話はトントン拍子に進んでいった
奇襲された1日目はしっかりと寝て英気を養い、組織編成の為の行動を次の日に開始した
まずは大量の人員と物資、大きな寝床となり得る拠点の確保。拠点の方をアレンを含めた少数精鋭で僕が率いて、カイトには人員の確保と救助、物資調達の大部隊を率いて行動してもらった。今は猫の手も借りたい為、サヤカもここに編成している
その際、カイト達には必ずフォーマンセルで動くよう厳命しておいた。理由はアカデミアが必ずスリーマンセルで行動しているから。ぶっちゃけ目も当てられん雑魚ばっかだが、僕が戦った連中が下振れてただけって可能性もある。それにただでさえ少ない人員、それもデュエリストが減るような事は今後も考えて万が一にも避けたい。『いのちだいじに』だ
こっちは丸1週間は探索したおかげか、アニメで見たことがあるデュエルドームの他、倒壊してない学校や病院、デパートを確保出来た。特に病院とデパートを見つけれたのが大きい。食料や日用品、医療品を同時に確保し、管理出来るのだから
カイト達の方も素晴らしかった。カードにされてない非デュエリストの大人や子供の他、ユート、黒咲が率いるスペード校や名前だけ存在の確認はしていたハート校やダイヤ校の教師や生徒も確保出来た
特に生徒は殆どがデュエリスト。無論ある程度の数が基礎を勉強中の発展途上だったり、戦場に出ることを怖がる者だったが、そこも後々改善し、拠点の防衛戦力として当てればいい
とにもかくにも、組織の骨組みがある程度組み立てられ、レジスタンスは動き始める…
とは上手くいかないのが、このARC-Vの世界なのだ
『納得出来ないっ!!』
「…ハァ〜〜〜〜……」
「なんだそのため息は!!」
「このクソ忙しい状況で下らない事言うからだろうが、黒咲隼」
仮初の司令室にて様々な作戦立案や書類整理をやっている中、突如やってきたのはユート、黒咲隼と
こいつらが僕の元に来た目的というのが…
「お前が俺達を率いてリーダーをするなどと、俺は納得がいかん!!」
…というものだ
結果として、戦争初日で僕が発案、実行してしまったレジスタンスの組織作り。各地で散発的ゲリラ活動を行っていた面々や一般人の被害者をじわじわと取り込み、大世帯になってきた組織を運営していくにあたり、リーダーとなってしまった僕1人では当然手が足りない
そこで、集まった面々の中で優秀な人間…特に戦線を指揮する実力者を幹部に据えようと考え、カイトやユートや黒咲、その他のデュエリスト達に呼び掛けを行った
それがご覧の有様だよ
「百歩譲ってカイトがやるならばまだいい!だがデュエルを途中で投げ出すような奴にリーダーが務まるわけがなかろう!お前への心象を抜きにしても信用出来ん!」
「…だからユートにリーダーの座を渡せと?」
「そうだっ!」
「隼、よしてくれ」
「ユート、お前はこいつに任せていいと言うのか!?」
「やる者が誰もいなく、必要とされるならば構わない。しかしこれ程多くの人達を纏めあげているのは彼の手腕あってこそ、それを横から掠め取るのは良くない」
「しかし…!」
ユートが黒咲を説得するが奴は渋るのみだ
…ぶっちゃけた話、リーダーの座を譲るのは全然いいのだ。そもそも僕にはカリスマとか人望とかあまりないし、レジスタンスを維持する作業もリーダーがやるわけではないし(人材があまりにも少ないから今は僕を中心とした数人でやっている)後々の目的を考えてリーダー抜きで…正確には僕抜きでも組織が回るよう教育もしていく予定なので、
ただ、そうは問屋が卸さないのが現状
「ちょっと待ちたまえ!リーダーに相応しいのは彼でも、君でもない!即ち、ダイヤ校のトップデュエリストでもあるこのぼく…『
そう、このクソやかましく、キラキラしてて、自己主張の激しい色んな色が混在してる頭髪のナルシストなアホこそが、事態をややこしくしてくれてる元凶の1人と言える
「キャラ濃いなぁ…」
こいつはダイヤ校で1番強いデュエリストであり、先ほど言った幹部候補の1人でもあるのだが…自分が目立つ事に余念がなく、所謂勉強が出来るタイプの頭が悪い人間だ。こんな奴にレジスタンスを任せたら3日で崩壊しそうだし、部隊長の話すらも取り消すことを視野に入れねばならんレベルだ
「真っ暗になってしまったハートランドを照らすには、何よりも輝かしい象徴こそが必要なのさ!地味な
「何を言う!それを言うならばやはりユートこそが相応しい!弱卒のダイヤは黙っていろ!!」
「何おう!?」
「何だ!?」
「やかましいガキ共!!静かにしろ!!」
仕事に集中出来んだろうが!アニメの世界に来ても尚仕事をしている僕への当て付けかクソがっ!
