前回のあらすじ
指令はOTONAだった。TURUGIは面倒くさかった。天崎は腹壊した。
…今回の話は前回から一ヶ月後になる。
一ヶ月間の頑張りと歌手との歌詞の確認変更、シャチョさんの各所への対応。
それらを持って新曲『ZERO RIGHT』が完成した。
実際に完成してみると、あのアニメに合う曲はこれ以外ないと言える出来に仕上がった。
だが、スタジオに出ようとしたときに、シャチョさんに言われたことについては正直あまりいい気がしない。
「貴方は最近働きすぎよ、天ちゃん。歌や歌詞が自分の中から沸き立ってくるからそれを書きたいのは分かるけど、最近の貴方はオーバーペースが過ぎるわよ。…悪いことは言わないから休みなさい。もうすでに休暇の申請してあるから拒否権は無いわよ。」
スタッフさんの都合もあるし…と言って話を終えた。…シャチョさんの言うことはわかるんだけどなぁ。有意義な休暇の過ごし方がちっとも分からない。
「…外出でもするかぁ。」
そんなわけでマンションの外に出た訳だが、何をしたらいいか全く分からない。
いくら考えても答えが出ないので、何時ものように、この町の美味しいものを探すぶらり旅でもしようと思い。
「開始したワケですよ。たこっちゃん。」
「またそれかよ。というかたこっちゃんって何だ?」
「…うまいたこ焼き屋のおっちゃんの略称ですよ。」
行きつけの店に来ていた。ここのたこ焼き屋は学生時代の時からここに通い始めて早五年といったところだ。
通い始めた理由はここのたこ焼きがなぜ美味しいのか?というテーマで、高校の宿題で提出して、高評価をもらったもの、未だに美味しい理由の解明ができていないからだ。
「にしても人は変わるもんだねぇ」
「変わる?僕のことであってますか?」
「うん、そうあってるあってる。最初来た時は幽霊でも立ってんのかってくらい浮世離れした無表情だったし。今では少し笑えてるからな。」
「…そんなに変わっているのか?」
しみじみとたこ焼きの店主はそう語る。
昔の自分の話を聞いて、呆気にられる少年。
それなりに長い付き合いなのだろう。
「しかし、何でここのたこ焼きは美味いんだ?当たり前の中空洞は勿論のことだから分かるんだが。」
たこ焼きを一つ頬張りながら聞いてみた。
「あー、そうだなー、長い間通ってもらっているし、特別に教えてやるよ。「本当かッ‼︎」がっつくなッ、がっつくな‼︎」
謎が一つ解けそうになって興奮する天崎を他所に、自分のペースが崩されそうになって驚く店主。
この二人のくだらない話を続けて行くと、やけにうるさいサイレンが鳴り響き始めた。『緊急警報ッ‼︎緊急警報ッ‼︎ノイズが出現しましたッ‼︎住民は直ちにシェルター内に避難してくださいッ‼︎』
「ッまたかよ‼︎、最近多くねぇか?なぁ‼︎」
呆れつつも天崎は
「確かにそうですね。それじゃあ」
「シェルターまで逃げるぞッ」
「シェルターまで逃げましょうか」
たこ焼き屋の店主と避難することにした。
…奏者三人いるから手間取るはずもないうえ、下手を打ったとしても平気だという判断を天崎は下したうえで。
player change Tubasa
時は、天崎達がフィルター内部への避難が完了した時まで進む。
空は黒に染まり。流れ星が降った後、奏者達は…
「おいおい、たいしたことねぇな。二課の奏者ってのは?」
完全聖遺物も纏った少女と対峙した。
「なんなのこれぇ〜」
情けない声を出す立花 響は特殊なノイズの粘液に絡まれて動けないでいた。
「おい響‼︎大丈夫か⁈」
「ッハイ、大丈夫です‼︎」
そんな響を確認した後、助けに行こうとする天羽奏を阻むように完全聖遺物・『ネフシュタンの鎧』を装着した少女が両肩についた鞭で攻撃してくる。
「ハッ、行かせるかよッ‼︎」
「お前の相手は私だッ‼︎」
風鳴 翼は鎧を纏った少女と戦う。
白い髪がたなびいている少女は舌打ちした後、手に持った杖を天羽奏に向ける。
「ッ奏‼︎気をつけろ‼︎ノイズが其方に向かう‼︎」
「あぁ、旦那から聞いてるよ。ノイズを操ることができるだろ、それ‼︎」
