遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』 作:femania
シーズン2最終回はしんみりムードです。
遊介は目を覚ます。
意識を失っていたのはすぐに気が付いた。
体を起こそうとするが、いろいろと痛む。これまでも多くの攻撃を受けてきたが、呼吸するたびに体が悲鳴をあげるのは初めてで慣れない。
それでも、今はいつだと、デュエルディスクを見て確認する。
そこで異変に気が付いた。
デッキがない。
周りを見たものの、デッキらしきものがない。
しかし、今自分がどういう状況かは大体理解できた。自分がいるのはベッドの上。包帯を巻かれているところ、誰かに看病されていたということだ。
気温は高い。おそらく外界自体が高い温度を持っているところなのだろうと予想できる。
「起きたか……」
隣にはもう一つベッドがあった。
「ヴィクター?」
「よお、敗北者。一ヵ月も寝やがって、どんだけ体に傷入ってんだよ。俺だって、あれからの戦いで無茶していろいろ骨折して死にかけたけど、3日失神したあと目を覚ましたぞ」
「ここは?」
「炎の世界だ。ほら、いただろ、ジャックアーロン。あいつがいた世界だ」
「どうして、俺は光の世界で……」
「それは、まあ、この後帰って来る奴に聞け」
ヴィクターは、いてて、と辛そうな顔を見せながらも遊介にできるだけ近づこうと、ベッドの端による。
「負けたな。無様に」
「……ああ」
失神したとは言え、忘れるはずがない。彩とのデュエルを。
遊介の主観でも、あれは完敗だった。自分のフィールドには何もなかったのに対し、向こうは未だエースが存在し手札も残っていた。
「そしてお前はこうして、無法地帯の隠れ家に落ちぶれて、アイツは今やこの世界で最も大きなデュエルチームのリーダーとして、今はイリアステルとの戦いに備えているってわけだ」
ヴィクターは遊介のデュエルディスクを見て、
「ああ、お前もデッキを奪われたわけか。全く、あの野郎、することなんでも過激だよな」
デッキを奪われた。
その事実は何よりも遊介を苦しめる。
あのデッキは遊介が一人で組み上げたものではない。マイケルのカード収集力、ブルームガールやユート、遊矢やエリーが練習相手になり、デッキの改善案を提案してもらい、その結果でできた、チームリーダーとしての誇らしいデッキだ。
「……くそ」
「……無様な顔だな。……まあ、オレも人のことは言えんが」
ヴィクターは大きなため息をついた。
「馬鹿な話だよな。あんなに勝利にこだわったのに、いざとなればこのザマだ。何がヴィクターなんだか。そもそも勝者はウィナーっていうんだよ」
「いまさらか」
「ああ。今さら。今になって、弱い自分を見ると……自分を殺したくなる」
そんなことに意味はない、などとは遊介は言えなかった。言う権利がないと思った。なぜなら今の自分もまさにそのような存在だからだ。
あの戦いは勝利以外に意味はなかった。敗北から得るものは何もなかった。
決闘に敗北すると言うことは、即ちすべてを失うということなのだ。
「まあ、せいぜいお互い今は自分を嘲笑うことにしようぜ。お互いに、勝つべき時に勝てなずに全部を失ったクソ野郎の自分をな」
ヴィクターはもう1度ため息をつくと、再びベッドの上で寝てしまった。
遊介は動く分には問題なく、ベッドの上から起き上がる。
体は未だ痛むものの、歩くぶんには問題ない。
一番近くのドアを出ると、すぐそこに玄関があり、先ほどの部屋が寝室だったのが分かる。玄関から出ると、空気の水分がほとんどない乾いた空気と熱気が遊介を包んだ。周りの景色は見たことがある。ここは炎の世界の街の中らしい。
「それなら、すぐ戻れるか……?」
体があまり動かない中で、無理をするのもどうかと思ったものの、遊介は今、自分がどのような状況であるかどうかが分からない。せめて光の世界がどうなったかだけでも確認したかった。
ゆっくりと、一歩ずつ、向かう先へと歩き出す。
しかし、数歩歩いた後、その足を止めることになった。
目の前には一人の女性がいる。
「……守屋遊介。元エリアマスター……ですよね」
つい、頷いてしまった。
そしてそのことをすぐに後悔することになる。
「ああ。ああああああ。見つけた見つけた見つけた見つけた見つけたぁあああああ!」
目を見開き、笑顔を見せると、手にデュエルディスクを持っている。
「あれ、でも……デッキがない? ないんだ……、今デッキを持ってないから、殺せるんだ。私も」
自分の命を狙う刺客だということが分かった。
遊介は逃げようとするが、さすがに今の体の状態では走れない。
デュエルの申請をされたとき、デッキを所持していない場合、代わりにデュエルを行う人間がいない場合、相手は不戦勝となる。猶予は3分。いったんデュエルが申請された以上、遊介に交わす手段はない。
「あ、あはははははははははははは、ざまあみろ、ざまあみろ、殺人者! もうここらに人はいないんだぁ!」
「殺人者……?」
女性は遊介の、意味を理解できないという顔を見て発狂する。
「お前のせいで死んだお前のせいで死んだお前のせいで死んだお前のせいで死んだお前のせいで死んだお前のせいで死んだお前のせいで死んだお前のせいで死んだお前のせいで死んだお前のせいで」
