遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

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注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!

隙あらばヒロイン力を高めていきたいスタイル。


21話 ランサーズの試練

風の世界に行くのに準備期間を2週間要した。理由は、自分達が不在の間に、光の世界の防衛をどうするべきかという問題を抱えていたからだ。

 

風の世界には全員で行くのは確定的だった。遊介1人で行っては、万が一遊介が負けた場合、死ぬのは仲間の方になる。身代わりの選択はランダムなので、お留守番の中で死因も分からず死ぬことになるというのは、悲惨な最期の中でも群を抜くだろう。

 

しかし、チームメイトだけが行くというのもあり得ない。今回は風の世界のエリアマスターとの同盟の交渉なのだ。であるならば、少なくともエリアマスターが赴くのは礼儀というものである。

 

よって全員で行くことは確定的だったのだが、それでは光の防衛に問題がでる。

 

それを解決したのはヴィクターだった。自分からリスクを覚悟で、利のある交渉を持ち掛けてきた。風の世界での情報と等価交換で、光の世界を助けてくれるという。ヴィクターの真意は測りかねるものの、遊介にはこの条件に頼ることが唯一の問題の打開策だと思いその依頼を受けた。

 

これにより、風の世界へと赴くことができるようになったのである。

 

 

 

風の世界には地面がない。領土は空中。地面を必要とせず、人々は空をDボードで動き回りながら日常を過ごしている。しかし、大地の代わりに風の世界にはものすごく巨大な怪鳥が何匹かゆったりと飛び回り、人々はその怪鳥の上に文明を築き、街を形成しているのだ。

 

怪鳥は風の世界の中で8種類飛んでいて、その中でもDボードでは到達できないほどの高度で飛んでいる一番大きな鳥が、エリアマスターのいる大聖堂を背負う怪鳥アルス。その鳥に近づくときのみ、神の鳥シムルグに乗る必要があるため、特別な許可が必要になる。

 

数多くの人々がDボードに乗って飛び回り、怪鳥の上に街を築く。光の世界の浮島もそうだったが、ファンタジー感あふれるその光景に、この世界に足を踏み入れた光の世界一行は息を呑む。

 

あらかじめ風の世界についてある程度下調べはしたものの、残念ながら怪鳥アルスに向かう手段は調べがつかなかったた。また、ヴィクターが足した条件である情報屋も細かい場所までは分からず、情報屋についても現地で調べなければならなかった。

 

本来の目的であるエリアマスターとの会見を早々に終わらせて光の世界に戻りたいところである遊介。

 

「二手に分かれよう。アルスへ行く方法を調べる組と、情報屋を探す組。何か進展があったらその都度連絡ってことで」

 

遊介の提案に反対する者はいない。よって風の世界に入ってから『players』は二手に分かれた。

 

怪鳥アルスへの道を探すのは、遊介、ブルームガール、エリーの3人。そして、情報屋を探すのは、柚子、遊矢、マイケルの3人となった。

 

アルスへの道を探す遊介とブルームガール。その後ろをついてくるエリーはさっそく、一番近くの怪鳥へとDボードを走らせる。

 

「すごーい」

 

まるで子供のような感想を呟きながら、向かった先の街を上空から見下ろすブルームガール。しかし、大きな生き物の上に広がる街を見るとそこが巨大な生物の上だとは思わない。何より、街だけでなく、木々や花、そして岩と言った大自然も街の近くに存在するところを見ると、本当の大地の何ら遜色ない光景がそこに広がっているのだ。

 

怪鳥は時々羽ばたいているため翼がある方角から入ると、その巨大な翼で叩かれるため入るとは基本前方か後方からだと決まっている。その中で、街に直接は入れそうな後方から第1の怪鳥に潜入を試みた。

 

その街は木造建築を主とする一軒家が数多く並ぶ、田舎町という印象を受ける。しかし、寂れているわけではなく、人の往来は活発に行われ、食品や雑貨を売る露店が数多く並んでいる。

 

これはこれで面白そうだったが、風の世界の調査が今回は最優先のため、露店をスルーしようとする遊介。

 

しかし、女性陣はそうはいかない。

 

光の世界では見たことがない服、おいしそうなスイーツ。それらを見て好奇心を刺激されまくったあげく、歩くスピードがどんどんと落ちていく。

 

「……あの、少し見てく?」

 

そう提案した時の、ブルームガールの目の輝かせ方を遊介は忘れることはないだろう。

 