奏者達は知る由も無いが、その杖も完全聖遺物であり、名は『ソロモンの杖』。
ノイズを呼び出し、数十種類のコマンドで統制可能な力を持っている。
杖から放たれた光から現れた、ブドウ型のノイズが天羽奏の相手をし始める。
以前立花 響は捕らえられたままだ。
「奏やその子にかまけて私を忘れたのかッ‼︎」
「…はっ、ちょっせぇッ‼︎」
不意を突いて攻撃をした翼だったが、攻撃する直前で気づいていたのか、鞭で剣を弾いた。
「甘い‼︎」
「甘ぇのはッそっちだ‼︎お高くとまってんじゃねぇッ‼︎」
弾かれた直後に足払いを仕掛け転ばそうとするも、読まれていたのか左肩に取り付けられた鞭で攻撃され、とばされる。
腹を攻撃されたのか、少し辛そう咳き込むと、少女が嘲笑うかのように話し始めた。
「残念だったなぁ?お仲間さんを助ける事が出来なくて。」
「…何?」
そう聞き返されると同時に、こう言い放った。
「二年前のライブもあんた一人じゃ相棒を失っていた…違うか?」
そう言われて僅かに目を見開いてからその顔を下に向ける。
「そうだよなぁッ‼︎あんたはクロノスって奴が居なきゃ助からなかったもんなぁ‼︎」
「ついでだ。教えてやるよ‼︎あたしの狙いはそこの融合症例だ‼︎」
「響だと‼︎どういう事だ‼︎」
その言葉に奏が反応した
「それをあんたらに語る義理はねぇッ‼︎風鳴 翼ァ‼︎、あんたにとってそこの仲間も‼︎この鎧も‼︎…すぎたもんじゃねぇか?」
…その言葉を皮切りに翼は静かに立ち上がった。
「…その通りかも知れないな。」
「あん?」
様子がおかしい翼を見て、今度は聖遺物のエネルギー弾で攻撃しようと考えたが
「‼︎ッ動けねぇ。」
「動きは封じさせてもらった。」
《影縫い》
翼は少女の影に小刀を刺し投げ動きを封じた…翼は何もせず俯いていたわけではなく、少女が得意げに話している間に相手の動きを封じることにしたのだ。
…自身の命を賭けて少女を倒すために。
「…私は未熟者で鈍の剣だ。お前の言うように仲間というものは過ぎたものかもしれん。だから、」
少女の元へ歩いていた翼は目を見開いて
「この命が潰えても、ネフシュタンの鎧は返させて貰おうか。」
「歌うのか…絶唱を⁉︎」
静かに笑い禁断の歌を、歌い始めた。
Gatrandis babel ziggurat edenal
「おい翼‼︎、辞めろ‼︎絶唱は歌うな‼︎」
そのリスクを知る奏は、歌わせる事を辞めさせようとする。
Emustolronzen fine el baral zizzl
「翼さん…?」
先程から続く展開についていけない響は不安な表情で翼を見ている。
Gatrandis babel ziggurat edenal
「クソ、やっぱり動けねぇ」
自身に危険が迫ってる事を理解しているからこそ、そこから逃れようとする少女
Emustolronzen fine el zizzl
それらを無視して、翼は歌え終えた。
変化は一目瞭然だった。響や奏の周辺にいたノイズは消し飛び、ネフシュタンの鎧が砕け、少女は吹き飛ばされた。
少女は鎧の破損部分を見つめた後、何かを呟き空を飛んでその場を撤退した。
たった一回の攻撃でここまで逆転できた驚きに、翼さんはスゴイと思った響は翼にその事を言おうとして、
その口が止まった。
足元に血だまりが出来て
「…大丈夫だよ、奏。」
その姿は今にも崩れそうで、
「奏は私が、守るから。」
顔は先程の面影が残らないほど血に塗れ
「それと安心して。」
誰の目から見てもその悲痛さが伝わった
「私は奏の側から居なくならないから。」
そう言って翼という一人の不器用な人間が倒れた。
「翼さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ/さぁぁぁぁぁぁぁぁん。」
残った奏者の悲鳴で、その勝負は幕を閉ざした。
player change Amasaki
戦闘の終わった後、風鳴 翼の緊急搬送や後処理が行われている時、シェルター内部では
