この世全ての善   作:りおんぬ

13 / 28
(S)talker

戦争の裁定者(笑)と人類の裁定者(自称)が激突した翌晩。

裁定者(笑)は柳洞寺へと訪れていた。

理由は無論、アサシンとの再戦……ではなく、キャスターとの直談判である。

今日という今日こそは文句言いに行ってやる。

そんな思いを胸に秘めつつ、歩き続けることしばし。

また、気に入らねえ和装の野郎の姿が目に飛び込んできた。

知らず知らずのうちに表情が歪む。

 

「……む。誰かと思えば、いつぞやの娘っ子ではないか」

「ぶっ飛ばしますよアサシン。それとも神明裁決してやりましょうか」

 

※良い子のみんなは真っ当な令呪の使い方をしよう。例えルーラーになったとしても私怨で誰かを自害させてはいけません。

 

「冗談だ。して、此度は何用だ?」

「この前と一緒ですよ。キャスターに直談判&説教です」

「そうか。ならば通るがいい」

 

すっ、と道を譲るアサシン。

その余りのあっさりさに、むしろルーラーが拍子抜けした。

 

「……足止めとかしないんですか?」

「それが、この前の一線で随分と怒鳴られてな。裁定者には喧嘩を売るなとキツく言われたのだ」

「明らかに自業自得ですね」

「言ってくれるな。そなたも大概だぞ」

「喧嘩売ってます?」

 

思わず特権濫用に走ろうとするスペンタマユだったが、すんでのところで思いとどまった。

これ以上不祥事をやらかしたら今度こそ上司にしばかれる、そう思ったからだ。

実際、この前の戦闘で上司はだいぶお冠だった。貴様それでもルーラーか、としこたま怒鳴られたのだ。

嫌にならないわけが無い。

 

「まあ、通してくれるってんなら是非もないです。失礼」

「おうさ、通れ通れ。女狐の妖術のせいで体感入口が狭くなってはいるが、その体つきなら特に問題あるまい」

「全部終わったらその鼻にチューブのわさび流し込むからな。覚えとけよコノヤロウ」

 

驚くほどドスの効いた声を放ちながら、裁定者はキャスターの元へと向かう。

途中で何人かのジャパニーズプリーストとすれ違いつつ、スペンタマユは一直線に歩いていった。

程なくして、キャスターの元にたどり着いた……が、

 

「あら、ルーラーじゃない」

「……何してんですかキャスター」

「見て分からないのかしら」

「意味がわかりません」

 

そこに居たのは、マスターらしき男性に膝枕をする『裏切りの魔女』だった。その顔はとても幸せそうな表情になっていて、とてもではないがキルケー敗北拳──古代ギリシャから続く女の呪い──の被害者には見えない。

 

「で、要件は何かしら」

「分かって言ってるでしょう。この際アサシンについては諦めますから、とっとと街に仕掛けた術式解除してください。っつーかしろ」

「嫌よ。何が悲しくて伴侶も胸もない裁定者に従わなきゃならないの」

 

が、返答は簡潔な拒否。しかも煽り文句にさらっと呪詛まで乗せてきた。

呪詛に関しては対魔力で弾きつつ、スペンタマユは口を開く。

 

 

「……あのですね。こっちだって暇じゃないんですよ。果てしなくブラックな監督役にドロッドロに汚染された聖杯、果ては抑止の守護者にあのギンギラアーチャー!! これ以上! 私に! 何を! 求めてんですか!? なんなの!? 過労死でもさせたいの?! ええしてやりますよ今のこの場で私が宝具開帳すれば聖杯もろとも盛大に自爆できますとも! だけどそれじゃ二人いるアーチャーの問題が片付かないからわざわざ宝具封印してまで駆けずり回ってるんですよ!? それなのになんだ今次のサーヴァントは! ルーラーだっつってんのにどいつもこいつも容赦なく狙ってくるしなんかランサーは監督役とパス繋がってるし!! バーサーカーとか本当に死ぬかと思いましたよ!? ねえステータスの暴力って知ってる!? こちとら敏捷しか取り柄のない最弱サーヴァントですよ!? 聖杯のせいで召喚せざるを得なかったクソザコナメクジですよ!? そして挙句の果てにはキャスター! あなたですよ!! なんで容赦なく赤の他人の一般人巻き込んでんの!? ライダーも狙ってたみたいですけどアレはまだごまかせる範囲でしたよ!? だって範囲狭かったですもん!! なのになんであなたは万単位の人間巻き込んでるんですか!? 後始末する側のことも少しは考えなさいよ!! おかげで連続して起きてる爆発事故の重要参考人にされてるガス会社とか酷い有様ですよ!! 株価大暴落! 倒産待ったなし!! なんなの!? 馬鹿なの!? 死ねよ!! 神明裁決なりなんなり使ってやりますからいっその事くたばりなさいよ!! 一刻も早く!! ああもう聖杯戦争とかどうでもいいから聖杯もろともサーヴァント全滅しろーっ!!!!!!

 

 

スペンタマユ、魂の叫び。

そのあまりの剣幕にキャスターはドン引きし、そのマスターは目を覚まし、周りからはなんだなんだと一般人が集ってきた。

魔術で手早く民衆の記憶処理と暗示を済ませ、キャスターに向き直る。

 

「ぜえ、ぜえ……とにかく!! 町中に仕込んだ術式を止めるなり何なりしてとっとと処理しなさい! 以上ッ!!!」

 

それだけ言って、裁定者は肩で息をしながら去っていった。

残されたのは、呆然としているキャスターと事情が掴めず困惑しているマスターのみ。

 

ちなみにその後、町中に仕掛けられた魔法陣の効力が突然弱まり、アーチャーのマスターをたいそう困惑させたという。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。