怒鳴ると喉が痛くなってきたので水を飲む。そうして喉の熱を誤魔化しながら座り直し、“彼女”に向かって声を掛ける
「それで……お前もそっち側なわけ?
「はい。皆様に頼まれてしまった手前断る訳には…それに、皆様を率いる役職というのも楽しそうですし」
「後半の理由で台無しだよ…」
彼女の名前は『空光 ヨツバ』。アホナイトと同じく幹部候補生であるハート校のトップエース、ハートランドじゃ知らない者はいない名家のお嬢様らしい
絵に書いたお嬢様らしくお淑やかで上品、優しくて物腰も柔らかく、抜群の美少女。おまけに成績最優秀でデュエルの腕もいいというどこの完璧超人だと言いたくなるレベルに完璧な女の子だ
「それとヨツバと呼んでくださいな。お友達ですしお仕事を一緒にした仲でもあるじゃないですか」
「勘弁…」
ちなみに、組織を維持する手伝いをしてもらってる数少ない協力者でもある。この子、超優秀なのだ。だからか、アレンやサヤカ、カイトに次いで面識のある子になっている
正直、女の子と接する機会が皆無だった身としては、結構グイグイ来る彼女にタジタジになってしまうことも多々ある
あと、因士の奴が妙に空光を敵視してる気がする。まあこのアホの事だから、自分より目立つ彼女が気に食わんとかその程度の理由だろう
「とにかく、お前らの提案は却下だ却下。別に今の立場に固執しちゃいない(むしろ捨てたい)が、アカデミアの奇襲から2週間…まだまだ問題は山積みで、下らん内ゲバを起こしてる暇はない。分かったらさっさと持ち場に戻れ」
「ふん!そんな事を言っておいて、実際は今の立場をなくすのが恐ろしいだけだろう?」
「全く、これだから低俗な者達は困るねえ」
「目立ちたいだけのあなたにだけは言われたくないですよ」
「猫かぶりが何を言って」
ブチッ
「いい加減にしろテメェらァ!!」
言ってる傍からしょうもない喧嘩を始める姿に堪忍袋の緒が切れて、書類整理を中断して叫ぶ
「状況が分かってねえのか!?敵は1つの次元が一丸となって襲ってくる軍事国家だぞ、戦争だぞ!!敵の撃退もそうだが、難民の救助に物資不足も大問題だ!!戦争が長引けばこちらは困窮し、困窮が長引けば難民が暴動を起こす可能性だって大だ!!そんな事になれば大きな隙が出来て、一気に奴らに攻め込まれて全滅する!!」
「うっ……」
「そ、それは…」
「………」
「今この瞬間も、罪のない市民がエクシーズ狩りと称してカード化されている!!カードゲームでだぞ!?こ、こんな、こんな理不尽でバカげた話があってたまるかぁっ!!」
ハァ ハァ ハァ
(クソ、相手は子供だぞ!?子供相手に何怒鳴ってんだ!いい歳した大人が…情けない!)
