電脳戦機IS 〈CYBER TROOPERS -Infinite Stratos-〉 作:魚狗
迎えたクラス対抗戦当日。
その第一試合はいきなりの注目カード。
織斑一夏 VS 凰鈴音
試合開始を待つアリーナは、既に満員の観客たちの熱気に包まれている。それも無理もない。3組、4組の代表(代表代理)が、訓練機使用の学生である以上この試合が事実上の決勝戦といっていいからだ。
それにしても総当たりのリーグ戦を普通の順番で組めば、1組VS2組が初戦となるのは当然なのだが、この盛り上がりを考えると後に試合をする二人が可哀想というものだ。
セシリアや箒が教員二人とピットに詰めた一方で、翔とフェイはスタンドにやってきていた。
「一緒に行かなくてよかったの?」
「行ってもアドバイスはしない約束だしな」
先日、甲龍が実際に戦闘を行っているのを見ている翔は、やろうと思えば誰よりも的確に一夏に戦術のアドバイスができた。
が、そうはしなかった。それは一夏に“未知の敵との戦闘”を経験させるため。
情報がない、あるいは少ない相手に対してどう立ち回るか。IS学園という対戦相手の限られる、閉鎖的な環境でその経験を積むのは容易ではない。だからこそ、得られた機会は余す所なく使わなければならない。
一夏もそれを納得した上で、また鈴との対決が不公平になるのを嫌い、翔に細かなアドバイスを求めることはなかった。
「で、どっちが勝つと思うわけ?」
「普通にやったら鈴だろうな……」
鈴とて一国の代表候補生だ。実力の差は歴然。一夏が相手とはいえ手を抜くこともないだろう。
「……ただ」
「ただ?」
「一夏は一撃でいいんだ。チャンスはある」
もちろんその一撃が届かない確率の方がはるかに高い。
それでも一夏なら可能性がある。代表決定戦の戦いを通して翔はそう感じていた。
織斑千冬の弟だから? あるいはバーチャロン・ポジティブを持っているから?
理由ははっきりしないが、それでも確かに一夏と白式は他とは違っていた。
今日、その才能の一端がまた垣間見られるのではないか。その期待が翔の中にはあった。
◇
ピットから飛び立ち、アリーナの中央で向かい合う一夏の白式と鈴の甲龍。
試合開始を待つ一夏に鈴がオープン・チャンネルで通信を入れる。
「一夏、今謝るなら少しぐらいは手加減してあげるわよ」
「あのなぁ……何度も言ってるけど、なんで俺が謝んなきゃいけないんだよ」
結局二人はあの『約束』を巡る喧嘩から仲直りできていない。
「もういいわ……。ISの絶対防御が完璧じゃないのは知ってるでしょ?」
鈴の言うとおり高い防御力を誇るISの防御機構にも穴がある。
そもそもISのシールドバリアは、コア内のコンデンサー領域に予めチャージしてある膨大なシールドエネルギーを機体表面に制御・展開しているもの。それに加えて、非常時に多量のシールドエネルギーを消費してパイロットや機体中枢を守る絶対防御がある。
しかし、絶対防御にも
「だから、あんたが謝る気になるまで痛めつけてあげるわ!」
背面にマウントされていた双天牙月を引き抜き、構える鈴。
「いいぜ、やれるもんならやってみろ!」
だが、ここで引く一夏ではない。千冬や自分に稽古をつけてくれた翔やセシリア、箒の前で恥ずかしい試合は出来ないのだ。
(まず、どうくる……?)
事前に入手した甲龍の情報はパワー重視の近接型で、武装は青竜刀型の実体ブレードに、肩の空間圧作用兵器である衝撃砲…。立ち合いの手は様々考えられる。
(けど、刀を抜いたってことは……)
目の前の彼女が小細工を好まない性格ということくらい分かっている。
『それでは両者、試合を開始してください』
開始の合図と同時に二人は一気に距離を詰め、刃を交えた。実体ブレード同士がぶつかり合い火花を散らす。
(しめた!)
