遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
詳しい前書きと一緒に前編からご覧ください。
前編を呼んでくださった皆さん。
ここから後編です。どうぞ!
(4話前編からの続き)
ユートはすさまじい気迫で、牙を抑えないことを宣言する。
「俺は手札から速攻魔法! 幻影の連刃を発動! 闇属性エクシーズモンスターが相手モンスターを破壊した時、墓地のファントムナイツエクシーズモンスター1体を選択! そのモンスターを特殊召喚し、このカードをそのモンスターのオーバーレイユニットとする! 蘇れ! ファントムナイツ・ブレイクソード!」
黒の騎士は地獄から戻ってくるかのように、地面から黒い召喚のゲートを通って現れる。
幻影騎士団ブレイクソード 攻撃表示
ATK2000/DEF1000
「やば……! 結構ピンチかも……」
ブルームガールは慌てたことを表す一言を言い放った。
ユートの狙いは単純だった。速攻。その一つのみ。
次元戦争を戦う中で、彼が見つけた1つの境地。知略を巡らす中で4000という少ないライフを削り合う戦い。その戦いで、己の象徴たる黒い竜をその中で最大限に活かす方法は何か。
ダークリベリオンは召喚しやすく、そして効果と攻撃が通れば2500のダメージを確実に与えられる。そうすれば残りの相手ライフは1500.1500であれば工夫次第で削り切れるとユートは思っている。ダークリベリオンによって削ったライフで相手の反撃のチャンスを与えるのは生ぬるく、勝てる戦いに確実に勝つために、牙は深く、鋭く、相手を一瞬のうちに慈悲なく滅ぼす一撃でなければならない。
(ユート……余裕のない戦い方だな……)
「遊矢。お前はエンタメデュエルをやればいい。お前の甘さを正すのが今の俺の在り方だ。デュエルでみんなに笑顔を。それを実行するのは最高のエンターテイナーであるお前だ。俺は……これでいい」
(楽しいのか?)
「楽しくないわけじゃないさ。だが、俺がデュエルを100パーセント楽しむようになるには、俺達の戦いに決着をつけなければならない。それまでは、俺の戦い方はこれでいい」
遊介は独り言を言うユートを見た。
「……なんだろう……?」
遊介にはその内容がよく聞こえていなかった。
ユートの刃は、劣勢は免れないと思われた盤面をたった1ターンで崩し、ブルームガールを斬り裂こうとしていた。
「ブレイクソードでダイレクトアタック!」
黒の騎士はブルームガールに迫る。
しかし、彼女もまた無抵抗ではない。
「罠カード! トリックスター・アンコール! このカードはこのターン破壊されたトリックスターを墓地から特殊召喚する! 戻ってきて! トリックスター・ホーリーエンジェル!」
トリックスター・ホーリーエンジェル
リンクマーカー 右下 左下
ATK2000/LINK2
ブルームガールは舞い戻った自らの相棒を見て、消えていた顔に再び自信を灯らせた。
「アンコールの効果で戻ってきたホーリーエンジェルは、このターン破壊されない! それでも攻撃する?」
このまま激突すれば、消滅するのはブレイクソードだけになる。明らかに損するだけなのだが、
「攻撃は続行だ! ブレイクソード! ホーリーエンジェルを攻撃!」
ユートはそのまま攻撃することを選んだ。
「なら、アンコールで戻ってきたあなたの力、見せてあげなさい!」
ホーリーエンジェルは先に鈍器をつけている物騒なムチを持つと、器用に操ってその先端を黒い騎士にぶつけた。黒い騎士は衝撃に耐えられず馬から落下し、光の粒子となって四散する。
(引き分け) トリックスター・ホーリーエンジェル ATK2000 VS 幻影騎士団ブレイクソード ATK2000 (引き分け)
しかし、ユートはそれを気に留めず、さらに恐ろしい攻撃を仕掛けようとしていた。
「スキル発動! リベリオンソウル! 俺のライフが相手を下回っているとき、墓地のファントムナイツモンスター3体を除外して発動! このターン攻撃を終えたダークリベリオンは、もう一度だけ攻撃が可能になる! 反逆の意思はデュエリストである俺も秘めている! ダークリベリオン、俺の意思と共に再び牙を突き立てろ!」
その宣言とともに、咆哮をあげる黒い竜。
