……これが運命か。
真夜中の街を駆けずり回ること数十分。
ようやく教会に辿り着くことが出来た。
「なーんでこんなに時間がかかっちゃうんですかね……」
解答:単純に方向音痴だから。
ぶすっと不機嫌そうな顔を隠そうともせず、教会の扉を開く。
目の前に縁起の悪そうな顔をした男が立っていた。
「冬木教会へようこそ」
「失礼しました」
静かに扉を閉じようとするが、ガッ! と隙間に聖書を挟み込まれた。おい、それでいいのかキリスト教徒。
そしてそのまま腕を掴まれ、教会に引きずり込まれる。
この間わずか3秒。鮮やかな手腕だった。
「……何するんですか」
「いやなに、噂に聞くルーラーのサーヴァントがどのような見た目かと思っていたのだがね。思いの外可憐だったからつい手が出てしまった」
「ダウト」
ニヤついた表情でそんな事言われても説得力に欠ける。
というかサラッと流しかけたが、彼は少女がルーラーであると普通に知っていた。何故だ。
……というより、なんだ?
目を細めるスペンタマユ。
神父を見ていると、時折
サーヴァント:■■■■■■■
【真名】
言峰綺礼
【ステータス】
筋力?? 耐久?? 敏捷?? 魔力?? 幸運?? 宝具??
【スキル】
愉悦部[B+]
デミ・サーヴァント[C-]
【宝具】
なし
「なんですか、これ」
「……ふむ?」
スペンタマユの呟きに、神父──言峰綺礼は首を傾げる。
そして、なにかに気付いたようになおもニヤついた笑みを浮かべながら、
「どうやら、君には私にも分からぬ
「なっ……馬鹿なんですかあなた!? 死にますよ!?」
心からの叫びに、しかし綺礼は何処吹く風。
その荘厳そうな立ち姿とは正反対の雰囲気を漂わせながら言う。
「
「私みたいな異教徒が言うのもなんですが、それでいいのかキリスト教徒」
というか、曲りなりにも悪神の一部を取り込んでおきながらケロッとしているコイツも大概か。
なんということだろう、教会すら信用出来ないなんて。
つまり、スペンタマユは
・大聖杯のドロドロを浄化して、
・二人目のアーチャーを調査(あわよくば討伐)し、
・聖杯の監督役をぶっ飛ばす
の3つの工程を自分でやる事になったわけだ。クソステで。
仏頂面を保ちながら、少女は内心世の不幸を嘆く。それもこれも全部アンリマユって奴が悪いんだ。
「なんだと、それは本当かね?」
「──、」
心の底から楽しそうな笑顔でそんな事を言われた。
見てて非常に心が波立ってくる。端的に言うとイライラする。……これは、纏ってる『殻』の影響もあるのだろうか。だとすると、アーチャーのマスターはこの神父を随分と嫌っているようだが。
袖の中で遊ばせている宝石に気を向けつつ、裁定者は言葉を選ぶ。
「……大聖杯が大惨事になっているのは知っていますね」
「そうでなければこんな有様にはなっていないとも」
「では。私は、教会に対してある程度の『不干渉』を願いたいと思います」
「……何?」
「ぶっちゃけ言ってしまえば信用出来ません。この件に関しては私がどうにかします」
ついでに言えば、何故か二人いるアーチャーのタネも割れた。
分かってしまえば簡単な話──受肉しているのだ。おそらく、聖杯の中身を何らかの形で浴びたのだろう。
いくらドロドロに汚染されているとはいえ莫大な魔力の塊である事に変わりはない。飲み込まれた対象にあの果てなき怨嗟を飲み干すだけの我の強さがあれば、
少女の言葉に、神父はフッと唇を歪める。
しかし、何を言うでもなく、あっさりとそれを承認した。
「いいだろう。今後、我々聖堂教会はそちら側からの要請があるまで動かない事を宣誓する」
「……最低限後始末だけはして下さいよ?」
少女は不気味なほど反抗しなかった神父に対して眉をひそめるも、それだけ言って教会を後にした。
それを見届けた神父は、
「喜べ裁定者。君の願いは、遠からず叶う」
と呟き、奥へと引っ込んでいった。