向こうから近接攻撃を仕掛けてきたこの状況は、一夏にとっていきなりのチャンスだ。隙あらば零落白夜で勝負を決めてしまいたい。
しかし、鍔迫り合いの勝敗はパワーで勝る甲龍に上がった。
「くっ!」
弾き飛ばされた白式に向かって踏み込む甲龍。バトンのような振り回しから放たれる双天牙月の重い連撃が飛ぶ。
(くそっ……このままじゃだめだ。一度距離を取って……)
それを捌き切る技量のない一夏は一時離脱を選択するしかない。
「逃がさないわ!」
それを感じ取った鈴がすかさず肉薄し斬撃を放つ。
やや大振りだった攻撃を躱した隙に距離を取ろうとする一夏だったが、
「逃がさないって言ったでしょ!」
それは次への布石。
発射に必要な空間圧縮のチャージを既に終えていた衝撃砲『龍咆』が白式を捉え、その一撃は白式を地表まで叩き落とした。
◇
「やっぱり、そういうのもあったか」
衝撃砲についての翔の予想は当たっていた。
フェイ戦の時の連射モードと違い、今のは大口径のキャノンモード。
砲台部に形成した圧縮空間の一端の圧力を解いて開口し、いわば水鉄砲のように圧縮空間自体を撃ち出す衝撃砲。その砲口形成パターンを変えることで容易に攻撃特性を変えられることは衝撃砲の大きな利点だ。
「張り付き続けるべきだったわね。これは思ってた以上に厳しいかしら?」
フェイの言うとおり、距離を取れば主導権は当然射撃のある甲龍側に完全に移る。一夏は近接で食いついて衝撃砲を撃たせるにも無理な体勢を鈴に強いるべきだった。
「なーに、鈴も隙は見せてる。さて、一夏は気づくかな?」
◇
「ふん、よく躱すじゃない!」
連射モードの衝撃砲を出鱈目な機動で何とか躱す一夏。それでも幾度か射線を重ねられダメージが蓄積していく。
徐々に追い詰められていく一夏。
(落ち着け……
砲弾や砲身は捉えきれないものの、発射態勢に入るのは十分認識できる。空間圧縮が始まると砲台周りの光速が遅くなるため蜃気楼のように背景が歪んで見えるからだ。
それに圧縮空間の維持、放出分を加圧するのに多大なエネルギーを要するためリロードタイムもある。
(やっぱり、
一夏はそのリロードタイムの間にIBで詰められる間合いに入ることが出来ている。つまり――
(鈴の奴、俺がIBを使えると思ってないんだ……)
鈴はあくまで通常ブーストの速度だけを見て、より攻撃を当てやすい近い間合いを取っている。代表決定戦で翔が斬られたのと同じ状況だ。そうなると罠の可能性は低い。
相手がISに乗り始めて一か月ちょっとという情報を基にした鈴の読み。しかし、読みと油断は表裏一体。0でない可能性を排除すれば、読みは致命的な油断になりうる。
(翔にだって届いたんだ……今度は捉えてみせる!)
その油断を突く、警戒してなければ対応しきれないIB。
チャンスは一度きり。だがもう迷いはなく、確信だけがある。
回避をしながらIBで捉えられる遠すぎない距離を、翔が訓練で言っていたように鈴が射撃を続けたがる近すぎない距離を保つ。
そして、甲龍の衝撃砲のエネルギーが尽きリロードに入った瞬間――
「うおおおおっ!」
「なっ!!?」
零落白夜を起動、IBから放った一夏の斬撃は鈴に届く――はずだった。
ズドオオオオンッ!!
突然アリーナ全体を襲った衝撃と立ち上った砂煙にそれは阻まれた。
◇
「なんだ!?」
突然の事態に翔も声を上げるが、すぐに何が起こったかを飲み込んだ。
(襲撃!? 馬鹿な、IS学園の警戒網を抜けてきたのか!?)