ブルームガールの背中を見ている遊介は思う。きっと焦っているだろうと。これほどまでに容赦のない連続攻撃に対して、防御力が低い欠点を持つトリックスター主軸のデッキでは厳しいかもしれないと。
しかし、ブルームガールが本当にしていた顔は、まだ負けていないという勝負の顔だった。
「スキル発動! トリックスター・イリュージョンギミック! 相手のバトルフェイズ中に発動できる。、墓地のトリックスターを1体選択して特殊召喚。その後フィールド上のトリックスターモンスターと選択したトリックスターを使ってリンク召喚する!」
「新たなトリックスターを呼ぶのか!」
「そうよ。ユート。貴方もスキルを使ったなら、私も使っていいでしょ? まだまだ負けないんだから」
そう言って、後ろを振り向き、勝利を信じているような明るい表情を見せるブルームガール。
それを見た遊介とマイケルはこの時だけ意識がシンクロした。
(可愛いところあるなぁ)
ここにいるブルームガールは、現実世界の氷の女王ではなく、時に厳しく、そして時に優しく、皆を奮いたたせる、まさにアイドルだった。
「さあ、お先に見せ場をいただくわ。ユートくん」
「……来い!」
いつしかユートの目から殺気が消え、純粋に勝利を求める目になっていたのも、やはり彼女の力だったのだろう。
「私はフィールド上のトリックスター・ホーリーエンジェルと墓地からキャンディナを特殊召喚して……呼ぶわ。光り輝くサーキット!」
天井に再びゲートが開き、青の天使と黄色の花がそのゲート中へと身を投じていった。
「私はリンク2のホーリーエンジェルとキャンディナ1体をリンクマーカーにセット! リンク召喚! 彼女が勝利を呼ぶ花の魔術師。トリックスター・フォクシーウィッチ!」
花の魔術師。その形容はあながち間違ってはいない。桃色のかわいらしい服を着用していても、その姿を一番近い比喩で例えるなら、魔法使いだ。
トリックスター・フォクシーウィッチ
リンクマーカー 上 左 右
ATK2200/LINK3
「フォクシーウィッチを特殊召喚した時、相手フィールド上のカード1枚につき200ポイントのダメージを与える! あなたのフィールド上には、伏せカード2枚とダークリベリオン1体。3枚で600のダメージ!」
魔法使いは杖をくるくる振ると、その先から魔法を放った。光の花びらが木枯らしに負けないほどの風を携えて、吹雪のように舞いながらユートを巻き込んだ後、一瞬で去っていく。
「く……」
「ライトステージの効果で200追加!」
ユート LP1200→400
「まだ削るのか……本当に容赦ないな」
うろたえている様子のユートに対して、
「でもこれで私は耐えられるわ」
ブルームガールは言い切った。
ブルームガールの狙いは、ダメージではなくあくまで延命。花の魔術師がダークリベリオンの攻撃を受けても何とかLPは100残る。スキルの使い方としてはかなりギリギリであるが、そもそもブルームガールはこの盤面を予測していなかった中で、刻一刻と迫る己の敗北を回避する1手としては低い評価ではない。
しかし、攻撃が通ればライフは100.さらに手札もない以上絶体絶命の状況を覆すには至らない。これを悪あがきとみる人間もいるだろう。
「あくまで勝利の為か……。恐れ入ったよ」
「さあ、攻撃するならすればいい。私は次引く手札1枚でも戦ってあげるから心配しないで」
しかし、ユートは後を考えれば攻撃すべきところを躊躇った。
「……く」
「どうしたの? 攻撃すればLP100まで削れる。それに可能な限りLPを減らして置くことに損はないはず。私の残りは1500じゃない方がいいと思うけど?」
ブルームガールの言うことは嘘ではない。トリックスターデッキであれば、その可能性は高いと、考察すれば最初に出る類の話。
しかし、それでもユートは、このタイミングで、ブルームガールが出したフォクシーウィッチに嫌な予感があった。
「スキルも使ったのに」
「忠告はありがたいが、俺は攻撃はやめる。ターンエンドだ」
ユートは内から出る3人目に、
(お前! もったいないだろ!)
とツッコまれるが、
「攻め急いで取り返しのつかないことにはしたくないからな。ユーゴ、遊矢から聞いたぞ。この前攻め急ぎすぎて、ピンチになった話」
(な……遊矢!)
