電脳戦機IS 〈CYBER TROOPERS -Infinite Stratos-〉 作:魚狗
「ぐあぁっ…!?」
「な、なんだ……」
黒い影に包まれたレーゲンから強烈な精神波ノイズがまき散らされる。VPの高くないアレクや秀郷はMSBSへそれが強く干渉し、激しい頭痛に苦悶の表情を浮かべる。
「まさか、これが……」
アイザーマンが恐れていた、電脳暦の厄災の一つ。
≪皆、それが『シャドウ』だ!!≫
人の精神とVクリスタルが強く結びつくバーチャロン現象。深い深度でのバーチャロン現象を行うと、時に人の感じる様々な負の感情がVクリスタルの“欠陥”と言うべき部分に囚われ、それがフォーカスされて表面化する場合がある。恐怖、怒り、憎しみ、殺意、悪意、怨念…それがVRという存在を汚染し出口として溢れだしたのが、暴走VR『シャドウ』という存在だ。
シャドウは発現するとその機体性能、主に攻撃力と防御力が別次元のものへと変化する。そして破壊衝動のままそれを周囲のものすべてへと向けるのだ。
(外部から侵入された不安定な状態で、その上袋叩きにしてパイロットの無意識の精神を追い詰めすぎたか…!)
アイザーマンは歯を噛む。パイロットを助けるための策、それが完全に裏目に出てしまった。
「…っ、このっ…!!」
VPの高さからMSBSへの干渉が少なく、いち早く立ち直った翔がバスターを発射する。
「くそっ、ゲートフィールドが硬すぎる…!」
しかしそれは何発撃とうが影を突き破るどころか、揺らすことすらできない。
その
そして、静かに消えたゲートフィールドの中から、
慟哭とともに破壊衝動で出来た牙を剥いた。
~~~~~~
「え…何……何なの、何が起こってるの!?」
地球のとある場所でこの騒動を仕掛け、高みの見物を決め込んでいた天災は狼狽していた。親友をこき使った憎き国、その新型機の脆弱なシステムをハッキングして暴走させ、同じく気に食わないことをしている中東の研究機関を襲撃させて、適当に施設を破壊してもらおうとしていた、他でもない篠ノ之束その人である。
しかし、映像に映し出されている光景は、既に自分の仕掛けた茶番から大きく逸脱したシナリオ。何が何だかわからぬまま騒ぎ立てる彼女に後ろから声が掛けられる。
「だからやめときなさいって言ったのに…」
振り返って束が見た黒い影を見つめるその少女の表情は、普段見る花が咲くように明るいものではなく、視線は鋭くひどく冷たかった。
「ね、ねぇ、あれはなんなの?あんなの束さんは知らないよ!?」
「ええ、知ってるわ。ちょっと行ってくるわね、束」
「え、ちょっと待って…!?」
「話は後よ」
「でも……」
「仕方ないでしょ、あれの相手は私の
それだけ言って、少女は0と1の光の中に消えた。
~~~~~~
「ちぃっ…なんて防御力だ!!」
ランチャー弾をシールドバリアに弾かれたアレクが悪態をつく。シャドウの性質は同じVクリスタルを核とするVRとISで概ね差はなかった。故にシャドウと言えど無敵ではない。電脳暦での経験からアイザーマンたちはそう考えていた。
だが現実はどうだ。三人の攻撃は幾度かシャドウを捉えているが、シールドバリアは全く持って影響を受けていないように見える。確かに攻撃し続ければいつかは倒せるのかもしれない。
しかし、時計の針はシャドウではなく、VRISたちの喉元に突き付けられていた。
「本当にこれで汚染率30%なんですか、博士!?」
シャドウの砲撃を縫って、逆に返したトレースビームが尽く撃ち落とされた翔が情報に耳を疑う。
一つはパイロットの安否だ。シャドウ汚染は一気に高い値になることもあれば、徐々に進行することもある。値は概算だが30%程度の低い汚染率ならば、短時間でシャドウを取り払えればパイロットを助けることができる。しかし、汚染が進行し、長時間負の感情に塗れたゲートフィールド内に置かれていればその精神は崩壊してしまう。もちろん肉体的にも相当の負担がかかっているはずだ。
(まさか、シャドウがAIを取り込んでいるのか…?)