軍事基地並の索敵設備を持つIS学園がこんなに簡単に侵入者を許すとは思えない。が、砂煙の中にいる存在がそれを否定している。
――IS。サイファーのハイパーセンサーが捉えた反応は紛れもないISだ。
それがビーム兵器を使ってアリーナのレベル2競技用遮断シールドを突破してきた。
「まずい!!」
翔が叫んだと同時に、襲撃ISがビームを一夏と鈴に向けて発射する。レベル2シールドでは防ぎきれないビーム。二人が躱したそれが客席に――
しかし、それは予想に反して遮断シールドに遮られた。
(遮断シールドがレベル4に……)
それを確認して、思わず立ち上がっていた翔は気が抜けてへなへなと腰を下ろした。
動転しかけた精神を何とか落ち着け、襲撃ISに視線を向ける。
(一体誰が……何の目的で……)
そこまで考えが至ったところで思い出す。こんなことをする/できる奴は一人しか知らない。
フェイを見る。
「……ダメ、繋がらないわ……」
フェイも気が付いて通信を試みたが応答がないらしい。
「ふざけやがって……」
展開している遮断シールドは緊急用の内外完全隔離を目的としたレベル4。つまり内から逃げることも、外から助けに行くこともできない。それも当然奴の仕業だろう。
やり場のない怒りが込み上げる。
しかし、その怒りで翔は完全に冷静さを取り戻した。
(今できることをしよう)
ピットのオペレーションルームにいるセシリアにプライベートチャンネルで通信を入れる。
『翔さん!? そちらは大丈夫ですの!?』
「あぁ、何とか……。悪いが織斑先生に繋いでくれ……」
『え、は、はい』
『……大沢、無事か?』
「はい。状況は大体把握してますが……どうします?」
『扉がロックされて生徒の避難が出来ん。破壊を許可する。イェンと一緒に避難経路を確保しろ』
「了解。扉の前にいる教員を下がらせておいてください」
『わかった…………すまんな……』
「いえ……」
千冬も既にこの襲撃の犯人を察していた。翔とて部外者ではないが友人が起こした騒動の尻拭いをさせることに負い目を感じ、謝罪の言葉が漏れた。
「つーわけだフェイ。俺は東側をやるから西側を頼む」
「オッケー。ちゃっちゃと片づけて二人を助けに行きましょ」
「ああ」
フェイと別れ、翔は指定された扉の前に立つ。
開かない扉の前に群がった生徒たちを下がらせサイファーを展開、ビームソードを構える。
そして、合金鋼の扉に
鋼板が轟音を立てて崩れ落ち、道が開ける。
「切断面はまだ高温だ、気を付けて通ってくれよ!」
駆け付けた教員に誘導され避難していく生徒たち。口々に感謝を述べる彼女たちを見送り、フェイもアリーナの反対側で扉の破壊に成功したのを見ながら翔は次の扉に向かう。
そんな翔の姿をじっと見つめる一つの視線があったことに、気付くことはなく。
◇
一夏と鈴は襲撃ISに苦戦を強いられていた。
一夏の斬撃、鈴の砲撃は襲撃ISに尽く躱される。全身のスラスターを暴力的にふかす、何とも力任せな機動に追いつくことが出来ない。
「馬鹿っ! ちゃんと狙いなさいよ!」
「やってるつーの!」
逆に二人は連携の乱れを突かれ、腕部ビーム砲からの乱射にいいように追い回されシールドエネルギーを削られていく。
数的には2対1と有利な状況。しかし、経験の浅い一夏と、本国での抜きん出ていた実力ゆえに連携訓練を軽視していた鈴という組み合わせのせいでそれを生かせず、襲撃ISに自由を許してしまっている。
「どうすんのよこれ…!」
「どうするったって……」
既に観客の避難も済み、遮断シールドも襲撃ISの攻撃を防げている。本来はこの辺で教員にバトンタッチするのが筋だ。
