遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。
これでOKという人はお楽しみください!
「遊介はさ。古代文明に興味はあるかい?」
「ああ、まあ、ないわけじゃないけど詳しくは知らないな……」
「僕の趣味は自分の知らない文明について学ぶことなんだ。良かったら、君たちの世界についても、僕に教えてほしいな!」
「ああ、喜んで」
「改めて、私たちが今いるチーム『players』のリーダー遊介よ。サイバース族の使い手」
「……柚子、彼、そんなに強く見えないのだけれど」
「そう? 結構勝率もいいってブルームガールが言ってたけど」
「うーん、どうかしら、ちょっとデュエルしなさいよ」
「ええ……、むっちゃ疲れてるんだけど……」
「つまり、遊矢とこの俺、そして柚子と、この写真にいる沢渡という男は、長い戦いを共に走りぬいてきた親友と言うことだ」
「沢渡は友達か?」
「当たり前だ。共に同じ境遇で戦ってきた心の友だろう」
「どうかな……。俺的には遊介の方が友達って感じがするんだけど……」
「それは嬉しいけど……同じ世界出身なんだし、俺はまだまだじゃないか?」
「どうかな。遊介はいいやつだけど、沢渡のやつは……」
イリアステルとの戦いが終わって数時間。大聖堂から去り、風の世界の酒場兼宿屋を借りてのランサーズとの懇親会の最中に、遊介当てへの1通のメッセージ。
その衝撃の知らせは唐突に入ってきた。
「負けた。すまない」
その謝罪の一言と、その後、現在の光の世界の様子が細やかに説明されていた。
攻めてきたイリアステルの戦士は、遊介が明日の夕暮れまでに帰ってこなかった場合、光の世界の住人を、子どもから少しづつ処刑していくという布施を出した。
しかし、遊介が現れたら、それ以上手は出さず、遊介と真っ先に戦うという。
他の世界にいるだろう遊介が逃げられないように、その宣言はすべての世界に張り紙として張られることになっているという。
先ほど、風の世界の入り口にあたる町の掲示板にもそのような記載のある紙が貼りつけられていたのを、エリーが確認している。
「大丈夫ですか……?」
実は遊介はかなりのダメージを受けている。
先ほどのイリアステルの戦いで、LP4000以上のダメージをもろに受け、かなり疲弊している。赤馬零児もまた、顔には出さないものの、最初に会った時より比べかなり顔色が悪い。
あの赤馬零児もあの状態なのだ。遊介の方は疲れと痛みがどっと出て、懇親会においてもぐったりとしている。
「ああ、大丈夫だ」
しかし、止まってはいられない状況だ。
すぐに戻らなければ、光の世界が危ない。せっかく光の世界の安寧を守るために行動を起こしてきたというのに、ここでリタイアなどもっての他だ。
「すぐに行かないとな」
「でも、お体が……」
「黙っているわけにも」
赤馬零児が近づいてくる。
「君はもう少し休憩してからのほうがいいだろう。君にはチームメイトがいる。そして同盟相手である我々も。たまには仲間を使うのも考えた方がいい。光の世界への救援はまず仲間に向かわせるのがいい。ランサーズのミハエル、権現坂、光津も同行させよう」
「でも、無責任じゃ」
「リーダーたるもの、人を使うことも覚えた方がいい。何もかも一人で背負う必要はないだろう」
気づけば遊介の周りにはすでに出発準備を整えたメンバーが集まり始めている。
マイケルは遊介の顔を覗き込んで、
「まあ、安心して俺らに任せろっての。光の世界のデュエリストは少数だが精鋭。そう易々とは負けねって」
「マイケル、いいのか?」
「おうよ。その代わり、逃げんなよ? 少し休憩したら必ず追いかけてこい!」
「……すまん」
「おうよ。リーダーの期待に応えて来るさ」
そしてブルームガールとエリーも、
「まっかせなさい。見せてあげるわ、光の世界の力を」
「マスター、どうか今はご安静に。無理して向こうで倒れる方が危険ですから……」
頼もしい言葉を聞かせてくれたので、遊介は赤馬の言う通り、仲間を信じて送り出す決心をした。
