遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

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注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!


今回からイベント戦になります。
遊介は無事に保有LPを回復できるのか?
長い戦いが始まります。


5話 弱者を恨む者

【9】

 

『ユートが仲間になった!』

 

もしテレビゲーム画面があるとしたら、そのような表示がされているだろう。それくらいに瑠璃の説得はうまく進んだ。愛しの彼女に対しては格好つけながらもデレデレなユート。周りの人間はその様子を微笑ましく見ていた。

 

それから1週間。

 

イベント戦を明日に迎え、マイケルの店に集まったデュエリスト5人は各自デッキの調整に勤しむ毎日を送った。

 

遊介もまた、ユートに手伝ってもらいながら、デュエルの腕を磨き続ける。毎日デュエルをしてデッキ調整、デュエルをしてデッキ調整と、自らの戦力底上げする努力を続けていた。マイケルの店の決闘禁止によるルールで保有ライフの賭けもなく、ノーリスクで何度もデュエルできる環境はまさに己を鍛える場所としてはふさわしい。

 

幸いにもマネーポイントをユートが20万ほど持っていたので、食料は1週間分買いだめし、イベント戦が行われるその日まで店にこもっている。買いだめのお金は男気溢れるユートが全部受け持ち、マネーポイントは5万ほど失われたが、食料を買いに出かけたところを襲撃する人間を全員返り討ちにすることで、結局はむしろ5万ほど稼ぎになり、本人はやぶさかではない気持ちだった。

 

「……ぐ」

 

「遊介」

 

「大丈夫」

 

今もまたユートとの訓練デュエルを終え、落ち込む遊介。それもそのはず、遊介はこの1週間で15回戦ったが、1回もユートに勝てていない。

 

「腕も上がっている。悲観することはない。さっきのデュエルは俺も危なかった」

 

「ああ。そう言ってくれると嬉しいよ……」

 

この世界に来てから全く勝てないという事実に、悲しい気持ちはとまらない。

 

しかしこの戦いが無意味だったかというとそうではない。

 

行っていたのはスピードデュエル。その中でライフが1000以下になれば遊介はスキルでストームアクセスを使用できる。遊介はスピードデュエルで戦えば戦うほど自分のデッキを強化できる。さすがにデータストームが室内までは入ってこないので、毎度店の外に出て取りに行くというシュールな光景が見られ、手に入ったのはエース級とは言いにくいカードばかりであったが、それでもエクストラデッキは充実し、かなりデッキは強化されている。

 

「はあ……勝てない」

 

またも敗北して落ち込む遊介を見て、

 

「いつまでも落ち込まないの」

 

ときつい一言を見舞うブルームガール。ちなみにこれも毎日の光景である。

 

「さあ、ご飯にしましょう。もう夜だし、明日はイベント戦なんだから、しっかり元気になっとかないとダメよ」

 

「そうっすね……はあ」

 

落ち込む遊介を微笑ましく見守る周りの連中。この光景もまた恒例行事になっていた。

 

食事は簡単なレトルトカレー。通常は各自で勝手に食事をとるものの、今回はそうはいかない。夜の7時から明日のイベント戦の説明が放送されるからだ。

 

運営からの放送はリンクブレインズ各地にある公共放送用の大モニターにプレゼンテーション用の映像が映し出される仕様になっていて、それを見るのが基本になるが、マイケルの家にはテレビが置いてあり、そこでも見ることができるので、リスクを背負って外出する必要はない。

 

ここでルールの説明を全員で見て、作戦会議を行うことになっている。

 

遊介は傷心状態から何とか自分を奮い立たせ、テレビの近くに用意された自分の席に腰を下ろす。目の前に用意されたカレーを一口。

 

「辛い!」

 

「何よ」

 

「ブルームガール! これは」

 

「激辛」

 

「なんでさ!」

 

「なによ、軟弱者」

 