女性は呟きながら遊介に近づいてくる。殺意に溢れる目に遊介は怯みその場を動けない。女性は自身の腕がとどく距離まで近づくと、距離を遊介の顔を殴った。
「ぁ……が……」
今の遊介は脆く、それだけで仰向きに体を倒される。
「ふざけんなよ……てめえ!」
「な……にを……」
「お前があの日負けたせいでなぁあああああ! 弟が死んだんだよおおおお!」
「は……?」
「何も知らないみたいな顔しやがってぇえええええ!」
遊介は再び顔を殴られた。頭が真っ白になり、相手の声がしっかりと脳に刻まれていく。
「あ……ぁぁ」
「お前が負けたせいであそこが戦場になった。光の世界はデュエルが苦手なくせに興味本位でこの世界に来た私の弟みたいな子の拠り所だったんだ。けどな、負けた光の世界は戦場になったんだよ。お前のせいで弟だけじゃないいっぱい人が死んだ、お前のせいで死んだんだ!」
「……そんな」
そんなことになっているなんて遊介は知らなかった。遊介はこの1か月の間、ずっと意識を失っていたのだから。
「エデンの連中はあいつらを守ってくれなかった! 解放軍と戦う中で、イリアステルの連中と戦う中で、他の、過激派の連中と戦う中で、光の世界は戦場になったんだ。住民すら巻き込んで始まった戦争で、しんだしんだぢんだ死んだ死んだしんだしんだぢんだ死んだ死んだんだよおああ!」
涙を流しながら、恨みをぶつける女性。
「全部お前が負けてからだ。全部お前のせいだ。だから、責任をとってお前は死ねよ、弟を返せよ。それか、私の、可愛いれんをかえせえよおおおお!」
衝撃だった。
自分の敗北で、確かにチームのみんなが、光の世界の待遇が悪くなることは、遊介は覚悟していた。
しかし、まさか、自分の敗北がきっかけとなり、多くの光の世界の人々が命を落とすとは思っていなかった。あのデュエルでそれほど重いものを背負っているとは思わなかった、
遊介は、心が抉られるような気分になった。
顔から涙が自然にあふれ出る。
「なんでお前が……泣いてるんだよぉおおおおお!」
猶予時間は残り三十秒。再び殴られ、目の前の景色が歪み始めた今の遊介に助けを呼ぶ体力はない。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
これが報いか。
最後に遊介が思ったのはそんなことだった。
力がないから、勝てなかったから、大切な瞬間に勝利を勝ち取ることもできず、多くを失った。それだけでなく、自分が負けたせいで、不幸な人間を生んだ。
ならば、ここで死ぬのも仕方ない。
遊介は目を閉じる。これは、勝利すらできない無能だった自分への罰なのだと。
「弟ぉをぉお!」
女性とは違う声が聞こえた。
「てめえ、そこで何してる!」
「は?」
女性の遊介を責める声は聞こえなくなった。
デュエルが始まったようで、しばらくの間、爆発音が続く。遊介はずっと目を閉じたままだった。
そして、目を開けると、
「大丈夫か? なんで勝手に外に出てるんだよ」
良助がそこにいた。
部屋に戻り、先ほど受けた傷を治療する。
「たっく、無茶しやがって。お前は今お尋ねものなんだぞ。さっきみたいな恨みを持つ奴とか、エデンとかに狙われてる」
「自覚がなかった。すまん」
「まあいい。この建物は安心しろ。ここはな。解放軍が炎の世界に用があるときに使う専用のコテージなんだ。まあ、そんなわけで医療用道具も少しはある」
「解放軍が……俺を?」
「あのデュエルの後、お前の後に来て、エデンと大戦争をしたんだ。……馬鹿みたいに負けたけどな」
「その時俺を……助けたのか」
「そりゃな。俺はお前の、ダチだからな。いくら解放軍と考えが違くたって、ピンチなら助ける。お前、危なかったんだぜ、墜落してたんだ」
「ああ、それは、なんとなく、覚えてるような」
「まあ、今は無理すんなよ。とりあえず、ここなら安全だ。しばらく過ごしていくといいさ」
遊介は意識を失っていた1か月の間に起こったことの詳しい説明を良助が始める。
遊介はその話を聞くのに恐怖を感じていたものの、自分が負けたことで起こったことをしっかりと受け止めるべきだと自分を鼓舞して、耳を傾ける。
「まず、今のリンクヴレインズの状況だが、あまり良くはない」
「なんでだ?」
「ああ……イベント戦が終わってな。この世界で最も強いチームが決まった。今のリンクヴレインズの勢力は大きく2つに分かれた。エデンに味方をするか、エデンに反抗するか。もはや立場としてはその2つしか残っていない」
「その言い分だと、反逆軍は、ずいぶんと弱ったようだな」
「ああ、エデンに2回も敗北をした俺達はもう、敗北者のレッテルを張られてな。勢力も全盛期の半分。地の世界にあった本部もぶっ壊されて実質的に機能していない状態だよ」
「そうか……エデンが」
「エデンは光の世界と水の世界の2つを本拠地にしながら他の世界にいるデュエリストを次々説得して回りながら、自分達に対抗しようとしてる連中を処分している」
「処分……?」
