機動戦士ガンダム00〜Rightning Star〜   作:SimoLy

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続けて見てくださる方、時間が空いてしまい申し訳ないです。

今回、登場人物が一気に増えます、ごめんなさい。

ではどうぞ!


st.1 役目

「———通称『Z.A.F.T』。プラントが立ち上げた軍事組織は依然我々に攻撃を続けており、その被害は増え続けています。

連合軍では軍備の強化を図ると同時に———」

 

はいはいお疲れお疲れ。

いつまで経っても同じことしか報道しないキャスターに嫌気が刺した俺は、思わずモニターの電源を切った。

ならさっさと軍備の強化してくれませんかね、こっちは一年前の機体で頑張ってるんですよ???

 

「あああああああ!?またあいつらはさせる為の資源すら寄越さずに無理難題を押し付けやがってんのかぁ!?」

 

....軍備の強化、図ってたみたいです。

艦内に響き渡るその怒声の発生源はブリッジだろうか、いやブリッジでしょうね。というか今俺自室に居るんだけど、ブリッジからは結構離れてると思うんだけどなぁ....?

 

『シロ、今大丈夫か?』

 

突如届いた携帯端末のメッセージに目を通し、俺は簡単に返す。

 

『大丈夫です。話はドックに行ってから聞きます。』

 

簡単に自室の具合を確認...といっても、そこまで散らかせるほど物があるわけでもないので、特に問題なし。俺自身も先ほどまで出撃していたので問題ないだろう。

先ほどの怒声を努めて無かったことにしつつも、俺は若干急ぎ足でドックに向かった。

 

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連合軍特別兵器開発局、通称:RSの担当は文字通り兵器開発。地球連合軍vsプラント…『Z.A.F.T』(ザフト)だったか、の利権を巡った戦争は激化する一方で、俺たちが参戦してからでさえ既に一年が経過した。『科学を成長させるのは戦争』と誰かが言ったらしいが、全くもってその通りだと思う。

両軍の技術は成長を続け、一年前ではオーバーテクノロジーであった『太陽炉』の類似品でさえも現在では大量生産、実戦投入されている程だ。

そして、それらを搭載したMSでさえも量産され、現在では両軍共に太陽炉搭載機で戦闘を行っている。

だから———

 

「お前さぁ、もうちょっと丁寧に扱えねえの?」

 

苦笑を零しながらそう言うのは、この艦のメカニック....ラント_スリジア(Lant_Srizia)だ。

 

「むしろあの量相手にこんだけの被害で収まってるの褒めて欲しいんですけど?」

 

俺は自身の機体...“大量に傷が付いた”『セブンソード』を横目で見て答える。

 

「...そうだな、そうなんだけどさっ」

 

彼は納得した様子でリフトに登っていく。きっと今回も、しっかり直してくれるのだろう。

———俺があんなことを言ったのには、理由がある。

MS開発において、各軍は(明言はされていないが)それぞれ『世代:Stage』で組み分けしている。一定以上の性能を叩き出した機体は、次の世代へ...といった感じだ。

この機体...『セブンソード』は第三世代。一年前に突如発見された機体だ。

当時最新モデルだった第三世代だが、今の量産機は第三世代....は愚か、第四世代である。世代間の性能差は圧倒的で、一般的なパイロットが搭乗していれば次世代機一機で過去世代の機体の大群さえも撃破できる....と言われている。

つまりはそういうことだ。

 

「あ、そういえばシロ!」

 

高所作業用のリフトによって俺を見下ろす形になったラントは、思い出したよう俺に呼びかける。

 

「『新作』、どうだった?」

 

呼びかけた彼は、こちらを見ることもなく質問する。その視線の先は、なおもまだ修復されきっていないセブンソードに向けられており、その手にはリペアツールが握られている。だがその声色には期待が混じっており、きっと“今回こそは”と気合入れて作ったものだったのだろう。

 

「コンバットレコーダ見れば分かりますが、安定して超長距離を狙う事が出来ませんでした。長距離までならなんとかなるけど、それだったら普通のライフルで良いってなりますね。」

 

 

彼が『新作』と口にする場合、MS用の新兵装であることが多い。今回もその例に漏れず、新兵装だったのだが....。

『GNバスターライフル』...今回の兵装の名前。長距離以遠での高威力粒子ビーム砲を実装しようとの試みだったが、安定化出来ていなかったが故に粒子が拡散、超長距離圏まで届かなかった。

 

「安定化出来なかった....?そんなはずは....いやでも」

 

手、止まってますよー?と言いたくなったが、俺も少し気になる事が出来たので自身の端末を立ち上げる。そのままセブンソードのコクピット内のシステムに接続し、先ほどの戦闘を振り返る。

先ほどの戦闘は、何か目的があっての戦闘ではなく、“紅蓮”の部隊との戦闘でもない。ただ俺達を見つけた小隊との戦闘で、十五機程の量産機との戦闘だった。勿論こんな風に振り返れる時点で結果はこちらの勝利。バスターライフルは最後の締めとして使用したのだが....。

レコーダを進め、問題のシーンまで辿り着く。その時の機体状況のデータも使いながら、何故拡散してしまったのかを調査してみる。

本来であればこういう仕事には適任がいるのだが....多分今はブリッジで艦長を宥めているだろう。

 

「何か分かったか?」

 

上がったままのリフトから身を乗り出し、そのまま俺の高さまで飛び降りてくるラント。その様子を横目で確認しながらも、問題のシーンの機体状況を確認する。

 

「....分かんね。」

 

そもそも専門外である。反動制御や銃身との接続状態等、俺に分かるところに問題は見られない。ましてやドライヴに問題があるとは———

 

