この世全ての善   作:りおんぬ

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スペンタマユのここがすごい!
・宝石魔術が使えるよ! プロ並みの熟練度だよ!
・滅茶苦茶素早いよ!

スペンタマユのここがダメ!
・魔術は三種類くらいしか使えない
・敏捷以外がことごとくクソステ
・宝具使うと即死、よくて消滅一歩手前
・しかも味方がいないとほとんど役に立たない
・幸運Eと自己暗示と精神汚染の合わせ技でほとんど無意識的に悪(=人に害をなすもの)へと突き進んでいく(本人に自覚なし)
・出自の問題で知名度補正もほとんど見込めない
etc.

結論:わざわざ召喚する奴の気が知れない。


Escape from The Undying Hero

「ひゃあああああああーっ!!?」

 

スペンタマユは絶叫していた。

それはもうすっごい焦っていた。

なぜならば。

 

「■■■■■■■!!!」

「なーんーでぇぇええええええええええっ!!?」

 

筋肉モリモリマッチョマンの変態に追い掛け回されているからだ。

事は、数分前に遡る。

 

とりあえず近場のサーヴァント反応を目指して爆走していたスペンタマユ。しかし焦りからか、不幸にも黒塗りの大男に追突してしまう。必然的に全ての責任をおっかぶる事になったスペンタマユに対し、大男の(マスター)、イリヤスフィールが出した示談の条件とは……。

 

「どこのサーヴァントかは知らないけど……まあいいわ。やっちゃいなさい、バーサーカー」

「■■■■■■■■■■──────!!!」

「なんでさぁ!?」

 

示談(物理)だった。

一応目視した時点で真名は割れているが、その文余計に絶望がでかくなる。

その名はヘラクレス──ギリシャの大英雄。十二の試練をその手でもってねじ伏せてみせた、本物の化け物。

しかもバーサーカーというクラス補正のせいで、ただでさえ手に負えないステータスがさらに上昇している。ルーラーなだけでゴミステの最弱サーヴァントにどうせいと。

そんな訳で、袖口からバラバラと宝石を散らばしながらスタコラサッサと遁走中。幸いにして諸事情で()()()()()()()()()()()()、とりあえず撒いておくだけでも一定の効果が期待出来る。

例えば、尖った部分が土踏まずに直撃したり、丸みを帯びた物を踏んで足を滑らせたり。

さらにステータス上ではスペンタマユの敏捷は『A++』、ヘラクレスは『A』となっている。この+二つ分の差が、着実に距離を稼ぎ始めた。

が、そうは問屋が卸さない。

距離が離され始めていることに気付いたバーサーカーのマスターが、短く指示を飛ばす。

 

「バーサーカー、()()()!」

「■■■!!」

 

ズンッ! と、あまりの脚力に地面が陥没する。バキッと甲高い音が響いたのは、恐らく地中の水道管にダメージが入ったためだろう。後始末担当の教会の苦労も考えてほしいものだ。

そして、大英雄が宙を舞う。肩に白銀の幼女を乗せて。

 

「うっそぉ!?」

 

慌てて飛び退くと、先程までスペンタマユが立っていた場所に大英雄が降ってくる。冗談ではない。

そして、その手に持たれていた石斧が大きく振りかぶられる。

咄嗟に肩のマスター目掛けて宝石を放り投げ、その場で起爆。

マスターを庇って体勢を崩したバーサーカーを尻目に、スペンタマユは再び逃走を開始した。

 

「誰かー! 誰か武力に訴えずに理性的に会話してくださるサーヴァントのお客様はいらっしゃいませんかー!?」

 

交差点事にランダムに方向を転換し、少しでも撒こうと努力する。

そしてその結果。

 

「もう逃げられないわよ」

「■■■……!」

「……あらー……」

 

見事に追い詰められていた。

ここは行き止まり。そして目の前には筋肉モリモリマッチョマンの大英雄。

 

(詰んだ……)

 

全身からダラダラと冷や汗を流す少女。

というか、ルーラーだっつってんのになんでどいつもこいつも殺意が高いのだろうか。そこまでして裁定者を排除したいかそうなのか。隠れて一体何をしようとしてるんだ。

そう思って、申し訳程度にバーサーカーのマスターを睨みつける。

その視線を意にも介さず、幼女は首をかしげた。

 

「うーん……あなた、キャスターかしら? それともアサシン? というか、どうしてトオサカの所の魔術師にそっくりなのかしら。そういうスキル?」

「それよりもそこの臨戦態勢な大英雄(バーサーカー)どうにかして下さいませんかね」

「ダメ、だってそうしたら逃げるでしょ?」

「そりゃまあ」

 

ここまで散々ばらまいてきた宝石を使ってもいいけど、出来れば穏便に済ませたい。というかそれやったら確実に大問題になる。神秘の隠匿、大事。

 

「はあー……私にも仕事があるんですけどね……」

「サーヴァントなのに?」

「サーヴァントなのに、です」

「ふうん。ま、いいわ。じゃあ、さよなら──」

「──取り替えっこ(エクスチェンジ)!」

 

バーサーカーが石斧を振り下ろした瞬間、少女の姿がかき消える。

代わりと言ってはなんだが、その一撃は()()()()()()()()()()()()を木っ端微塵に叩き割った。

あまりに突然の事態に、マスターはおろかバーサーカーすら一瞬驚愕する。

 

「■■■■■■■■──────!!!」

 

いち早く『逃げられた』という事実に気付いたバーサーカーが怒りの雄叫びをあげた。近所迷惑待ったなし。

そして、そこから少し離れた場所、先程まで少女と変態が疾走していた道路にて。

あちこちにばら撒かれていた宝石を回収しながら走り回る影が一つ。

 

「あー、危なかった……()()()()()()()()()()()()()()()()を真似してみましたが、やってみるものですねーっと」

 

そんなことを嘯きつつ、白い影──スペンタマユは走っていく。

こうして、初日の戦争は終わりを告げた。

 

さあ、運命(Fate)に出会う時だ。

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