だが、そうしたくてもピットの入り口まで完全に遮断シールドで覆われて出入りが出来なくなっている。
考えたくないがこの襲撃ISにシステムを掌握されているのだろう。つまり、あっちはその気になれば遮断シールドを切ってアリーナ外部を攻撃しに行くことができる。
「ここで倒すしかないだろ……!」
「そうだけど、実際厳しいわよ?」
「分かってるさ。別に逃げたきゃ逃げてもいいんだぜ、鈴?」
「なめんじゃないわよ。それよりあいつを倒す方法があるかって聞いてるの!」
「……ああ、もしかしたらだけど、あいつ――」
◇
「一夏たち気が付いたみたいですね」
「中々やるわね、あの二人も」
「あ、大沢君! イェンさん!」
ちょうど生徒の避難を終えオペレーションルームに合流した翔とフェイが、モニターに映し出された一夏と鈴が頻繁に言葉を交わしている様子を見て気が付く。
「気が付くって……何がですの?」
「それは……織斑先生、構いませんか?」
その事実はそれなりに重大な事柄ゆえ、一応明かす前に千冬に許可を求める。
「好きにしろ」
「なら……あれはパイロットが乗ってないAI制御の無人機だ、セシリア」
「……は? 無人機って、ISは人間が乗っていなければ動きませんのよ?」
セシリアの言うことはもっともだが、それは“今の”世界での一般常識。
「奴の動きをもっとよく見てみろ、オルコット。ロボット特有のぎこちなさが見て取れるはずだ」
「それにあの武器・スラスター一体型腕部。肘関節の位置が変わる設計はとても人間向きとは思えない」
「う……確かに……」
その先入観を捨てて見れば、襲撃ISの動き・形は確かに人間としては不自然だ。
「うちの
「あんなのただの操り人形よ」
昨日の常識は今日の非常識。技術は日々進歩し塗り替えられている。
とはいえ同じ自立型でも、あれはフェイとは比べることすらおこがましいような紛い物でしかないが。
「……だとしてもですわ! どうやってあれを倒すんですの!?」
「それはだな……」
「あれ……そういえば篠ノ之さん、どこに行ったんでしょうか?」
『!?』
一夏たちの戦いに集中していた全員が、翔たちが来た時すでに箒の姿がなかったことに気付いていなかった。
◇
「無人機って言ったって、攻撃が当たらないじゃない!?」
「次は当てる」
「簡単に言い切ったわね……」
今の一夏に手加減している余裕などあるわけないだが、それでも全力で行けていなかった。
それは雪片弐型のシールド無効化攻撃『零落白夜』の特性のため。
零落白夜はISのシールドバリアを始め、狭義の運動エネルギー以外の様々なエネルギーを“吸収”し、ブレードの攻撃エネルギーに上乗せすることが出来る、いうなれば“対IS特化”の武装。
どんな形であれ殺人など望まない一夏には、絶対防御さえも完全に貫通するフルパワーの零落白夜を使うことなど出来なかった。
「人が乗ってないなら全力で行けるからな」
しかし、パイロットがいないなら当たり所を気にする必要はない。
それに秘策はもう一つある。
「鈴、言った通り頼むぜ!」
「あんたこそ失敗するんじゃないわよ!」
二人が襲撃ISに仕掛けようとしたその時――
「一夏ぁっ!」
アリーナ全体に響き渡る聞きなれた声。
視線を移した中継室の中にその声の主、たまたま開いた扉を抜けてそこに辿り着いた箒がいた。
「男なら……男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとするっ!!」
呆気にとられている一夏に、白式のハイパーセンサーが思わぬ情報を届ける。
(なっ、中継室の所の遮断シールドが薄い!?)
