メルトほしいなぁ
「いい? 多分チャンスは一度きりよ──アーチャー、やれるわね」
「相変わらずサーヴァント使いの荒いマスターだ……だが、オーダーには答えて見せよう」
「ええ、頼りにしてるわ。ルーラー、そっちは?」
「正直準備不足ですけど、まあいけます。魔力フィルターも問題ありません、今この場にいる全員は一時的に私を通じて大聖杯と直接繋がっています」
裁定者が頷く。その脇では、『わたしは駄目な復讐者です』という立て看板とともに全身真っ黒な青年が首まで埋められていた。
彼はブーブーと不満げな声を上げ、
「いくらなんでもこの扱いはないんじゃねーの!? オレにだって人権の一つや二つ認めてくれたっていいじゃんかよ!」
「うるっさい必要悪! 大体アンタはとっくに人間やめてるでしょうが!!」
「アッー痛てぇヤメロォ!? 宝石落とすな痛い当たる顔に顔に当たってる!!」
ぶかぶかの袖を振り回すスペンタマユ。その度に袖口から色とりどりの宝石が飛び出し、的確にアンリマユの顔面にぶつかって行く。
そして、彼女は余り気味の袖から両手を出し、印を組んで静かにこう唱えた。
「──『
変化は如実に現れる。
地面に散らばった宝石の全てが淡く光を放ち始めた。
それを見た遠坂凛は、
「触媒もなしに魔力を増幅するなんて不思議な魔術ね……」
「その分手間が膨大なんですよ。私はこのプロセスが終わるまで何もできません──だから、あなた方の協力が必要なんです」
「ええ、分かってるわ──衛宮くん! そっちはいいわね!?」
「えっ!? あ、ああ! こっちは大丈夫だ! ──セイバー、行けるな」
「はい。この剣に誓いましょう、シロウ」
「メディアさんと……コジロー、あなた方二人は私のそばにお願いします。メディアさんは基本的に後衛で細工する立場でしょうし、コジローは、その……こういう場面で役に立つんですか?」
裁定者の辛辣な物言いに対しても、小次郎は飄々とした態度を崩さない。これでは。よっぽどのことがあっても彼はこの姿勢を崩す事はないだろう。
小次郎は刀を肩に担ぎ、ようやく肥大化を止めた黒い巨人を見据えながら、
「まあ、私のような外面を借りただけの無銘では近づくことすら厳しかろうな。仕方があるまい。私は大人しく娘っ子の壁に徹するとしよう」
「ホントに覚えてなさいよこの野郎、絶対神明裁決でひどい目に合わせてやりますからね」
「はっはっは、手厳しいな」
たわごとを無視して、今度はメディアの方へ目を向ける。ローブのフードに覆われてその表情は伺えないが、彼女はため息をついてこう言った。
「まあ、あの金ピカはアーチャーだものね。基本的に私は対魔力持ちの相手には不向きだし、こちらのほうが適任だわ」
「です。幸いそっちのデカブツは対魔力どころかスキルすらも持ってないハリボテなので(大本営発表)、魔術だったら打ち込み放題ですよ」
「そう。……じゃあ、精々魔術の復習にでも使わせてもらうわ」
そう言って、彼女は杖を構える。途端に、ビシャアン! と巨人の頭に大きな雷が落ちた。轟音と共に、巨人の頭頂部がごっそりと削れる。が、すぐに再生して元通りになる。
ドン引きする裁定者をよそに、メディアは杖の頭を片手でパンパンと叩き、
「いいわね、これ。ちょうどいい実験材料だわ」
「うわっえっぐ」
「何か言ったかしら?」
「いえなにも」
クー・フーリンは……特に指令を出すまでもなく、先ほどからずっとギルガメッシュとかち合っている。
「おのれ、狗風情が
「生憎とオレはケルトの奴らとオレが認めた奴ら以外に払う敬意なんざ持ってなくてなァ! その点テメェは落第だ!!」
「おのれおのれおのれおのれェッ!!」
吠えるギルガメッシュ。それに対してクー・フーリンは不敵な笑みを浮かべながら、変幻自在の槍裁きで迫りくる武具の悉くを打ち落とし、目の前の相手の命をつけ狙う。
そこへ、新たな影が姿を現した。
そう、この中で唯一第四次聖杯戦争においても英雄王との因縁のあるサーヴァント──セイバー、アルトリア・ペンドラゴンである。
その姿を見て、彼は先ほどまでの怒りの表情から一転して不敵な笑みを浮かべた。
「英雄王ギルガメッシュ──今度こそ、私の手でケリをつける!!」
「ハハッ、フハハハハハ!!! いいぞ、どのような雑種であろうと貴様には及ぶまい、セイバー! 来るがよい、10年前は果たし損ねたが──今度こそ、この
「敵の前でよそ見たぁ随分余裕だな!?」
その隙をつき、ランサーが大きく槍を振り回し、迫りくる武具の全てを弾き飛ばす。そして、持ち前の敏捷性をフルに発揮し、ギルガメッシュへと肉薄した。
だが、英雄王はちらりと視線を向けてパチンと指を鳴らし、
「戯けが。その言葉は強者が吐くものよ──その点、貴様は役不足だな? 狗」
「うおっ!?」
同時、ジャラリッ!! という音と共に、黄金の鎖がクー・フーリンめがけて躍りかかった。
間一髪でその拘束をかわすが、その鎖はまるで生きているかのようにうねり、光の御子をつけ狙う。
「
「チィッ、めんどくせぇ! 悪りぃな、あとは任せたぜセイバー!」
「言われずとも……!」
「ランサー、こちらへ!」
「おっとすまねぇなライダー!」
メドゥーサの駆るペガサスに飛び乗り、クー・フーリンは一度大きく距離を引き離す。黄金の鎖はそれでも標的を逃すまいと追いすがるが、速度差で強引に振り切られた。
それを見たギルガメッシュは小さく舌打ちし、鎖を蔵に仕舞う。
そして、魔力放出によって高速で迫るセイバー──アルトリアへ向けて、『
その悉くを躱し、受け止め、弾き──アルトリアはまっすぐにギルガメッシュへ向けて一直線に突っ込む。
「ハァアアアアッ!!」
「来るがいい! 貴様の全てを受け止めて見せよう──!!」
──決戦は続く。