アサシンとルーラーが激突した、その日の夜。
柳洞寺爆発事故(仮)の張本人であるスペンタマユは、疲れきった表情で路地を歩いていた。
というのも、昼間から派手にやらかした──何度も言うが、本来彼女は中立の立場である──件について、
ただでさえ白いその姿をさらに灰のように白く染め上げ、のろのろとした動きでサーヴァント反応へとむけて足を動かす。
そうすると、
「■■■■■■■■■■──────!!!」
「はあっ!!」
「セイバー! 気を付けてく……ルーラー!?」
「」
向こうからやってきた。世界は悲劇に満ちている。
しかも、よりにもよってステータスの鬼とまで称されるバーサーカーと最優のクラスと名高いセイバーのコンビだ。余裕で死ねる。
あゝ無情。
「どうもです、セイバーのマスターさん」
「お、おう……大丈夫か? その、何か、白いぞ?」
「ご心配なく、いつも通りですから」
「そ、そうか……」
「私は基本的にただの傍観者ですからね……いくらお上からの仕事があるとしても、最低限監視くらいはしないといけないんですよ……あー、胃が痛い」
治癒魔術を仕込んだ宝石を作って、それを一息に飲み込む。
何故こんな面倒なことをしているかと言うと、纏った『殻』のせいなのか、魔術が宝石にしか使えなくなったからだ。その分効果は上昇しているので、まあ一長一短といった所か。
お腹の奥が暖かくなるのを感じながら、少女は死んだ魚のような目で二騎の激戦を眺めていた。
そして気づく。
「ねえ、セイバーのマスター君」
「はい?」
「──
その問を投げかけた直後。
「■■■■……!?」
「ぐっ!?」
バーサーカーが何かに気付き、力任せの一撃でセイバーをはね飛ばした。
そして、大きく後ろへ下がったセイバーを尻目に、どこかへ向けて疾走していく。
「セイバー、どうした!?」
「分かりません! ですが、これは……?」
「……嫌な予感がします。具体的に言うと私の出番な予感が」
困惑するセイバーとそのマスターをよそに、スペンタマユはさっさと突然撤退したバーサーカーを追う。
よほど拙い事が起きたのか、咆哮しながら全速力で駆けていた。唯一の長所と言っていい敏捷A+の恩恵で何とか追いつけたが、一体何をそこまで焦っている……?
「■■■■■■■■■■!!!」
「なっ、加速した!?」
さらに速度を上げたバーサーカー。慌ててルーラーがその肩に掴まり、ほとんど横にぶら下がる形で追従する。バーサーカーも本気で焦っているのか、ルーラーに意識を向けるどころか気付いてさえもいない。もはやその速度は並の乗用車を突破し、ある地点へ一直線に駆けていく。
そして。
バガンッ!! と、どこともしれない家屋の扉をぶち破り。
「■■■────■■■■■■■■!!!」
「うわぁあああっ!!?」
その衝撃によって今度こそスペンタマユは投げ出された。
しかしそこは裁定者の底意地、転んでもただでは起き上がらない。
空中で体を捻って速度と方向を調整し、目の前で呆然とへたり込んでいる少女──確か、バーサーカーのマスターだったか?──をかっ攫う。
そしてそのまま、内装も何もあったものじゃない屋敷跡(?)から飛び出した。
「あ、あなた……!」
「いっつつ……最弱英霊ルーラーさん、お呼びでなくともとにかく参上……!」
そして、ガラスのない窓へと大量の宝石を投げ込んでいく。
マスターとはいえサーヴァントならざる生き物を巻き込む以上、ルーラーのやる事は決まっていた。
カチッ、と右手の親指でボタンを押すようなモーションをする。
次の瞬間。
「──吹っ飛べ馬鹿野郎!!」
屋敷跡が眩い光を発したかと思うと、木っ端微塵に弾け飛んだ。
辺り一体に撒き散らされる光と瓦礫の中から、勢いよくバーサーカーが飛び出してくる。
彼にマスターの少女を預けつつ、裁定者の少女は背中にある一対の双剣に意識を向けた。
やったか、などという馬鹿丸出しのフラグ発言はしない。する必要も無い。
何故ならば──
未だ、相手は健在なのだから。
「──随分と慌ただしいな、雑種?」
ガリ、と大地を踏み締める音が耳に届く。
そして。
人は愚か天地すらもが平伏するであろう、とてつもない『高貴』が姿を現した。