光の世界への凱旋の仕方は赤馬零児がすでに準備を進めていたようで、凱旋組全員にデバイスを渡す。ランサーズだけでなく、playersのメンバーにも。秘書が1人につき1つ手渡しで渡された。
「諸君、それは緊急用の音声通信装置だ。デュエルディスクを通してでは傍受される恐れがあるため、我々独自の電波を使った技術で音声通信を行う。ただし、相手に盗られそうになったら後ろのボタンを使い自爆させろ。この技術は秘匿するよう」
沈黙は了解の代わりである。
「じゃあ、頼む、遊矢、柚子、エリー、マイケル、ブルームガール」
「死ぬな。何かあれば必ず戻ってくるよう。いいな?」
出撃組がそれに頷き、遊矢以外の全員が懇親会の建物を飛び出す。
「零児、なんか、丸くなったな」
「榊遊矢。君の実力にかかっている。私を失望させるな。最高のエンタメで倒して見せろ。私が認めるような」
「分かったよ。そこで待ってな」
そして遊矢も出撃組の後を追った。
「……行ったな」
赤馬零児は見送った後、遊介の近くに座る。
「ゆっくりと懇親会ができなかったのは残念だが、同盟の後すぐに分かれなかったのは幸運だったな」
この懇親会、実は赤馬零児が発案したものだった。すぐに戻らず、親睦を深めようと。
なぜ、と遊介は思ったが今になって、その理由は分かった気がしている。
「あんた、ヴィクターが負ける可能性を考えてたんだ」
「デュエルは勝負だ。勝つこともあれば負けることもある。勝敗どちらに転んでも、次を用意するのが勝負者の役目だ」
「勝負者、管理者じゃなくてか?」
「私もこの世界では、イリアステルに挑む1人のチャレンジャー、であれば、可能な限り仲間を集め、勝つための策を整える。全ては勝利するために」
「ありがとう、メンバーを貸してくれて」
「いや……どちらにしてもあの3人は光の世界に向かわせるつもりだった。今の光の世界の情勢を調べさせるために。それに……」
「……それに?」
「今の君の状況を考えると、このタイミングで――」
赤馬零児がその後言ったことに、遊介は驚きはしたものの有り得ない話ではないと納得する。
「でも、まさか……」
「もし、私が彼女の立場だったら、そうする、と言うだけの話だ。なんにせよここから先に起こることには確証がない。戦力ができる限り多い方が、もしもの時に対応できる」
遊介の心に、大きな不安がのしかかる。
そうはならないでくれと。
Dボードに乗って猛スピードで光の世界へと向かう一行。
先導するのはブルームガールとマイケル。
「どこに向かう?」
「当然中央の神殿でしょ。イリアステルの奴はそこにいるに違いないわ。敵は1人、ここにいる全員で確実にひねりつぶす!」
「口悪いなぁ、まあ、それには賛成だ」
「そうね、そのまま真っすぐ……」
そう目論むブルームガールの視界の端っこに小さな鳥の群れが見えた。
「……多い」
「待て、ありゃ……」
後ろからも報告が来る。光津真澄から、
「ちょっと、左! あれ、なんかこっちに向かって」
「……まずいな。あの飛行の仕方、エデンの戦闘員の連中だぞ」
向かう先は同じく光の世界。
しかし、イリアステル狙いと言うわけではないだろう。倒しても1500ポイントしか手に入らない。2位以下との差が圧倒的に離れている1位のエデンが今更リスクを背負ってまで、イリアステルを狙う意味はない。
「何のために?」
「分からんが、余計なことをされるのは御免だ」
マイケルの言葉を聞き、いち早く遊矢と柚子が離れていく。
「おい、何を!」
「マイケル、俺らがあいつらと戦う。お前らは先に行け!」
「でも、あの数だぞ?」
「なあに、本気出すから心配するな。多人数相手だとエンタメどころじゃなくなるけど、それでも、たぶんこの中じゃ俺が一番やれる」
「任せていいのか?」
「ああ!」
ブルームガールが、
「任せた! 絶対死ぬなよ!」
と叫び、遊矢と柚子が離れていく。
エデンの一軍、戦闘員だけでも数十名規模、光の世界へと向かう道を邪魔するように、遊矢と柚子が前に出る。
「お前ら、なんで光の世界に行くんだ!」
光の世界の部隊の戦闘を走っていた男は、意外な行動に出た。
