、ペンデュラムスケールをセッティング! これにより、俺はレベル3から7までのモンスターをペンデュラム召喚可能!」
人差し指を天に向け、叫ぶ。
「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク! ペンデュラム召喚! 戻ってこい! オッドアイズ!」
まだ空中にも関わらずDボードから飛び降りた遊矢。単なる自殺行為にしか見えないため、さすがに観客の間にもどよめきがあがる。
しかし心配はない。なぜなら、ペンデュラム召喚によって戻ってきた遊矢の相棒が遊矢を助け、中継地点の浮島へと、彼を誘ったからだ。
颯爽と戻ってきた赤い竜。過労死枠などと揶揄されることがあっても、これこそペンデュラムモンスターの強み。ペンデュラムモンスターは破壊されてもエクストラデッキに表側表示で残り、スケールの条件さえあえば、再びエクストラデッキからペンデュラム召喚できる。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃表示
ATK2500/DEF2000
中継地点で2枚目のアクションマジックを拾った遊矢、すぐさまオッドアイズの跳躍を駆使し、島を伝って目的の神殿跡のある最大の島へと向かう。
「速いな……追いつかねえ」
Dボードをマックススピードで動かしているヴィクターだったが、それでもオッドアイズの全速力の方が速い。
徐々に距離の差が広がっている以上、ヴィクターが追いつく術はない。
「バトルだ!」
当然遊矢も楽しむとはいえ手は抜かない。がら空きの相手フィールドを見て、攻撃を止めるという選択肢はなかった。
「オッドアイズで、ヴィクターにダイレクトアタック!」
竜は振り返り、その中でヴィクターを捉える。
「螺旋のストライクバースト!」
そして自らの螺旋焔を狙い違わずにヴィクターに撃ち放った。
当然アクションカードを未だ拾えていないヴィクターにこの攻撃を止めるすべはない。
爆発。Dボードは頑丈にできているが、それでも衝撃で墜落するに十分な威力と言って差し支えない。
ヴィクター LP4000→1500
オッドアイズは再び主の目指す方向へと走り出す。
一方ヴィクターは爆発に煽られ、コントロールが一時不能になり、近くの浮島に墜落。
「追いつくのは絶望的だな」
となぜか、わざわざ聞こえるように大きな声で言う。
「まあ、ただじゃやられねえけど」
歯を見せ、凶悪な笑みを再び浮かべて。
その様子を遊矢は見逃さない。
「何かあるのか?」
大声でヴィクターに問うと、
「馬鹿かてめえ、そんなのあるに決まってんだろ!」
と、残る手札2枚のうち、1枚を手にとった。
「俺はこの瞬間、冥府の使者ゴーズの効果を発動する! 俺のフィールドにカードが存在しないとき、相手のコントロールするカードによりダメージを受けた場合、このカードを手札から特殊召喚!」
先ほど聖鳥クレインの効果でドローしたときに笑ったのは、アドバンスサモンフォースを使って勝てると思ったからではない。このカードを引き当てたからだ。
ヴィクターが呼び出すのは悪魔族のモンスター。ヴィクターの前に突然現れる。冥府の使者というだけあり、禍々しい装いをして、巨大な刃を装備している。
冥府の使者ゴーズ レベル7 攻撃表示
ATK2700/DEF2500
「うわ、2700? いきなり?」
遊矢の驚きの声、そして、
「さて、すぐお別れかな、オッドアイズ?」
目に見えてさらに調子に乗り始めるヴィクター。
「ゴーズの効果! 戦闘ダメージをトリガーに特殊召喚された場合、俺のうけたダメージと同じ数値のステータスを持つ、カイエントークン1体を特殊召喚できる!」
ゴーズの隣に、雰囲気の似た存在が再び忽然と顕現する。
冥府の使者カイエントークン レベル7 攻撃表示
ATK2500/DEF2500
「2500まで……!」
「榊遊矢! 次がてめえのラストターンだ!」
自分のフィールドに現れた冥府の使者たちに遊矢を追うように指示する。
会場でこのデュエルを見る観客は、ここからの展開を期待する。
「あのヴィクターってやつやるなぁ」
「ユーヤ、がんばー!」
「ヴィクター、悪役キャラで売り出せば面白そう」
いろいろとヴィクターを評価し始める声もあがってくる。まがりなりにも、ヴィクターが会場を盛り上げている証拠だ。
(なんか、前に比べて、あいつらしくないというか)