意識の奥から出た声の主が、観念して自らの体の奥底へと消えていくのを確認する。
一方。
(本能的回避とかかなぁ……、よく気づいたわ……)
ブルームガールは感心してこの現状を受け止めるしかない状況だった。
ユート LP400 手札0
モンスター 1ダークリベリオン・エクシーズドラゴン
魔法罠 2枚
フィールド
(ユート)
■ ■ □ 魔法罠ゾーン
□ □ □ メインモンスターゾーン
1 ④ EXモンスターゾーン
□ □ □ メインモンスターゾーン
□ □ □ 魔法罠ゾーン
(ブルームガール)
ターン3
遊介は2人のデュエルがたった3ターンでクライマックスを迎えていることに、そこまでの驚きはなかった。
(確かに早いけど……それは、2人が強者であり、どちらもLPを奪うのに躊躇がないデッキだから。だから、まだ3ターン目なのに、これだけ見ごたえのある攻防ができる。そしてそれを迷いなく実行する2人は実力者なんだろうな)
そして遊介の言う通り、最後のターンが始まった。
「じゃあ、私のターンね。ドロー!」
ブルームガール LP1500 手札1
モンスター ④ トリックスター・フォクシーウィッチ
魔法罠
「ふふふ。さて。ユート。あなたを殺しうるのはフォクシーウィッチだけではないわ」
「なに?」
「私は墓地に送ったトリックスター・リンカーネイションの効果を発動。墓地のトリックスター1体を特殊召喚! 来なさい、トリックスターマンジュシカ!」
トリックスタートリックスター・マンジュシカ 攻撃表示
ATK1600/DEF1200
ユートはその姿を見てすぐに手を打つ。
「罠カード。幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)!フィールド上の効果モンスター1体を対象として発動する。今君が出したマンジュシカを俺は選択する。このカードが場にある限り、そのモンスターは攻撃できず、攻撃対象に選ばれない。そして効果が無効化される」
マンジュシカに罠カードから現れた黒い剣が迫る。
「マンジュシカ封じね……」
手を一つ潰されたブルームガールは、それでもなおこのターンで勝負を決めるべく、迷いはしなかった。
「なら……私は今さっきドローした速攻魔法、トリックスターブーケを発動。私のフィールドのトリックスターモンスター1体と表側表示モンスター1体を選ぶ。最初に選んだトリックスターモンスターを手札に戻して、戻したモンスターの元々の攻撃力分の数値を、残した表側表示モンスターに加える。私が手札に戻すのはマンジュシカ。その攻撃力1600分をフォクシーウィッチの攻撃力に加える!」
「マンジュシカが……手札に戻るのか……」
ユートが悔しそうな表情を初めて見せる。
マンジュシカは華麗に空中をひねり入れて二回転跳ぶと、ブルームガールの手札に戻っていく。黒の剣は対象を失い、形が崩れていく。
トリックスター・フォクシーウィッチ ATK2200→3800
「これでダークリベリオンの攻撃力を上回った! さらに私は手札に戻したマンジュシカを通常召喚!」
トリックスタートリックスター・マンジュシカ 攻撃表示
ATK1600/DEF1200
「いっけーフォクシーウィッチ。いよいよあいつを倒すときよ」
ブルームガールが張り切っているのは、フォクシーウィッチの攻撃でいよいよ戦闘ダメージとライトステージで合計400のダメージを受けて、ユートは敗れることになるという算段が付いたからだ。
「バトル! フォクシーウィッチでダークリベリオン・エクシーズドラゴンに攻撃!」
止めの宣言をブルームガールが堂々言い放った。
「やむを得ないか」
ユートは伏せてあったもう1枚のカードを使用する。
「罠カード幻影翼(ファントムウィング)発動。フィールド上のモンスター1体を対象に発動する! そのモンスターの攻撃力は500アップし、1ターンに1度戦闘・効果では破壊されない。俺はダークリベリオンを選択する!」
黒い竜の翼に闇の瘴気が宿る。
ダークリベリオン・エクシーズドラゴン ATK3600→4100
「迎え撃て!」
(勝)ダークリベリオン・エクシーズドラゴン ATK4100 VS トリックスター・フォクシーウィッチ ATK3800
再び魔法を発動しようとしている魔法使いに、黒い竜が急接近した。そしてしなやかな黒い尾で魔法使いを地面にたたきつける。地面には衝撃を表す瓦礫破砕の砂煙が巻き起こった。
「く……」
ブルームガール LP1500→1200