「よっしゃ! 当たり! さすがリーダーだぜ」
なんと、ガッツポーズをしたのだ。
遊矢にとっても柚子にとってもその行動は意味不明だった。
「まさかこの2人が釣れるとは! 囲んでくれ! 逃がすなよ、強敵2人、あとで向こうの援軍に行かれると困るからな。でも邪魔はするな! 俺が1対1で倒す!」
包囲される遊矢と柚子、しかし、彼らの気を引けるのならば言うことはない。
しかし、2人とも目の前の男の反応だけが解せない。
「チームエデンの一番槍ケイン! この前の敗北からすぐ復活! まだ保有LPは8000ある、榊遊矢! いざ尋常に勝負!」
「ええ?」
相手の勢いに気圧されそうになっている遊矢。そして柚子にもデュエルの申請が来る。
「ケイン! 今回は真剣勝負じゃなくて」
「ミコト! お前には柊柚子を頼む」
「もう、申請した! それより、今回は時間稼ぎ」
「さあ、勝負だ。榊遊矢!」
ケインに勝負を挑まれる遊矢。元々戦うつもりではいた遊矢は断るつもりはない。しかし、相手の話を聞く限り、まるで自分達と戦うのが予定通りかのような言い方だった。
「なんか、変だな……」
遊矢の中で休息を終えたユートも、遊矢の疑問に同調していた。
光の世界に差し掛かり、『players』が拠点としている街へともうすぐ到着しようとしている。
しかし、様子がおかしい。
「何アレ」
空中を多くの人間がDボードで飛んでいる。まるで何かを捜索しているかのように。
「あ……!」
エリーが何かを発見し、ブルームガールがその方向を見ると、何者かが、光の世界の子供を神殿へと誘拐していく姿が見える。
「何なんですか……あれ!」
「エリー、すぐに行きましょう!」
「はい!」
しかし、マイケルはそれを止める。
「何よ!」
「待て待て待て、あれが全員俺らの敵だったらどうする?」
「でも、なんかよくないことが起こってたら……!」
「だとしても落ち着け。こういう時のために裏口も用意しておいた。そっから街中に行って様子を見るぞ」
裏でランサーズの3人が光の世界の異物に見えるデュエリストの数を数える。
入り口に数十人。門の前で、リーダーを中心に外敵からの侵入者に備えている様子が見られる。
そして空に百名程度。距離があるためにしっかりは見えないものの、全員がデュエルディスクを装備している様子。
マイケルの話はもし事実であれば、要塞に兵士数人で突っ込むというレベルで無謀な行為となるだろう。
「なんですって!」
さらに、唐突にブルームガールの怒ったような声が響き渡る。
「どうした?」
権現坂とマイケルの声が重なる。ブルームガールはデバイスを見せて、今の話を報告する。
「どうもきな臭いわ。遊矢の方もなんか囲まれて向こうにガッツポーズされたって」
「思いっきり怪しいじゃねえか。やっぱり裏口だな」
「でも、向こうにバレてない?」
「分からん。一応中央から俺が入ってみるか? ヤバくなったらお前らが裏から行けばいい」
「脱落前提で話をしないで。遊介だって」
「遊介の事好きだなお前」
「いいでしょ。とにかく、裏口から迂回するわよ!」
「だったらもう着陸するか。飛んでたら目立つもんな」
光の世界の神殿では非常に苛々している2人がいた。
1人はデュエル中、光の世界のデュエリスト十数人に囲まれて不利な状態に追い込まれているイリアステル、ルセカンドルがいた。
「ああ、イライラするわねぇ……!」
十数人を同時に相手に、すぐにLPが0にならずに戦いになっているところはさすがの戦闘力だったものの、攻撃を徹底して防ぎながら、召喚を妨害するデュエリストが十数人とあって、イリアステルのデュエリストと言えど易々デュエルに勝利するということはない。
「ちょっと、戦う気はあるの?」
その問いに答える相手はどこにもいなかった。
もう1人は敗北の後、ふてくされているヴィクターだった。悔しさのあまりデッキを徹夜で組みなおしているところを誘拐され神殿に至る。
神殿では、ヴィクターの他に、急に光の世界へ現れたデュエリストによって神殿へ連れてこられている人間は少なくない。