ブルームガールはエリーを連れて、様々な店に入っては店内を巡っていく。しかし、さすがに遊介に気を使っているのか、一つの店につき10分以内に品が決まらなければ次の店に行くというルールでお買い物をすることに。

 

そのおかげで普段よりはものすごく速いショッピングではあったが、いくら1軒10分とはいえ、20軒巡っていたら3時間以上かかる。

 

結局お昼になってしまい、なんの情報も得られずに、テラス席のあるおしゃれな飲食店に入った。

 

そこは、風の世界のインフォーメーションセンターと併設しているため、今までこの街を巡った甲斐があったというものだと、遊介は今までの街巡りを意味があったものでほっとしている。

 

実は今のお昼休みの1時間前にすでにマイケルからメールが入っている。情報屋を発見することができたそうで、チームのお金を使って紙のカードの場所とその他有益な情報を得たという情報が入っている。紙のカード、オベリスクの巨神兵は地の世界のどこかに封印されているらしい。また、サイバースの融合モンスターやシンクロモンスター、エクシーズモンスター、儀式モンスターが発見されたとか。

 

ブルームガールやエリーが楽しそうなところを見て、さすがに水を差す気にはなれなかったものの、マイケルのメールを見てからは、これ以上時間もかけていられないと思っていたところだ。有益な情報を得られそうな場所に着いたことに一安心した遊介は、昼食でなぜか大きなパフェを頼んだブルームガールと、巻き込まれながらも楽しみに待機するエリーを置いて、遊介は隣接しているインフォーメーションセンターへと赴く。

 

総合案内所で情報収集をする。怪鳥アルスはDボードでは行くことができないほどの高度とはいえ、エリアマスターの居城へと行くための手段としてはあまり秘密裏にはされていないはずだと、遊介は睨んでいた。

 

実際その通りで、調べてみると3通りほどの行き方が存在するという。

 

シムルグのレンタルは片道100万。頭がおかしいのではないかと思ったが、それは逆に、アルスは神聖な場所であるというのが風の世界では常識であることを示唆していて、エリアマスターは自分と違い他者との交流を進んで行うわけではないということが伺える。

 

「どうしたものか」

 

しかし、時間をあまりかけたくはないし金もない。

 

不本意ながら、その建物の受付を行っている男性に自己紹介をすることにした。

 

「光の世界のエリアマスターの遊介だ。風の世界のエリアマスターと話がしたい。どうすればいい?」

 

権力を振りかざすようであまり気は進まなかったものの、もしかすると要人となれば裏ルートが存在するかもしれない。その期待をもって遊介は自らエリアマスターであることを白状する。

 

すると、インフォーメーションセンターの受付の男性の表情が一変する。

 

「……要件は?」

 

ニコニコした顔から、恐ろしさを感じるほど険しい顔へ。

 

「同盟を組みたい」

 

「いま伝えてきます。昼食は?」

 

「まだとっていない」

 

「では、昼食の後、またこちらまで来てください。その間に、大聖堂へと連絡を通しておきます」

 

遊介はとりあえず、その受付の男に従うことにした。

 

飲食店に戻った遊介は、ブルームガールとエリーが待っている席へと足早に急ぐ。

 

1キロはあるだろう甘味を二人で頬張る姿は何とも愛らしい。

 

そして遊介が席に座ろうとした瞬間。

 

「二股……」

 

という、なんの根拠もない言葉は近くから聞こえてきたのも、気のせいではないのだ。

 

「マスター、どちらへ行っていたのですか?」

 

「ああ、隣の建物ですこし調べてきたんだ。エリアマスターへの道も何とか手立ては見つかりそうだよ」

 

「ごめんなさい、私たちだけ」

 

申し訳なさそうなエリーはまだいい方だと遊介はため息をつく。

 

「ご苦労様」

 

ブルームガールはスプーンに生クリームを乗せて差し出してくる。

 

「あーん」

 

まさか食べさせようとしているのか。その考えに至るまで遊介は5秒の時間を要する。そして理解した瞬間恥ずかしさのあまり拒絶しようと思ったが、さすがに先輩相手にそうもいかない。

 

自分の恥程度で仲間が満足してくれるならと、意を決してそのクリームを口に入れる。

 

美味なのは間違いない。しかし、それ以上に恥ずかしい。まるでカップルみたいなことをしてしまっていることに頭が熱で爆発しそうになっている。

 

そしてそれを見たエリーは、少し悩むと、なんとブルームガールの真似をしてきたのだ。

 

「あーん……です」

 

「エリー……?」

 

