「知らない天井だ」
意識が覚醒した僕はベッドに横たわりながらそう呟いた。言ってみたいセリフを言える機会だったからつい言ってしまったが、思いのほか僕は混乱しているみたいだ
「病院……じゃないな」
首だけを横に向けると白い壁に茶色い扉。勉強机と思わしきもが置いてあった。この時点で病院の内装とは大きくかけ離れていた
さらに細かく観察すると勉強机の上に見覚えのない教科書と見覚えのあるデッキケース、そしてデュエルディスク(ARC-V仕様である)が置いてあった。ここで違和感を1つ
よっこいしょっとベッドから降りて立ち上がり、周囲を見渡すと視線がなんだが低いように感じた。違和感
「アレ?」
極めつけになんだか聞こえる声も普段聞いてるものとは違って高く聞こえる。トリプル違和感
おかしい、僕の声は相当低いはずだ。大塚◯夫並みに低かったはずだ。ゴメンなさい嘘つきました。せいぜい小◯Dより少し高いくらいです。でもこんな思春期の少年のような高い声でないことは間違いなく確かで…
「あ」
考え事をしながらふと右側を見ると大きな鏡が。そしてそこに写っていたのは……
「なぁにこれぇ」
朱色の髪色に、バリカンみたいな形の青紫の前髪がオールバックのように後ろ向きに伸びた奇抜な髪型の少年だった
「マジかー…」
デッキ、デュエルディスク、変わった髪型。これだけでここがどういうところなのかを理解できるが、確信に至ってない彼は後ろを振り向き
「……マジかー…」
つい先ほど鏡ごしで見た少年と赤いスーツにシルクハットのダンディなおじさんが笑顔で一緒に写っている写真を見てさらに脱力感が増した
もはや詰みと言って差し支えない状況だったが、それでも現実逃避したい彼は外の景色でも見て気持ちを落ち着けようとカーテンを開けて
シャーー
「…………マジかよ…」
逃れようのない現実にとうとう頭を抱えて唸った
2階の窓から見えた景色、街並みは近未来といえるほどに発展している街であり、シンボルともいえる巨大なタワーの天辺には同じく大きなハートがあった
街の名前はハートランド、次元の名前はエクシーズ次元、世界の名前は遊戯王ARC-V
窓際で蹲ってる少年の名前は“
彼には現実…いわゆるOCG次元とでも言うべき世界の知識、そしてそこで22年生き続けた、名を忘れた男の記憶を持っているという秘密があった
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僕は現状にひどく困惑していた。何故こういう状況になったのかさっぱり分からない。だから記憶を遡って思い出そうとした
……確か僕は仕事の帰りだったハズだ。いつも通り上司に頭を下げて、タイムカードを押して、電車で揺られながらスマホゲーをしていて、最後に止めていた自転車で…
そうだ自転車。確か、信号が赤になりそうだったけどいけるとタカを括って突っ走ったところ、横からバスが右折してきたんだ。ならばその時に事故で僕は死んで、この世界にやってきたとでもいうのか?さながら今流行りの転生ものみたいに
…いやちょっと待て、記憶に続きがある
バスに轢かれそうになったものの、死にたくない一心で自転車を漕ぎまくった結果、轢かれることだけは避けたのだ。ただ自転車を車体にかすめたため僕はバランスを崩し、そのままガードレールにぶつかってふっ飛ばされる。そして飛んだ先に何故かあったゴミ箱に頭から突っ込んで……
そしたらここにいた
「どういうことだよッ!!!?」
起承転結の転が抜けている流れに叫ばずにはいられなかった。だってどう考えても流れがおかしいじゃん!!死んで転生じゃなくてゴミ箱に突っ込んだら転生ってどういうことなの!!?おかしいですよカテジナさん!!