不思議と子供が多い。そんな彼らに警戒心は何故かない。彼女はが遊介の親友を名乗ったことで、完全に信用しきっているようだった。攫ってきたにしてはとても仲良くしている。コミュニケーション能力が高いのか。
彼女は子供たちの相手を一段落させると、ヴィクターの方へ向かっていく。
「ふふふ、負けたんだってねー」
サングラスをかけているのが非常にウザい、とヴィクターが口に出して先ほど言ったのだが効果はないようだ。
「うるせえ」
「まあ、仕方ないわよねー。イリアステルのやつ強いもん。私も遊びデッキ相手に負けかけたわ。でも、私は勝った」
「てめえ……!」
「ふふふ、悔しい、悔しい?」
煽られているのは十分承知しているが、ヴィクターにとって挑発に乗るのは二の次だった。
一番は、彼女がなぜここにいるのか、ということだった。
「リボルバー、いや彩」
「やだなぁ、そんな怖い顔しないで。私は遊介に会いに来たんだから。別にあなたを挑発しに来ただけじゃないの」
「光の世界からすれば最悪だな。戻ってみればてめえがいるとは。遊介も気が休まらないぜ。ていうか、なんで俺まで誘拐されてんだよ?」
「え、察しつかないの? あなたは人質よ?」
彩は、ニコニコと笑う。
「私この前、遊介と良助と喧嘩するって決めちゃったんだよね。また3人で遊びたいから、私の望みを叶えるために、アイツらが背負ってるものみんな奪って、自由にしてあげようって思って」
そして、顔とは正反対の穏かではない台詞を口にし始めた。
「奪ってって暴力的だな」
「貴方に言われたくないわ。遊介をいつもいじめて」
「俺はあいつに勝ちにこだわってほしいだけだ。そうすればあいつは化ける。凄まじく強くなる。今のあいつはまだ甘い。プロなんてなれるはずはない。けど、俺は、アイツはできる奴だってのは信じている。だからこその荒療治だ」
「あははは」
「何がおかしい」
彩は首を振った。
「いやいや貴方は正しいよ。戦うなら徹底的に勝利を追い求めなければならない。私にとってはこの喧嘩も同じ。私はエデンのリーダーとしてじゃなくて、個人的に絶対に遊介に負けられない。だから勝つための準備をするの」
「準備だぁ?」
「遊介は逃げるような男じゃない。だから十分なエサで誘い出せば私との勝負に必ず乗ってくる。だって逃げるのは格好悪いから。……そろそろかな」
彩はデュエルディスクを確認する。そこにはブルームガールとエリーの映像が映っていた。
裏口には監視の目はなかった。
ここは『players』が光の世界を拠点にしてからひそかに作り上げた地下道。街の外のマンホールを空けて中に入り、地下道を通っていけば神殿内部に到着するようになっている。
いざというときに、住民を逃がすために使ったり自分達が光の世界を出入りするときに使おうと常々話し合っていた。
「凄いな、これ、君たちが全部作ったのかい?」
ミハエルが感心した様子で地下トンネルを評価する。
「作ったのはマイケルよ。こういう隠し通路が欲しい、とは言ってたんだけど、まさか本当に作っているとは。頼りになるわ」
マイケルは自慢げな顔を周りに見せる。
地下道は照明は用意されておらず、今は先導するエリーがライトで前を照らしながら進んでいる。敵の可能性は考えていない。敵に利用されないように、このトンネルを知るのは今日のこの時までマイケルだけだった。マイケルは自力でこのトンネルをつくり、構造を考えた。ブルームガールやエリーもこの存在を先ほど知らされて驚いていた。
「俺に感謝しろよ」
「分かったわ、マスター」
「懐かしいな、その呼び方」
「もう、何か月も前だもんね、バトルシティでカードショップやってたの」
「そうだな。……どうした?」
エリーが止まっていた。それにつられ、ブルームガールとマイケルが止まり、その後ろに来ていたランサーズの3人が止まる。
「どうしたの?」
「誰か、います」
まさか、とマイケルがエリーからライトを強奪し、先を照らす。
そこには遊介がいた。
しかし、自分たちの遊介ではない。一度見たことあるブルームガールやマイケルには分かる。それが本物ではないことに。