と大真面目に遊介のクレームに対応する。しかし激辛カレーのパックは一つしかないことを確認していた遊介。自然に悪意なき罠にかけられた事を悟り、むくれながらも、他のカレーを奪うほどの度胸はなく、そのまま唇を赤くしながら食べるしか道は残されていなかった。

 

その程度にふざけ合いができるほどには、遊介、ブルームガール、マイケル、瑠璃、ユートの5人は気を許し合っている証でもあったのだ。

 

マイケルに卑しい笑顔を向けられた遊介の機嫌はそこまでいいものではなかったが。

 

既にテレビの画面には、残り1分からカウントダウンをしている時計がある。時限爆弾を意識させる画面だったが、デュエルの世界で爆死という結果は考えにくいので、遊介は警戒することはなかった。

 

「始まるね」

 

全員がカレーをほおばっている中、瑠璃の一言と同時にイベント戦の説明は始まる。

 

画面に出てきたのは、誰しもが恨んでいるだろう男の姿だった。

 

『こんにちは皆さん。アルターです。デュエルの世界、楽しんでいただけているだろうか? 既に参加者の10パーセントが命を落としてしまっているが、気にすることはない。まだ90パーセント残っている。具体的に何人かというのはやめておこうか。きっと卒倒してしまう人間も出てきてしまうからね」

 

今この瞬間、この男を恨みの目で見ている人間はどれほどいるだろうか。

 

(1万程度……じゃありえないほど居そう)

 

遊介はそんな想像をしながらカレーを口に運ぶ。何とかその辛さに慣れてきた。

 

『さて、そしていよいよ明日が本格的なイベント戦の始まりだ。今回はなんと言っても保有ライフを回復する事ができるということだけあって、前回と違って多くの人数が参加することだろうと推測しているよ。楽しみだなぁ、明日は多くの人間が殺し合いをする素晴らしい時間になるんだろうなぁ。生き死にをまじかで感じるイベント、まさしく大規模なエンターテイメントになるだろう!』

 

頭のおかしい殺人者が画面の中で喜びの舞を見せるのを、遊介含め5人は苦虫をかみつぶしたような顔で見る。眉間にしわが寄っているだけのマイケル、恐ろしい殺気を見せるユート、表現は様々ながら、アルターを見るその感情に明るいものは一つもない。

 

『おおっと、怖い目で俺を見るお兄さんたちがたくさんいるから、さっそくルールの説明に行こうか』

 

アルターはそういったものの、残念ながら、狂喜を隠すことなく本筋の話と関係のない人々の敵意を集めるような言葉をたくさん混ぜ込んで、話を進めるアルター。遊介は困惑のあまりため息をついて、必要な要所要所だけを聞き取り、整理する。

 

内容はそれほど複雑なものではない。

 

まずはイベントの内容について。今回のイベントはとにかくデュエルで敵を倒してこのイベント専用のポイントを稼ぐことが重要になる。イリアステルが用意したデュエリストを倒すと1点、他のプレイヤーを倒すと3点、たまに現れるイリアステルの幹部を倒すと10点が手に入る。そして、参加する全てのプレイヤーでこの点数を競う競争になり、高得点ランキングで10位以内に入った人間が保有ライフを8000回復できる。そして、高得点ランキングは2種類存在し、1つは個人成績、2つ目として、チーム成績が存在する。

 

チームは今回のイベントで初実装されるシステム。特徴は2つ。一つはデュエルディスクを使って遠隔通信が可能になる事。2つ目は、メンバーに自分の保有ライフを任意の場面で譲渡できるようになること。この譲渡は、ライフが0になってしまったプレイヤーにも10秒間有効で、やられてしまったメンバーを生き返らせることもできる。これはイベントに限らず、今後も生き続けるシステムで、結成はリーダーになる人間のデュエルディスクに指紋を登録するだけという簡単なものである。

 