「説得。それがだめなら拉致して監禁。それでも考えを変えないなら、処分の順だったか。可能な限りの人間を味方につけて、どうしても味方になれないっていう奴らを殺していくことで、この世界の犯行勢力の芽を摘み尽くすつもりだ。まあ、この手の外道戦法は大方エクシーズ遊介のやり口なんだろうがな」
それを聞き、遊介が不安になったのは、自分のチームメイトたちの安否だった。
良助もそれを察したのか、次に話をしたのは遊介のチームメイトについてだった。しかし、それはたった一言で済む説明だった。
「落ち着いて聞け。お前のチームメイトは……ランサーズ等の同盟相手を含め、安否不明だ」
「……っそだろ……」
「今、必至に捜索しているところだが、まだ、彼らの安否についての正しい情報が入ってこない」
良助を責めるわけにはいかず、行き場のない怒りを自分の不甲斐なさに向ける。
「悪いな。解放軍にもっと力があれば、いい情報もあったんだろうが。現状、エデンが本拠地にしている光の世界や水の世界には手を出せる状況じゃない。生きているのならそのどちらかにいるはずなんだが、調査に行けば捕まるか殺される」
「……そうだな」
遊介の声が震えている。今にも嗚咽を漏らしそうな様子だった。
それでも、遊介は意地でも涙を流そうとはしなかった。故郷を整え必死に弱い姿を見せるのを我慢している遊介を良助は見ていられない。
つい、こんな声を掛けてしまう。
「なあ、お前のせいじゃないよ」
「それは」
「こういう言い方良くないかもしれないが、お前らは元々人数は少なすぎた。エデンに戦争をする気があったなら、いずれは終わってた。お前が負けたから、さっきの奴みたいなやつが出て来たわけじゃない。確かに光の世界では犠牲は多く出たが、それは、お前の勝敗に関わらず、こうなるしかなかったんだと、俺は思う。どうしても」
遊介は首を振る。
「確かに負けは決まっていたかもしれない。けど、俺があそこで負けなければ違う未来があったかもしれない」
「デュエルは戦いだ。時の運だってある。勝つときがあれば負けるときだって」
遊介は首を振る。
「光の世界に……デュエルが苦手な人が集まっているのは知ってた。この世界で怖い思いをしていた人が逃げてきた場所だってのも知っていた。俺は、それを知ったうえで、光の世界を守るplayersのリーダーをやり続けた。なら、それはきっと、受けるべき報いなんだ。勝てなかった愚かなエリアマスターとして」
良助はそれを否定する。
「自分の身を守れない奴らの心配をするほどの余裕がある人間なんていない。この世界じゃ生死はすべて自業自得だ」
「だとしても、きっとそれで納得しない奴はいる。その時、怒りのぶつけ先はきっと俺だよ。俺を恨んでいる奴は多いんだろう」
「それは……」
良助は遊介の言葉を否定したかったが否定できなかった。
ここのコテージに遊介がいる。そんな情報をどこからか手に入れた多くのプレイヤーと良助は戦った。何度も。何度も。その中で、多くのデュエリストが言ったことは、
「遊介が負けたせいで、死んだ」
「弱いエリアマスターのせいで、今は地獄を見ている」
「あの時負けたあいつに責任があるんだ」
「死んで償え。あの子を死を」
などなどの、本来は遊介に浴びせるべきではない言葉を言う連中をずっと見てきた。
遊介を恨むなど筋違いだと訴えたものの聞き入れない連中をこの1か月ずっと。
「そうなんだな。そうなんだ……」
遊介は俯く。黙秘は即ち肯定、と遊介は受け取ったのだ。
「遊介、その……」
「分かってた。分かってたさ。仕方ないことだ。これは俺のせいだ。だから関係のない奴らの怨みを受けるのは、まだ耐えられ……なくちゃいけない」
呼吸が荒くなり始める遊介。
「……けど」
「もしも、俺が負けたせいで、エリーやマイケル、ブルームガールがひどい目に遭っていたら、俺はきっと……」
それ以上を言葉にしなかったのは、恐らく素面で言うのがはばかられる内容だったのだろう。
たった一瞬だったが、遊介の目に何か黒いものが見えたのは、良助はあえて見なかったことにした。下手に口に出して意識させたら、それこそ取り返しがつかないような気がしたからだ。
自分を責めている様子の遊介に、良助はそれ以上の言葉をかけられない。
良助も、いつまでも遊介の世話ばかりをしているわけにはいかない事情がある。
解放軍が何とか幹部を吸いなわずに未だ生きているのは、沢渡シンゴとシンクロ遊介が囮となり、エデンの幹部5名を相手に殿を務めてくれたからだ。彼らもまた安否不明となっているが、もはや生きてはいないだろう。
シンクロ遊介が率いた部下について、後事をすべて良助は託されている。
アゼルは残った幹部に加え、各地の反エデン派の実力者をスカウトして戦力を補強し、今一度解放軍を再興し、エデンと戦う準備を始めている。
その中で、遊介の彩と互角に渡り合った腕は必要不可欠だ。
先日のデュエルは、恐らくアルターの仕業で、全世界に公開された。並みのデュエリストでは歯が立たないレベルのデュエリスト相手に健闘する遊介の姿は再び全世界に知られ、敗北者とあざ笑う者や恨みを持つ者を増やす一方で、その腕がハルトの時だけではない本物だと認める人間も少なくなかった。
