「む?」
めこ、と。
マスターの少女、その両脇の地面が盛り上がる。
そして、次の瞬間。
「何っ!?」
隆起した地面から
慌てて剣を振るい、その二振りを叩き砕く。
その一合だけで、ギルガメッシュはカラクリを看破する。
「この感触……忌まわしい、贋作風情が!」
思わぬ伏兵に、ギルガメッシュが苛立ちを募らせる。
その大元である小娘に鉄槌を下さんとするが……。
「
見れば。
先程まで地に這いつくばっていたはずの
その両腕には、無数の
「……今度はどんな手品を見せるのだ? 雑種よ」
「
嘲るような表情でその様子を眺めるギルガメッシュ。
変化はすぐだった。
「
その言葉と同時に、眩い光が辺りを照らす。
しかし、それは宝石から撒き散らされるような極彩で無粋な光ではなく。
まるで、全てを包み込むかのような……。
「うわっ! なんですかこれ!? 光ってる! 後光放っちゃってますよ私!」
本人のノリの軽さは相変わらずだが。
対して、ギルガメッシュの眉間に深い皺が刻まれた。
そして、その感情のままに、ある問を投げかける。
「その溢れんばかりの忌々しい気配……貴様、さてはもどきではなく本物の神か……?」
「は? 何いってんですかあなた。私は私であり、信仰心強すぎてちょっと依り代紛いな事までやってただけな一般人Aですよ?」
ひらひらと手を振ってみせるスペンタマユ。
しかし、今やその一挙手一投足がギルガメッシュを苛立たせる要因となっていた。
「そうか、あくまで惚けるか。ならばそれも良い──その不敬、貴様の命で贖え」
瞬間、裁定者を中心に無数の波紋が現れた。
そこから顔を覗かせるのは、剣、槍、弓、斧、杖……大小無数の武具。
その一つ一つが有史以来語り継がれてきた伝説の武器──その原典であり、弱小サーヴァントなルーラーでは文字通り掠っただけで消し飛んでしまう。
だが。
「ふっ!」
空中に無数の宝石がばら撒かれる。
それらは武具が直撃する寸前に自壊し、その衝撃波で武具の軌道を逸らすのだ。
結果。
トガガガガガッ!! というとんでもない音とともに、スペンタマユを中心とした半径2mほどの円が、大小無数の武具によって象られる。
ちなみに当の本人は内心壮絶に冷や汗を流していた。
(死ぬかと思ったなんか気付いたら躱してたやっべぇええええええ!)
「貴様……小手先の付け焼き刃で
(いやぁああああすっごい怒ってるぅううううう!)
傍から見れば繊細な技巧で受け流したように見えるが、当人達のやり取りからわかるように完全なる偶然だった。
結果として、より苛烈な武具の嵐が牙を剥き、少女が全力でそれを受け流す。
史上稀に見る絶望的な持久戦だった。
と言うのも、確かに宝石を爆破させるだけなら
対して、ギルガメッシュの方は完全に撃ちっぱなし。しかも撃ったら撃ったで勝手に回収するものだから、やっている事は殆ど流れ作業に近い。
「ふはははははっ!」
「……辛い」
もはやルールも何もあったものじゃなかった。
ルーラーの目から涙がちょちょ切れる。
──ああ、この場から逃げたい。というかアンリぶっ飛ばして他のは今次の聖杯戦争参加者に丸投げして帰りたい。
そして、この国にはこんな諺があるらしい。
曰く──
「──『思い立ったが吉日』!
周囲にありったけの宝石をばら撒く。
その直後、一斉に周囲が暗闇に包まれた。
驚くことに、大小無数の宝石が光を吸収しているのだ。
「何っ!?」
ギルガメッシュが驚愕する。
そうしている間にも、スペンタマユは駆け出し、バーサーカーのマスターをかっさらい、ついでにバーサーカーに巻きついていた鎖を解いてさっさと逃走した。
理性はなくとも戦闘勘は健在なようで、バーサーカーは解かれた瞬間速やかに霊体化。
結果として、ギルガメッシュは誰一人仕留めることが出来なかった。
「くっ、雑種風情が……! おのれおのれおのれおのれ!」
大人気なく地団駄を踏むギルガメッシュ。
この数分後、なぜか付近の家屋が数件倒壊した。
幸いにもそれらは幽霊屋敷となって久しい場所だったため、警察は『老朽化による自壊』だと結論づけたという。