遊戯王VRAINS もう1人の『LINK VRAINSの英雄』   作:femania

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注意事項

・小説初心者で、連載小説初挑戦です。至らない部分はご容赦ください。
・話によって、一人称だったり、三人称だったりと変わります。
・クロスオーバー作品なので、遊戯王アニメシリーズのキャラが登場することもありますが、設定が違うので元と性格や行動が違うことがあります。
・過去にアニメシリーズで使われていたデッキを本人ではなくこの作品のオリジナルキャラが使うことがあります。また、使用されるデッキはエースモンスターはそのままにデッキをアレンジしたものになっていることがあります。
・この作品はシリーズのキャラに優劣をつけるものではありません。勝敗についてはストーリーの構成上、容認していただけると幸いです。
・この話はフィクションです。
・人物描写はスキップしています。言動を参考に想像しながらお楽しみください。
・オリジナルのカードも使ってます。
・作品はほぼオリジナル展開です。

これでOKという人はお楽しみください!

いよいよ和樹とのデュエルです。
遊介は今度こそ勝つことができるのか?


6話 因縁の対決 vs帝(前編)

【11】

 

高層ビルが立ち並ぶバトルシティ上空。そこから森林地帯に向かうようにDボードを南西に走らせる二人。二人の間にはすでに穏便に済ませる空気が生まれる余地はない。どちらかの命が削られる未来しか存在しない。

 

「スピードデュエル!」

 

和樹改めアカウント名『ヴィクター』の勢いの良い宣言でデュエルは開始される。

 

遊介 LP4000   和樹 LP 4000

 

「先攻は俺がもらう! 俺のターン」

 

ヴィクターが勢いのまま、自らの先攻を宣言した。

 

ターン1

 

ヴィクター LP4000 手札4

モンスター

魔法罠

 

フィールド

 

(ヴィクター)

□ □ □     魔法罠ゾーン

□ □ □     メインモンスターゾーン

□   □     EXモンスターゾーン 

□ □ □     メインモンスターゾーン

□ □ □     魔法罠ゾーン

(遊介)

 

「俺は灼熱ゾンビを召喚」

 

因縁の戦いの先駆けを飾ったのは、体が高温で赤く染まっているアンデッドだった。

 

灼熱ゾンビ 攻撃表示

ATK1600/DEF400

 

(あのカードは知ってる。確か、墓地から特殊召喚されたとき1ドロー。デッキはアンデットか?)

 

遊介はすぐに思考を巡らすが、それはすぐに裏切られた。

 

「このカードが最初の手札にあるのは珍しい。魔法カード!」

 

勢いよく突き出されるカードに、遊介は見覚えはない。山崎和樹のデッキは何度か現実で見たことはあるが、灼熱ゾンビを召喚したことを含めて考えると、デッキが変わっていることは明らかだった。

 

「アドバンス・サモン・フォース、発動! このカードはフィールド上のモンスターをすべてリリースして発動する! リリースしたモンスターの数によって効果が変わる。1体のみの場合、デッキからレベル5、もしくは6のモンスター1体をアドバンス召喚扱いで召喚する。2体以上であれば、レベル7以上のモンスター1体をアドバンス召喚扱いで召喚する。俺が今リリースしたのは1体だ。よってデッキからレベル6のモンスターをアドバンス召喚する! これは特殊召喚としては扱わないぜ。あくまで生贄を捧げての通常召喚扱いだ」

 

「何……?」

 

その1枚はアドバンス召喚を扱うデッキに大きく影響する1枚である。遊介は現実世界での遊戯王カードの調査を怠ったことはない。しかし、そのようなカードの存在を聞いたことはなかった。

 

(もちろん俺だって全部のカードを覚えているはずはないけど。そんなに強力なカードを知らないなんてことはあるだろうか……?)