解放軍はどちらかと言うと、これまで敗北を踏まえ、少しでも実力者が欲しいところで、彩と渡り合うだけのポテンシャルを見せた遊介は、認められている風潮にある。
良助にとって、解放軍に遊介を誘うのは今しかない。
しかし、今の心持ちではさすがに首を縦に振りづらいだろう、と良助は思い、
「遊介、俺はそこで、お前が来るのを待ってる」
解放軍に来てほしいという旨を書いた置き書きを遊介の近くに置く。
「俺は、まだお前に死んでほしくない。ダチとしても、この世界をエデンの隙にはさせたくない、同じ目的を持つものとしても」
良助は、最後、無理するなよ、とだけ言い残し、その部屋を去った。
遊介は一人、思考を巡らす。
自分の敗北から社会の様子は大きく変わった。
事実をまだ見ていない遊介は、今エデンが本当は何をしているか知らない。しかし、自分のチームにやったように、あまりに外道な戦法で、誰かが傷ついているのなら、それは間違っている。
何とか止めなければいけない。
と。
しかし、その一方で、遊介には今、自信がなかった。
もう1度彩と戦えと言われたときに、勝てるビジョンが思い浮かばない。
「……屈するのか?」
ふと口に出した言葉に、それはない、と心が叫んでいた。
もう、あれは許しておけない存在になっている。自分だけでなく、自分の仲間に手を出してまで勝とうとする外道に成り下がった。そんな人間の味方になるなど、醜悪の極みだ。
格好いい人間になりたい。それだけはずっと心の中に存在する。今も変わらない夢であり、理想。
遊介はだからこそ、誰かに屈することも、言いなりになってやることも、認められない。
先ほどの良助が置ていった置き書きにも目を通した。そこに書かれていたのは、解放軍で再起を図ろうという誘いだ。
しかし、解放軍にこのまま向かうのは躊躇われた。
自分たちの理想のために、相容れない人間の犠牲を黙認する組織にはどうしても行きたくなかった。光の世界の犠牲者の数割は解放軍の無茶な戦術によって生まれている。そして、それを先ほど語ってくれた良助は、その犠牲についてなんとも思っていない顔をしていた。
良助もまた元の世界に帰りたいがため、他の犠牲を肯定しているのだ。
しかし遊介にはそんなことはできない。どんなにきれいごとでも、遊介は一番犠牲が少なく済みそうな再現を求めたいと思っている。
だから、やはり解放軍とは相容れないのだ。
遊介は立ち上がる。
先ほどの置き書きの余白に良助へのメッセージを書き、今度はたとえ全身が痛もうとも、気丈に歩きだす。体が無理をするなと言う忠告を遊介は無視し、部屋の外へ。着替えのある部屋の中にある、顔を隠せそうな服装を探す。
サングラスとフードがあったため、今の服から着替え、コテージの中にカードがあるかどうかを探す。残念ながらなかったため、カードは行く先で補給することにした。
遊介はこのコテージを出ていく。
相容れないと分かった以上、解放軍にこれ以上の借りをつくるわけにはいかない。
外に出て、今度は襲われないように、身を隠し裏口から誰にも見つからないようにして、こっそりと外へと出ていく。
幸い敗北後でも、ある程度のデュエルポイントの蓄えがある。自分の愛用したデッキの再現は決して不可能であるが、代わりとなるデッキの準備はできるはずだ。
嘲笑を受ける覚悟はしている。
何も知らない他人から見れば、今の自分が滑稽に見えることを、遊介は分かっているつもりだ。
これからエデンと戦うつもりならば、良助を頼り、解放軍に身を寄せるのが安全で確実な方法だ。それをわざわざ断ったところで、メリットなど何もない。ただ、ついて行くのが気に入らないというだけで、逃げだした駄々っ子と同じようなものだ。
それでも、解放軍に協力するのは気が引けた。遊介は今更誰かの言いなりになって動きたくはない。組織に身を置けば自由に動けなくなるのは目に見えている。
解放軍の戦いが、エデンを倒すために行われるのに対し、遊介の目的は光の世界の奪還と仲間の救出だ。安否不明な人間が生きていると希望を持ち、彼らの救出を第一優先に考える。そのとき、人質として使われる可能性のある自分のチームの人間は、解放軍と共に戦う方法を取れば優先順位が低くされる可能性がある。
それに、そんな理性的な話を抜きにしても、自分でやってしまった責任は自分でとりたかった。ここで誰かに頼れば、自分は一生、自分の力で困難に立ち向かっていけない格好悪い人間になると思った。現実的ではなくても、修羅の道でも、自分の失敗で失ったものをとりかえすときに、他人の力は借りたくなかった。
故に遊介はこれから、解放軍とも足並みをそろえず一人でやっていくことに決めた。
エリーを、マイケルを、ブルームガールを取り戻すその時まで、せめてplayersを復活させるその時まで。
そしてその後は、敗北する前に目指した、ゴールへ向かう戦いの続きをする。光の世界を取り戻し、再び拠点にしてそこで暮らしながら、イリアステルを倒す準備をする。元の世界に帰るために。
乾いた空気を吸い、肺に熱気を吸い込みながら、エデンに対するリベンジへの闘志を燃やし、炎の世界のどことも知れない場所を歩いていく。
目の前に、一人の男が立ちはだかった。