そして向こうも隠す気はなかった。
「久しぶりだな」
「ずいぶんボロボロじゃない」
「ああ、この前のデュエルの傷が回復しないんだよ。まあ、榊遊矢はうちの向上心溢れる実働部隊隊長が何とかしているだろう。リベンジしたいところだったが、まあ、それは今度にな」
その話をするということは、目の前にいるのはエクシーズ遊介。
そこまでわかれば、光の世界に来ているデュエリストの正体も分かるというもの。
ブルームガールは歯を食いしばる。せっかく光の世界をエデンから守るために同盟を組んだというのに、防衛を考える前に先手を打たれてしまった。
風の世界へと出発したのはおととい。たった二日間、やむを得ず空けてしまったら攻められた。元々人手が少ないためか、仕方なくヴィクターを残したら敗北。なにもかもがうまくいっていないことに、ブルームガールは己に腹を立てる。
「今度は何を企んでいるの? ていうか、なんでこの道知ってるのよ?」
「うちのリーダーは生ぬるいからな。人の拠点に来たら隠し通路くらい探せっての、ってことで、俺が隠し通路を捜す担当だったんだよ。いやあ、探すのには苦労したぜ。でも見つかった。だったらお前達はここから来ると思ってな」
エクシーズ遊介はデュエルディスクを準備する。
「何よ、私たちと戦うつもり」
「ここから先に逝けるのは、ブルームガール、エリー、お前達二人だけだ。残りはここでエデンのデュエリストと遊んでいてもらおうかな」
それが合図だったのか、後方からデュエリストが迫ってくる。その数は十五人。全員がデュエリストで間違いない。
「ちょっと、まだこんなにいるの?」
「表にあんなにいたのに、エデンはどれだけの兵力を」
ランサーズの真澄とミハエルの所感は間違っていないとブルームガールは思っている。
敵があまりにも多すぎる。エデンのデュエリストは100人程度しかいないという情報は持っていた。仮にそれ以上多かったとしても、自分の陣地を守るのを優先するのならば、それほど多くのデュエリストはここには来ないとふんでいた。
しかし、実際はここまで見ただけでも、およそ300人以上。本当に大戦争でもする気ではないかと言うほどの人数だ。
「さてお嬢さん2人、うちのリーダー、リボルバー様がお待ちだ。ここは平和に解決しようじゃないか?」
エクシーズ遊介の提案に、真っ向から反対しようと思ったが、続けて見せられた画像にエリーが悲鳴をあげる。
「あ、みんな……!」
エリーを慕う子供たちが全員そろって神殿内に集められている。
「人質……!」
「まあ、そういうことだ。ちなみにリーダーには人質作戦は秘密に行った。恨むんなら俺を恨めよ。リーダーは脅迫は苦手らしくてね」
「言うこと聞けってことね……!」
「ブルームガール、ぜひ、我らがリーダーのところへ。俺が案内しよう」
ブルームガールは歯を食いしばるがそれが何か解決になるわけではない。エリーをなだめ、
「行きましょう……エリー」
「……はい」
エクシーズ遊介が神殿へと続く道に向けて歩き出す。エリーとブルームガールはそれについて行く。
マイケルも自然について行こうとしたものの、やはり招待を受けていない人間をエデンの人間が通すつもりはないようで、ブルームガールとの間にエデンのデュエリストが割って入る。
舌打ちをするマイケル。そしてデュエルは始まった。
マイケルは奥へと消えていくブルームガールとエリーを見て気をつけろと言おうとした。
しかし、何故か言えなかった。
何か、決定的なミスをしたような後悔が、マイケルの中に生じて、口を動かすのを躊躇わせたのだ。
神殿と言えば正直いい思い出はない。
かつては大戦争となったその場所。その場所でまた、穏かではないことが起ころうしているのは確かだろう。
「来た」
そして神殿の中央で、ヴィクターの頬を引っ張って遊んでいたのが、エデンのリーダーであるリボルバーだった。
「私たちに用があるって言うじゃない。何の用?」
ブルームガールはさっそく喧嘩腰。そしてデュエルディスクを準備して、思いっきり戦う準備をしている。