 

そして遊介は、一瞬だけ別の可能性にたどり着く。それは思考の中できちんとした言葉としてまとめられることもなかったが、遊介はそのカードをゲームのオリジナルカードだと思ったのだ。

 

その推測は遊介にとっては確信に至らないが、間違ってはいない。

 

リンクブレインズには、多くのオリジナルカードがアルターの手によって入れられている。遊介自身は気が付いていないが、遊介が最初のデュエルで使った、『サポートプログラム・サモン』もまた、オリジナルカードの1枚である。

 

「何呆けた顔してんだ?」

 

「そのカード。珍しいカードだなって思ったんだよ」

 

「くだらないことを考える前に勝つことを考えろ!」

 

ヴィクターの怒声に、遊介は不機嫌そうな顔を浮かべながらも戦闘態勢に戻る。

 

「俺がアドバンス・サモン・フォースで召喚するのは、レベル6、炎帝テスタロス!」

 

灼熱ゾンビは魔法カードの発動とともに激しい炎に覆われる。凄まじい熱に遊介が目を細める一方、焼却地に立ちはだかったのは赤い甲冑のような体躯を持つ炎の化身だった。

 

炎帝テスタロス 攻撃表示

ATK2400/DEF1000

 

「く……!」

 

遊介が苦い顔をしていたのは、そのモンスターが有名であるから、その効果を知っているが故のことだった。

 

ヴィクターは容赦なく、効果を発動する。

 

「炎帝テスタロスの効果! このカードがアドバンス召喚によって召喚されたとき、相手の手札をランダムに1枚捨てる!」

 

遊介が握る初期手札の1番右にあるカードが光を放つ。それはテスタロスに選ばれた証だった。渋々遊介はそのカードを墓地へ送った。

 

「捨てたカードがモンスターカードだった場合、そのモンスターのレベル×100ポイントダメージを与える!」

 

遊介の顔がさらに歪んだ。不運にも、遊介が捨てたのはレベル8のデュアル・アセンブルム。

 

「お前は800のダメージを受ける!」

 

炎帝からあいさつ代わりと言わんばかりの炎が放たれる。遊介にぶつかったのち炸裂。

 

「ぐあ……!」

 

火傷を間違いなく確信する高熱を肌に感じ、肌が焼かれる感覚を初めて味わった事で、命の削り合いであることを再確認することになる。

 

遊介 LP4000→3200

 

ヴィクターはそれを見て満足そうに、一瞬唇を端を吊り上げた。

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ! エンドフェイズ、アドバンス・サモン・フォースでアドバンス召喚したモンスターは手札に戻る」

 

炎帝は光の粒子となり消え、その粒子はカードの形になってヴィクターの手に渡った。

 

(やっぱ強いな……)

 

遊介は今から戦う相手の強さを再確認する。

 

不意に後ろを見ると、マイケルが心配そうに遊介を見ていたのに気が付き、遊介は心配ないことを手の合図を使い意思表示をする。

 

しかし、やはり焼かれた場所は痛む。遊介はその場所をさすった。

 

それを見ていたヴィクターの脳裏にある映像が蘇る。

 

(……弱い奴だな)

 

脳裏に浮かんだのは幼い頃の記憶だった。

 

和樹には現実世界で憧れていたプロデュエリストがいた。デュエルをエンターテイメントとして、殺伐とした戦いが行われるデュエルの世界で異彩を放つ戦い方だった。それがなんと派手だったことか。観客を魅了するサーカスのようなデュエルの在り方に、和樹は憧れた。

 

しかし、そのデュエリストは、すぐにいなくなる。なぜなら、勝てなかったから。勝つために行われているプロのデュエルは、まるで命を削り合うようなデュエルが観客を魅せる主流であった。異彩は叩かれるもの、そのうえでちっとも勝てないその男は激しい糾弾の的となった。

 

ファンはどんどんと少なくなり、やがて和樹を含めても10程度。他の観客はその革命を起こそうとした男を徹底的に消そうとした。

 

プロは徹底的に負かし続けた。観客は勝つことこそが至上という空気を会場に浸透させて、楽しいデュエルを否定し続けた。マスコミはいらぬ風評を広め続けた。

 

社会的にその男を消そうとしたのだ。

 

(……あいつも奴と同類だ。そんな腐った奴がプロを目指していいはずがない)

 

ヴィクターとして戦っている最中の今の頭には、そんなことが思い浮かんでいた。

 

ヴィクター LP4000 手札1

モンスター

魔法罠 伏せ2枚

 

(ヴィクター)