普通シャドウは破壊衝動が表面化して異常なほど攻撃的になり、見境のない破壊を行う。そのはずなのにこのシャドウレーゲンは想像以上に回避、ワイヤーブレードによる防御を行っている。人が乗らなければ動かなかったVRだけしか知らないアイザーマンが知りえなかった現象。それに余計に時間を稼がれてしまう。
「ぬぅっ!?なんと重い…!」
シャドウが繰り出したワイヤーブレードを秀郷が薙刀で弾こうとする。しかし、スピードもパワーも格段に上昇したそれに弾かれ、肩のアーマーとシールドバリアまで使って逸らして何とか逃れる。体勢を崩した景清に対してリボルバーキャノンを見舞うが、これは何とか回避した。砂漠に着弾した弾丸は砂埃を巻き上げ、巨大なクレーターを作る。
二つ目に、この単純な攻撃力の向上だ。今は皆回避してはいるが、どれでも一度でも直撃をもらえばよくて即行動不能、悪ければ死…。戦闘の長期化はそのリスクを増やす。しかも減らしたはずの残弾はリバースコンバートによって生成されて回復しているときている。もしレーゲンに命中率の良い適当な連射武装があったらと思うとぞっとする。
「クソ…何とかならねえのかよ…これは……」
そして絶え間なく続く精神波ノイズ。それはパイロットの精神の消耗と同時にVRISコアの活性を低下させる。このままでは被弾がなくとも動けなくなりかねない…。
時間がない上のジリ貧。何とか勝負を仕掛けるしか道はない。
「なら、こいつでどうだ!」
アレクはEVLバインダーから青白い紡錘状の光弾を発射する。迫る弾丸を掻き消そうと振るわれたワイヤーブレードは、接触と同時に突如制御を失い力なく垂れ下がった。
スペシネフの特殊武装『ソウル・クラッシャー』の一つ、通称 “封印弾”。ゲートフィールドに干渉することで、それに依存する第三世代IS特有の特殊兵装を機能不全に陥れ、10秒程度使用不能にすることができる。
干渉が伝搬した4本すべてが機能不全になった隙を見逃さず翔が頭上から突撃、ホーミングビームを狙う。しかし、
「なっ、短すぎる!?」
2秒と待たずその効果は失われ、再びワイヤーブレードに息吹が吹き込まれる。スペシネフのVRISコアの活性低下によってその性能が著しく低下していたのだ。
「ぐあっ!」
振るい直されたワイヤーブレードから、寸でのところでのVターンによって直撃は免れたものの、サイファーはウイングスラスターを切り落とされ、その衝撃で紙のように吹き飛ばされる。
「翔君っ…!?…このっ!!」
同じく接近していた秀郷を4本すべてのワイヤーブレードが取り囲む。躍りかかるワイヤーブレードを薙刀の刃と柄で防ぎ離脱を試みるが、
「しまった!?」
捌ききれず一本が足首に絡みつき、さらにもう一本が薙刀ごと右手の自由を奪い景清は捕縛されてしまう。
そこに向けられる、リボルバーキャノンの砲口。
「おっさん!?この野郎っ!!」
アレクが秀郷を助け出そうとするが、秀郷を盾にされてしまい射撃ができない。それならばと接近、サイスでワイヤーブレードを切断しようとするが、
「避けろ!!」
「何っ!?」
景清の影から現れたキャノンの射線の先はスペシネフ。
「があっ!!」
撃ち出された砲弾は、秀郷が咄嗟に砲身を蹴り飛ばしていなければ間違えなくアレクの体を撃ち抜いていただろう。わずかに逸れた弾は硬質なはずのEVLバインダーの左側を砕き、その爆発がスペシネフを砂丘まで弾き飛ばした。
「くっ…!!」
改めて景清に向けられたのは両手から伸びたプラズマ手刀。絶望しかない状況でも、せめて剣を取った自分の最後を見届けようと、秀郷は振り上げられた相手の剣を括目し睨み返す。
そして、それが振り下ろされようとした瞬間…
突然翔とアレクからではない、気が抜けるような不思議な発射音の攻撃がシャドウを激しく揺らした。
「なんだ……?」
ワイヤーブレードの拘束が緩んだ隙にすり抜け何とか距離を取った秀郷と、
「く……いてて…一体何が……」
砂漠にできた穴から軋む体を起こしたアレクと、
「お前は…まさか…!?」
地表に激突する寸前でかろうじて体勢を立て直していた翔が見たのは、
シャドウを見下ろす少女とISの姿だった。
ハートの髪止めでまとめた桃色のツインテール。ISは装備は一見すると手足のアーマー以外はリボンのような腰から伸びるスラスター、それと左手に握られたレイピアのみ。
だがその姿をアイザーマンは誰よりも知っていた。電脳暦で創られ、決して誰も真似することができなかった“オリジナル”の
≪『フェイ・イェン』なのか…?≫
「ええそうよ、アイザーマン。久しぶりね」
≪…まさか君がこっちに来ているとは……。それで
「もちろんそのつもりよ。ほらそこの3人!突っ立ってないで戦いなさい!」
「う、うむ…」
「……(ポカーン)」