「待て、今の所もう一回頼む。」

 

修理は終わったらしく、俺の横から端末を覗き込むラントが声を発するのと、俺がその結論に至ったのはほぼ同時だった。「何故安定化出来なかったのか」一番可能性があったのは何よりも動力源....太陽炉だった。

問題のシーンまで録画を巻き戻し、注目するのはドライヴの活動状況。

 

「ラントさん、新型...すぐに完成させられますか?」

 

「セブンソードの修理はもうハロに任せられるところまでは済ませてあるし、新型自体も後は調整だけだ。

次の戦闘....は厳しいかもだが、その次には間に合わせる。」

 

今回の問題は俺達の想定通り太陽炉にあった。

セブンソードには太陽炉が両肩に一機ずつ、合計二機積まれているが、問題があったのは右の太陽炉だった。

“明らかに出力が落ちている。“それこそ粒子が収束出来ない程に。

...以前から兆候はあった。というかそもそも俺に原因がある。

この一年間で一回だけ、被弾したことがあった。その時被弾した場所が、右の太陽炉。基本的に永久機関として動く”本物“の太陽炉だったが、どうやらいよいよもって耐用限界らしい。

以前から兆候があったため、RSの中でも『太陽炉の製作』が行われていた。勿論簡単な事ではなく、今までで作ることが出来た太陽炉は現在調整中の一機のみ。まさしく『メカニック班の血と涙の結晶』と表現出来るその太陽炉は、連合軍やザフト軍が生産する“それ”とは違って本物。

 

「任せます。俺にはそれしか出来ないので」

 

俺はこの機体のパイロットであって、メカニックではない。太陽炉の使い方は分かっても、作り方は分からない。

だから俺に出来る事は———

 

「”それ“って何の事だ?」

 

首を傾げるラントに、俺は笑顔で応える。

 

「『もうちょっと丁寧に扱う』、次は無傷で帰りますよっ!」

 

それだけ伝えて、俺は彼らの作業を邪魔しない様、この場を後にした。

 

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シロがドックに向かったのと同時刻----連合軍特別兵器開発局母艦:『テルミナ』ブリッジ内では、一人の女性の怒声が響いていた。

 

「あの無能上層部どもがッ!造って欲しいならそれなりの資源を提供するのが筋ってもんじゃねえのか!?」

 

先程まで通信していた相手———連合軍総指揮官にあたる人物(達)に対し、感情を叩きつけるのはこの艦の艦長...レシア_クラシズ(Recia_Craciz)。

彼女は連合軍特別兵器開発局が持つ唯一の艦であるUSWD-002:Telminaの艦長を務めていると同時、上局の局長でもある。

 

「艦長....そろそろ落ち着きませんか?」

 

「そうっすよ。あいつらの無理難題に毎回キレてたら身が保たないっすよ?」

 

怒り心頭極まっているレシアに、おずおずと言った様子で声を掛けたのは、同艦のオペレータを務めるフィリス_アウェント(Firis_Awent)。それに続いて軽口を叩いたのが、コルン_ヴェニアス(Colun_Venias)だ。

コルンは同艦の砲撃手としてこの艦に搭乗しており、現在ブリッジにはこの三人しか居ない。

 

「.....ふむ、コルンの言う通りだったな。少し落ち着いた。」

 

先程までの勢いを霧消させ、普段通りの落ち着いた様子に戻ったレシアを見た二人は、計った様に合わせて息を吐く。

そんな二人の様子を見たレシアは、苦笑を浮かべながらも今回の指示について思考する。

 

「『ザフトの新兵装に対しての新兵装』...ねぇ。うちでも手こずったのに、そんな簡単に言わないで欲しいって思わない?」

 

「うちはどうしましたっけ?」

 

レシアの嘆きを含んだ質問に質問で返すコルン。

 

「シロは全て掠らせるに留めて避け切ってたよ...『トランザム』無しで。」

 

「相変わらず化け物で安心したわ。」

 

どこか呆れたような声色で答えたフィリスと、吐き捨てるように納得を示したコルン。フィリスの言葉が示す通り、彼女らRSでさえザフト軍の新兵装の対策など出来ていない。

 

「『うちのパイロットみたいに避ければいいのでは〜?』なんて言った暁にはシロと、ついでにセブンソードも押収されるだけだしねぇ....。」

 

レシアの呟きを最後に、ブリッジには静寂が訪れる。

RSは現在、“セブンソード一機”で全ての戦闘をこなし、更には勝利している。勿論小規模の戦闘であるし、降りかかる火の粉を払う程度のものだ。そこに軍事的な強さは存在せず、またあったとしてもそれは“シロのパイロットとしての実力”であると言えるだろう。それを分かっていない上層部は未だに『ガンダム』...ひいては『太陽炉』のデータを寄越せと要求してくる。

 

「『それは出来ない』って何度も言ってるんだけどな。うちの存続に関わるし。

...仕方ない、フィリス。メカニックの誰かと繋げてくれる?」

 

「分かりました」と短く答え、端末を操作しだすフィリスを確認し、レシアは一人考える。

 

「...そろそろ、軍に降る事も考えないとなぁ。」

 

でもそれはあの文言を———。

できればしたくない。だってそれは”誰か“の想いを踏み躙る事になるから。

そう続いた思考を打ち切り、レシアは繋がった一人のメカニックと対策を練り始めた。

 




ここまでお読みくださりありがとうございます!

今回で、少しだけ彼らの状況が明かせたかなと思います。後1,2話程度説明が多くなってしまうかと思いますが、それでも次回に興味を持っていただけたら嬉しいです。

次話書いてきます!

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