「──フン」
ギルガメッシュが鼻を鳴らす。
現在、龍洞周辺は大惨事の様相を呈していた。
あちらこちらにクレーターや黄金の武具が点在し、しかもそれらが現在進行形で増えていっている。
まあ、それらが増殖している原因の半分は彼なのだが。
そして、もう半分はと言うと……
「ふぁーーっ!」
「
「
「はっ!」
「このっ、数多すぎじゃない!?」
「あっぶねぇ! 当たるかっつーの!」
上から
・スペンタマユ
・アーチャー
・セイバーのマスター
・セイバー
・アーチャーのマスター
・ランサー
の順である。もう大方察しているだろうが、全力のジリ貧だった。
まず、アーチャーが
そして、残るはセイバーとランサー。彼女たちは巧みに武具を躱しながら、絶妙なコンビネーションでギルガメッシュを狙う。
サーヴァント四人がかりでようやく拮抗という辺り、奴の規格外さが良くわかる。何せ、一人だけ魂の容量がぶっちぎりなのだ。宝具の性質の問題もあるだろうが、それにしたって通常の三倍の容量はどうかと思う。
ギリッ、とスペンタマユが歯噛みする。
「ジリ貧! 圧倒的ジリ貧! ちょっとエミヤ丸どうにかなりません!?」
「やっている! あとその呼び方はやめたまえ!」
「ねえ、今『エミヤ』って──」
「ええい一かバチか、
ガコン! と音を立てて、薄い何かを重ねて作った分厚い何かが生み出された。
よく見ると、その一層一層が魔力のこもった純宝石なのだが……あまりに層が多すぎるせいで、まるで重ねたセロファンのように暗い輝きを放っている。
「宝石盾キシュアってところですか……!」
宝石盾キシュア。
宝石剣ゼルレッチをベースとした礼装──言わば『対・第二魔法用礼装』とでも呼ぶべき代物だ。
製作者が本人ではない上に正規の礼装では無いため、その性能は著しく低下しているが──『平行世界からの干渉を阻止する』という特性上、山門のアサシンのような相手には破格の防衛力を発揮する。
また、その『平行世界』の定義を少し弄れば……。
「ぬ?」
ガクン、と武具の射出ペースが一気に低下した。
怪訝に思ったギルガメッシュが見てみれば、武具が何かに引っかかっているかのように動きを阻害されている。
ギチギチと縄を引きちぎるような音を立てながら武具がゆっくり姿を現してくる様を見て、青年は眉を顰める。
その目の前で、アーチャーのマスターが裁定者に掴みかかっていた。
「サラッと人ん所の家宝パクらないでくれない!?」
「纏ってる『殻』があなたのなんですから仕方ないでしょう! 文句言うなら宝石魔術以外の腕も磨きやがれください!」
「つ、使えるわよ! その、ガンドとか!」
「アレに効くと思ってんですか悔い改めろ!」
「……というよりも、私としてはサラッとゼルレッチ翁の作品に肉薄する代物を作っているという事実を気にしたいのだが」
その脇で、アーチャーが疲れたような声を発する。ちなみに、セイバーのマスターは魔力枯渇でダウンしていた。
盾のおかげでいくらか構成は緩んだが、しかしそれでも楽観はできない。
残業がなくなっただけで、まだ正規の業務は残っているのだ。ここから
というか、いい加減あの外道神父を追いかけないと絶対よくないことになる。
「ちょっとここは任せます! この盾があれば私がいなくてもある程度は耐えれるはずです!」
「うぇっ!? ちょっとアンタ、何を言って――」
「エミヤ丸、この盾壊れたら適宜投影してくださいね! なんなら増産してくれても一向にかまいません! だって私のじゃないですし!」
「このうえさらに面倒ごとを押し付けてくるか! だが承知した、そこで伸びている青二才よりか私はしぶといぞ! あとその呼び方はやめたまえ!」
そして、敏捷A++の底力を遺憾無く発揮。初速からトップスピードをたたき出したスペンタマユは、そのまま龍洞へと駆けていく。
当然、ギルガメッシュはそこに追撃をかけようと試みる。
黄金の波紋の一部が向きを変え、裁定者へ向けて必殺の一撃を叩き込もうとする、その刹那。
「――優しく蹴散らしてあげましょう」
「なにっ!?」
ドゴォッ!! という轟音とともに、一条の光が突き抜ける。
それは放たれた武具の一切合切を蹴散らしたかと思うと、その勢いのまま黄金のサーヴァントへと突貫していった。
その正体をいち早く看破したアーチャーが叫ぶ。
「ライダー!!」
「チッ!」
ギルガメッシュは鋭く舌打ちし、黄金の波紋から武具を無理やり引っ張り出す。
そしてそれを構え、目前へと迫る下手人――
ガキンッ! と甲高い音が響く。
ライダーは咄嗟に鎖付きの短剣を使い、その一撃を受け流したのだ。
そしてその姿はそのまま天へと遠ざかっていき、対照的にルーラーは地を駆け龍洞へと突入していく。
「……おのれ」
ギリッ、と奥歯をかみしめる音がする。
目を血走らせ、ギルガメッシュは憤懣やるかたなしといった調子で咆哮した。
「おのれおのれおのれ!! 汚らわしい魔性の分際で、財を汚すだけに飽き足らず王たる
叫び、そして黄金の波紋を全周に発動。
現れたその数は、どう楽観視したとしても四桁には上るだろう。
そしてその全てから千差万別の武具を覗かせながら、バビロニアの英雄王は宣告した。
「数が足りんのならば無理やりにでも補えばよかろう! 昏々と屍晒せ、雑種ゥ!!」