たまたま襲撃ISの攻撃が集中していたせいだろうか、そこだけレベル2近くまで強度が落ちている。
そこに向かって箒の存在を感知した襲撃ISがセンサーレンズを、次いでビームの砲口の照準を合わせた。
「まずい!箒、逃げ――」
高威力型のなら遮断シールドを突破できてしまう。が、幸いチャージに時間が掛かるようだ。それに――
「鈴、やれ!」
「わ、分かったわよ!」
鈴が襲撃ISにキャノンモードの衝撃砲を向け、その間に一夏が立つ。
一見すれば
「「行けえええええっ!!!」」
イグニッション・ブーストと衝撃砲の融合。
宇宙空間用に造られたISのスラスターは推進剤さえ必要としない重力制御型。衝撃砲と同じ原理で作用を逆にしたようなものだ。スラスターと衝撃砲弾をぶつけ合い、もしその空間膨張がうまく重なれば大きな推進力が得られる。
そして、それを機体質量の慣性をPICで低下させて加速を飛躍的に高めるIBと同時に使う。
ただし、少しでもタイミングを間違えれば自分が衝撃を食らい、少しでも角度を間違えればあらぬ方向に飛んでいくだけ。
発射された最大出力の衝撃砲がスラスターの圧縮空間に交わった瞬間、一夏は白式を飛ばした。
一度きりの、ぶっつけ本番の分の悪い賭け。
しかし、皆を守りたいという想いに白式が呼応したのだろうか。
代表決定戦の時のような、いやそれ以上の一体感の中で、一夏と白式はその賭けに勝ってみせた。
「――オオオッ!」
IBを遥かに超える急加速。同時に零落白夜を最大出力で発動。
瞬く間もなく襲撃ISの懐に飛び込んだ一夏は、中継室を狙うその右腕を切断した。
だが、その反動でIBの速度が落ちすぎた。残った左腕のパンチに捉えられ、地面に叩き付けられる。
身動きの取れない一夏に止めを刺すべく、襲撃ISのビーム砲が向けられる。
「「一夏っ!」」
箒と衝撃砲がリロード中の鈴から届くのは叫び声だけ。
けれど――
「おい……忘れてるぜ?」
そう、
遮断シールドをビビッド・ハートのレイピアが突き破り、そこから侵入したブルー・ティアーズのレーザービットが襲撃ISの左腕を撃ち抜き、サイファーのバスターが頭部を吹き飛ばす。
「お待たせ!」
「全く、世話が焼けますわね」
「けど上出来だ一夏」
この三人なら、それを見落とすことなどあり得ない。
起き上がった一夏が、逆に動きの取れなくなった襲撃ISに止めを刺すべく近づいていく。
(見ているか、篠ノ之束?)
翔はこの襲撃の目的を考えていた。おそらく一夏の能力を高めると同時に、一夏と白式に勝利という箔を付けるためだったのだろう。
だが、一夏一人による勝利という本来のシナリオは阻止された。
(残念だったな……これは俺たち全員の勝利だ)
襲撃ISを前に一夏が零落白夜を発動し、雪片を振り上げる。
あれを受ければコア諸共破壊されてこの襲撃の決定的な証拠は消失するが、どうせこの失態を学園は揉み消すはずだ。
(なら、最期くらいお前の役目を全うしろ)
それがこんな役目のために造られたあのISへのせめてもの情け。
見届ける翔の前で、一夏が振り下ろされた刃が襲撃ISの装甲を破り、コアに至ろうとしたその時――
襲撃ISの中から猛烈な閃光が天に立ち上った。
「自爆!? 往生際の悪い…!」
誰もが一瞬、セシリアの言葉と同じことを思った。
だが、一夏を弾き飛ばしたその光は爆発のように広がることはなく、ある形に収束していく。
「うそ……でしょ……」
それはその中の特に二人が見慣れた、0と1の羅列が形作る多層の角柱。
その中にまるで襲撃ISという殻を食い破って這い出てきたように、異形の存在が姿を現す。
「ここで来るか……」
シャドウが発生した時点で覚悟はしていた。ただ、願わくば今度こそ杞憂であって欲しいと思っていた。
けれど、その願いは再び裏切られた。
アイザーマンたちが懸念した電脳暦の厄災が一つ。
どこで生まれたのかも、何が目的なのかも分からない。虚空から突如として飛来する謎の破壊神。
攻性結晶構造体――
「アジム……!」
その出現は、すなわちアジムがISをVRと同じ敵性存在と見なしたことを意味していた。
まただよ(笑)。
乱入してくるとはとんでもない奴だ。
ゴーレム相手に時間を掛けすぎた(タイムアップ勝利)せいですね、これは。
イグニッション・ブーストは原作から設定を大幅変更してます。