周囲を土煙が満たす。
「ディスコネクションチェック。ベクタートラップ損傷。腕部シールド、ブレード、ビームガン損傷。現在使用できる武装はありません」
「私もです」
満身創痍の私達の眼前から土煙が晴れる。
「お、おの…」
土煙が晴れた先では、フィールドが完全に剥がれている。
しかし、主柱は依然として存在している。
「ワシは…まだ…」
主柱同様に、全身にヒビが入り、大破したハトールが呻き声を上げる。
主柱からは依然としてエネルギーの放出が続いている。
「破壊目標、依然として存在」
「ミッションの継続困難」
武装が全て失われた、私達が目標を達成するためには、残された手段は一つだけだ。
「「モード移行」」
私達は同時に、起爆準備を行う。
「ちょっとまって!!」
「まだあきらめるの早いぞ!!」
ホグワーツの外壁を貫き、トムのラプターが突入する。
「うおぉぉおおぉぉお!!」
「うりゃああ!!」
ラプターに残された右腕のビームソードが主柱を貫く。
「グオオオオァオ!!」
ノイズの混ざったダンブルドアの断末魔が木霊する。
「貴方達が死ぬ必要なんて無いわ!」
「これは、魔法界での出来事だ。自分達で片を付けるさ」
ビームソードを刺したまま、ラプターが機体を主柱に固定させる。
「さぁ! トム! ぶっ壊すわよ!」
「あぁ…そうしたいんだがな…」
ラプターの動きが止まる。
「トム?」
「実はな、今の一撃でエネルギーの殆どが切れたんだ」
「そ…そんな…じゃあ…手段は」
「安心しろ。まだ手はある」
「そう、良かったわ」
ハーマイオニーから安堵の声が漏れる。
「あぁ、だから…これでお別れだ…ハーマイオニー」
「え?」
次の瞬間、ラプターからコックピットが分離され、こちらに射出される。
私は、飛んでくるコックピットを回収すると、ハーマイオニーが這い出て来る。
「ちょっと! トム!! どいういうつもりよ!」
「ラプターに搭載された武装じゃ、主柱を完全に破壊するのは不可能だ。だが、ラプター本体を至近距離で…ゼロ距離で自爆させれば破壊できる」
「ラプターを自爆させるのね。なら急いでタブレットに戻りなさい!」
ハーマイオニーがタブレットを掲げる。
「残念だが、それは出来ない」
「どうしてよ!」
「ダンブルドアは依然としてマスコントロールシステムでラプターを操作しようとしている。僕が居るからコントロールを奪われずに済んでいるが、タブレットに戻ったら、確実にラプターの自爆シーケンスが中断される」
「そ…そんな…」
「つまり、これが最善の方法だ。安心しろ1度、いや2度は死んだんだ」
「オノレッ! トムリドル!! ワシノジャマヲ!」
主柱から顔だけのダンブルドアが現れ、ノイズ混じりの機械音が響く。
「堕ちるところまで堕ちたなダンブルドア。いい気味さ」
周辺で小規模な爆発が発生する。
それに伴い、ホグワーツの崩壊が始まる。
「時間が無い! 急いで脱出しろ!」
「了解」
私はハーマイオニーの手を取る。
「嫌よ! トム! 貴方も一緒に!」
「分かってくれハーマイオニー…さぁ! 早く行け!」
「トムリドルゥウウウ! オマエヲホグワーツニイレタノハマチガイジャ!」
「こうして、原因であるお前と僕が運命を共にするというのも皮肉な物だな」
「オノレェエエエエ!!」
主柱から触手が生え、ラプターの体を貫く。
「トム!」
「この程度、どうって事は無いさ。さぁ! ダンブルドア! 一緒に死んでもらうぞ!!」
ラプターの自爆シーケンスが最終段階に移行する。
「危険です。離脱を」
「トム! トム!!」
ハーマイオニーは依然として脱出を拒む。
「お許しください」
私は強制的にハーマイオニーを抱きかかえると、脱出を開始する。
「離して! トムを置いて行けないわ! トム! 戻りなさい! お願い! 戻ってきて!!」
「すまない…さぁ、行け」
瓦礫が落下する中、私達はトムを残し、大広間を後にする。
大広間の扉を抜けホグワーツを飛び立ち、数分が経過する。
「あぁ…あ…トム…」
『何を悲しんでいる?』
トムから通信が入る。
「だって…だってぇ…」
『そういえば、帽子の奴が僕をスリザリンに入れたのは案外いい選択だったのかも知れないな』
「なによ突然…」
『知ってるか? スリザリンはどんな手段を使っても目標を遂げる狡猾さがあるんだ』
「ダンブルドアへの復讐?」
『まぁ、大方はな』
「相変わらずね…」
ハーマイオニーは依然としてメンタルコンデションレベルが低下したままだ。
『だが、もう一つ別の事もあるんだ』
「別の?」
『そうさ、スリザリンはもしかして、君はまことの友を得る。ってな』
「まことの…友…」
