面倒くさがりな決闘者のARC-V物語   作:ジャギィ

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なんか評価見たら真っ赤でビビりました。多分前作の影響とは思いますけど、言うほど評価高くないと思ってたので驚きました


第2話

「神月アレンと…笹山サヤカ…」

 

目の前で動く人物を見て僕は硬直する

 

ハートランドにデュエルディスク、しまいには変わり果てた自分の体(明確には違うが)。明らかに現実とは違う景色に、それでも僕は心のどこかで「ドッキリなのでは?」と疑っていたのかもしれない

 

だが目の前で動く2人のキャラクター(人物)の存在がその考えを粉砕した

 

信じられるワケがない。信じたくない。ああでも、ここはもう……

 

(僕の知っている世界じゃないんだなぁ)

「オ、オイ?どうしたんだよ風斗」

「どうして泣いているの…?」

 

思案に浸っていると下から見上げていた2人が困惑したように言う。僕は泣いていたのか?泣いたことなんて両手で数える程度しかなかったんだがな…思ってたより僕はあの世界が恋しかったみたいだ

 

「いや、大丈夫。寝起きでな、まだ眠気が抜けてないだけだ」

 

指で涙を拭きながら心配はいらないとそう伝えるが、2人はよりワケが分からないといった顔をしていた。解せぬ

 

「…お前、本当にどうしたんだよ?そんなに喋ったりする奴じゃなかっただろ?いつも部屋で1人でいるのが好きだって言ってたじゃねえか」

(なるほど、この体の持ち主はヒッキーだったってことか。いや、大会に出たりするところから考えるに1人でいるのが好きなのか。少し親近感がわくな)

 

好都合だ。もし性格や一人称のことを指摘されても「このままじゃダメだと思ったから」である程度誤魔化すことができる

 

それにこの体の名前も知ることができた。“ふうと”…“ふうと”か。それが今の僕の名前なんだな。さすがに僕の本当の名前を……な、まえ…

 

「……?……ッ…!?」

「…風斗?」

 

なんでだ?いくら記憶の中身を漁ってみても名前が思い出せない…思い出せない!!僕の名前が思い出せない!!なんで!

 

「オイ!大丈夫なのかよ!?」

 

その時、アレンがこちらに近づいて肩を揺すって聞いてくる。その行動は僕の動揺を少なからず和らげてくれた

 

「っ…問題ない。心配かけてゴメン」

「お前本当に変じゃないか?急に変わりすぎだろ」

「色々と考えたんだよ、このままじゃダメだって」

「んにしたってよぉ」

「ねぇ、2人とも」

 

アレンと話し合っていると、サヤカが玄関に飾ってあるアンティークな時計を見ながら言う

 

「早くしないと大会が始まってしまうけど…」

「うわっそうだった!早く行かねーと、ってなんで部屋に戻ってんだよ!?」

「忘れ物をな」

 

部屋に踵を返す僕を見てアレンが叫ぶが気にしない。部屋に入って机の前に立ち、デッキケースをズボンの横に引っ掛けるようにセットする

 

最後にデュエルディスクを左腕につけてアレンたちの元に戻る

 

“ふうと”の物と思う靴を履きながら、すでに玄関前に出てるアレンに聞く

 

「ゴメン、道忘れたから教えてくれ」

「ハァ!?…ったくよお!ほらカギ!」

 

ヒュッとアレンがカギを投げ渡してくる。それが家のカギだとなぜか頭の中で理解できた僕はガチャリとカギを締める

 

その際に扉の横にある表札が目に映った。そこには「白星(SHIRAHOSHI)」と彫られていた

 

(しろ…いや、白星(しらほし)ね。“しらほし ふうと”…か)

「急ぐぜ!!」

「…おう」

「うん!」

 

アレンは迷うことなく道を走っていくので、サヤカと並走しながらアレンの後ろ姿を追っていった

 

(……そういや、なんで家のカギ持ってたんだ?)

