翌日。
「もっきゅもっきゅ……ふむ、ニホンの料理というのも悪くないですね」
スペンタマユは寛いでいた。
左手にたこ焼き、右手に焼きそば。両手に花とはこのことか。全然違う。
魔術で作り出した宝石を売っぱらうことで資金を確保して、片っ端から現代の料理を制覇しているのだ。
『宝石を作る』っていうと大仰だが、このご時世では然るべき機械を使って炭素に圧力かければ誰だって人工ダイヤがザラザラと生み出せる。だからといって鉛筆を圧力鍋に詰めて火にかけるのは大分アレだが。だから断じて魔法じゃない。あんなゲテモノと一緒にしないでほしい。
ともあれ、質屋の顔面に大小無数の宝石をぶん投げる事で得た資金を元に、少女は食べ歩きを続けている訳だ。
「もっきゅもっきゅ」
幸せそうな表情で料理を頬張るスペンタマユ。
その目があるものを捉えた。
(あれは……)
「シロウ。今日の夕飯は何でしょうか」
「慌てるなってセイバー。スーパーで何が安いか見てから決めるよ」
赤銅色の髪をした少年に付き従う、金髪碧眼の少女。
それを視認した瞬間、スペンタマユの脳裏に正確なデータが打ち出された。
サーヴァント:セイバー
【真名】
アルトリア・ペンドラゴン
【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運B 宝具C
【宝具】
『
ランク:C 種別:対人宝具
レンジ:1〜2 最大捕捉:1人
『
ランク:EX 種別:結界宝具
レンジ:0 防御対象:1人
『
ランク:A++ 種別:対城宝具
レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
(……ふむ。誰かと思えばブリテンの王様ですか)
マスターの問題か、それとも召喚に不具合が生じたか。何故か本来よりもステータスが低下しているが、流石は再優のクラス──特権階級の(はずの)スペンタマユよりも平均してステータスが高い。宝具もちゃんと役に立つ──何故かひとつ使用不可能なのが混ざってるけど──ものだ。ランクも総じて高め。……あれ、目から汗が……。
(とにかく、しばらくはもう一人のアーチャーを探しましょう。戦闘が起きたらそこに急行する感じで大丈夫かと)
現状確認出来ているのは、
・セイバー:『ブリテンの王』アルトリア
・ランサー:『ケルトの豪傑』クー・フーリン
・バーサーカー:『十二の試練』ヘラクレス
の三体だけ。正規のアーチャーに関しては剣をあんな風に飛ばして爆破するキチガイじみた戦法に心当たりがほとんどなかったため、暫定で戦闘スタイルが酷似していた抑止力をピックアップ。
それから、山に二つの反応があって、森の奥にも一つ、街中に四つ、目の前に一つ……
「……ええい煩わしい! それもこれも全部アンリの奴が悪いんです!」
うがーっと頭を抱えながら叫び、ヤケクソ気味に目の前の料理に食らいつく。
程なくして、全てを綺麗に平らげた少女はその場を後にした。
そして、
おっそろしく精巧な作りだったから、多分キャスターの仕業だろう。というか神代言語で操作しているとなると、キャスターでなければおかしい。神代言語は現代人にはほぼ発音不可能だからだ。
「あ、夕焼け」
そこで、スペンタマユはいつの間にか日が暮れているのに気付いた。丸一日を食べ歩きで文字通り食い潰してしまったようだ。
もうまもなく、聖杯戦争が再び幕を開ける。
少女はそれに思いを馳せながら、
「お願いだから私は狙わないでね……」
と頭を抱えるのだった。
そう、あんまりにも狙われすぎて皆が失念しているかもしれないが、彼女はルーラーである。
だがしかし、彼女は幸運E。歩いているだけで不幸がやってくる──実際のところは彼女が不幸に向かって突っ込んでいる──体質の持ち主だ。
残念ながら運命は非情だった。
「よう、嬢ちゃん。また会ったな」
「あーっ! 出たわね私の偽物!」
「……やれやれ、やはりこうなったか」
「え? 遠坂が、二人……?」
「シロウ、気を付けて下さい! あの白い方のリンはサーヴァントです!」
目の前にセイバーとそのマスター。右側にランサー。左側にアーチャーとそのマスター。そしてここは三叉路。
……見事に囲まれてしまっていた。