機動戦士ガンダム00〜Rightning Star〜   作:SimoLy

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st.2 設計

俺がドックを出て、少しの時間が経った。少し、と言ったが正確な時間を把握してないだけで、本当に少しかは分からない。

...先程のキャスターが話していた『軍備強化』、あたかも軍全体が行なっているかのような口振りだったがそれは違う。勿論『既存の機体等の生産』は行われているが、『新兵器の開発』は俺達RSぐらいでしか行われていない。それは何故か———絶対的に『技術者』が足りていないから。

 

---

 

全ては二年前から始まった。

二年前、遂に本当の意味で宇宙へ進出した。完全自立型コロニー群...後にプラントと呼ばれる国家が支配するコロニー群の建設に成功した。

当時の最新技術の結晶とも言えるコロニー群の建設成功に、当時の技術者達は湧き上がった。俺はその時学生をしていたから、先生達が浮き足立っていたのを覚えている。

プラント---地球にとっての大規模生産基地を表すその言葉の通り、当初は好意的な貿易関係を築いていたという。地球上でしか得られない資源をプラントに提供し、プラントは有り余る生産力で得られた成果物を地球に提供する。

そうやっていつまででも暮らしていけば良かった。

 

それは、プラントが活動開始して半年弱程度経った時の事だった。

突如、両者の貿易関係は決裂した。

連合軍側では「プラントが過剰要求してきた」と言われているが、きっとそれはこちらも同じだったのだろうと俺は思う。

そして一コロニー群の名称に過ぎなかった“プラント”は、『国家』の名前に成り代わった。

未だ生産不可能な資源を求めるプラントと、生産可能資源の供給を求める地球上に存在する全ての国家---地球連合との戦争が始まるのに、そこまで時間は要さなかった。

 

当初、“戦争”においては一歩も二歩も先を行く地球の国家達、その集合体である連合が次々と攻撃を仕掛けた。

元々国家が保持するコロニー等は存在して、それらの間でMSを使った戦闘を行っていたのが功を奏したのだろう。MS戦闘において、圧倒的な優位を保ち続けていた。

しかし、突如としてその優位は覆される事になる。

生産可能資源の大量生産設備、当時最新鋭の技術の結晶。そして...”優秀な技術者はほぼ全員がプラントに呼ばれていた。“

その三つが指し示す事、それは新兵器開発の容易さだった。次々と生産されていく高性能なMS、そして連合側の技術者、開発者の不足により、戦局は次第に傾き出す。

このタイミングで発足されたのが、連合軍特別兵器開発局...その発足当初はUSWDと名乗っていた部隊だった。

 

 

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「おーい?シロー?聞こえてる〜?

...さては聞こえてないな。」

 

想起にふけっていた俺を呼び戻したのは、誰かの声だった。

意識が現実に帰り切っておらず、誰が呼んでいるかは分からないが、早急に対処した方がいいだろう。

 

「聞こえ———」

 

「レシアさん?はい、シロ見つけました。広場で寝てましたね」

 

「——てるからあの人を呼ぶのはやめろ。ついでに寝てもない!」

 

恐るべき早業と表現せざるを得ない速度で艦長に連絡しているのは、この艦のオペレータを務めるフィリスだった。

彼女は端末を操作しながら、こちらに笑顔を向けて続ける。

 

「嘘だよっ。今レシアさんはアルトさんと装備の設計してるから出られないし。」

 

「ふーん、そっかぁ。嘘つくんだー?」

 

「そっちだって寝てないって嘘ついたじゃん?」

 

「嘘じゃないし?」

 

テンポ良く会話の応酬が出来ると、心なしかいつもよりも嬉しい気がする。

というか...

 

「まぁいいや。それで、何か用があったんじゃないの?」

 

少なくとも俺に会いに来るほど彼女は暇では無いはず。...艦長を宥めるのには成功したのだろうか。

 

「うん。さっき言ったことって全部が全部嘘じゃなくて、設計の事でシロを呼びに来たの。」

 

設計の事...というと...あぁ、あれか。

 

「あの遠隔兵器の対策?」

 

「そう。また本部の人達が言ってきたんだけど、私達だってそんな対策兵器は持ってないじゃん?

