この世全ての善   作:りおんぬ

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Gilgamesh the King of hero

「どうした、何かして見せよ!」

「無茶言うなこっちは回避で精いっぱいなんだっつーんです!」

 

本日の天気は晴れ時々『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』。地獄のような荒れ模様だった。

降り注ぐ大小無数の武具を弾き、いなし、躱し、防ぎながら駆ける裁定者。そしてそれを後から追う、空飛ぶ船に乗った黄金の青年。

もはや聖杯がどうこう言っている場合ではなかった。こんな状況に諸悪の根源(アンリマユ)が混ざったりなんてしたら、二人まとめてボッコボコにされる。最弱同士でタイマンならまだしも、チート相手に勝てるほどお互い強くない。

 

「フハハハハハッ!」

「くっそぉおおおおおおお!」

 

故に、スペンタマユはこうして逃げ回るしか策がない。

一手どころか三手も四手も足りていない。変に反撃に出たところで、カミカゼよろしく希望の華が咲き誇るのがオチだろう。時折かく乱目的で宝石をばらまくが、片手間で壊されるどころか「返すぞ」と打ち返されてきたため早々に諦めた。

嗚呼世界は斯くも無常なり。裁定者はそう嘆く。

だが、抑止力が見放しても運命は彼女を見捨てなかった。

 

「あれは……ルーラーだ! セイバー、彼女を援護してくれ!」

「了解しました、シロウ!」

「アーチャー、加減はなしよ! 全力でそこの金ピカ狙いなさい!」

「了解した。つまりいつも通りにしろという訳だな」

(ああああああ感謝いたします我が至高の善なる神よ!!!)

 

最優のサーヴァントと名高いセイバーの主従が現れたのだ。

その姿を認めたとき、スペンタマユは思わず自身の原形(スプンタ・マユ)に祈りをささげていた。

だが、

 

「よう坊主。悪いがここは通行止めだ」

 

現実は非情であった。

空中から派手に姿を現したのは、アルスターの大英雄と名高いクー・フーリン。

彼は逃走劇を繰り広げる二人とセイバー主従の間に割り込み、獰猛な笑みを浮かべて槍を構えてみせる。

その雄々しき後ろ姿に、裁定者はドヤ顔でダブルピースするアンリマユ(にっくきクソ野郎)の姿を幻視したという。

ブチリ、と彼女の中で何か細い線が切れる音がした。そしてそれに呼応するかのように、裁定者の背中が赤い光を放ち始める。

 

「……裁定者スペンタマユの名において、この戦争に参加せし戦士たちに命ず……!」

「あん?」

「……フン」

 

そして告げる。

 

「──聖杯戦争に仇なすモノを討ち果たせ(サボってねえでテメェらも働け)ッ!!」

 

効果は絶大だった。

ぐるん! と今まさにセイバーへと襲いかかろうとしていたランサーの体が方向転換し、ギルガメッシュへと向けて手に持つ槍を構える。

それと同時に、セイバーとアーチャーにはスペンタマユ(浄化フィルター)を通した聖杯からの魔力が大量に供給され、一時的に全てのステータスがブーストされる。

その様子を見ていたギルガメッシュは短く舌打ちし、

 

(オレ)の前で群れるのは結構だがな、雑種。身の程を弁えよ」

「弁えろっていっても立場的には私の方が上ですし」

「戯けが。たかが戦争の裁定者ごときが人類の裁定者たる(オレ)に歯向かう、その行為を身の程知らずと呼ばずになんと呼ぶ?」

「っつーか古代の遺物が今更しゃしゃっちゃ駄目でしょうよ。貴方が統治してた時代から何年経ってると思ってんですか」

 

ビキリ、と。

不気味な音を立てて、ギルガメッシュの額に青筋が浮かぶ。

務めて口調を平静に留めながら、彼は問うた。

 

「……では、何だ。貴様、よもや(オレ)の出番はないと、現代の人間は(オレ)が裁定する必要も無いほどに優れていると、そう言いたいわけか」

「いやそうじゃなくてですね……」

 

ろくろを回すようなハンドジェスチャーを交えながら、自分でも思考を回しつつ裁定者は語る。

 

「まず、そもそもの大前提として私達はサーヴァントです。分かります? 従者(サーヴァント)ですよ? キャスターとかライダーみたいに見えないところからチマチマ削ったり一度全員の意識を奪った上で姿を現すなら、まあ百歩譲って許しましょう。魂食いに近い所業してるのでルール違反のペナルティは確定しますが。さて英雄王ギルガメッシュ、翻って貴方はどうでしょう? 本来舞台裏で暗躍すべきサーヴァントが思いっきり表舞台に出てどうするんですか。神秘もへったくれもあったもんじゃないですよ。神秘は人に認知された瞬間に神秘じゃ無くなるんです。いくら受肉してようが、サーヴァントの大元たる神秘が欠片も残さず消し飛んだ世界で現界し続けれるわけが無いでしょう。そうして残されたのは突然の事態に右往左往する無辜の人々だけ。そうやって遠回しに自分の存在を否定するのは結構ですけどね、頼むから自殺なら一人でやってくれませんか? こう言うのもなんかアレですけど、そんな調子だからウルクが滅びたんですよ」

「……、」

 

もはや言葉すらなかった。

ギルガメッシュの顔は至る所に青筋が浮かび、もはやメロンか何かのような様相を呈している。

だが、

 

「……ハハ、フハハハハハッ! そうか! 神との決別がとうの昔に果たされた現代において、(オレ)の裁定は不要と宣うか! フハハハハ! ならばそれも良し! 中々の道化ではないか、ハハハハハハ──」

 

腹を抱えて笑い出すギルガメッシュ。

突然の事態に、ルーラーを除いた他のサーヴァントは呆然としていた。

しかし、ある一瞬の後、青年の顔が能面のような無表情に塗りつぶされる。

 

「──ハァ。(オレ)()()が、よもやそこまで腑抜けていようとは」

 

再びその手を掲げる。

同時、ギルガメッシュの背後から無数の波紋が出現し──そこから、幾千もの武具が顔を覗かせた。

その一つ一つが、無銘の一級品──歴史の影に埋もれた、知られざる業物。

その圧倒的な武威を誇るように外界に晒しながら、しかし対照的にどうしようもなく諦観と怒気を纏って彼は告げる。

 

「もうよい。児戯に付き合うのも飽きた──貴様らのような雑種如き、(オレ)の裁定まで生きる必要などあるまい」

 

──裁きを受けるが良い。それが、貴様らにとってただ一つの慈悲だ。

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