「その、マスターが嬉しそうだったので、私も微力ながらお手伝いをと……」

 

単に遊介に喜んでほしいという一心のエリー。それが理解できるほどには他人の心がわかる遊介。それを拒むこともできるはずはなく、ウェイターの男から、もてなす側がしてはいけない殺気を感じられるのもまた、気のせいではあるまい。

 

仕方なく、エリーから差し出されたのも食べる。

 

「ありがと」

 

「いいえ、私、もっとお役に立ちたいとおもっていますから」

 

近くでブルームガールがニヤニヤしながらこの状況を楽しんでいた様子も、遊介ははっきりと確認した。

 

 

 

遊介は連れの2人を案内しながら、先ほどの案内の通り、インフォーメーションセンターへと戻る。

 

先ほどの男性を探したが見当たらない。

 

「寂れているのかもね」

 

そんなことはないと遊介は思ったが、そこで先ほど訪れた時との違いに気が付く。

 

人がいない。

 

受付の人もいない。観光客や立ち寄っている客もいない。本当に誰もいない。

 

「皆さんお出かけ中でしょうか? もしくは休み?」

 

エリーがそんな推測をするが、それは間違いだ。先ほどセンター内を見回っていた遊介は、今日が営業日であること、従業員の数が十分いること、人がいなくなるようなタイミングがないほどにぎわっていることを間違いなく確認している。

 

「そんなはずは……」

 

首をフクロウがごとく傾げてみる。当然そんなことでこの謎を解明することはできない。

 

しかし、光明は自ら発見するばかりではなく、時に向こうからやってくることもある。

 

インフォーメーションセンターの扉が開き、一人の男が堂々と仁王立ちをしていた。

 

見ると後ろに神の鳥シムルグが降臨している。

 

「貴様か? 光の国の戦士と言うのは?」

 

「ああ」

 

そう問うその男は、自らが風の世界のエリアマスターに通じるものだと自白しているようなものである。

 

随分と太い声をしたその男。巨体であり、鍛え上げられている体があることを、服をフル装備している状態からでも察することができるレベルであるが、声が成人男性に比べ少し迫力が足りない。まだ未成年だと見受けられる。

 

「俺は風世界のエリアマスターが要するデュエリスト組織、ランサーズ所属の者だ」

 

ランサーズ、遊介はどこかで聞いたような、という程度にしか覚えていない名前だった。

 

「ランサーズ……」

 

「光の世界の噂は聞いている。なかなかに悪くない世界だ。俺も実際に行ったことはないが、噂で流れてくる話だけでも、お前達がいい人間であることは察することはできる」

 

そう言われると悪い気がしないが、それだけでは収まらないことを、その男は険しい表情で示していた。

 

「俺達ランサーズは、光の世界との同盟を結ぶのは悪くないと思っている。俺達のリーダーであるエリアマスターもそう言っているところだ」

 

しかし、その男はこちらを睨んで来る。

 

「だが、ただで同盟と言うわけにはいかない」

 

それはもちろんだろう。さすがにそれは遊介も覚悟している。光の世界からは戦力となるデュエリストを貸し出すなどはできないが、できる限りの事はするつもりだった。

 

「じゃあ、どうしろって?」

 

「俺達ランサーズの目的、お前は知っているか?」

 

「……いいや」

 

「イリアステルの討伐。俺達ランサーズは、各世界でイリアステルに故郷を滅ぼされた人間を集め、他の世界にその危害が及ばないようにするためにイリアステルと戦うことを目的としたデュエリスト集団。風の世界は俺達の本拠地。その風の世界と同盟を組むからには、貴様らにもイリアステルと戦う意思がなければならないということだ。そしてそれを語るに十分な強さがあることも」

 

「つまり、どうしろと?」

 

「俺と戦え。俺に負けるようなエリアマスターと同盟は組まない。俺達のエリアマスター、赤馬零児はそう言っていた。そして、俺もそれには同意する。弱い者は淘汰される以上、俺たちの戦いに、俺より弱い者を巻き込むことはできん」

 

同盟を組む条件は、まさかのデュエルだった。

 

遊介は驚いたが、よく考えるとここはデュエルの腕がものを言う世界。確かな実力を示せない人間に信用はおかれないのも納得である。

 

そして、デュエルとなれば、遊介に断る理由はない。

 

「分かった。なら、俺が相手になればいいんだな?」

 

「無論! 表に出ろ!」

 

男は背中を向け、この建物の外へと誘う。

 