「なんだ、あのガキ……ってこれは!?」
その異変に最初に気が付いたのはアレクだった。さっきまで自分の頭を締め付けていたシャドウのノイズが嘘のように晴れて、VRISコアの活性が復活したのだ。
「まさか、あいつが…」
≪そう、対シャドウの切り札である彼女の能力さ。この場は協力してやってくれ≫
「今、彼女が最も心強い味方なのは間違いないですよ」
「ちっ…わかったよ」
コアの活性が戻ったことで、リバースコンバートによってスムーズに破損部分を回復させた翔とアレクが戦列に復帰し、第二ラウンドが始まった。
対峙する4機の中でフェイ・イェンを最大の脅威と判断したシャドウがワイヤーブレードを射出する。
「それの相手は…」
「この私たちがしよう!」
フェイ・イェンに伸びるそれを翔がレブナントⅡのビームソードモードで、秀郷が薙刀で振り払う。
「む、心なしか力が弱く…」
「そうか、さっきのハートビーム!」
到着早々フェイ・イェンが撃ち出したのは体の前面から発射される無砲身のハート型のビーム弾。そのハートビームはヒットした相手に様々な状態異常を与える効果と同時に、シャドウに対してはその汚染率を低下させる能力を有している。
ならばとシャドウはワイヤーブレードで二人を追い回しつつ、キャノンを向け発砲する。しかし、その砲撃はあらぬ方向へと飛び去った。
「どこ狙ってやがる、この根暗野郎」
それはアレクが得意の狙撃で砲身を狙い撃ったためであった。自分の身を守る術を失ったシャドウにいよいよフェイ・イェンの光に照らし出される。
フェイ・イェンが右手から細かいハンドビームが抜群の連射力で発射されシャドウを追い立てる。3機を相手取りながらその攻撃を躱すシャドウ。本来なら強固なシールドバリアで受ければいい攻撃だが、取り込んだAIのハートビームを警戒する指示に逆らえず回避を行い、徐々に追い詰められていく。先ほどまで自分を助けていたアイテムが、今度は一転足を引っ張り出す。
さらにフェイ・イェンがレイピアを鋭く横薙ぎに振るうと、それに合わせた帯状のカッターが射出される。類似した景清火の光波とは比べ物にならない高弾速。ダメージは劣るが、大きく勝る衝撃がシャドウの機体を弾く。
「スペの!」
「分かってるよ!!」
その硬直を逃さず、アレクが最大出力のサイスウェーブを振り出す。シャドウも回避を試みたが威力と同時に増した強烈な誘導がそれを許さない。大きく吹き飛ばされたそこには最も恐れていたハートビーム。それに被弾しシャドウの汚染率はさらに低下していく。
しかし、そろそろ悠長に構えていられなくなってきていた。
「これ以上はまずいわね…」
シャドウ発現から20分以上。汚染率は下がってはいるが、これ以上はいい加減パイロットが持たない。それを見抜いたフェイが動く。
「ねぇ、景清の貴方!」
「私か?」
「私が動きを止めるから、“あれ”で仕留めて!」
「!?…しかし、あれは火力が高すぎる…あちらも君も危険だぞ!?」
「大丈夫、向こうはそれでちょうどいいくらいだから、信じて!」
「…いいだろう…承知した!」
「そっちの二人!わかったんならうまくやってよ!」
「おい、どういうこと…」
「あいつが攻撃できるチャンスを作ればいいんですよ!」
「くそがっ!!」
フェイの告げた作戦を受けて翔とアレクはワイヤーブレードを掻い潜り、シャドウに接近してみせる。相変わらずフェイ・イェンを優先的に警戒した動きで、こちらに割かれている意識が薄い。
「それなら…!」
「こういうのはどうだい!?」
二人はなんとシャドウの目の前で同時にくるりと反転して無防備な背中を向けたのだ。攻撃するには絶好のチャンス、しかしどう見ても罠とわかる行動。それがとAIの判断とシャドウの攻撃性を衝突させ、その動きを止めさせた。
「上出来よ二人とも!!」
フェイ・イェンがレイピアの切先でハートを描いてみせる。その軌跡に合わせたハートビームが生み出されシャドウに直撃した。 “スタンハートビーム”。人の精神とVクリスタルに強く作用し活性を低下させることで、機体の動きを麻痺したように数秒間完全に止めてしまうフェイ・イェンの奥の手。
「景清の!」
「応っ!」
固まったシャドウの頭上には、既に右の腰に構えた左の手のひらエネルギーを集中していた景清。
「滅っ!!!」
晴れ上がった砂漠の空に不似合いな雷鳴が轟いた。景清、いや現存するVRISでは最大火力の射撃攻撃、圧縮プラズマ砲『
人に仇なす
「――――――!!!!!!!!」
激しいプラズマの爆風と電磁波障害と共に、声にならない精神波の断末魔がMSBSから流れ込む。
それが聞こえなくなると同時に爆炎の中から落ちてきた機能停止したレーゲン。その色は既に“翳”ではなく元の“黒”に戻っていた。翔とアレクが受け止めるとようやく役目を終えたレーゲンはパイロットを降ろし、待機形態へと戻った。