遊介はヴィクターに不穏な何かを感じながらも、素直に会場を盛り上げている、同じ将来の夢を持った同士を素直に尊敬していた。
「この展開、お前にとってはおもしろくねえか? エンタメデュエリスト?」
ヴィクターは遊矢をどんどん煽っていく。しかし、
「いいや、相手も輝かせてこそのエンターテイメントだ」
と遊矢は未だ強気の姿勢を崩さなかった。
「いいねぇ、そうこなくちゃ!」
「俺はこれでターンエンド!」
ターンエンドの宣言と共に、遊矢は最後の島につく。
遊矢 LP1500 手札0
モンスター ③ オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
魔法罠 ⑤ 曲芸の魔術師 ⑥ 黒牙の魔術師
(ヴィクター)
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
□ □ ⑦ ⑧ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ □ ③ □ □ メインモンスターゾーン
⑤ □ □ □ ⑥ 魔法罠ゾーン
(遊矢)
ターン5
ヴィクターが自身が墜落した浮島の捜索を始めたのは、遊矢がターンエンドの宣言をした瞬間。その後、墜落した浮島から再びDボードで飛翔し、大神殿のある浮島を目指した。
「俺のターン! ドロー!」
その目は勝利のことしか考えていないという目をしている。
ヴィクター LP1500 手札2
モンスター ⑦ 冥府の使者ゴーズ ⑧ 冥府の使者カイエントークン
魔法罠
相手のターンエンドを待ったのは、アクションカードを拾うため。自分が墜落した先にアクションカードがたまたまあった、というわけではなく、ヴィクターはあらかじめそのカードを狙っていたのだ。
表を見た時に、すぐに発動できるカードでなかった場合、遊矢のターンのエンドフェイズに墓地へ送られてしまうので、様子を見たものの、いざ拾って表を見た瞬間、すぐに発動できるカードだったのは少し残念に思う。
しかし、効果に文句はなかった。
「アクションマジック『聖域の免疫光』を発動! 自分のターンのメインフェイズ時、相手フィールドのカードを1枚を破壊する! 俺は黒牙の魔術師を破壊!」
既に大神殿跡の大広間に到着した遊矢は自分のペンデュラムカードが破壊されたことで、息を呑む。
ヴィクターもそこに到着。先についていた冥府の使者と共に、遊矢を追い詰めた形だ。
「さあ、死ぬぜ?」
「それはどうかな……?」
ヴィクターはいまだ強気を崩さない遊矢に特に不快そうな顔を見せることはなく、むしろ止めを刺す楽しみを我慢できずに笑みをこぼす。
「神獣王バルバロスはリリース無しで通常召喚できる。ただし、この効果で召喚した場合、元々の攻撃力は1900だがな?」
さらに猛攻を仕掛けるべく、手札の神獣王バルバロスを呼び出す。
神獣王バルバロス レベル8 攻撃表示
ATK1900/DEF1200
「そしてカードを1枚セット」
ヴィクターは最後の手札のカードをフィールドに伏せ、
「バトルだ」
このデュエルを終わりにすべく、最後のバトルフェイズ開始の合図をする。
「冥府の使者ゴーズで、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを攻撃!」
冥府の使者は持っている刃で竜を断つ。遊矢は先ほど拾ったアクションカードは使わない。その攻撃を受けるしかない。
(勝)冥府の使者ゴーズ ATK2700 VS オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK2500 (負)
遊矢 LP1500→1300
「く……?」
「どうした、使わないのか? アクションカード?」
「……そのうち分かるさ」
「そうか? なら遠慮なく。バトル、攻撃力2500、カイエントークンで、貴様にとどめだ!」
ヴィクターは迷いなく遊矢にとどめを刺そうとした。
しかし、それは罠だ。
遊矢はこの瞬間を待っていた。
「アクションマジック! 『聖域の仲両裁』を発動! 相手の攻撃宣言時、その攻撃で俺の受けるダメージは半分になり、俺が受けたダメージと同じダメージをヴィクター、お前も受ける!」
「な……にぃ」
「へへ、かかったな」
カイエントークンの攻撃は点から降り注ぐ光の柱に止められ、ヴィクターと遊矢を同じ光が照らす。それは互いの生命力を奪う、この聖域の仲裁の光。