「そして、闇属性モンスターが相手モンスターを戦闘破壊した時、俺は墓地の魔法カード幻影の連刃の効果を発動する」
「え……何かあるの!」
「ああ。俺の隠し刃だ。このカードをゲームから除外し発動。バトルフェイズ終了時、相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、そのモンスターの守備力分のダメージを与える」
「え……」
ブルームガールが驚くのも無理はない。その懐刃はブルームガールをちょうど殺す数値のダメージをたたき出す。
遊介は空いた口がふさがらない。
マンジュシカがいることで、次のターンが危なかったユートは、すでにこのターンで敵を倒しうる仕込みを済ませていたのだ。その手腕は見事の一言。さすがレジスタンスで戦ってきた歴戦のデュエリストだと、遊介は感嘆の一言を口から放ちそうになっていた。
「俺のファントムナイツデッキは墓地でも効果を発揮するカードが多い。だからこそ、どんな状況でも相手を倒す為の攻撃をし続けることができる」
ブルームガールは黙ったままだった。
「……なぜ」
そしてブルームガールは。
ユートにとっては不気味なことに、笑っていた。
「そうね。ただ。一つ指摘良いかしら?」
「……やはり、奴はまずかったか」
「そう。フォクシーウィッチってのがまずかったね」
今の口ぶりは、ユートの死刑宣告を回避する一手であることを示していることは、このデュエルの参加者全員が察する。
「フォクシーウィッチはね、戦闘・効果で破壊されたとき、エクストラデッキからリンク2以下のトリックスターを特殊召喚する。とりあえずトリックスター・スイートデビルを召喚するわ」
巻き起こった煙から、入れ替えマジックのように現れたのは小悪魔系女子。と言っても見た目から入っているタイプの方だ。
トリックスター・スイートデビル
リンクマーカー 左 右
ATK2000/LINK2
「そして、これがフィナーレ。フォクシーウィッチの効果には続きがあるわ。さらに相手のカード1枚につき200のダメージを与える。あなたのフィールドにはダークリベリオンが1体。つまり、200だけだけど」
その続きはユートが直接。自らの負けを示すように言ったのだ。
「ライトステージの効果で追加で200か。それで俺のライフは0になる。どうやら、フォクシーウィッチを召喚されていた時点で、ほぼ確定的に俺は負けていた……ということか」
ユートは甘んじて、最後の攻撃を受けた。
ユート LP400→0
ブルームガールに勝利が決まり、店の中は戦場から穏やかな閉鎖空間に戻る。
「よし!」
その中でノリノリでガッツポーズをする彼女は、遊介が知る限り彩と同等かそれ以上に強いデュエリストであり、そして場を輝かせるアイドルだった。
(俺……まだまだなんだなぁ……)
遊介は落ち込むようにため息をつく。
また、デュエルの疲れと敗北という結果に、もう一人落ち込んでいる男がいた。
瑠璃は近くに行くと、
「お疲れ様」
と声を掛ける。
「情けないな。俺は」
「まあ、相性が悪かったのよ。ユートのデッキ、効果ダメージの対策全然ないんだし」
「ははは……全くだ」
二人仲良く話すその光景を見て、ブルームガールは、そして顔を挙げた遊介は、次元戦争の違う結果を知っているから、どこか嬉しく思うのだった。
お読みいただきありがとうございました。今回のデュエルは前回と違い短期決戦。なんとユートには1ターンしか猶予がないという、彼にとってはハードなデュエルでした。
たった3ターンなのになんでこんなに長くなっちゃったのだろう、という感じのデュエルでしたかいかがだったでしょう。分析するに、トリックスターは動きが複雑すぎて、文で書くのが大変であることがわかりました。ちまちま与える効果ダメージも、文の量が増える原因です。ちなみにブルームガールのトリックスターはこんな感じで殺意高めに行く予定です。
ユートや瑠璃の設定は少し変えてあります。一応アニメ最終話のその後とかではない方向で、設定を変えてアニメシリーズのキャラクターは出していく方針です。黒咲……いないのか。念のため言いますが、彼が嫌いなわけではありませんのでそこは勘違いしないでください。
さて今回執筆を焦りましたのは、来週は投稿をお休みするからです。詳しくは活動報告に記してあります。こんな理由で、来週の出そうと思っていた分を先に出しちゃいました。
さておそらくユートも仲間入りということで次回からはいよいよ最初のイベント戦です。次は遊介に頑張ってもらうことになります。次回5話『弱者を恨む者(前編)』お楽しみに!