『まさか、日記に身をやつして、半世紀以上たった後に、君達に出会った。まぁ、これは僕の個人的な感想かも知れないが、君達の事はまことの友だと思っているよ』
「トム…」
ハーマイオニーの目から涙が零れ落ちる。
『おいおい、泣くなよ』
「そんな事言われても…」
ハーマイオニーは涙を拭き、しゃくりあげる。
『起爆まであと35秒…君達は今何処だ?』
「もうじき、ブラック邸に着くわ…」
『そうか、主柱のエネルギーが思った以上に大きい。破壊した余波が、そこまで行くかもしれないぞ』
「ブラック邸に設置したエネルギーフィールドは依然として健在です」
「そこに、我々の残存エネルギーを供給し、シールドを強化すれば防御は可能です」
『それを聞いて安心したよ。さて…後10だ。さよならだ』
「トム!!」
私達は、ブラック邸に到着し、シールドの強化に取り掛かる。
「貴女達! 戻ったのですね! グレンジャー…トムリドルは?」
「トム!!」
次の瞬間、ホグワーツで大規模な爆発を検知した。
「ぐおぉ!!」
「揺れたぞ!」
「全員、ブラック邸内部に避難してください」
「数秒後に衝撃が来ます」
ホグワーツで発生した爆発の余波が、周辺の地面を捲り上げながら、接近する。
「なんだあれは!!」
「「シールド展開」」
強化済みのシールドをブラック邸の周囲に展開する。
数秒後、爆発の余波が、周辺を巻きんだ。
爆発の余波が通過し、静寂が支配する。
「助かった…の…」
ハーマイオニーはブラック邸内部を見渡す。
「余波は過ぎ去りました」
「外を見て来るわ…」
「行きましょう」
マクゴナガルを先頭に、複数人がブラック邸の外へと出る。
「こ…これ…は…」
ブラック邸の外は、見渡す限りが焦土と化していた。
「周辺の状況分析完了」
「シールド圏内を除くグリモールト・プレイス全域が焦土と化しました」
「何てこと…だ…」
シリウスはその場に膝を付き、崩れ落ちる。
他の人々も、皆一様に放心状態で、茫然自失だ。
「皆、顔を上げるのです」
マクゴナガルが口を開く。
「マクゴナガル先生…これほどの被害です…生き残った魔法使いも…」
ルーピンが首を横に振る。
「確かにそうかも知れません…ですが、私達はまだ死んではいません」
マクゴナガルの言葉を聞き、数名が顔を上げる。
「そうです。私達はまだ生きている。もう一度やり直すんだ」
シリウスが立ち上がる。
「まずは、各国の生き残りと連絡を。その後、マグル界に協力を要請しましょう」
「わかりました」
「マグル界との交渉は、私が行きます」
ハーマイオニーが手を上げる。
「助かります。ですが今日はとりあえず休みましょう。体を壊しては元も子もありませんからね」
「はい」
こうして、各員は自室へ戻って行く。
「ねぇ…ちょっといいかしら?」
私達も自室へと戻ろうとした時、ハーマイオニーが声を掛けてくる。
「御用でしょうか?」
「その…この後、時間あるかしら?」
「構いません」
「私を一度、ホグワーツへ連れて行ってくれないかしら? トムを…迎えに行きたいの」
ハーマイオニーの声が少し震える。
「了解しました」
私達はブラック邸の扉を開く。
「では行きましょう」
「えぇ」
ハーマイオニーを抱きかかえ私達は、ブラック邸から飛び立った。
移動中、周囲を索敵するが動体反応は一つも無い。
「何も…無いわね…」
「周辺3キロに動体反応はありません」
「皆…消えたのね…」
「その様です」
ハーマイオニーのメンタルコンデションレベル低下し、口を噤んだ。
数分後、ホグワーツに接近する。
ホグワーツがあった場所は、爆発の影響かクレーターとなっており、周辺には大破したラプターの残骸が大量に散乱している。
「まもなく、ホグワーツ直上に到着します」
「周辺に放射性物質などは検知されていません。安全です」
「そう…真ん中に…降ろして頂戴」
「了解」
クレーターの中心に着地後、ハーマイオニーを降ろす。
爆心地の中心には、四肢が吹き飛び、辛うじて胴体の基礎フレームが残っているラプターが横たわっていた。
「っ!」
ハーマイオニーは走り出し、大破したラプターに駆け寄る。
「トム! トム!!」
AIユニット部分に泣きつく様に駆け寄り、何度も叩く。
しかし、ラプターからの反応は一切ない。
「トム…」
ハーマイオニーはその場に崩れ落ちる。
「機体からの反応はありません」
「分かってるわ…分かってる…」
ハーマイオニーは涙をぬぐい立ち上がった。
「機体の回収を行いますか?」
「えぇ…ありがとう…」
私は、ベクタートラップ内に、ラプターを収納する。
「さぁ…戻りましょう」
トムを回収後、私達は、爆心地を後にした。
トム…
良い奴だったよ。