私は、どこにでもいる信心深いただの村人だった。
特に災いもなく、それでいて大きな功績もなく。
ただただ、惰性のような人生を過ごしていただけだった。
……あの日が来るまでは。
「──やあ。最弱英霊ルーラーさん、お呼びでなくともとにかく参上、だよ」
そう嘯くのは、不自然な程に全身を白く染め上げた一人の少女だった。
その右手には、指と指で挟むようにして、都合四つの
それに足して、彼女の視線の先にいる『彼』は、鬱陶しそうに告げた。
「やっほ。久しぶり」
「誰かと思えばテメェかよ、ルーラー」
「酷いな、その言い草はないじゃん」
「最弱の名前はオレのモンだ、勝手に奪おうとしてんじゃねぇ」
「というか、壮絶に論点がずれてる気がする」
「そこまでズレてねぇだろ。要するにこいつァどうしようもねえ
「どうしようアヴェンジャー、私聞いてて悲しくなってきた」
「奇遇だな、オレもだ」
「「ははははは」」
笑い声が、彼ら以外に人のいない洞窟を反響する。
そして。
すっ、と。少年は二振りの歪な短剣を構え、少女は無数の宝石を生み出し、翳す。
浮かべる表情は、互いに気味が悪いほどの笑顔。
「──疾ッ!!」
「──
一瞬の間をおいて、いびつな短剣と無数の宝石が交錯する。
ルーラー──スペンタマユは英霊である。
本人からしてみれば、特に功績もなければ犯罪歴もない自分がそんな所に祭り上げられるのは不思議でならないのだけれど。
彼女の功績とはそれ即ち──善神の依代としての側面である。かつてある少年が『
しかし、その実情とてたかが知れている。
アンリマユが『全ての悪を押し付けられる』ことによって生まれたのに対し、スペンタマユは『全ての善を捧げさせる』ことによって生まれたのだ。言ってしまえば、体のいい奴隷のようなもの。
程なくして、文字通り全てを奪い尽くされた少女はその命を落とした。奇しくも、全てを押し付けられた少年と同じ日に。
そこに違いがあるとすれば……彼女が、皆を一切
──私は
盲信や狂信よりも尚タチの悪い、いっその事
故に。
彼女は全てを救う。例え、代償として何を喪ったとしても。
「ひゃーっはっはぁ!!」
「これでどう!?」
穢れて歪んだ大聖杯を前にして、二人の『最弱』がぶつかり合う。
片や、死を厭わずに自らの全てを使いつぶす『死滅願望』。
片や、生の為ならその他の全てを利用し尽くす『生存願望』。
同一にして逆反対なる二つの願望が、いくつもの激突を繰り返す。
「頭から食べちゃうぞー!」
「あーらら、怖い怖い♪」
果たして何時間、いやさ何日経ったか。
無限に続く相対の末に、結末が姿を現した。
「逆しまに死ね──『
「匡正の時は来た──『
原初の呪いと原初の祝福、やはり対極に座する宝具が解き放たれる。
──これは、名前を棄てたある抜け殻の物語。
10/23.マテリアル削除。
本編が終わるかモチベが終わったら別個で上げます