■ ■ □     魔法罠ゾーン

□ □ □     メインモンスターゾーン

□   □     EXモンスターゾーン 

□ □ □     メインモンスターゾーン

□ □ □     魔法罠ゾーン

(遊介)

 

ターン2

 

一方で、遊介は先ほどの痛みに慣れた頃に自らのターンを開始する。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

遊介 LP3200 手札4

モンスター

魔法罠

 

(ダメージは受けた。伏せもある。だが、攻めないわけにはいかない)

 

遊介は1週間の訓練の成果を今こそ発揮すべきだと、己の闘志を燃やす。そして、

 

「負けたら迷惑がかかるどころじゃない。誰かを殺すことだってあり得るんだ。そんなこと、絶対にさせない!」

 

リーダーであるその重責が、目に闘気を宿らせる。

 

「俺は魔法カード、ワンタイム・パスコードを発動! 自分フィールド上にセキュリティトークン1体を特殊召喚する!」

 

遊介の場に最初に現れたのは、絵柄とは相反するメカメカしい見た目のトークンだった。

 

セキュリティトークン 攻撃表示

ATK2000/DEF2000

 

「現れろ! 未来を導くサーキット!」

 

リンク召喚のためのゲートが遊介の目の前に現れる。

 

「召喚条件は通常モンスター1体! 俺はセキュリティトークンをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク1、リンク・スパイダー!」

 

トークンがゲートに入るとともに、ゲートが輝く。現れるのは藍色の体と青いラインが特徴のクモ型のモンスターだった。

 

リンク・スパイダー

マーカー 下

ATK1000/LINK1

 

ヴィクターの罠は発動しない。これで召喚に対する罠である可能性が薄いことを一安心し、遊介はさらに仕掛ける。

 

「リンク・スパイダーの効果! 手札のレベル4以下の通常モンスターをこのカードのリンク先に特殊召喚する。俺は手札のビットロンを特殊召喚!」

 

白いボディ、顔の黒の部分に目立つつぶらな瞳。サイバースデッキのマスコットの1体である。

 

ビットロン 守備表示 

ATK200/DEF2000

 

「まだ続けるぞ。俺は墓地のデュアル・アセンブルムの効果を発動する! 手札及び自分フィールド上の表側表示のモンスターの中から、サイバース族モンスター2体を除外して発動する。俺は手札のストライピング・パートナーとドットスケーパーを除外。墓地のこのカードを特殊召喚できる! ただしその攻撃力は半分となる」

 

手札2枚を除外すると同時に、遊介のフィールドに地面と平行な黒い穴が現れた。そこから、赤と青の二色の体をもつレベル8モンスターが浮上してきた。

 

デュアル・アセンブルム 攻撃表示

ATK2800/DEF1000

 

デュアル・アセンブルム ATK2800→1400

 

「さらに、ドットスケーパーの効果! 除外された時、このカードをフィールド上に説く召喚できる!」

 

ドットスケーパー 守備表示

ATK0/DEF2100

 

遊介は間髪入れずに、さらなる召喚を宣言した。

 

「現れろ! 未来を導くサーキット!」

 

再び、今度は上空にリンク召喚の兆しとなる証が現れる。

 

「召喚条件はサイバース族モンスター2体! 俺は、ビットロン、ドットスケーパーをリンクマーカーにセット! リンク召喚、リンク2、ハニーボット!」

 

蜂の姿をしたサイバースの使者が飛んで降りてきた。

 

ハニーボット

リンクマーカー 左 右

ATK1900/LINK2

 

そして、遊介はまだ止まらない。

 

「三度現れろ! 未来を導くサーキット!」

 

遊介は三度開いた召喚ゲートを確認し、自らのエースモンスターを呼ぶ口上を叫ぶ。

 

「召喚条件は効果モンスター2体以上! 俺はデュアル・アセンブルムとリンク2のハニーボットをリンクマーカーにセット!」

 

2体の効果モンスターがリンクマーカーへと吸い込まれていく、そして中央の召喚地点が光輝く。

 

「リンク召喚! リンクスパイダーのリンク先に現れろ! リンク3、デコード・トーカー!」

 

長い過程の先に、ついに遊介のデュエルを支える、サイバースのエースモンスターが、紫の大剣を携えて降臨した。

 

デコード・トーカー

リンクマーカー 上 左下 右下

ATK2300/LINK3

 