幸いにも良助ではなかったため、遊介は逃げずに済んだ。しかし、決して味方とは言えない存在だった。
「目覚めたんだな」
「……巨大組織のリーダーは、わざわざ敗北者に話しかけてくるほど暇なのか」
アルター。イリアステルのリーダーであり、この歪んだ世界を作り出したトップ。
天城ハルトと戦った後に会った時よりも、目の前の敵はあまりに醜悪な化け物に見える。
この男がつくった世界のせいで。、彩は変わり果てた。多くの人々が苦しみ始めた。
今では、そもそもの元凶であるこの男への、恨みが膨れ上がってきている。
「いい顔だ。敗北を経て、本物の怒りと恨みを知った顔だ」
「……何の用だ」
「今日は君に、今日までの労いをしようと思ってね」
「労いだと……?」
アルターは汗を一つもかかずに、口を動かし続ける。
「君は、この世界、リンクヴレインズを動かすヒーローの1人だった。リンクヴレインズを肯定する敵、我々イリアステルと戦うために必死に戦い続けた。だが、先日の戦いで君は、仲間も、拠点も、デッキも、この世界で生きる術をすべて失った」
「それがどうした」
「君はもう、ゲームオーバーだ」
敵であるはずのその男から告げられた敗北宣言、意外にも遊介の心に刺さった。それはその男が敵である一方で、またこの世界での戦いを俯瞰し管理するゲームマスターであるからか。
自分は、すでにこの世界の敗北者として、認定されたということを確定させる宣言だと言えるからか。
「だが、ここまでよく頑張った遊介君。最前線で、この世界での戦いを盛り上げてくれた勇者である君に、なんの言葉もなく終わりというのはどうも味気がない。せめて、ここまで観客の妹を楽しませる演者として頑張ったことを労いたい。そう思ってね」
「まるで、俺がもう終わりだ、みたいな言い方だな」
遊介がアルターを睨むと、アルターは高らかに笑い出した。
「ははははははははははは! 何を言ってる。君はもう終わりだろう?」
「俺のLPはあと4000も残っている」
「これまで培ったデッキはもうない。捨てられているかもしれないし、燃やされているかもしれない。もう二度と会えないと考えた方がいい。まさか、君は今から奇跡で組み上がったあのデッキと同じレベルの負けたデッキを用意して、またエデンと戦うというのか? あはははは、無理無理」
アルターから見て遊介はよほど無様に見えるのか、あざ笑うのをやめる様子はない。
「同じデッキをつくる必要はない。レベルに多少の違いがあっても、戦えればそれでいい」
「あのレベルの完成されたデッキは二度と完成しないよ?」
「それでもだ」
「あれで勝てなかったのに、まさか、雑に作ったデッキで、彩ちゃんに勝てると思っているのかい? 俺達に勝てると思っているのかい? 実力の一端は、この前風の世界で、遊びのデッキで見せたはずだ。現実を見ることを薦めるが?」
「現実なんて見てどうする。そもそもこの世界で現実と向き合って生きてる奴なんか、どこにもいないだろう。全員が、お前らのような悪党と戦うために今日も動き続けている」
「ははは、それもそうだな。けど、3つだ」
「3つ?」
「今のはほんの1つの理由にすぎない。君が、もうゲームオーバー、この世界を動かす要因ではなくなった敗北者であり、二度と這い上がれないと示す根拠は3つある」
アルターは指で2を示す。
「2つ目。エデンは既に1000以上のデュエリストを率いるデュエル集団だ。君の仲間もそこに囚われているとして、たった1人でエデンの全戦力と戦う気か? それこそ、無謀極まりない。戦いは数だ。勝ち目なんて、万に一つもありはしない」
「だとしても、やらなければいけない」
「ククク、お前、それ本気で言っているのか? あれほどの軍勢となったエデンにたった一人挑むなんて、死ぬしか未来はないぞ」
「御託はいい。3つ目はなんだ」
アルターは再び笑う。
それでも、遊介は特に怒りはしなかった。これからたった1人で戦うなど、普通に考えれば無謀としか言いようがないのは自分でも分かっている。
「見事にヤケになっているなぁ……」
とつぶやいたことにも、遊介は怒りを見せはしなかった。
「3つ目は、これから先、さらに戦いのレベルが上がるからだよ」
「レベルが上がる?」
「雑魚は生きていけない地獄にこの世界は変わる。俺達イリアステルが、そろそろ動き始める。ヌメロンコードの話は覚えているな」
ヌメロンコード、あらゆる願いを叶え、世界を変革する強大な力。
そしてそれを起動するためには、多くのデュエリストが命を賭けて殺し合い、生き残った者の中で最初にその存在にたどり着いた者が願いを叶えられる。
これまでも図らずとも、殺し合いの構図はできていた。
「そろそろ、イリアステルである俺達も本格的に参戦しようと思っててね。ここ最近のデュエリストたちのレベルを見て、この世界のデュエルレベルもそろそろ俺達と遊べるほどにはなったように見えたからさ」
「この世界を別の世界みたいに壊すつもりなのか」