息を整え、頭を冷やしながら、自分が起こした行動に嫌悪する。椅子に座り、努めて落ち着いた口調で言う
「分かった、もう良い。従いたくないなら従わなくていいし、抜けたきゃ抜ければいい。でも、頼むから僕達の邪魔だけはしないでくれ、頼むから」
目を伏せながらそう言い切って、書類仕事に戻る。頼むから出ていってくれと祈りながら
「白星」
祈りは通じず、黒咲がこちらに語り掛ける
「…軽率な事を言って悪かった。お前にも、お前なりの強い意志があるということは理解した」
「え……あ、うん」
文句でも言われるのかと思ったら、まさかの謝罪の言葉に思わず返事が遅れた。続けて、因士と空光も謝ってくる
「も、申し訳なかった…」
「ごめんなさい、風斗さん」
「い、いや、僕も大人げなかったよ。怒鳴ってゴメン」
互いに謝れば、気まずい空気が周囲を漂う。そんな中、黒咲は僕に告げる
「しかし、お前が上に立つことに不満を抱いている者がいるのも事実だ。それを放置して事を進めれば、それこそお前が望まない内部分裂に繋がるのではないか?」
「むっ…」
そう言われてしまえば、確かに無視する訳にはいかない。さっきは抜ければいいと言ったが、実際にそんな事をされれば拠点の建設や防衛、物資索敵任務に支障が出てくる。アカデミアに対してジリー・プアー(徐々に不利)になる事は間違いない
「どうすればいいと思う?」
「さっきの話を全員が聞けば、大部分が大きく反対することはなくなると思うが」
「喉が枯れるわ」
今もイガイガして痛いんだよ。それを差し引いても大勢の子供に怒鳴るなんて精神衛生上に悪いことはあんまりしたくない。しないに越したことはない
「みんなが僕を認めてくれる方法…」
そういえば、クローバー校のみんなにはどうやって認めてもらって………あっ
「そうだ、デュエルしよう」
「……何?」
そうだ、あるじゃないか
この世界特有の、たった一つだけの冴えた方法が
後日、デュエルスタジアムの観客席は大勢の難民やスペード、ハート、ダイヤの生徒や教師が集まっていた。クローバーのみんなには悪いが今日だけ拠点の防衛に当たらせてもらってる為、観客席にはいない
方法は単純明快、僕と立候補者3人と同時にデュエルを行い、その内容を見せつければいいのだ。正直1vs3でやりたかったのだが、流石に実力者3人同時は先行制圧に頼らざるを得なくなり、そうなればあまりに酷い絵面に逆に反発する者が増えるかもしれないから出来なかった
同時に難民にこのデュエルを見せる事で娯楽を提供し、ストレスを発散させるという目的もある。ぶっちゃけアカデミアの侵略でデュエルに対する心象が悪い可能性も加味して自由観戦にしたのだが、思ってた数倍は見に来てビックリしてる。多分侵攻からあまり日が経ってないのが理由だろう
中心のデュエルコートには右回りに僕、因士、ユート、空光の4人が虚空を囲むように佇んでいる
「準備はいいね?」
「もちろん!」
「ああ」
「構いませんわ」
「では……」
「デュエル」「「「デュエル!!」」」
「僕が最後のターンプレイヤーになるようにだから、先行は因士からだな」
「フフフ、華麗なぼくのデュエルを見せてあげるよ!」
さて、今回のルールはバトルロイヤルルール。1ターン目はドロー不可、各プレイヤーは最初のターン、バトルフェイズには移行できないという仕様だ
「ぼくは「
出てきたのは、銀と金の鎧と二重螺旋の剣を装備した真っ白に輝く肌の女の子。踊り出てくるその姿は、まるでバレリーナのような可憐さがあった
「テラナイト」。ほぼ光属性、戦士族で統一されたランク4エクシーズテーマであり、鬼みたいな展開力こそないものの、「デネブ」の存在や戦士族故に「増援」などのサポート層が厚い点から、安定性のあるデッキと言える。また、「
しかし、それはあくまで「テラナイト」が他のテーマの強力なエクシーズと組み合わせてこそ真価を発揮するデッキであり、テーマ以外のカードを組み合わせないアニメ時空の価値観を考えれば、大きな脅威とはなり得ないだろう
「ん〜!今日もぼくのモンスターは輝いている!」
「はよ進めんか」
「おっと失礼。召喚した「デネブ」のモンスター効果により、デッキから「星因士 アルタイル」を手札に加えるよ。ぼくはカードを2枚セットしてターンエンド」
エクシーズ召喚しないのか。でも伏せ2枚を考えれば堅実な出だしではあるか