「出たな……!」

 

ヴィクターが最大の警戒を見せた。しかしその内心は少し感心している。1ターンでエースモンスターを召喚するとは思っておらず、流れるように召喚を成功させた事は賞賛に値すると思っていた。

 

「デコード・トーカーの効果。このカードのリンク先にモンスターが存在するとき、1体につき攻撃力が500アップする! 上のリンク先にリンクスパイダーがいる。攻撃力を500アップ。パワーインテグレーション!」

 

デコード・トーカー ATK2300→2800

 

「なるほどな。1ターンでエースを出せたことは褒めてやる」

 

「お前に褒められても嬉しいとは思わないな」

 

「そうか。さっさとかかってこい」

 

まるで攻撃を誘導するかのような口ぶりであり、伏せカードを警戒したが、

 

(攻撃は防がれるかも知れない。だが、それを考えて、攻撃の手を緩めてたらいつまでたっても勝てない。勝つためには攻める!)

 

遊介は相手に2枚の伏せがあっても攻撃をするか迷わなかった。すぐにバトルの宣言を行う。

 

「バトルだ! まずはリンクスパイダーでダイレクトアタック!」

 

遊介の攻撃に対してヴィクターは直接攻撃を宣言されていても落ち着いている。

 

それは、この瞬間がヴィクターの伏せカードが発動する瞬間だからだった。ヴィクターは手を前に突き出し、罠の発動を宣言した。

 

「罠カード! ピンポイント・ガード! 相手モンスターの攻撃宣言時、自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を選択して発動する! そのモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。俺は墓地の灼熱ゾンビを特殊召喚!」

 

「……灼熱ゾンビを蘇生……」

 

ヴィクターのフィールドに黒い穴が開き、そこから赤いゾンビが這いずり出てくる。

 

灼熱ゾンビ 守備表示

ATK1600/DEF400

 

「そして、ピンポイントガードで召喚されたモンスターはこのターン。戦闘、効果では破壊されない!」

 

ヴィクターのカード説明に、遊介は歯を食いしばるしかなかった。ヴィクターが言ったことを言い換えると、このターン攻撃は通らないということ。せっかく召喚したデコードトーカーも攻撃できないのでは意味がない。

 

ヴィクターの狙いはそれだけではなかった。

 

「さらに、灼熱ゾンビが墓地から特殊召喚されたため、カードを1枚ドローする!」

 

その宣言とともに、ヴィクターは思い切りカードをドローした。手札補充までを考えての灼熱ゾンビの採用と、ピンポイントガードによる防御。

 

(勝つためのデュエル……本気だからこそ、あらゆるところでより勝つための1手を打てるようなデッキ。発売自体は昔のカードばかりを使っているけど、それを最大限まで生かそうとしている戦い方だ。……悔しいけど、これは相手が一歩先に行ってるってことか)

 

遊介はダメージを与えられなかったことへの残念な気持ちによるため息をつく。

 

「これでターンエンドだ……」

 

遊介はこのターン、何もできずに相手にターンを渡した。

 

遊介 LP3200 手札0

フィールド ①リンク・スパイダー ②デコード・トーカー

魔法罠

 

(ヴィクター)

□ ■ □     魔法罠ゾーン

□ ③ □     メインモンスターゾーン

□   ①     EXモンスターゾーン 

□ □ ②     メインモンスターゾーン

□ □ □     魔法罠ゾーン

(遊介)

 

ターン3

 

「俺のターン!」

 

 

有利な流れに乗るように、ヴィクターの声のボルテージが少し上がっている。

 

「俺は墓地のアドバンス・サモン・フォースの効果を発動する! ドローフェイズ、通常はデッキから1枚ドローをするが、その代わりに、このカードを墓地から手札に加えることができる!」

 

「何!」

 

強力な効果に対する遊介の驚きように、

 

「これで俺はまたデッキからアドバンスができる」

 

と自慢げに語るヴィクター。

 

ヴィクターがモンスター効果を使ってまでドローをする手段を得たのはこのため。通常のドローは、アドバンス・サモン・フォースを手札に戻す効果でできなくなるので、手札を補充し戦力を強化するためには、通常のドローの他にドローをする必要があった。