「いいや。今回ばかりはそうはいかないのさ。我が妹の今回の願いは、この世界を自分の物にするってことらしくてね。元々この世界は滅んだ後の世界だったというのは言ったことがあるだろう。今はイリアステルの科学力の賜物である独自のエネルギー源を使い生きた世界っぽくしているが、それはイリアステルがやられたらおしまいだ。元の滅んだ世界に戻ってしまうだろう。だから、まずヌメロンコードで真の世界再生を果たす。その後は、あらゆる世界から人々を呼び出し、妹を楽しませる映画の、ゲームの登場人物になって、この世界でドラマを生み出してもらうよ」
人が死ぬのを不快に思わない集団に思うように動かされたら、命がいくつあっても足りないのは想像に難くない。
「そんなことのために……お前らは人を使い潰すつもりなのか」
「そうだよ。そのためにこの世界にあるヌメロンコードを手に入れる。それでその後は、まあ、まだ考えてないけど、例えば君のように物語のような面白い生き方をする人間を見つけては、すこしちょっかいをかけながらドラマを用意して、その登場人物により面白い物語紡ぎだしてもらう。、それを見せて、妹に楽しんでもらおうと思ってね」
アルターにとって、自分達は画面の向こうにいるべき登場人物であり、生死や人の感情よりも、エンターテイメントとして面白くなるかどうかが重要である。それは人殺しをこの世界に強制させている時点で明らかだ。
「そのためにも、計画の第一段階として、この世界を再生して、外から人をもっと呼べるようにしないと。そのために、イリアステルはそろそろ本腰を入れて君たちとLPを奪い合いを始めるのさ。今の君には、そこで最前線で戦えるだけの力は何もない。つまり、雑魚そのものなんだよ。それじゃあ、これから先の舞台に立つことはできない。故に君はゲームオーバーだ。今までお疲れ様。後はこの世界の行く末が決まるまで、何もせずゆっくり休んでいたまえ。お疲れ様」
「何もせず?」
遊介にひっかかる単語。
「ああ。だってできないだろう? デッキもない。仲間もいない。体もボロボロで、周りには、君を恨んだり、利用したりしようとする敵だらけだ。どう考えたって今の君は詰んでる。生き残れるだけで奇跡と言ってもいい。イリアステル総帥として君に助言をするのなら、何もかも諦めて、自分を生かすことだけに集中するべきだ。もう、望みも理想も捨てて、無様にでも、必死に生きれば、死なずには済むかもしれないぞ?」
遊介は黙った。
「今のこの結果は君が戦ってたどり着いた結果だ。これから何をしようと失った信頼も、仲間も、望みも戻ってこない。だからもう寝ろ。そして、毎日を逃げ回るネズミのように生きて、今日は良いことはなかったけれど、悪いこともなかったと生きていけ。そうすれば誰も君の気に留めない。生存率は大きく上がる。何もかも、命あってこそだぞ?」
アルターは見下すように遊介を見る。
遊介はしばらく、黙った。
しかし、その目は決して光を失うことはなかった。
俯きから再びアルターを方をみた遊介は一言。
「俺は降りない」
堂々と宣言する。
「これから何をしようと無駄に終わる可能性が高いぞ?」
「アルター。俺はまだ負けてない」
「……生意気な目だ。現実が見えていない妄執者の目をしている。ああ、それじゃあ、俺と同じだぞ? お前はいつか悪になる。そうすれば今度こそ、お前が目指す理想には届かなくなる。お前は獣となり、殺される道しか残らない。現実を視ろ。諦めろ。叶わない夢を追う狂人になる前に」
「俺は戻る。元の世界に戻る。今度こそ絶対に負けない」
「ほう?」
遊介は語ったのは、この時は気合を入れるだけの言葉だったが――後になって大きく意味を持つようになる言葉だった。
「俺は勝つ。もう絶対に負けない。負ければすべてを失うのはよく分かった。ヴィクターの言う通りだった。勝たなければならないところで勝てないことはデュエリストとして何よりも愚かだ。ならこれからは負けなければいい。勝ち続ければいい。死ななければ、どれだけ遠い夢でも、少しづつ、近づける」
「……負けなければか。そんなことはきっとあり得ない。イリアステル総帥たる俺も恐れる、万一の敗北をお前はしないと?」
「ああ。進む先に立ちはだかる者があれば超えればいい。その先に、俺は理想を果たす。彩は仲間を殺さないと言った。なら、俺は少しずつでも、もう一度彩と戦えるところまで近づいて、エリーを、マイケルを、ブルームガールを取り返す」
「その後は?」
「みんなで元の世界に帰るために戦うんだ。アルター、お前をたおして、ヌメロンコードに至る」
「そうか……あくまで、お前は元の世界に戻ろうとするわけか」
アルターは言った。
「なあ、遊介、なんで元の世界に戻りたい?」
「この世界はデュエルで人が死ぬ世界だからだ。そんな世界を永続なんてさせない」
「遊介、それはこの世界のルールの否定であるだけだ。元の世界に戻る理由にはなっていない。ヌメロンコードに至れば、この世界のルールである殺し合いを消すことだってできるんだ。今のお前の言い分じゃ、エデンに正義があるぞ」
「この世界は人をおかしくする。彩のように」
「彼女はおかしくなったわけじゃない。この世界でそういう夢を持っただけだ」
「この世界は……」
「俺が訊いているのは、なぜそこまでこの世界の永続を否定するのかだ。この世界の悪しき箇所を訊いているわけじゃない。それこそヌメロンコードの力でどうにでもできるからな」