ただしデメリットもある。一度チームを入ってしまったら、自由に脱退ができない。そしてチームリーダーが死ぬ場合、代わりに別のチームメイトの保有LPを4000分奪って強制的に延命させられる。その際に0になってしまったプレイヤーも死んでしまうという。リーダーには酷な責任がのしかかる。

 

今後もチームでのメリット、デメリットは増えていくという説明もあった。

 

『それでは、チームの結成は放送終わってからすぐにできるようになるから、個人で戦うのでも、チームで戦うのでも、頑張って戦って保有ライフを回復できるように頑張ってくれたまえ。君たちの熱いデュエルを楽しみにしているよ』

 

放送が終わったと同時に遊介を含め全員のデュエルディスクに通知が来る。その内容は、システムアップデート、チーム機能追加、というものだった。

 

「ちょっと予想外のデメリットがあるけど……どうする?」

 

ブルームガールの疑問形の言葉に、答えたのはマイケルだった。

 

「俺は構わないけどなぁ」

 

「でも、リーダーにLP取られるかもよ」

 

「だってよ。下っ端がリーダーを守ってやればいいだろう?」

 

マイケルは特に放送で言われたデメリットをデメリットと思っていなかった。ユートも、

 

「確かに。リーダーの代わりに他のメンバーが前衛に出ればいい。特に問題になるとは感じない。それよりも、チームを組むことによるメリットの方が大きい」

 

と、戦術面で冷静な分析をした結果を言葉にする。

 

今回のイベント戦。遊介たちがトップを目指すには、チームを組むことは絶対条件である。それは遊介、ブルームガール、マイケルの3人の共通見解だった。そしてユート、瑠璃もその方が勝率が高いと見込んでいる。

 

個人戦で戦えない理由はいくつかあるが1番は自信たちの戦力不足にある。

 

初日に戦った海堂セイトに3人とも実力で劣っていることは言うまでもない。さらに海堂自身が何のメリットもないのに、自分よりも強い人間がいることを明言している。そんな中で、負けたら即あの世行きのイベント戦を一人で勝ち抜くことは難しい。チーム戦でもその事実は変わらないが、3人とも得ができる可能性が高いのはどちらかであるかと考えた時、消去法で考えるのならば個人戦という選択肢はすぐに消える。団体戦であれば最悪、勝てない相手が現れた時に同盟を組んだ仲間を盾にできる可能性が残る。それだけでもチーム戦にする要因としては十分に大きい。

 

そして今の放送で保有ライフの譲渡ができるという設定が出たことで、遠隔通信と保有LPの譲渡という2つのチーム制のメリットが出たことで、チームを組むことの利点がさらに増え、もはや個人で戦うという考えは、遊介、ブルームガール、マイケル3人とも微塵もなかった。

 

瑠璃は元々3人に協力的で、ユートは瑠璃の意向に異を唱えることはありえない。

 

5人がチームとして戦うのは既に決定事項であった。

 

「問題は誰をリーダーにするかね」

 

「普通にユートでいいんじゃないか? この中で1番強いんだし」

 

実力的にも一番強いので文句は出ないはずだった。1週間の修業期間で、ユートは負けなし。なんとブルームガールにも最初の敗戦以降、全く勝利をさせなかった。実力的にはトップクラスであることは間違いない。

 

「悪いが、それは遠慮させてもらいたい」

 

「なんで?」

 

「俺はリーダーって柄じゃない。誰かが犠牲になる結果を生むくらいなら、自分から戦いに行く方がいい。俺はリーダーを守る兵士の方が似合うと思う」

 

この意見には瑠璃も、

 

「私もユートと同じ。……ちょっとリーダーの責任も怖いしね」

 

と、遠慮の姿勢を見せる。元々、瑠璃もユートも好意で遊介たちに付き合っている立場であり、残り3人は無理に我が儘を強要することができない。そのためこれ以上は追及せず3人の中でリーダーを決めなければならない状況になってしまう。

 