さて、右回りなので次はユートのターン
「俺のターン、ドロー!俺は「
上半身だけの甲冑と篭手を、そして茶色い布切れと消音靴を身につけた青い亡霊が2体現れる
「幻影騎士団」。レベル3と4のモンスターが主体のデッキだが、最大の特徴は「幻影騎士団」罠カードはその多くがトラップモンスターなのだ。墓地除外で発動するカードも多い為、リソースが中々途切れない。テーマ統一でも強い部類だ
しかもズァークの分身体でもあるユートは「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」系統も使う為、油断すれば一気にライフを削られるだろう
「手札の「クラックヘルム」を捨て、「ティアースケイル」の効果発動!デッキから「サイレントブーツ」を墓地に送る。そして墓地の「サイレントブーツ」「クラックヘルム」をゲームから除外することでそれぞれ効果を発動!「クラックヘルム」はターン終了時にデッキの「幻影騎士団」カードか「ファントム」魔法・罠を手札に加えることができ、「サイレントブーツ」はデッキから「ファントム」魔法・罠カードを手札に加えることが出来る!俺は「
「戦場に倒れし騎士たちの魂よ!今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!」
「エクシーズ召喚!現れろ!ランク3「幻影騎士団ブレイクソード」!!」
鉄の黒馬に跨がい、大剣を肩に置くデュラハンがおどろおどろしい叫びと共に現れた
幻影騎士団ブレイクソード
ランク3 ATK2000
「俺はカードを2枚セットして、エンド時に「クラックヘルム」の効果で「幻影騎士団フラジャイルアーマー」を手札に。これでターンエンド」
あの伏せられたカードの内1枚はおそらく「幻影霧剣」だろう。「ブレイクソード」は破壊時に墓地の「幻影騎士団」を蘇生する効果も持っている。なかなか攻めにくい盤面を作ったな
「では、わたくしのターンですね」
カードを引く空光。彼女はこちらを見ながら言う
「そういえば、風斗さんはわたくしがどのようなデッキを使うのか知りませんでしたわね?」
「まあ、そうだね」
「平たく言えば“人形”ですわね。僭越ながら「人形使い」の名で呼ばれていますの」
へ〜、人形かぁー。「プリンセス・コロン」ってカードが漫画版ZEXALにはあるのだが、それ系統のテーマかな?
「…しかし、わたくしを前に初ターンでエクシーズモンスターを出すとはなかなか度胸のある方で…」
うん?どういう意味だ?
「ではさっそく………
わたくしは「ギミックパペットーギア・チェンジャー」を召喚」
…………………はい?
「さらに相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールド上に「ギミックパペット」モンスターのみがいる場合、手札の「ギミックパペットーマグネ・ドール」は特殊召喚出来ます。「ギア・チェンジャー」の効果、このモンスターのレベルを自分の他の「ギミックパペット」モンスターと同じレベルに変更出来ます。「マグネ・ドール」と同じレベル8に」
磁石をくっつけて構成された人形と胴体がギア駆動の頭部のない人形が同時に出てきて、「ギア・チェンジャー」が左腕で無造作にレバーを動かすと、瞬く間に同じレベルのモンスターが2体揃う
レベル1→8
「に、人形使いって…まさか…」
「わたくしはレベル8の「マグネ・ドール」と、レベル8となった「ギア・チェンジャー」の2体でオーバーレイ!」
疑問に答えられることもないまま、奇怪な人形達は光の球となって渦の中に消え、中心で爆発を起こす
そして現れるのは…不気味に脈動する巨大な心臓。それが内側から展開され、やがて巨大な人形へと姿を変える
「現れなさい、「
「運命の糸を操る地獄からの使者。漆黒の闇の中より、舞台の幕を開けなさい!エクシーズ召喚!」
「ランク8!「ギミックパペットージャイアントキラー」!!」
玉座に座った黒い人形が、虚無の瞳で虚空を見つめ、糸で蠢いた
No.15 ギミックパペットージャイアントキラー
ランク8 DEF2500
見上げるほどのその巨体。各所で悲鳴が聞こえてくる中、僕は心の中で叫んだ
「さあ、喜びを噛み締めて受け取りなさい!わたくしの“ファンサービス”を!!」
お前、Ⅳモチーフのキャラかよぉおおおっ!!?