この世全ての善   作:りおんぬ

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視点はスペ氏寄りの三人称視点。
ジャンルはシュールギャグを目指しております。



(In)dependense

「よお」

「おや」

 

夜の冬木市を探索していると、見るからに怪しい青年が道を塞いできた。

全身青タイツ、青い髪をポニーテールにした変態……もとい戦士である。

 

「お前、サーヴァントだろ。クラスは分かんねぇが……背中の短剣(エモノ)見るに、アサシンか?」

「そういうあなたはランサーですね」

「まあ、そうだな」

 

正直、ルーラー特権で姿を視認した瞬間に真名は看破している。

──クー・フーリン。アイルランドの光の御子ですか。

初っ端から嫌な相手に当たってしまった。

というのも、元をたどればスペンタマユはただの一般人だ。よって、力も技術も本職の戦士に大きく劣っている。そして、唯一と言っていい持ち味の敏捷も、こうしてステータスを除く限りではほぼ拮抗してしまっている。

つまり、戦ってもほぼ勝てない。というか、そもそもルーラーだからまず戦う意味がない。

そんな訳で、すぐさまクラスを暴露。

 

「……ちなみに、私はアサシンではありません」

「あん? じゃあ何だってんだ」

「裁定者、と言えば通じるでしょうか」

 

今度はクー・フーリン──ランサーが顔を歪める番だった。

聖杯戦争における裁定者──即ち、特権階級(ルーラー)のサーヴァント。

その言葉を聞いた瞬間、ランサーは己の失策を悟った。そして、()()()()()()()()()()()()と念話を交わす。

 

『おいマスター』

『どうした、ランサー。生憎だが、私は麻婆で忙しい』

『随分余裕だなテメェ! じゃなかった……ルーラーが出た』

『……ほう』

『容姿は……その、なんだ、いけ好かねえアーチャーのマスターにそっくりだ。んで、エモノは短剣二つ。接近戦タイプか?』

『ふむ。まあ、用心するに越したことはないだろう。そしてランサー、分かっているな』

『へいへい、精々偵察しておくぜ』

 

その言葉を皮切りに、ランサーは手に持つ朱槍を構える。

 

「んじゃまあ、ブチかますかね」

「……え、マジで言ってます? 私ルーラー、非戦闘員、オーケイ?」

「腐ってもサーヴァントなんだから必要最低限の戦力は持ってるだろうが」

「正論すぎて反論出来ません!」

 

ちくせう。

そんな訳で仕方なく、本っっっ当に致し方なく臨戦態勢へ。サーヴァントとはいえ真面目に元一般人なんだから勘弁して頂きたい。

そして。

 

「ぃよいしょっとぉ!」

「しゃあっ!」

 

勢いよく振り下ろされた槍を、背中に装備していた短剣で受け流す。

ギャリッ! と言う音と共に火花が散った。

というか、今の一合だけで短剣が一本ヒビが入った。

慌てて飛び退り、短剣──右手抱擁(アムルタート)の様子を確認する。

刀身半ばに見事な亀裂が走っていた。

 

「……Oh……」

「……あー……その、なんだ、すまん。まさかそこまで脆い剣だとは思ってなかった」

 

地に手をついて崩れ落ちるスペンタマユ。それを見たランサーが思わず謝罪する。

突然の事態に拍子抜けしてしまったがゆえ、ランサーは気づけなかった。

崩れ落ちた拍子に、コロコロと。彼女の袖からいくつかの宝石が転がり出したことに。

そして、その口から短く文言が紡がれた事に。

 

「──威光(プレスティーグ)

 

瞬間、眩い閃光が辺りを包み込む。

莫大な光がランサーの両目にクリティカルヒットし、いい歳した男が悶絶する。対遠距離攻撃用スキルの『矢よけの加護』があるとはいえ、流石に光は対象外だ。

そして、ランサーがまともな視界を取り戻す頃には、少女の姿は跡形もなくなっていた。

 

■ ■ ■

 

「はぁ、はぁ……あーもう! 冗談じゃない! なんで私がこんな目に……って、そうか私幸運Eだ! ハハハ!」

 

魔力を使って刀身の亀裂を()()()()()、一目散に駆け抜ける。

目指す先は……特に決まっていない。

 

「ええと、今回の聖杯戦争で修正すべき物は……教えて抑止力(アラヤ)さん!」

 

抑止(アラ)えもんに助けを求めると、帰ってきたのは簡潔な司令。

曰く、

 

・聖杯戦争の監督役が怪しいからどうにかしろ

・大聖杯もドロドロでヤバいからどうにかしろ

・何故かアーチャーが二人いるからどうにかしろ

 

の三つだった。大雑把スギィ!

 

「ええい、なんで私はこんな雑用ばっかりなんですか! 本望ですけども!」

 

そんなことを叫びながら、スペンタマユは駆け抜ける。近場にサーヴァントの反応がいくつかある為、アーチャーを探すためにとりあえずはそこに行くことになるだろう。

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