そんななかで3人の頭の中には同じ解決策が思いつくのは、やはり仲間として相性がいいからか。

 

遊介が握り拳を出しただけで、それは決行される。

 

「最初は」

「最初は」

「最初は」

 

「グー」

「グー」

「グー」

 

「じゃんけん」

「じゃんけん」

「じゃんけん」

 

「ポン!」

「ポン!」

「ポン!」

 

何かを決定する際に行われる恒例儀式が三人の中で行われる。

 

そしてその一回で勝負は決まることになった。

 

【10】

 

『さあ! いよいよゲームが始まるぞ! イベント戦! とにかく敵を倒して、倒して、倒しまくれ!』

 

リンクブレインズに響き渡るアルターの声。既にほとんどのデュエリストが闘志を燃やしている。

 

『今日は1日リンクブレインズは戦争の渦中となる。もしかしたらこのイベント戦で500000ポイントを手に入れる人間は現れるのかもしれないね!』

 

そして、遊介たちもまた、Dボードを用意してその上に乗り、イベント戦開始の合図を待っている。

 

作戦はそれほど複雑なものにはしていない。

 

リーダーは目立つところを自由行動。そしてリーダーに迫ってきた人間を狙って、隠れながらリーダーを尾行するチームメイトが飛び出してデュエルを仕掛ける。ユートと瑠璃がライフが8000残っているので優先的に出撃する。最早作戦というに及ばない戦い方である。しかし、戦わなければ勝利はつかめない。そもそも生き残りたければ店から出なければ基本的には大丈夫だ。その中でわざわざ遊介たちは戦うことを選んだ以上は、戦うことを遠慮してはいけないのだ。だからこそ、自分から攻めるのではなく、相手を釣るだけでいい。参加者は血気盛んなデュエリストならばおのずと入れ食い状態になる。

 

そして釣り餌になってしまうのは、ここまで悪運が最高潮の彼である。

 

「……」

 

「ちょっと、勝った人がリーダーやるんでしょ。男気!」

 

「会長……鬼っすね」

 

「いいじゃない。あなた戦闘力的には一番弱いんだし、一番戦わないポジションでしょ」

 

「もし、俺に攻撃しに来たらどうするんですか……」

 

「その時は死ぬ気で勝ちなさい。あなたのペナルティで殺されたら呪い続けるから」

 

遊介はノリノリでじゃんけんに乗ってしまったことを後悔していた。三分の一であれば自分に来ることはないだろうとたかをくくっていたのだ。

 

「頑張れよー」

 

マイケルも意地悪なニヤニヤした顔を向けてくる始末で、ため息をするしかなかった。

 

「大丈夫だ」

 

「私たちもいるわ」

 

「ユート……瑠璃……お前らだけだよ。そう頼もしいことを言ってくれるのは……」

 

弱気になっているようにふるまう遊介だが、決して乗り気でないわけではない。リーダーになって、チームの名前は『players』という遊介の『遊』の字を活かした名前になっているのが気に入っている。

 

(さて……)

 

遊介は頬を叩く。その儀式は意識の入れ替え。日常モードの緩い遊介から、デュエルをするためのシャッキリした遊介に変わるのだ。

 

『リンクブレインズ第2イベント!』

 

そして開始の合図が来る。

 

「遊介。一気に上ね」

 

「分かった!」

 

ブルームガールと開始前の最後の打ち合わせが終わったと同時に、

 

『ゲーム……スタートォ!』

 

アルターの叫び声が世界に響き渡る。

 

それとともに遊介はDボードに乗って空高くへと突き進んだ。残りのメンバーは遊介と距離をとるため、2秒後に出発することになっている。

 

作戦は完璧。5人はこのままうまくいくと思っていた。それは当然である。Dボード軌道のタイムラグ2秒、そんなたった2秒の間に攻めてくる人間がいるなどとは思わない。

 

しかし、遊介の悪運はこの2秒の間にも発揮されたのだ。

 