遊介は、元の世界に戻りたい理由を探す。
なかった。
何もなかった。今まで元の世界に戻ることが当たり前の正義だと思っていた。それだけで帰ろうとしていた。
元の世界に絶対に戻りたいという理由は、どこを探しても見当たらなかった。あるのは、この世界の在り方が間違っているという根拠だけ。もしもそれが、彩の、彼女のやり方に賛同する者が正せば、それが消える。
「それでも、俺は、そうすると決めた。元の世界に戻る。そのために、彩を超えて、お前を倒す」
「なあ遊介くん。理由なき戦いに大義はない。絶対に譲れない誇りがない者に未来はない。たとえ勝ち続けても、その戦いが無為になり続けるだけだ。もっとも、イリアステルはそんな男に負けるつもりはさらさらないがね。だから俺からの最後通告だ。これ以上戦いに首を突っ込むのなら、君に命はないと思え。もう諦めろ。何もかも」
アルターは、遊介とすれ違うように歩き出す。
遊介が後ろを振り返ったときには、すでにアルターの姿はなかった。
「……理由なき戦いに大義はない……」
その男から受けたその言葉が妙に胸に突き刺さった。しかし、敵からの言葉を胸に刻むつもりはなかった。
「あれ……」
目から何かがこぼれる。
ゴミでも入ったのだろうかと疑った。それは涙だった。
「情けないな……今の俺は。なんて、格好悪いんだろうな」
遊介は歩き出す。ここではないどこかへ。
「あいつ……」
コテージに戻った良助の目に映った書き置き。
『俺は、お前とは一緒に行けない』
「馬鹿じゃねえのか。頭湧いてるのは彩だけじゃなかったか。あんな状態でどうやって勝つつもりなんだよ」
良助は何も解放軍の下っ端として自分の部下に加えるつもりはなかった。ただそばにいてもらうだけで、後は自由にやってもらうつもりだった。人手も貸すつもりだった。
「……うるせ」
寝ていたヴィクターが目を覚ます。
「ヴィクター、なんで止めなかった」
「ああ。止める必要はないだろ」
「無謀な賭けに出るかもしれない状態だ。負けて、えげつない負債がある状態なんだぞ」
「死ぬならそれまでの男だ。負けなければいい」
「あのな……!」
「……まあ。ほっといてやれ。言って聞くぐらいの理性があったら、そもそもお前が助けたときもコテージから出てないさ。体の状態を分析して、治るまでは待つだろ。それができないような今の奴に、生半可な説得は無意味だ。現実に打ちのめされるまでは、好きにさせとけ。もしかすると、化けるかもしれないぞ?」
「……てめえ」
「代わりに俺が仲介役をしてやる。何かメッセージがあったら送ってやるさ」
ヴィクターは、いたたた、と言いながら体を起こすと。
「しかし、おかしな話もあったもんだよな。どうしてお前と遊介は一緒に居られないんだろうな。俺はてっきり、遊介はお前と組むと思ってたんだがな」
「……そうだな」
良助はしばらく考え込んで、そして答えた。
「俺は何をしてでも絶対に元の世界に戻る。それが至上命題かそうじゃないかの違いだろうな。彩はそもそも帰るつもりもないし、遊介もこの世界が間違っているというだけで、きっと帰る必要がなかったら帰らないって選択をする可能性はあるだろうな。でも俺は違う。俺には向こうの世界でプロになる夢がある」
遊介は置き書きを悔しそうにぐちゃぐちゃに丸め、ゴミ箱へと捨てる。
「ずっと昔に約束したことがあったな。3人でプロになって同じ舞台に立つって。でも彩や遊介はプロになるのはただの夢だって思ってたみたいだし、3人で同じ舞台に立つってのも、叶えばいいな程度のものなんだよ」
「お前は違うのか?」
「俺にとってそれは生きる目的だ。絶対に叶えたい夢だ。だって格好いいだろ。向こうの世界で、一握りしかなれないプロになって、幼馴染3人でデュエルステージに立つ。世界中の人間の目に俺達が映る。俺はそんな未来に憧れた。だから、元の世界に戻って、最高の名誉を手に入れたい。俺の、命を賭けて叶えたい夢だ」
「へえ……なるほど。気に入った」
「は?」
「いやな。俺は今まで、お前らがふざけてデュエルをしてるお楽しみ集団程度にしか思ってなかった。けど、お前は、ずっと覚悟をもって向き合ってきたんだな。実力はともかく」
「うるせえ」
「解放軍にいるのもそれが理由か」
「ああ。……だから本当は、彩とも遊介とも、一緒に居たかったんだよ。敵対したら殺し合うことになるって思ってな。結果そうなってしまったわけだが、遊介とはこれから一緒にいられると思っただけどな」
良助は寂しそうに書き置きを眺める。
ヴィクターは良助の気持ちを推し量るわけではなかった。
「俺はお前らのところに厄介になることにするか。まあ、世話になった分の恩は返さないとな。その間にデッキも組みなおしてやつにリベンジしてやる」
「なら、せいぜい働いてもらうぞ。遊介を探し出して、エデンを倒すためにな。上手く働いたら、デッキの組みなおしも手伝ってやる」
「へいへい、なら、準備ができるまではおとなしく働きアリにでもなってやるさ。俺は遊介のように、無謀な馬鹿じゃないからな」
遊介はそれから行方知れずとなった。
解放軍、エデンがともに必死に彼の行方を捜したが見つからない。