 

ちょっとした疑問を抱きながら、僕は走る

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

大会会場と思わしき建物についた。市民体育館のようなところみたいに見える

 

「ギ、ギリギリ間に合ったか…」

「う、うん…」

「そう、だな…」

 

乱れきった息を整えていると「他校交流デュエル大会」と書かれた旗を見つける。どんな大会かは想像通りだったワケだ

 

「アレン、ここまで付いてきておいて悪いが今回僕は大会に参加できないぞ。今朝からデッキ調整中だからな」

 

一応断れなかった時のためにデッキは持ってきたが、そうなればエクシーズ召喚などほぼしないだろう。「一族の結束」を使ったビートダウンの方が遥かにやりやすい

 

「何言ってんだ?今回はサヤカの応援に来たんだぞ」

「え?」

 

が、どうやらさっそくボロを出してしまったみたいだ。アレンは「何言ってんだコイツ?」とでも言わんばかりの表情だ

 

「……そうだったっけ?」

「応援にすら行きたくないって駄々をこねてたのはお前の方だろうが。…つーか、今「僕」って」

「イメチェンです」

「イメチェンだぁ?……「僕」…アッハハ!似合わねぇ!」

「笑っちゃダメよアレン!」

 

急に「おれ」と言っていた人が「僕」と言えば確かに違和感を感じるだろう。でもアレンは明らかに笑い過ぎだ。許さん

 

軽く人差し指でデコを弾いてやる。ビシッとな

 

「イテッ!」

「それじゃサヤカ、頑張ってな」

「うん。ありがとう!」

 

アニメで見たような内気な感じがない、花のような笑顔を見せてから手を振りながら彼女は受付に向かった。かわいい

 

「そういや、なんで家のカギを持ってたんだ?」

「なんか今日は色々と聞いてくんな。カギは風斗が隠し場所教えたんだろ。毎日起こしに行く俺の身にもなれよな」

 

どうやら“ふうと”は無用心でもあったらしい。なんで家にいる時も外にカギ置いているのか

 

そしてアレンは幼馴染属性だったようだ…男だけど。どうせなら可愛い女の子が良かった。具体的にはサヤカとか

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

今日は幼馴染の様子がおかしい。あまり気に留めなかったサヤカとは違い、アレンはそう思っていた

 

「俺も聞きたいんだが、なんでそんなこと聞くんだ?」

「うーん…」

 

顎に手を当てて考え込む風斗を見て、アレンは寂しさのようなナニカを感じた。幼馴染が急に大人になったような…そんな、置いていかれたような気持ちを自覚した

 

(一体お前に、何があったんだよ……?)

 

アレンの知っている風斗は深く考えたりしない、良くも悪くも正直な子供なのだから

 

「あー…実は今朝階段から転び落ちて頭打ってな、少し記憶が混乱してるんだよ」

「…なんで黙ってたんだよ」

「あの場で言ったらややこしくなりそうだからな」

 

嘘だとすぐにわかった。アイツ(風斗)はそんな気を回したりする奴ではない。宿題とかデュエルとか、困ったことがあったら俺の家に駆け込んでまで助けを求める奴だ。ましてや階段から転び落ちたのにそれを隠そうとするなんてありえない

 

「お前、頭打って別人になったとかじゃないよな」

 

カラカラ笑って自分の感情をごまかす。そして、そんなジョークを言った。自分でも認めたくないようなとびっきり悪趣味なジョークを

 

(頭を打って中身が変わるとか、漫画やアニメじゃあるまいし…風斗なら「ンなワケあるかっ!!」って言うに違いない)

 

そう切望して、アレンは中学生にしては高めな背丈の幼馴染を見上げる

 

「……アレン」

 

だけど

 

「実はこの体の中身が」

 

悲しそうに

 

「“しらほし ふうと”じゃ」

 

罪悪感に潰されそうな眼で

 

「なかったら」

 

お前(風斗)の顔で、その続きを

 

「言ぅ「ってンなワケあるかっ!!」…!!」

 

「言うな!!!」と、否定の言葉を吐き出そうとした時、風斗は大声で否定した。それもアレンがいつも聞いている幼馴染の雰囲気で

 

それを聞いたアレンは呆気を取られたあと、プルプル震えてから風斗の背中を叩く

 

「そりゃそうだ!冗談抜きで驚いただろお前!!」ばんばん

「イタ!ちょ、アレ、痛い痛い!!」

 

涙目で痛みに堪える風斗を見てアレンはホッとした

 

「ほらっ、早くサヤカの応援に行こうぜ」

 

背中をさすりながらついてくる風斗を見る。そこにはいつもの風斗の姿がある

 

何があったかは分からない。でも確かにコイツは風斗だ。なら、コイツに何があっても、どう変わろうとも俺は風斗の味方だ

 

後ろめたい気持ちにフタをしながら、アレンは風斗と観客席の方へ向かっていった




実は月曜の地震、大阪の東側に住んでいるので震度5弱くらい揺れてすごく怖かったです。気を紛らわすために投稿してますけど、余震とか本震とか来るんじゃないかと考えたら不安でいっぱいです

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