『■■■■■──Aaaaaaaaaaaaaaaa!!!』
影兵の一人、真っ黒な姿の上からさらに黒い靄を纏った騎士が絶叫する。
そして、たまたま近くに落ちていた剣型の不発弾──セイバーのマスターの作品。アーチャーの『
「なっ、くぅっ!?」
『AaaaaarrrrrthurrrRRRRRRRRR!!!!』
不可視の剣でその突撃を防ぐ。
だが、狂騎士はそこで止まることなく、そのまま鬼のような連撃を繰り出し始めた。
その全てを的確に防ぎながら、セイバーは叫ぶ。
「そうまで──そうまでして私に罰されたいと望むか、
『Ooooooooooo!!』
絶叫、咆哮。
宝具『
その様子を、ギルガメッシュは嘲笑と共に眺めていた。
「くっ、ハハハハハッ! 理性は愚か自我すらも失ってなお罰を求めるか! 滑稽よなぁ、狂犬!!」
「何を……っ!?」
「其奴等はサーヴァントのなり損ないよ。さしずめ『影』か。それが、純然たる狂気のみで目的を保持しているというのだから笑いものだ! さてセイバー、そこな狂犬はどれほど貴様に焦がれていたのだろうな!?」
『AaaaaaaAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』
「くっ……ランス、ロットォォおおおおおッ!!」
そして、騎士王と黒騎士から少し離れた場所。
そこでは、抑止の守護者と二槍流の青年が対峙していた。
守護者──アーチャーの表情は優れない。
「くっ……」
『■■──「
というのも、青年が二槍の片方──紅い槍を振るう度に、アーチャーが投影した武器がまとめてかき消されているのだ。いくら投影出来るといっても限度がある。
そして、アーチャー自身も相対している相手には早々に予想がついていた。
というか、槍の銘さえ分かってしまえば、そこに辿り着くのは極めて容易い。
(紅槍ゲイ・ジャルグ──『輝く貌のディルムッド』か)
ディルムッド。
ケルト神話におけるフィオナ騎士団に所属していた戦士であり──この手の美形の例に漏れず、色恋沙汰のゴタゴタによって落命した不遇の人物だ。
しかし、その類稀なる強さには目を見張るものがある。
彼に知る由はなかったが、ディルムッドは第四次聖杯戦争の際にランサーとして召喚され、生前と同じく主君と一人の女をめぐって対立(※なお、本人にはそんなつもりは全くない。すべては
『■■■■■■■■■■■■!!!』
「伊達に英霊の影をやってはいないか……なかなかどうして手癖の悪い」
ただでさえ、アーチャーには剣術の才がない。槍術も棒術も柔術も、一般人より少し上程度の才しか有していない。
故に接近戦での勝利は早々に諦めた。しかし、そう易々と距離を取らせるほど目の前の槍兵も甘くはない。
よって、アーチャーが狙うのは時間稼ぎ。
裁定者までもが動いているのだ、時間さえ確保できればあとは勝手に決着がつく。
問題は──
「フハハハハハッ!!」
あそこで高笑いしている金ぴかがどう動くか、それに尽きる。
先ほどから周囲へ向けて断続的に武具をばら撒いているようだが、その矛先がこちらに向かないことを願うばかりだ。
断続的に剣矢を放ちながら、アーチャーはなおもシャドウサーヴァントを吐き出し続ける龍洞の入り口に視線を向ける。
(頼んだぞ、ルーラー……! 表記上のステータスがサーヴァントの決定的な差ではないということを教えてやれ!)
──やかましい、という声が聞こえた気がした。
ついでに言えば、ルーラーとアヴェンジャーのステータスはほぼ互角である。
「はぁっ!」
「しゃオラァッ!!」
ガキン! ガィン! と剣戟の音が響く。
白と黒の光が宙を舞い、互いに互いを殲滅せんと衝突を繰り返す。
果たしてそれは何度目の激突か。
やがて、穢れて歪んだ大聖杯を起点として、龍洞の内部でとある異変が起こり始めた。
ぐにい、と。まるで粘土細工のように洞窟の壁面が修復されていく。
そこから姿を現したのは、アンリマユと同じく
その役割は『聖杯戦争を
故に、その権限は彼ら彼女らには遠く及ばず。
結果として、龍洞の中の時間軸だけが捻じれて歪んで破断して──さながらメビウスの輪のように、終わりのない闘争を続けさせる。
そして。無限の剣戟の中、必要悪はポツリと口を開いた。
「──テメェにゃあ関係のない話だろうがよ。こんなのがあったんだ」
「……何の話ですか?」
「女の話だ。テメェと違って、捨てられたものを置いていかなかった女の、な」
言いながらも、その手は緩まない。
短剣がぶつかり、交差し、砕け散り──それぞれ黒と銀の破片を撒き散らしながら、その言葉はなおも紡がれる。
「なあ裁定者。お前、この聖杯戦争が
「何日目といわれましてもねえ……相当に事がハイペースに進んでますし、
その言葉を聞いて。
云われ無き復讐者は、わずかにその口元を綻ばせた。
「……ま、俺にもテメェにも関りはない話なんだがな。救われたモンは確かにあったってこった」
「……???」
それだけ言って。
彼は『それ』を持ち出した。
彼にしかわからない、終わりの続きを終わらせるために。
「──さぁて、派手にやられますかねえ!!」
あれ、どっちが主役だ?