「どうした、何かして見せよ!」
「無茶言うなこっちは回避で精いっぱいなんだっつーんです!」
本日の天気は晴れ時々『
降り注ぐ大小無数の武具を弾き、いなし、躱し、防ぎながら駆ける裁定者。そしてそれを後から追う、空飛ぶ船に乗った黄金の青年。
もはや聖杯がどうこう言っている場合ではなかった。こんな状況に
「フハハハハハッ!」
「くっそぉおおおおおおお!」
故に、スペンタマユはこうして逃げ回るしか策がない。
一手どころか三手も四手も足りていない。変に反撃に出たところで、カミカゼよろしく希望の華が咲き誇るのがオチだろう。時折かく乱目的で宝石をばらまくが、片手間で壊されるどころか「返すぞ」と打ち返されてきたため早々に諦めた。
嗚呼世界は斯くも無常なり。裁定者はそう嘆く。
だが、抑止力が見放しても運命は彼女を見捨てなかった。
「あれは……ルーラーだ! セイバー、彼女を援護してくれ!」
「了解しました、シロウ!」
「アーチャー、加減はなしよ! 全力でそこの金ピカ狙いなさい!」
「了解した。つまりいつも通りにしろという訳だな」
(ああああああ感謝いたします我が至高の善なる神よ!!!)
最優のサーヴァントと名高いセイバーの主従が現れたのだ。
その姿を認めたとき、スペンタマユは思わず
だが、
「よう坊主。悪いがここは通行止めだ」
現実は非情であった。
空中から派手に姿を現したのは、アルスターの大英雄と名高いクー・フーリン。
彼は逃走劇を繰り広げる二人とセイバー主従の間に割り込み、獰猛な笑みを浮かべて槍を構えてみせる。
その雄々しき後ろ姿に、裁定者はドヤ顔でダブルピースする
ブチリ、と彼女の中で何か細い線が切れる音がした。そしてそれに呼応するかのように、裁定者の背中が赤い光を放ち始める。
「……裁定者スペンタマユの名において、この戦争に参加せし戦士たちに命ず……!」
「あん?」
「……フン」
そして告げる。
「──
効果は絶大だった。
ぐるん! と今まさにセイバーへと襲いかかろうとしていたランサーの体が方向転換し、ギルガメッシュへと向けて手に持つ槍を構える。
それと同時に、セイバーとアーチャーには
その様子を見ていたギルガメッシュは短く舌打ちし、
「
「弁えろっていっても立場的には私の方が上ですし」
「戯けが。たかが戦争の裁定者ごときが人類の裁定者たる
「っつーか古代の遺物が今更しゃしゃっちゃ駄目でしょうよ。貴方が統治してた時代から何年経ってると思ってんですか」
ビキリ、と。
不気味な音を立てて、ギルガメッシュの額に青筋が浮かぶ。
務めて口調を平静に留めながら、彼は問うた。
「……では、何だ。貴様、よもや
「いやそうじゃなくてですね……」
ろくろを回すようなハンドジェスチャーを交えながら、自分でも思考を回しつつ裁定者は語る。
「まず、そもそもの大前提として私達はサーヴァントです。分かります?
「……、」
もはや言葉すらなかった。
ギルガメッシュの顔は至る所に青筋が浮かび、もはやメロンか何かのような様相を呈している。
だが、
「……ハハ、フハハハハハッ! そうか! 神との決別がとうの昔に果たされた現代において、
腹を抱えて笑い出すギルガメッシュ。
突然の事態に、ルーラーを除いた他のサーヴァントは呆然としていた。
しかし、ある一瞬の後、青年の顔が能面のような無表情に塗りつぶされる。
「──ハァ。
再びその手を掲げる。
同時、ギルガメッシュの背後から無数の波紋が出現し──そこから、幾千もの武具が顔を覗かせた。
その一つ一つが、無銘の一級品──歴史の影に埋もれた、知られざる業物。
その圧倒的な武威を誇るように外界に晒しながら、しかし対照的にどうしようもなく諦観と怒気を纏って彼は告げる。
「もうよい。児戯に付き合うのも飽きた──貴様らのような雑種如き、
──裁きを受けるが良い。それが、貴様らにとってただ一つの慈悲だ。