 

墓地から戻ってきた魔法カードをヴィクターは再び手に握る。

 

ヴィクター LP4000 手札3

モンスター ③灼熱ゾンビ

魔法罠 伏せ1

 

悔し気な顔を浮かべる遊介にヴィクターは言う。

 

「所詮貴様はその程度だ。くだらないプライドを捨てられなかった者の末路だ! このターンでお前を殺す!」

 

「なんだと?」

 

「デコード・トーカーごときを俺が突破できないとでも?」

 

「な……」

 

衝撃の宣言に、半信半疑の遊介。そんな彼には目もくれず、再びヴィクターは先ほど手に戻した力を発動する。

 

「魔法カード! アドバンス・サモン・フォース! 俺は灼熱ゾンビをリリース。1体リリースのため、デッキからレベル5、または6のモンスターをアドバンズ召喚扱いで召喚する! 俺は光帝クライスをアドバンス召喚!」

 

ヴィクターが手を大げさに天へと伸ばした。それと同時に光が天より降り注ぐ。その中央に呼び出したモンスターがいたのだ。

 

光帝クライス 攻撃表示

ATK2400/DEF1000

 

(攻撃力はデコードトーカーが上回ってる……なんて楽観視はできないよな……)

 

なぜなら、リンクスパイダーが破壊されると、デコードトーカーのリンク先にモンスターがいなくなるため攻撃力が元に戻る。2300では攻撃力としては少し頼りない。

 

「光帝クライスの効果を発動する! 召喚、特殊召喚に成功した時フィールド上のカード2枚を破壊できる! 俺は当然、お前のフィールド上のリンクスパイダーとデコードトーカーを破壊!」

 

(あ……そうだった!)

 

自らの記憶力のなさを恨む遊介に慈悲はない。

 

光の帝王は右と左に光の玉を生成する。それを魔法のように腕を動かさずして発射すると、デコードトーカーとリンクスパイダーを光の爆発によって焼き焦がした。

 

「く……」

 

フィールドが真っ白になってしまった遊介は顔を歪めるのは仕方のないことである。

 

しかし、そんな遊介に吉報がもたらされる。

 

「だが、光帝クライスの効果でカードを破壊されたプレイヤーは、その数につき1枚カードをドローする。お前をカードを2枚破壊したんだ。2枚ドローしろ」

 

遊介は言われるがまま、カードをドローした。

 

(手札も場も0は逃れたけど……このターン耐えられなければまずい……)

 

引いたカードを心配そうに見る遊介。

 

「そして、光帝クライスはこのターン攻撃にできない」

 

その言葉を聞き、安堵の表情を浮かべる遊介を見ながら、ヴィクターはまたも、かつての憧れのデュエリストを思い出していた。

 

そのデュエリストは、あらゆる逆境を前にしても心は折れなかった。自分のデュエルを貫き続けた。誰に笑いものにされようとも、己の生き様は変えなかったのだ。いつか自分が認められると信じて。

 

しかし、勝てないプロに居場所はない。徐々に活躍の機会を奪われ、お金に困るようになったそのデュエリストはついに、ある賭けを強要される。それは、勝てばプロ続行。負ければ、その場でデッキをシュレッダーにいれるというもの。

 

本来は許されるはずもないが、それを許したのはやはり世論だった。弱い人間はさっさとやめろ。強者が絶対、勝利だけが価値あるものである。そんな風潮が、彼の生存を絶対許さなかった。

 

勝つためのデュエルをしてこなかったそのデュエリストは、勝たなければならない時でも、勝つための覚悟がなかった。悪い意味で彼は最後までその戦い方をやめられなかったのだ。ダメージを第一優先にしていれば勝てたのに、場を盛り上げようとするために、あえてプレイングを甘くして負けた。

 

そしてすべてを奪われたのだ。そのデュエリストの夢見た世界はそこにはなく、

 

(よく似てる。見ていてムカつくんだよ。苛々するんだよ!)

 

ヴィクターの眉間にしわが寄る。

 

怒りと苛立ちが溢れる衝動を、攻めを緩めるつもりはなかった。

 

(後編へ続く)




お読みくださってありがとうございました。
今回も長くなってしまったので後編があります。
ぜひお読みください。
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