「これは……転生なのか?いやトリップ?でも体変わってるからなー、じゃあ憑依?…うわっスゲェ若え」
鏡を見ながら自分の変わった肉体を触る。見た感じ中学1年といったところか、こんな体のどこから岩を持ち上げたりするパワーが出てくるのだろうか。やっぱデュエリストって頭おかしい…
「ってそっか…そういや遊戯王の世界だったな……しかもARC-V」
そこまで考えて、今の詰みっぷりに軽く絶望する。なぜ僕がこの世界に来たのだとか正直早く元の世界に帰りたいとか、そんなことがどうでもよくなる程マズい状況なのだ
ARC-Vの世界は簡単に言えばスタンダード、融合、シンクロ、エクシーズと4つの次元に分かれている。その4つの次元を統合するために侵略戦争を起こした融合次元を止めるために、スタンダードにいる主人公“
そして物語が始まる頃にはすでに融合次元はある次元に侵攻を開始しているのだが、その次元というのがここエクシーズ次元である
つまり、僕がエクシーズ次元への侵攻から始まった、のちに次元戦争と呼ばれる戦いにどんな形であれ巻き込まれることはもはや確定事項ということである。1番平和なスタンダードが良かったです(震え声)
「どうしたものか…」
今からでもどこか遠くに逃げるか?地理もわからないし次元全体を襲撃されるから意味なし
ならいずれ結成するであろうレジスタンスに入る?そうなれば次元戦争の参加は避けられないため同じく却下
最後の手段として個人でアカデミア兵を襲撃してデュエルディスクを奪う?敵は3人1組編成だからデュエルに時間がかかりそうだし増援が来られたら逃げられないが、ほぼ誰にも気づかれず逃げれるためハイリスクハイリターンといったところ…とりあえず保留
(問題が山積みだなぁ……)
「…そういえばどんなデッキを使っているんだ?」
今後の予定を考えれば、デュエルが強くなければ生き残れない。だから机の上にあったデッキケースの中身を確認した
ふむ、三色の「ガジェット」に「血の代償」…ものすごく典型的な“代償ガジェット”だった。でもエクシーズモンスターは「ガガギゴ」や「スキル・ゲイナー」みたいな、なんとも微妙なモンスターばっか。これではパワー不足で押し切られるだろう
「仕方ないだろ、おれの小遣いじゃ高いエクシーズなんて買えないんだから…………ん、え」
喋ったつもりのない口に手を当てる。今、僕が喋ったのか?しかも「僕」じゃなくて「おれ」って
…もしかしたらこの体の元々の人格は残っているのか?それが無意識に喋ったと?
「別に闇マリクじゃあるまいし、体を乗っ取るつもりなんておれにはないんだけどなぁ…てまた」
これは面倒だ。誰かと会話している時に出てきたらより面倒だ。というかややこしい
かと言って元の人格を演じるのも難しい。知らないことの方が多いし、演じれたとしても簡単にボロが出そうだし
ピンポーン
そんな時、この家のチャイムが鳴った
「誰だ?」
窓から見えないように確認するが玄関らしきものはない。どうやらこことは違う方向のようだ
ピンポーン
またチャイムが鳴る。正直出るメリットがない。これからのことのためにデッキを作る必要もあるし、だから居留守でも決め込もうとして、直後さっきよりも短い間隔でチャイムが鳴る
ピンポーン
つーかハッキリ言うとめんどくさい。今憑依してる少年の個人情報、名前とかも分からない以上、むやみやたらに人と接触す『ガチャリ』ることは避けて
「…ガチャリ?」
ふと耳に聞こえてきたのは……その、信じがたいことにカギを開けるような音だったんだが…
もしかしてドロボウか?不安に思った僕はそ〜っと部屋のドアを開けて階段下の覗き込むと
「あ、やっぱり居やがったな!大会開始まであと10分だぞ!何やってんだよ風斗!!」
「お、お邪魔します…」
濃いオレンジに黄色が混じったツンツンヘアーの少年とピンクと薄い紫のショートヘアで髪飾りを付けているメガネの少女がそこにいた
アニメで見たことがある。この2人は終盤で出てきたレジスタンスのメンバーの2人
さて、ここで本作と前作の大まかな違いについて伝えておきます。あ、前作読んでないって人は飛ばしてくださって結構です
・転生じゃなくて憑依
・VRAINSまでしっかり見てるからリンク召喚も知っている。ARC-Vの結末も知っている
・地の文をできるだけ簡潔にして区切っています
・1話ごとの文字数が大幅に減少!
・文字数が大幅に減少!大事なことなので2回言いました
前作は初めて書いたというのもあって文字数を加減できませんでした。多分日常回とデュエル回の文字数は少し変わると思うのでご了承ください