飛び上がった遊介に、まるで彼を狙ったかのように突っ込んでくる男がいた。

 

「な!」

 

他の仲間はまだDボードを起動したばかりでスピードが出ない。この瞬間だけ、遊介を守る盾はないのだ。

 

『デュエルを申請されました』

 

非情な音声が遊介の耳に届く。この世界でデュエルを申請されてしまったら、申請した側が取り下げをしてされた側がそれを了承しない限りデュエルは決行される。

 

「くそ……えぇ!」

 

さらに遊介に突っ込んできた男は遊介のDボードに減速無しで激突してくる。遊介は走行軌道を逸らし、弾かれるだけでDボードからは落ちずに済んだ。

 

「何すんだよ!」

 

遊介の怒声に初めてその男は口を開く。

 

性別が男であることはすぐに分かった。短髪に釣り目ではないもののきつい眼差し。まるで全てを敵視する野獣の如き眼を持っている男。

 

見覚えはないが、逆に言うとここまでアグレッシブな接近をしてくるということは、遊介の知り合いであるということ。

 

(あんな赤い髪の奴知らないけどなぁ……)

 

しかし、ここは遊介たちから見ればVR世界。容姿は自由に変えることができる。

 

心のどこかで松の悪ふざけだと少し遊介は期待する。

 

しかし、すぐに返ってきた言葉にその期待はあっさりと打ち砕かれた。

 

「よお、久しぶりだな。まあ、たった1週間程度しかたってないか」

 

「……山崎」

 

遊介をいつも目の敵にして、デュエル部から追放しようとしていた遊介にとっての邪魔者。山崎和樹。声に虚構の部分がない。いつもの遊介を弱者としてしか見ていない蔑みの声を上げる。

 

「何の用だよ」

 

「俺は楽しくもない無駄なおしゃべりは嫌いなんでね。簡潔に言わせてもらうぞ遊介。せっかくのデュエルの世界だ。向こうのいざこざはいったん置いておいてやる。ただし」

 

「ただし?」

 

和樹は、帯で止められたデッキを遊介に投げてくる。

 

「今すぐサイバースデッキを捨てろ」

 

「なんだと」

 

「俺が作ったそのデッキは勝てるデッキだ。サイバースのような弱いデッキよりは百倍マシだ。たとえ向こうの世界のようなカードを集められなかったとしてもな」

 

「もし、断れば?」

 

「俺がデュエルでお前を殺す!」

 

過激な交渉を持ちかけられた遊介に、デュエルディスクから通信が入る。

 

「デッキを捨てて」

 

「ブルームガール。何を」

 

「貴方がここで無理にリスクを負う必要はないわ。そいつは私がぶっ飛ばすから」

 

「俺のカードは?」

 

「後で拾えばいいじゃない」

 

「……」

 

遊介はブルームガールを責めなかった。なぜなら彼女もまた遊介の為を思っての言葉であると分かったからだ。ブルームガールには山崎に何度も負けているという話をしている。この世界で使うデッキが変わっている可能性は高いが、性格的、もしくは運命的に相性が悪い可能性は否定されない。ならば勝てない相手と無理に戦うことはない。

 

しかし、遊介もまた、譲れないものがあった。

 

「会長ごめん」

 

「遊介!」

 

ディスクの通信を切った遊介は宣言する。

 

「和樹。デュエルだ」

 

「何?」

 

「俺はこのデッキを捨てない。俺はこのデッキが大好きだし、これは俺のデュエルへの誇りなんだ」

 

和樹は勝つためのデュエルをする男。そんな男には理解できなくとも仕方ないと遊介は思っている。遊介は憧れだけでデュエルを始めた。格好いい勝ち方はできないか、それだけが遊介にとってのデッキの研究内容だった。流行に合わせることはできる。勝つためのデッキならいくらでも作れる。しかし、本当に好きなカードを中心に、ロマンのある勝ち方はできないか。もしアニメのように、自分のこだわりを貫き続けて勝てたら、それはとても格好いいことだと遊介は思っている。