エリーはさすがに喧嘩っ早すぎではないかと思わなくなかったものの、そのブルームガールの行動に反対はしなかった。
「単刀直入に言うと、あなた達とは戦いたくないなーって思って。私たち、友達になれそうなので、一度お話をしてみたかったんです」
「だったら普通にそう言いなさいよ。なんだってこんな人質みたいなこと」
「私はそうしようと思ったんですよ。でも、普通にやっても話に乗ってくれなさそうだって偽遊介が言ってて、勝手に人質まで取りやが……とっちゃって仕方なくこの流れに変更しました。私の目的は、ブルームガール、貴方とエリーちゃんとお話をすることだったので、それができれば過程はまあ目をつぶろうと思って。私も人質を取る方針に切り替えました」
「よくもぬけぬけと……!」
笑みを浮かべながら話をするリボルバーこと彩に、ブルームガールは苛立ちを隠せない。今まで自分たちで必死に守ってきた光の世界に攻撃を仕掛けられているのだから、それは当然の反応だった。
彩もそれが分かっているからこそ、向けられている敵意に過剰に反応はしない。
淡々と自分の目的を果たそうと話を続ける。
「ブルームガール。私たちは光の世界との戦争は望みません」
「戯言を」
「本当です。私が懲らしめたいのはあくまで遊介だけ。私が喧嘩しているのは遊介だけ。だから、あなた達にまで危害を加えることはしたくない」
「でも、遊介を倒そうっていうのなら、私たちのチームが負ける」
現在行われているイベントでは、世界を統べるリーダーが倒されればその世界が1000ポイント喪失することになり、現在の5位の光の世界のリーダーである遊介が負ければ、再び光の世界が最下位に転落する。そして、そうなれば、光の世界は水の世界に吸収される。つまり、植民地となってしまうという解釈が一番合うだろう。
「その前に、あなたたちをエデンで保護……すみません、これは侮りですね。あなたたちに仲間になってもらいたくて」
「仲間になってってどういうこと?」
「そう怖い顔をしないで下さい。私は、ブルームガール、貴方の望みを叶えられる」
「望み?」
「前に遊介と話をしている時、表情が曇ってましたよね。だから、遊介と考えが合わないところがあったんじゃないかなって」
彩の言う『前』とは、遊介と喧嘩別れする前、遊介がチームに自分の意志を伝えに行った時の話だ。
そんな顔をブルームガールはした覚えはなかった。しかし、顔には出ていたのだろうと後悔する。
しかし、ブルームガールの意志は決まっている。
「残念だけど、私はあなたたちの味方にはならない」
「何故?」
「その話はその時にもう済んでる。私はエデンには協調しない。遊介が戦うのならば、私は彼の意見を尊重するわ」
「そうですか。……遊介の事、好きなんですね?」
「え、いや、そういうわけじゃ」
「赤くなっちゃって、可愛いんですからー」
彩はブルームガールをからかう一方で、徐々に顔から笑みが消えていく。
「以外と意思は堅そうですね……でも、私は本当にあなたと喧嘩はしたくないんだけどな……」
彩は手に持ったリモコンを空中に向ける。
ボタンをいくつか押し、5つの映像が映し出される。綺麗な五角形になっているのは彩の趣味だろう。
一番上。どこかへと向かっているエデンのデュエリスト。そしてその下4つには、遊矢と柚子、地下道で戦っているランサーズの姿がある。
「一番上、どこへ向かっているでしょうか?」
「あなた……!」
「このままいけば、エデンの戦士50人が、風の世界を出た遊介を一気に襲撃します。一応、彼のところに向かわせたのはここらで雑用をしている連中とは違う、エデンの精鋭部隊」
「さっきから思っているけど、よくそんな兵力用意できたわね……。水の世界の本部もあるでしょうに」
「ふふふ、やだなぁ、これは遊介がふっかけた喧嘩ですよ。全力で応えないと親友に失礼でしょ?」
「は?」
「全武力、だけじゃない。エデンの全員が、全員が私に協力してくれているの。戦闘員だけで500名、その他の雑務でも1000名以上。絶対に勝つためにね」
後編につづく。