それを見届けたフェイが踵を返す。
「待てっ!」
「また後でね」
引きとめる翔の言葉に振り返ったフェイはそれだけ言って、再び定位コンバートで何処かへと消え去った。
――――――
「クリス君、彼女の容体は…?」
「命に別状はありません。精神も衰弱していますがじきに回復するでしょう」
「それは良かった…」
サッチェル・マウスに搬送されたレーゲンのパイロットはその医療施設で治療が施されていた。ダメージは小さくなかったが何とかタイムリミットまでに救出できて、皆安心している。
「博士、機体の方は?」
「シャドウの情報は念入りに消しておいたよ。あと簡単に調べたが、やはり外部から侵入されていたね。だが、これはドイツの落ち度でもある。未実装の機能を載せる予定の部分を放置していれば、それが穴になることなど分かるだろうに…。まあ、これだけのことをできる人間は僕か、もう一人しかいないけれどね…それに…」
アイザーマンは突然点灯した通信用のディスプレイに驚く様子もなく言葉を続けた。
「そろそろそっちから連絡してくる頃だと思ったよ、束」
「…久しぶりだね、クリス君…いや今はDr. アイザーマンが正しいのかな?」
「とりあえず言うべきことがあるんじゃないのかい?」
「…あれは、あんなのは知らなかったんだよ束さんは!さっきフェイちゃんに教えてもらうまであんなことが起こるなんて…!」
「ごめんなさいもできないのかよ、クソアマ……」
「…………」
後で見ているアレクと翔はその態度に完全に呆れてしまっている。
「…フェイ・イェン、まさか君が束の所に行っていたとはね…。いつ来たんだい?」
束の後ろに立つ彼女に会話を移す。電脳暦では幾度か僕の目の前に現れて話をすることがあった彼女と、まさかこんな再開を果たすことになるとは夢にも思わなかった。
「一か月くらい前よ。あんたの所に行ってもよかったんだけど、この世界でISっていうのを作った奴に興味あったしね」
「すごいねこの子!まさかVクリスタル?っていうんだっけ、ようはコアの自我を完全な人格にしちゃうなんて!作った人に会ってみたいよ!」
『オリジナルVR』。Vクリスタルにわずかに存在する自我を完全に自立した意識として発現し、さらに自由にCISを行き来することができる奇跡の存在。彼女はまた時にVRであったり、時に人間の少女であったりと姿形を自由に変えることができる。今回は束からISの情報を聞きながら、遊び心でこの世界らしい姿をとったのだろう。その存在に興奮を隠さない束を尻目に、引っかかった最後の言葉を問い返す。
「…やはり、“あの人”を捜して?」
「ま、それもあるかしら?
彼女を創り出したDr. プラジナーという電脳暦を代表する天才は随分前に失踪してしまっている。彼女は今もその“父親”を探しているようだ。
「束、とりあえず今回の件はパイロットたちが無事だったから大目に見る。その代り色々教えてもらうよ」
「ううう、クリス君がいじめる…いたっ!何すんのフェイちゃん!?」
「どう考えてもあんたが悪いでしょ…」
束がフェイ・イェンにチョップされていた。
「…まず、どこでVクリスタルを手に入れた」
「初めて見つけたのはね…君のところにいるおじさんの家知ってるでしょ?あそこの裏山」
「何っ!?」
驚きの声を上げる師範。しかしよくよく考えればこれだけ高いVPを持ったのは何世代もVクリスタルの近くで生活していたためと言われれば納得がいく。
「それから家の神社にも一個祀られててね。世界各地に呪術的な宝石とか “触れたら気が狂う呪いの石”って感じで封印されてるのが結構あって。出所は分からないけど昔の交易で散らばったんだろうね…もう束さんが全部回収しちゃったけど☆」
どうやらVクリスタルは売り切れらしい。なんとか手に入れたいが、一体どれだけ残っているだろうか…。
「それであの子たちに触れて、クリス君の世界を少し見せてもらったんだ。それで思いついてISを創ったんだよ。中々楽しそうな世界だよね…火星や木星まで人類が行ける世界」
「が、不都合な部分をVクリスタルやフェイは君に教えなかったようだね」
「…シャドウだっけ…まあ、あれは予想外かな…。でも、今回の件でコアネットワーク経由で皆に耐性ができたみたいだから、今後は簡単になったりしないと思うよ」
そういう問題ではないと…というかつくづく不可解なシステムだ。VRISには宇宙に行く直前になって、ようやくコアネットワークの通信と位置情報取得回線へのアクセス方法を解析、機能を追加ができたというのに…。この技術では残念ながら僕は彼女に劣っている。
「もう一つ、ISの使用者の制約はなんだ?」
「おじさんを調べればわかるよ~」
?…っ、そうか!?