遊介はデュエルディスクをセットし、デッキの最終確認を行うべく、デュエルディスクの画面を覗いた。しかし、その瞬間を見計らって、遊介よりも先に外に駆け出す人間がいるとは思いもしなかった。

 

「ちょっと、エリー?」

 

ブルームガールの驚いた声でようやく気が付いた遊介は、エリーがすでに自分より前に出ていることを認識する。

 

「エリー、何を」

 

デュエルを受ける気満々だった遊介は、エリーに向かって疑問を投げかける。しかし、エリーは申し訳なさそうな顔は微塵も見せず、むしろデュエルを挑んできた男を睨む。

 

「エリアマスターのデュエルは神聖なデュエルです。あなたのような名乗りも上げない男の相手をする程度の御方ではありません。従者である私が相手になります」

 

まさかの宣戦布告。

 

確かにエリーにとっては、光の世界のエリアマスターである遊介の存在は大きい。しかし、以前はこれほどに激しい自己主張を行うことはなかった。

 

「従者?」

 

「はい。私はエリーと申します。偉大な光の世界のエリアマスターの一番弟子でもあります」

 

そんなことにした覚えはないのだが、と今度は本気で首をフクロウが如くひねる遊介。しかし、決して悪い気はしない。遊介はこの行動にすこし納得した。以前から彼女は、エリアマスターの自分の役に立ちたいと公言し、何度も有言実行してきた。遊介はそれだけでとっても助かっていると思っているのだが、遊介から見てエリーはまだまだ満足いっていないような様子に見えることもあった。

 

遊介の予想では、エリーは明確な戦果を挙げていないことを気にしているのではないか、と思っている。

 

実際雑務などは積極的に行っているものの、エリーはチームの手伝いを自分の手柄ではなく、自分を救ってくれた人たちのために果たすべき義務と思っている節が強く、役に立つというのが義務の遂行だけで満足するのではなく、そのうえで確かな成果を挙げることだと思っていた。そのために、強者を倒し、自分も役に立つのだと証明できるまでは満足しなかったのである。

 

故に、このタイミングはエリーにとって、まさに絶好のアピールポイントなのである。

 

「マスターは私よりも数段強いです。私に後れを取る人間に、マスターは倒せません。先に私を倒しなさい!」

 

「……その覚悟、しかと受け取った。では、先にお前を倒し、エリアマスターの実力を測る! 構えるがいい!」

 

男もそのデュエルに乗り気になりデュエルディスクを構えた。

 

エリーはここで初めて遊介の方を向く。

 

「ここは、私がやります」

 

「でも、いいのか?」

 

「はい。私だって闇の世界で、マスターと一緒に生き残ってきました。これからは私もお手伝いします。私も、もう足手まといにはなりません!」

 

ブルームガールは目を輝かせているのは、愛すべき妹分の彼女が頼もしく成長した、と言う姉心を爆発させているからである。

 

そして遊介もまた、最初に出会った頃に比べ、自分達の仲間として生き生きとしているエリーを見て、少し嬉しくなった。

 

「分かった」

 

エリーが意気込んでいるところを邪魔してまで自分が戦う理由はない。遊介はそう思い、ランサーズの男に念のためこのデュエルのルールを問う。

 

「当然このデュエル、賭けはなしだな?」

 

「いかにも! これは試練であり、命の奪い合いにあらず。であるならば、LPを賭ける理由もなし。存分に力を発揮できるというものだ」

 

「分かった。お前がいいなら、先にエリーとやってもらうぞ」

 

「構わん」

 

ランサーズの男は、デュエルディスクを構えたエリーに叫ぶ。

 

「来い! 光の世界のデュエリスト! ランサーズの鉄壁の武者。権現坂昇が相手になる!」

 

「はい。よろしくお願いします!」

 

デュエルのルールはマスターデュエル。つまり、実力勝負。

 

エリーは闇の世界に行く前、ブルームガールを相手に手も足も出なかったという。それを本人から聞いた遊介は、ランサーズを相手に今の彼女がどれほど強くなったのか、少し楽しみになった。

 

エリーの試練のデュエルが始まる。

 

「デュエル」

「デュエル!」

 

エリー LP4000 手札5

モンスター

魔法罠

 

権現坂 LP4000 手札5

モンスター

魔法罠

 

(権現坂)

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

  □   □     EXモンスターゾーン

□ □ □ □ □   メインモンスターゾーン

□ □ □ □ □   魔法罠ゾーン

(エリー)

 

 

デュエルが始まった途端、エリーは感じる。

 

権現坂昇という男は強いと。

 