だから今設計してるらしいんだけど、やっぱり実際に戦った人の意見が聞きたいらしいんだ。」

 

確かに、“開発局”である俺達の仕事は兵器の開発だ。それ自体に文句はないし、開発者自体が連合に少ない以上、依頼がうちに集まるのもいいとしよう。更に資源も碌に寄越さず依頼だけ偉そうに寄越す所も....まぁいいとしよう。

ただ———

 

「....いや、これは俺が言うべき言葉でもないか。

分かった、直ぐに行くよ。」

 

思わず口をついて出そうになった”作った人が言うべき言葉“を飲み込み、俺は腰掛けていたソファを立って、艦長達が居るであろう部屋を目指して歩き始める。

 

「あ、待ってよ!私も行くからー!」

 

---

 

テルミナ艦内:装備設計室...という名目になっているただの一室。

 

現在そこでは、一組の男女が互いの意見をぶつけ合っていた。

 

「だーかーらー!あれを操縦者の技量抜きで防ぐならこれくらいは必須なんだって!」

 

「技量???そんなものまで考慮する余裕なんて今の私達には無いんだけど!?」

 

「そんな事言ったらシロの言う通り全部回避で事足りるだろッ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!?こっちだって好きで設計してるわけじゃないんだけど!?

こんなシステム排除した方が安く仕上がる!あいつらに渡す装備なんて手抜きで———」

 

...まぁ、こんな感じで。水平線上を延々となぞっていく議論が、今俺の前で展開されていた。両者の言い分が分かってしまう俺達としては、早急に妥協案の模索に手を付けて欲しいところではある。

 

「...アルトさん、レシアさん。」

 

言い争いの中、やけに通りの良い声が俺の鼓膜を揺らす。その声の主...フィリスは、とても優しい笑みを...一周回って恐怖すら感じさせる笑みを浮かべて更に続ける。

 

「シロを呼んだ理由、聞かせて貰っていいですか?

というかいつまで意味のない論争を続けるつもりですか?」

 

彼女はそう語りながら、淡々と二人との距離を詰めていく。その動作と、表情全てが作り笑いだと訴えてくる笑みが原因なのだろうか。先程までこの場を支配していた喧騒は既に見る影もなく。

 

「私は技術者とはお世辞にも言えないので、お二人の心境は分かりません。ですが..."妥協"を覚えてください。話が進みません。」

 

「「......はい」」

 

フィリスの説得(?)により、一時の静寂を取り戻した部屋の中で、ここまで置いてけぼりだった俺は話を切り出す。

 

「それで、結局何の用だったんですか?」

 

俺はその部屋の机や椅子、床に散らばった設計図らしき紙面を眺めつつ、すっかり静かになってしまった二人に問いかける。

 

「...フィリスはその場に居たから知ってるけど、また連合本部がうるさくてね。」

 

俺の質問に答えたのは、この艦の艦長を務めているレシアさん。彼女は溜息を吐くとともに、更に続ける。

 

「ちょっと前に、またザフトが新兵器を搭載していた事があったでしょ?どうやらそれが本隊の戦闘で猛威を振るってるらしいんだ。」

 

「その兵器を無力化できる装備を本部はご所望なんだ。」

 

レシアさんに続けるように補足を加えてくれたのは、連合軍特別兵器開発局が抱える数少ないメカニックの一人で、主に設計の構想を担当している人...アルトさんだ。

彼らが揃って問題に挙げている"ザフトの新兵器"というのは、十中八九俺が"遠隔兵器"と呼称している兵装の事だろう。もっと分かりやすく呼称するのであれば、有線接続式攻撃用ポッド、といった所だろうか。対MS戦において、いくら線が繋がっているとはいえ、その場で背後等のカメラに映らない死角からの攻撃を可能とする、というのは、ただのパイロットに過ぎない俺から見ても非常に優秀な装備だと思う。

 

「なまじシロ...向こうの言い方をすれば"二個付き"が生還を果たしてるせいで、対策があるんだろう、って決め付けられてるんだったか?」

 

「そ。これもフィリスには話したけど、"シロは実力で回避してる"なんて馬鹿正直に申告した暁には、シロとガンダムが本部に徴収されて終わり。」

 

実際に相対してみた感想としても、特段難しいわけでもない気がする。勿論、初めて使われた時は驚いたけど。ザフトの技術力は留まる所を知らないなぁって。

 

「そこで、本部には実験台になってもらおうとレシアが思いついたらしくてな。適当な装備の設計図を描いて、本部に送りつける事にしたらしい。」

 

...連合軍特別"兵器開発局"の名前が泣くような言葉がメカニックから飛び出してきた。それでいいのだろうか...。

 

「そこでアルトを呼んで、描いてもらおうと思ったんだけど...」

 

レシアさんが言葉尻を濁すと同時、彼女とアルトさんは息を合わせたかのように同時に机を叩いた。

 

「「こいつがいつまで経っても人の話を聞かないから...ッ!」」

 

そしてそのまま互いを指差し、両方とも自身の意見を主張し始める。

 

「いいか!?あれを無効化するためにはこれだけの装備案があって―――」

 

アルトさんは床に散らばっていた紙を一枚拾い上げ、レシアさんに見せ付けるようにする。しかし肝心のレシアさんは、そんな紙など見飽きたと言わんばかりにそれをはたき落とす。