 

だからこそ、サイバースを使い始めた時に遊介は誓った。もちろん一生使い続けることはできないだろう。それでもこのデッキで何か格好いいことを成し遂げるまではずっと使い続けて、いろいろな人を驚かせてやろうと。こだわりだけでも一念天に通ずのだと。

 

「……俺はそれが気に入らないんだよ!」

 

和樹は声を荒げる。

 

「お前はデュエルが下手じゃない。特別上手いわけでもないが面白いことを考え付くタイプだ。もしも勝てるデッキを使っていれば全敗なんてあり得ない!」

 

「そんなことはない。俺はデュエルの才能は人並み程度しか持ってない」

 

「確かに人並みだが下手じゃない。だからこそ、そんな変なこだわりのせいで負け続ける姿が気に入らない。そして、それでも楽しいって言ってるのがムカつくんだよ!」

 

遊介は初めて和樹の心の内を聞いて少し驚いている。自分を全否定しているものだとばかり思っていた和樹が、まさか自分を認めてくれている箇所があるのが。

 

「こだわりで何が悪いんだ」

 

「デュエルってのは戦いだ。戦いは勝ってこそだ。プロになるならそれは当然だ。なのにお前は負けてるのにプロになろうとしてる。娯楽なら文句はなかった。けどな……、本気でデュエルをやるんなら、勝てないデュエリストはただの屑だ!」

 

和樹は感情をこれでもかと露わにして遊介に怒りをぶつける。

 

「この世界でも勝つことこそが正義だ! こだわりなんかで生きていけるはずがない! そのままじゃてめえは死ぬんだよ!」

 

「俺は捨てない。最後まで、俺はサイバースで戦う」

 

「てめえ……半端な気持ちで入ってくるなよ、デュエルの世界によぉ!」

 

遊介はディスクを構える。そしてデュエルの申請を受けた。対戦相手の名前が表示される。

 

(ヴィクター。『victor』って勝利者……だったっけ。いかにもらしいというか)

 

しかしそれだけではない何かを遊介は感じている。遠い昔の記憶になにかあったような。そんな感覚を持っていた。

 

「遊介ぇ! お前はここで殺す。殺されたくないなら勝ってみろよ! その屑デッキで。俺はお前のすべて否定してやる」

 

「ヴィクター。ここではそう呼ばせてもらう。俺はこのデッキを捨てる気はない。誇りは安く売らない。格好悪いだろ」

 

「だったら無様に負けてここで死ね!」

 

ヴィクターの保有ライフは8000.遊介の方が保有ライフの数値が低いため、自動的に最低ラインの4000がこのデュエルの賭け値になる。

 

遊介は前を走るヴィクターのDボードを追うようにスピードを上げた。空中を駆ける二人のデュエルはついに始まる。

 

これは現実世界からの因縁の一つの区切りをつける戦いになる。




さて遊介君の2戦目の相手は、現実世界で(1話)登場したっきりで今まで放っておいた山崎和樹君です。
しかし、5話にして久しぶりとか、もはやまだ出で来る様子のない、遊介の親友ポジション二人はどうなることやら、
なんか登場した時には、すでに忘れられているんじゃないかと思うとちょっと心配です。
何か手をうたなければと思うところですね。

前の話のあとがきでは、前編としてこの話を書く予定でしたが、思ったよりも短くできたので後編なしで1回の投稿ですべて書き切っています。

例によって次回はデュエル回になりますが、今回は既に次回の展開を考えてありますので、
それほどお待たせすることなくお届けできるはずです。

もしかすると自分では書いたつもりになっていて説明されてないところもあるかもしれません。
なので、質問も含め、感想を頂けると嬉しく思います。

それでは次回6話、『因縁の対決 vs帝』をお楽しみに。
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