やっと終わった...
憎き敵、書類。アホみたいな枚数にサインしてハンコ押してを繰り返し、ようやっと訪れた安らぎの時間。
時計を見るともう3時だ。ええ...俺朝の6時からやり始めたんですけど...
この世界には36協定などないのだ。愛国心と気合、根性で乗り越えるべし。と偉い人が言っていた。くたばれ
椅子に座ったまま軽く伸びをする。回転式の椅子を少し回し、窓から外の様子を見る。真っ暗だ
艦娘の宿舎も真っ暗、皆寝ているようだ。昨晩は川内が走り回っていたが...どうやら今日は神通に力ずくで眠らされたのだろう。
明日も早い。この鎮守府は規則がゆるゆるのガバガバではあるものの、それでも真面目なやつは真面目だし、規則正しくマルロクマルマルには総員起こしをかける。一応、一応ここの長として、寝坊などは駄目だろう。いや、いいんだよ?寝坊しても。ただ武蔵さんとか長門さんとかの、お前今起きたの?みたいな眼が俺を貫くのだ。
ウォースパイトさんやグラーフさんら海外勢も規則正しいため、日本の軍人として情けない姿はそのまま彼女たちの日本の評価に繋がるだろう。
俺は椅子から立ち上がり、流しまで歩きながら眠気覚ましのために自分で淹れたコーヒーを一口飲む。時間がたっているため完全に冷えてしまっている。まあしょうがない、暖かいうちに飲まなかった自分が悪いのだ。
飲み干したカップを洗い、水を切って乾かしておく。
本来執務室には台所などはないし、必要ない。けれども諸々の事情から妖精さんに頼み、部屋を改造してもらったのだ。未だに妖精さんはわからないことだらけだが、そういう存在だと思って深くは考えない。こういうのは頭のいい学者のやることだ。おそらくは使者と似たような存在なのだろう。
執務室に忘れ物が無いか一応確認して、電気を消す。真っ暗になった執務室の扉までは距離があるが、何回もしている動作だ。躓いたりするわけも無い。まっすぐ歩くだけだしね。
そのまま部屋を出て、鍵を閉める。がちゃがちゃと本当に閉まっているか確認して、自室へ向かう。
廊下も当然暗いが、ヤーナムで慣れた明るさの無さだ。真っ直ぐ自室まで歩き、扉を解錠、中に入る。
電気をつけてそのままシャワー室に入り、服を脱ぐ。シャワーを浴びて身を清める。今日はあまり身体を動かさなかったが、それでも季節は夏一歩手前、多少は汗をかく。本音を言うと風呂にも入りたいが、ここはシャワー室だ。俺一人のために浴槽を用意するほどではないと判断し、シャワーしかない。風呂にどうしても入りたいなら艦娘の大浴場があるが、あそこは艦娘専用...というわけではないが俺が使っていいわけがない。そもそも今の時間は大浴場の利用時間外だ。
身体を洗ってからシャンプーを使い、頭を洗う。そういえば間違った洗い方をし続けると禿げるというのは本当なのだろうか。
そんなことを笑いながら話していた友人の顔を思い浮かべる。駄目だ思い出せない。もうずっと前のことのように感じる。もう二度と逢うことは無いのだろうか...
これがシャンプーの嫌なところだ。目を瞑って洗うため、脳裏にいらん事がよぎってしまう。これがホラー映画の後なんかは最悪だ。まずい後ろに誰かいる気がする...
はやる気持ちでシャンプーを洗い落とし、後ろを確認。まあ居るわけないよね。
さっと身体についているシャンプーの泡をシャワーで洗い流し、用意していたタオルで身体を拭く。
このまま裸で部屋の中をうろついてもいいのだが、何の目的か青葉が監視カメラを設置している時がある為、ちゃんとスウェットのようなだぼっとした寝巻きに着替えてシャワー室を出る。
俺は仕事とプライベートは分けて考えたいタイプだ。仕事は執務室ないしその他で完結し、自室では完全リラックス。自室にまで仕事を持ち込みたくないのだ。そうはいってもこの部屋には何も無い。
あるのは布団一式と軍服、ぐらいか。生活に必要なものはそろっているが、娯楽などの嗜好品は何一つ無い。
寝るだけの部屋と化しているのが現状だ。
殺風景な部屋だ、とは思うがどうしようもない。何か、人を人たらしめている大事なものをあの悪夢に落としてきたのだと思う。
水を一杯飲み、歯を磨く。入れ歯にはなりたくないため、丁寧に、時間をかける。
15分ほど磨き、口をゆすぎ綺麗にする。時計を見るともう4時だ。うそだろお前...
空が白みはじめるのも時間の問題だ。慌てて布団を敷く。
今から寝たところで一時間ほどしか睡眠は取れないだろう。自分の無能っぷりが嫌になる。
目覚ましを5時にセットして布団に入る。
ああ、帰りたい。誰か、俺を
ヤーナム―やべぇ街、全員ハイ、街中でキャンプファイヤーしても誰も気にしない
使者―妖精