遊矢 LP1300→50
ヴィクター LP1500→250
「やりやがったな……」
「ようやく、一矢報いたって感じかな? そういう顔してるよ」
顔を歪めるヴィクターに対し、遊矢は未だ、たったLPが50しかないのに、まだ明るい顔でデュエルを楽しんでいる。
「へへ、やるじゃあねえか。だがバルバロスで終わりだ」
「それは無理だ。『聖域の仲両裁』を使ったターン、お互いはこのターン、これ以上受けるダメージは0になる」
「てめえ、しつこいぞ。いい加減死にやがれ」
「やっぱり俺も勝ちたいからさ。他の3人に比べて俺は弱いから、勝つためには少し意地汚くもなるよ」
「……その言葉、いいな。初めてお前のいいところを見つけたって感じだ」
しかし、遊矢も実は余裕がない。次のターン、相手の冥府の使者を何とかする方法がなければ、やられるのみだ。すなわち、ドロー勝負。
「俺はこれでターンエンド」
ヴィクターのターンエンド宣言を受け、遊矢は目を閉じ、自分のデッキの上に指を乗せる。
ヴィクター LP250 手札0
モンスター ⑦ 冥府の使者ゴーズ ⑧ 冥府の使者カイエントークン
⑨ 神獣王バルバロス
魔法罠 伏せ1
(ヴィクター)
□ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
□ ⑨ ⑦ ⑧ □ メインモンスターゾーン
□ □ EXモンスターゾーン
□ □ □ □ □ メインモンスターゾーン
⑤ □ □ □ □ 魔法罠ゾーン
(遊矢)
「……さあ、ご注目! このドローが運命を決める! 見事逆転できたら、盛大な声援と拍手をお願いします!」
遊矢は最後の自分のターンになることを予期し、カードを引く。
ターン6
「何かを変えたかったら、恐れず一歩前に出る! 俺のターン、ドロー!」
遊矢はカードを引いた。
遊矢 LP50 手札1
モンスター
魔法罠 ⑤ 曲芸の魔術師
そして、表れる自然な笑み。それは勝利への布石を見つけた証。
「俺のフィールドにモンスターはいない。俺はスケール8の時読みの魔術師をペンデュラムスケールにセッティング!」
これにより、レベル3から7までのモンスターがペンデュラム召喚可能。
「てめえ、引きやがったな!」
「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク! ペンデュラム召喚! 再び戻ってこい! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」
遊矢のエースモンスターが再びフィールドに戻ってきた。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃表示
ATK2500/DEF2000
再びのエースの帰還に、会場も大盛り上がり。
「へえ、まさかまた呼ぶとはな。けど、冥府の使者ゴーズは倒せないぜ?」
「いいや、彼を倒す必要はない」
「……そうだな」
ヴィクターも納得する遊矢の勝利への布石。それは、まさに幸運も加味されているだろう。先ほどのターンで神獣王バルバロスが召喚されていなければ、ここでオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを出しても勝つことはできなかった。
攻撃力を1900に下げてまで召喚したことがむしろ遊矢に勝利のチャンスを与えたのだ。
「さあ、最後のバトルフェイズだ! 皆さん一緒に、攻撃のコールをお願いします!」
遊矢は会場全体を巻き込んで、フィニッシュアタックを最高潮に盛り上げる。
「エンタメデュエリスト、そう言えばこの神殿にアクションマジックはないのか?」
「なかったよ。読みが外れた」
「そうか――」
ヴィクターは目を閉じる。
そして遊矢が最後の攻撃を放つ。
「バトル! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで、神獣王バルバロスを攻撃! 時読みの魔術師の効果で自分のペンデュラムモンスターが先頭を行うとき、相手は罠カードを発動できない!」
これで伏せカードを封じることができる。確信した遊矢が、己の竜の技名を叫ぶ。
そして会場の観客も一緒になって、その技は宣言される。
「螺旋のストライクバースト!」
バルバロスに向けて、螺旋の火炎が放たれる!