あふれ出る闘気は激しい戦いを何度も潜り抜けた証。闇の世界の多くの実力者を凌駕する覇気。

 

しかし、エリーには、先ほどまでの自分の意識を翻す気は全くない

 

勝利。ただそれだけを見据える。

 

 

ターン1 

 

 

「これはお前を試す戦い。俺の流儀ではないが、あえてここは先攻をもらう。俺の刺客を倒して見せろ!」

 

先行は権現坂と名乗った巨漢。

 

「俺はスケール1の超重輝将ヒス―Eとスケール8の超重輝将サン―5でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

ペンデュラムゾーンに現れたモンスターは、ロボットであるが外見は武者の姿をしている。権現坂が使うのは、そのような外見を持つモンスターシリーズ。その名を超重武者。

 

「これにより、レベルが2から7までのモンスターが同時に召喚可能!」

 

ペンデュラム召喚の強みは既にエリーは見たことがある。どのようなモンスターが来るか分からないものの、警戒レベルを高める。

 

権現坂は手札から2枚のカードを取った。

 

「争乱の世。そこに生きる命懸けの武者たち。天に描かれた戦いの狼煙を望み、新たな戦いの地へ降臨せよ! ペンデュラム召喚! 出でよ! 超重武者ダイ―8、超重武者コブ―C!」

 

天に描かれた光の軌跡、その中央から2体の武者が馳せ参じる。

 

超重武者ダイ―8 守備表示 レベル4

ATK1200/DEF1800

 

超重武者コブ―C 守備表示 レベル4

ATK900/DEF900

 

権現坂はこれに満足せず、さらに武者たちの力を使う。

 

「超重武者ダイ―8の効果! 自分の墓地に魔法、罠カードがないときに、このカードを攻撃表示にする! そしてデッキから「超重武者装留」モンスター1体を手札に加える!」

 

超重武者ダイ-8 守備表示→攻撃表示

 

「俺はデッキから超重武者装留マカルガエシを手札に加える!」

 

最初は壁を作ってターンエンドか。エリーはここまでのデュエルにそう判断し、手札を見た。最初の攻撃をどうするかを決めるために。

 

しかし、権現坂はそう甘い男ではない。この程度ではなかった。

 

「そして今召喚したモンスター2体をリリース! 超重武者の主将をアドバンス召喚する! 出でよ、超重武者ビックベン―K!」

 

2体の超重武者は天高く跳躍する。そしてその2体が飛んだ先から降臨する、巨大な1体の超重武者の武将。その剛体をもって巨大な武器を振り回す強剛な敵がエリーの前に立ちはだかった。

 

超重武者ビックベン―K 攻撃表示 レベル8

ATK1000/DEF3500

 

「攻撃力は1000……」

 

権現坂は数値を見て油断したエリーのつぶやきを即座に否定する。

 

「否、このカードが召喚に成功した時、このカードの表示形式を変更する!」

 

「え……」

 

超重武者ビックベン―K 攻撃表示→守備表示

 

守備表示になった瞬間、エリーの前に立ちはだかる壁は3500という、ドラゴンでも易々と超えられない数値を持った壁だった。

 

「うわ……」

 

果たして自分に、その壁を超えられるか。

 

すこし怖気ついたエリーに権現坂は叫んだ。

 

「さあ、光の世界の戦士よ。お前がエリアマスターの代わりを果たすというのなら、見事このベン―Kを超えてみろ!」




ちょっと短いですが今回はここまでです。デュエルは次回1話に丸ごと入れたいと思います。

投稿が遅くなり申し訳ありません。先週は短編小説のコンテスト用の小説を書いていたため、こちらにあまり力を注げませんでした。

次回はエリーちゃんと権現坂のデュエルになります。ランサーズの登場はかねてから
予定していましたが、やはりアニメが終わって1年以上たつとどんなキャラだったか忘れてしまっています。

一応、時間の許す限り復習したつもりですが、なにか間違いがあればご容赦いただければと思います。

(アニメ風次回予告)

鉄壁の武者の守りの構えからの猛攻。圧倒的なまでの一撃をもろにうけてなお、エリーは歯を食いしばって立ち上がる。その心に宿っているのは、自分を救ってくれた多くの仲間への感謝の念と、遠すぎる彼らへのあこがれ。今、彼らに追いつくための一歩を踏み出す!


次回 遊戯王VRAINS~『もう一人のLINKVRAINSの英雄』~

   「光の世界の天使」

   イントゥ・ザ・ヴレインズ!

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