 

「だから!全部!資材が足りないって言んの!伝わるかな!?」

 

「要求に答える最低限の資材くらい本部に申請しろよッ!」

 

「したわよ!でも棄却されたわ「USWDに流す資材は無い」ってっ!不足分の資材はどこから出るか知ってる?うちの部隊の負担になるの!だからなるべく安く抑えろって―――」

 

「足りねーよ馬鹿か!?この資材の量で何を作らせる気だよおもちゃか!?―――」

 

...など。途中で聞くのもしんどくなってきた二人の会話から意識を放し、俺は自分が呼ばれた理由を確認する。

 

「少しくらいっ、譲歩をっ、知ってくださいッ!」

 

ちなみにフィリスは再度止めに入るらしい。頑張ってね。

さて、俺が呼ばれた理由だが、まぁ意見番と言ったところだろう。この艦で唯一、俺はあの兵器と戦った経験を持っていて、更にはほぼ無傷で帰還も果たしている。そんな俺の言葉は、この場においては何よりも説得力のある言葉になっているのだろうとも思う。

自身の呼ばれた理由の推察も済んだところで、再度口論の方に意識を向けるが―――まだ駄目だね。フィリスが落ち着かせる事に成功していない。...お二方、大人になってまで何してるんですか、という子どもながらの純粋な疑問は放っておくとして。俺は机に散らばった無数の設計図の中に、何枚かの白紙の紙を見つける。俺はその紙の表面は勿論、裏面にも何も書かれていないことを確認し、ついでに落ちてたペンも手に取って再度考えを纏める。

俺が意見番であるのであれば、おのずと聞かれるであろう事は浮かび上がってくる。後はそれを、出来るだけ文字に起こすだけだ。

 

暫く...と言っても三分、五分程度だろうか、ペンを走らせていたところで口論に勤しむ二人に変化が生まれた。

 

「よし、この条件なら問題ない。」

 

「了解。直ちに設計を始める。」

 

なんだろうこの煮え切らない感じ。先程まで子どものように乱雑に自身の意見をぶつけていた二人が、急にプロになった感が溢れているというか...。というかよく相互理解の領域まで持っていけましたね。

 

「はぁ...やっと着手してくれた...って、シロは何してるの?」

 

少し奥で口論していた二人を止め、作業の着手までやらせる事に成功したフィリスは、若干の疲労を表情に映しながら俺の下に戻ってくる。そしてそのまま俺がペンを走らせている紙を覗き込んできた。

 

「...これ、質問の答え?」

 

「そう。フィリスが宥めてる間に書き進めてた。」

 

 

勿論全ての質問を網羅してるとは言えないので、ここから帰る...とかはないのだが。単純に紙面に起こしておいた方が見やすいかな、と思ったからだ。紙とペン転がってたし、暇だったし。

 

「ねぇこれさ、パイロットの事しか書かれてないけど、大丈夫?」

 

俺は意図的に彼女の質問を無視して、ペンを走らせる速度を上げる。そしてそのまま全てを書き終えて、その紙をフィリスに受け渡す。

 

「フィリスさ、コンバットレコーダの映像も今映せるよな?それとあわせて、フィリス自身の見解を説明してきてほしいんだ。」

 

ここまでの行いを振り返るに、フィリスに説明を丸投げしたのは面倒くさかったから、と思われること間違いないだろうが、別にそれだけが理由ではない。

フィリスはこの艦の戦況オペレータ...俺の戦闘中のオペレーションを主に担当している。つまり、俺の遠隔兵器の回避方法を客観的に見ていたと考えられる。主観的な話は全てあの紙に記した、後はオペレータである彼女の仕事だ。

 

「...おっけー。」

 

彼女が純粋に優しいからか、それとも俺の考えを読みきったからかは分からないが、若干の思考時間の後に快諾してくれた。彼女は貰った紙の内容を一瞥後、理解を表す頷きをした後、二人の元へ歩いていく。

 

「レシアさん、アルトさん、シロが見解を書いてくれました。邪魔かも知れませんが...私の考えも合わせて、聞いていただけますか?」

 

後は全てフィリスに任せて大丈夫だと思う。俺が伝えるべき事は伝えたと思うし、何か新しい質問が出てきた時の為にこの部屋にはいるけどね。

 

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ここまで見ていただきありがとうございます!

もしも続けて見てくださった方がいらっしゃったら、最大限の感謝を。
次も見たい、と思ってくださった方がいらっしゃっても、最大限の感謝を。

あとがきを書いている今は、本格的に書き進めて行こうと思っているので、よろしければ感想やお気に入り登録等、よろしくお願いします。

包み隠さず言うと本当にテンション上がります。絶対更新早くなります。

次回もお楽しみに!




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