「師範、ISを起動してみてください!」
すぐさま師範にメンテナンスに預けられていたバイパーに触れてもらう。
「こ、これは…動いたぞ、クリス君!?」
「…バーチャロン現象経験の有無か……」
「そう、それなりに深いリンクの、ね」
VRISとの接続という形でバーチャロン現象を経験した師範はその要件を満たしたわけだ。となるとアレクもどこかで…?
「ちゃんとこの子達と話せるならそれでいいかなって。ま、それはいいんだけどさ…」
先程までのふざけたような雰囲気はなりを潜め、束の言葉に冷たさが籠る。
「クリス君、宇宙開発やめてくれない?」
「…馬鹿を言え。そのためにISを作ったんじゃないのか?」
「皆が宇宙に行く必要はないよ。この子達をちゃんと理解してくれる人だけで行けばいい。あ、大丈夫クリス君はいいかなって思ってるよ」
「断る。科学の進歩の恩恵は人類のできるだけ多くが享受するべき。ISは多くの人々を宇宙に導くための尖兵だ」
「ふーん、じゃあ競走だね。私とクリス君どっちが先に
束からの明確な宣戦布告。だがそれは“競走” であって“戦争” ではない、直接的な攻撃は行わないというニュアンスが含まれていた。
「ムーン・ゲートのことは聞いていたか……いいだろう、君の独り善がりな夢と、僕たちが掲げる夢のどちらを宇宙が選ぶか、よく見ておくといい」
それを僕は受諾した。
「束君、ひとついいかな?」
僕らの会話に師範が割り込む。久々に話す彼女は彼の目に一体どう映っているのだろうか。
「何かな、おじさん?」
「君は千冬君や一夏君、箒君をことをどう考えているんだい?」
「み~んな大切な人だよ、束さんにとってかけがえのないね」
「…そうか、ならば約束してもらおう…決して彼らを傷つけたり悲しませないと」
「もちろんだよ~」
「ねえねえ、アイザーマ~ン」
「…フェイ、君は……」
真面目な話をしていたのに、いきなり調子を狂わせるな。
「私IS学園に行きた~い」
「……」
その上で何言い出すんだこれは…。
「代わりにまたシャドウとかが現れたら無条件で協力してあげるから、だめ?」
「ちょ、ちょっとフェイちゃん!?フェイちゃんがいなくなったら、また束さんは一人ぼっちなんだよ!?」
ほう…そうか…話し相手兼頼もしいボディガードがいなくなれば束も少しは大人しくなるかな…。
「わかった。君にうちの席を用意しよう。束、適当にうちのコアに彼女を偽装してくれ。戸籍は僕がやっておく…中国人の飛燕、機体名は…ビビッド・ハートあたりでいいだろう?」
「ねえ、だからちょっと!!」
「ありがとーアイザーマン大好きー」
「やめろ気色悪い」
「じゃ、しばらくしたらそっち行くねー。じゃあ~ね~」
「おい待て…全く相変わらずな娘だ……」
ぎゃあぎゃあと騒がしさを残しつつ切れた通信に頭痛を覚えながら、長かった一日はようやく幕を下ろした。
「となると彼女は翔君と一緒にIS学園に通うことになるのか」
「…あれ俺の仕事また増えてね?」
「お前も大変だな…」
ちょっとアンチ束になってきましたね。
ドイツの機体をシャドウにしたのはフラグメンタリー・パッサージュのGBH(ゲーベーハー:ドイツ読み)から。
フレンドリーファイア避けるため皆殴りに行ってないですね…。
フェイはウサ耳繋がりで束のところに即決。
あの性格は絶対IS学園に行きたがるが酢豚ともろキャラが被るンゴ…。