「…それが俺んところのタコ焼きの秘密だ。」
「成る程、鰹節と紅生姜にこだわっていたのか。あの風味の良さはそういうこと…」
…タコ焼きの話をしている店主と阿保がいましたとさ。
player change Hibiki
翼が絶唱の代償として、身体に酷いダメージを受けた翌日。
響は、顔をうつむかせていた。
(…私のせいだ。私がいつまでもアームドギアを作れない程の未熟なせいで、翼さんが)
「なーに落ち込んでんだ。響」
(‼︎ッこの声って)
「奏さ「ほい♪」ッひゃあ‼︎」
振り向こうとしていた響は、頰に冷たい缶が当たって驚いた。
「いや〜、響が何を飲むか知らなかったからさぁ、缶コーヒーにしたけど…苦いの大丈夫か?」
「え…あっ、だ、大丈夫です」
驚きながらも、缶コーヒーを恐る恐る手に取った。
「…奏さん。ごめんなさい。私のせいで、翼さんが…」
コーヒーの飲み口をじっと見つめながら響はそう語った。
「…響だけが悪いわけじゃないさ。………もし良かったらさ、あたしの昔話を聞くか?」
「…昔話?」
「あたしがノイズと戦う事になった話さ。」
響は声を出さずに、静かに頷いた。
…そこから聞かされた話は、今の奏を見ただけだと想像もつかない話だった。
ノイズによって自身の家族が殺され、復讐を誓い。
自力での操作で二課を探し出し、奏者になるための実験に参加。
実験に成功した後は、シンフォギアの力を使ってノイズを倒し続ける日々を送った。
「それでさ、あるときにさ。助けた人にこう言われたんだよ。」
「なんて言われたんですか?」
「「あなたの歌が聞こえていたから、もう少し頑張ろうと思えた。」ってさ。」
その言葉が何か琴線に触れたのか、響は目を見開く。
「…翼はさぁ、響が融合症例になったあのライブでトラウマを抱えたんだ。」
その表情から何か確信を得たのか、先程とは違う話をし始めた。
「あたしは、あのノイズの量だと響や翼を守れないと思って、絶唱を使おうとしたんだ。」
「翼さんが大怪我を負ったあの技ですか?」
「そう。シンフォギアに搭載されている捨て身の大技…莫大な威力と引き換えにあたしら奏者自身の命が危険に晒される技だ。」
「ぇ、じゃ、じゃあ奏さんは。あのとき…」
「そう、死ぬつもりだった。」
「なんで、ですか‼︎」
クロノスのおかげで助かったけどなぁ…そう奏がぼやき終えるよりも早く、響はそういった。
「「なんで」って?」
「だ、だって奏さんはノイズを倒す為に奏者になったって…「今は、違うさ。」えっ?」
「別にノイズを倒したいっていう気持ちが消えたわけじゃねぇけど。もっと大切な事に気づいたから、そうする事にしたのさ」
「それって一体?」
「響ならいずれ分かる。それよりもさっきの話に戻すぞ。」
「…分かりました。」
(…いったい何なんだろう。私が分かる事?)
響は先程の奏の発言が気にしつつ、話に耳を傾ける。
「翼は、あたしが死を覚悟して絶唱を使おうとした事を、自分のせいだと思いこんだんだ。」
「翼さんが…?」
「そう。そっからあんな変な武士みたいな言葉使いをし始めるわ、あたしとの会話が減るわ。…ホント何やってんだか。」
少し哀しげにそう呟いた。
「だからさ、響。あたしはお前にそんなに深く考え込んで欲しくないんだ。翼みたいに思いつめることなんてしないでくれ。」
「でも、私このままじゃ嫌ですッ‼︎、奏さんや翼さん。ツヴァイウィングのお二人の力になりたいんですッ‼︎」
(…だって私は、私は、誰かの為にならないと。他の人の命のぶんまで。)
奏は響の様子を見てから
「…よし、だったら旦那に鍛えてもらおうか‼︎」
「旦那って、司令のこと…ですよね?」
「そうだ。…変なトレーニングだけどしっかりとした効果はあるからな。」
意味深な笑みで奏は笑った。
この後メチャクチャ映画トレーニングをした。
映画トレーニングとは、映画を見て、映画の真似をするトレーニングのことである。
なぜか、強くなれるかは学会案件である。
次回の投稿は明日です。お待ちください。