死んだ、と言う人間もいなくはなかったが、彩も、良助もそれを否定し続け、捜索の手を緩めることはなかった。
生きている、という前提で話をするが、遊介は表舞台に姿を表さなかった。
その間も光の世界と水の世界において、解放軍やその他の反抗勢力がエデンとの戦いを繰り広げるが、エデンに痛手を与えることは叶わず、むしろその他の世界においてもその戦火が広がる。
3か月が経過した。世界の情勢が大きく変化を見せた。
エデンは勝者として自分たちの考えを広め始め、闇の世界と、中央のバトルシティを除いたすべての世界で、そこに住まう人々に選択を迫った。
この世界で生きるか、元の世界に帰りたいか。
この世界で生きることを選んだ人々は、エデンに迎えられた。選ばなかった人々も、すぐに処分されたわけではなく、エデン側が説得を進め、それでも折れない人々には、エデンは解放軍を筆頭とする反対派の本拠地を訪ねるよう推薦する。
今エデンは世界を大きく二分しようとしていた。できる限り、自分たちの賛同者を増やし、それで納得しない者を敵へと送る。
そして完全に世論が二分された頃を見計らって、反エデン派の主要メンバーおよび本部を壊滅させ、もう一度残った人々に説得を行うつもりだった。
それが手っ取り早く、かつ、犠牲が最も少ない方法だと信じ、エデンのデュエリスト達はまだ説得へと向かっていない人々を探すため今日も飛び回る。
一方解放軍は、他の反エデン派と同盟を結び、エデンとの最後の戦いに向け、準備を進めていた。ランサーズ、海堂コーポレーションは未だ沈黙を守ったままで、最終的にどのように動くか未知数だったが、その他のチームの中で、エデンに協力できないという団体がエデン討伐と言う大きな目標を達するため、各チームの信義やメリットを捨ておいてまで解放軍と同盟を組み、エデンに対抗できる可能性を持つだろう、最後の勢力となり上がった。
そんな中、エデンの、そして解放軍改め、エデン討伐同盟軍のデュエリストが無差別に殺される事件が起こる。
その事件を起こした犯人が声明を発表した。
「こんにちは、俺はアルター。イリアステルは君たちに、宣戦布告をする。さあ、ヌメロンコードを手に入れるために、殺し合おうじゃないか! こっちは、最強の7人、俺を守る守護者たる本気の守護者6人と配下90名と共に、君たちと戦おう!」
第2シーズン 終わり
また姿を消すのか遊介よ。
そんなことを思う人もいるでしょう。ですがご安心ください。行方不明になるのはこれが最後です。ちなみに、今回の話で少しお気づきの人もいると思いますが、遊介君の様子が少し変ですね。19話で虚構世界の蝕毒という話を出しましたが、実はこの世界に来て一番毒され始めていたのは……。
以上が第2シーズンになります。
衝撃の遊介敗北、すべてを失った遊介。
そしてそんな彼を置いていくように遂に本格参戦を始めるイリアステル。
混迷を極めるLINKVRAINSの世界は、ここから終結へ向けて急速に動き始めます。
しかし、最後の26話だけ長かった。文字数だけで言えば、およそ5万文字。
それを1か月くらいの間で書き切るとは、未熟者の私にとっては、自画自賛をしたいレベルの偉業です。
遊介君は再起し、全く出てこなくなった仲間を救うことができるのか?
その運命を決めるのが第3シーズンになります。
1週間後位に予告編を出す予定なので、そちらをぜひご覧になってください。
しかし第3シーズンは残念ながらすぐには始まりません。
また番外編を10月の下旬から順次投稿していく予定です。
1『???』全6話
2『解放軍 戦う理由』全6話
3『光の世界解放戦』全3話
4『エデン 帰りたくない少女』全2話
5『遊介 帰りたい少年』全2話
6『エリー・薫・マイケル 大好きな人の話』1話
これくらいはやりたいな、と予定しているので、年内はおそらく第3シーズンに行かないと思います。
実は第3シーズンが終わった後には、番外編はない予定です。
その代わりと言うわけではないつもりなのですが、敵側やスポットライトが当たっていない人たちについて、もっと語ってみたいと思っています。その方がグランドフィナーレで感慨深くなる、かもしれないと思っているからです。
しかし、この番外編。26話を書くにあたり、今までの内容を見返しながら思いついた補間用の物語のため、詳しい話がまだ何も決まっていません。なので、話を考える時間として、1か月ほど、この連載についてはお休みをいただき、話を考えたいと思っています。
その分、今回は本編に負けない、面白い番外編にする予定なので、ご期待いただければと思います。
この中で1人だけ、詳しく知りたい人を選んでください。
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シンクロ遊介
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エクシーズ遊介
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アゼル
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光津真澄