ヴィクターは最後に言った。
「――ああ。安心した」
安心。この状況でおかしな言葉、遊矢は驚きで目を見開く。
「まさか……ここまで綺麗に引っかかるとは思わなかったぜ!」
とまるでこの状態から勝とうと宣言する。
「時読みの魔術師の効果でトラップは」
「罠だろ? なら……魔法なら発動できるよな?」
「な……!」
ヴィクターは先ほど伏せたカードを発動した。
「速攻魔法! 『禁じられた聖杯』! フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。ターン終了時までそのモンスターは、攻撃力が400アップし、効果は無効化される。俺は、神獣王バルバロスを対象に発動!」
「なるほど、それで、攻撃力を2300まであげるわけか」
「いいや、攻撃力は3400まで上昇する」
「な……」
エリーがここまでの話について行けず解説のマイケルに理由を問う。さすがにマイケルはヴィクターの真意を見抜いていた。
「バルバロスの妥協召喚で攻撃力が下がるのは自らの効果だ。それが無効になれば、奴の本来の攻撃力3000が適用される。そこに聖杯の力で400ポイントの上昇。何より、これほどの上昇量のくせして、突進と同じタイミングで使えるんだから、引っかかったときは恐ろしいぜ」
「なるほど……」
戦場で、ヴィクターはもはや止められない攻撃をする遊矢に叫ぶ。
「俺はちゃんと警告したはずだ。『冥府の使者ゴーズは倒せないぜ?』ってな。俺もデュエリストだ。あそこでわざわざそんなこと言わねえよ。バルバロスに攻撃が来ることぐらいわかってた」
「お前……」
「それでもあえて、言ってやったんだよ。バルバロスのことを忘れている間抜けみたいに演じれば、攻撃してくれるかもって。お前はあの時、相手がバルバロスであることを警戒すべきだった。そして可能性が欠片しかなくても、4枚目のアクションカードを探しに行くべきだった。自分の強みを視野に入れず、ここで攻撃宣言をしてしまったお前の負けだ」
神獣王バルバロスに聖杯の中身が注がれる。その瞬間、攻撃力が元に戻った獣王の威圧は、最初遊矢のフィールドすべて消し去ったとき以上に変貌する。
「もう戦闘の巻き戻しはできない、返り討ちだ! やれ、バルバロス!」
たった一瞬で予想された勝敗は逆転する。
遊矢は、その瞬間何も言うことはできなかった。
(負)オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK2500 VS 神獣王バルバロス ATK3400 (勝)
遊矢 LP50→0
「まだまだだな……俺も」
仰向けに倒れる遊矢。一方満足げな表情を浮かべるヴィクターは、唖然として彼を見守る観客に対し、まるで感謝を示すように、観客に向けて頭を下げる。
その瞬間。会場は大きく盛り上がった。
「すげえ!」
「まじか!」
「いいデュエルだった」
少し腕があれば、なんとも綱渡りなデュエルだったという者もいるだろう。しかし、遊矢がそれでも笑顔だったのは、会場が盛り上がったが故である。
「エンタメデュエリスト榊遊矢」
「なんだい?」
「まあ、悪くなかったぜ。たまには酔狂なことも必要だからな。俺の悪ノリによく合わせた」
「それはどうも」
「敗北者はさっさと舞台から降りろ。メインディッシュも待ってるんでね」
ヴィクターはそう言うと、遊介の方を向き、かかって来いと手招きする。
「エリアマスター! 新人がやられてるぞ。仇、とらねえのか? 軟弱者」
遊介を確実に目で捉えての挑発。
遊介は今のデュエルが大いに見ごたえがあったので、実はもう満足していたのだが、このまま逃げようとはしなかった。
何故なら、ここで逃げたら格好悪いから。
「遊介、どうするの?」
隣にいたブルームガールに問われた、その答えは、
「行ってくるよ」
迷いのない、エリアマスターとしての出陣だった。
目の前に遊介が立つ。ヴィクターはそれに大いに満足し、
「あの時のリベンジマッチだ。俺達のデュエルにアクションカードはいらないな?」
「ああ。勝つよ。お前に」
「いい顔だ。もとより、それが目的だからな」
遊介もまた、目の前に乱入者として、会場を大いに騒がせたヴィクターを倒したいと好奇心が沸いていた。
「てめ、モンスターを手札に戻すなんてずりいぞ!」
「バトル、ファイアウォールドラゴンで、ダイレクトアタック!」
「この……くそったれぇ!」
ヴィクターとのデュエルの後は、エリアマスターや『players』のメンバーにデュエルが挑めるイベントが急遽開催された。そのせいで、遊介はその日、過去例に見ない疲労を負うことになった。
しかし後悔はしていない。光の世界に住む人々との交流は間違いなく楽しかった。
ブルームガールやマイケル、エリーなど、このような会を盛り上げ、一緒に楽しんだ仲間に感謝しながら、この日、久しぶりに、心の底から大いにエンジョイした。
イベントは終わり、ヴィクターが、今日乱入してきた理由を遊介に話す。
「ずいぶんノリノリだったな、ヴィクター」
「俺もプロを目指してる身だぜ。悪ノリすればあの程度はするさ」
ヴィクターはあくびをして、
「海堂セイトが探してたぜ。いい加減約束を果たせって」
と遊介にとって居ぬべき約束を思い出させる。
「お前、連れ戻しに来たのか?」
「そこまでの義理はねえよ。あいつとは前に別れてから会ってないし、連絡もとってねえ」
「連絡って、メンバーじゃなきゃ連絡も難しいだろ」
「あ? やっぱ知らねえのか? ちょうどいい、今日はこれを警告しに来たんだ」
ヴィクターは自分のデュエルディスクを、遊介に見せる。すると、そこには、
「ヴィクター、参加チーム、players、海堂コーポレーション……2つ?」
「そうだ。でもお前のディスク見てみ」
遊介のディスクに表示されているメンバーリスト。その中のヴィクターは、players所属としか書かれていない。
「これは……」
「チームは勝手に抜けれない。それは周知の事実だろ? だが、掛け持ちはできる」
それがどうした、と遊介が答えようとすると、
「スパイね」
ブルームガールが話に混じってきた。
「あたりだ。エリアマスターには表面上は、自分のチームに毒が入っている事は知らされない。だからまあ、警戒しておけ。せいぜい、仲間に裏切られて死ぬなんて無様、晒さないようにな」
遊介はふと、疑問を抱く。
「どうしてそんなこと教えてくれるんだよ」
「あ? 言ったろ、俺はお前が変貌するのを楽しみにしてるって、それまで死なれたら困るんだよ。だから、下らねえ理由で死なないようにするくらいは手伝ってやる」
ヴィクターは、当たり前だろ? という顔で遊介に己の目的を伝える。
「そう言えば、もう1つ依頼があるんだった。光の世界、今ピンチらしいじゃないか。そのために風の世界に行くとか」
「なんで知ってんだよ」
「榊遊矢が教えてくれたぜ?」
口止めをしていなかったことを、遊介は今になって少し後悔する。
「そこもまあ、交換条件で協力やるぜ」
ピンチというのは今開催されているイベントの話である。現在光の世界は最下位。このままではまずい。
「イリアステルの刺客が今各世界に侵攻を始めている。そいつを倒せば1人につき1500点だ。なら、光の世界は俺が守ってやる。お前らは風の世界に行って、そこのイリアステルを倒せ。そうすれば、5位にはなれる」
「交換条件は?」
「風の世界にいる情報屋から情報を買え。代金はお前ら持ちだ。情報が届いた時点で、俺は光の世界のためにイリアステルと戦ってやる」
「内容は?」
「神のカードが眠る場所だ」
ヴィクターは姿を消した。慣れ合う気はないのは確かなようで、光の世界にはいるものの、行動は共にしないとのこと。
しかし、思わぬ形でイベントを乗り切る手段が見つかったのは暁光と言える。
闇の世界でヴィクターとも、共に戦った仲として、等価交換であれば嘘をつかない、というヴィクターの唯一信頼できる点を見つけていたため、遊介はその話に乗ることにした。
これで風の世界に行く算段は整った。
「いよいよか……」
お祭り騒ぎが終わり、夜の風で火照った体を覚ましながら、月を眺める。
「お疲れ」
隣でブルームガールは、オレンジジュースを遊介に差し出した。
「みんなは?」
「疲れたって言って寝ちゃったよ」
「そうか」
差し出されたオレンジジュースを受け取って一口飲む。
「これは……」
「私のおすすめ。どう?」
「ああ。おいしいよ」
遊介は微笑んで再び空を見上げた。
「あー、楽しかったね。今日」
ブルームガールが言った。
遊介はそれに、
「また、こんな日が来ると良いな」
と一言。
「会長。これからもよろしく」
少し語尾を濁したのは恥ずかしかったからか。それに、ブルームガールは応えた。
「ええ。任せて。私も頑張るから」
と、しっかりと答えた。
後ろから、マイケルがニヤニヤしながらのぞいているのを気づくことなく、2人はコップが空になるまで、話つづけた。
――後に、本当にずっとずっと後になって彼女が俺に見せてくれた日記の中に、この日のことが書かれていた。「今まで生きてきた中で、一番楽しかった。みんなと、ついでに遊介と、これからもずっと一緒にいたいなぁ」――
すみません。長くなってしまいました。
やはりデュエルは前後編分けるべきだったと反省しています。
デュエルはヴィクターの勝利です。
彼はとりあえず1勝ですね。デュエル内容は粗かったかもしれませんが、これくらい単純な方がエンタメデュエルとしてはいいのではないかと思いました。
番外編にお付き合いいただきありがとうございました!
1度こういうことをやってみたかったので、本編を待っている方には申し訳ありませんでしたが、無事に終えられたので、次回から本編に戻ります。
長い文章、お付き合いいただき、ありがとうございました!