変身術の授業が終了し、次は魔法薬学の授業だ。
どうやら、この教科はスリザリンとの合同なようだ。
教室に入ると、見事なまでに赤と緑が左右に別れている。
私達は、別段気にする事無く中央付近の開いている席に腰かける。
「やぁ、久しぶりだね」
「お久しぶりですね。ドラコ・マルフォイ」
「お元気そうで何よりです」
私達が座っている席の前方に座ったマルフォイは背もたれに肘を置きこちらに顔を向ける。
「まぁね。それより意外なのは君達がグリフィンドールに入った事さ。特にデルフィ、君がね」
「良く言われます」
「ハハッ、そうだろうね。帽子の奴だって最初は君をスリザリンに入れようとして居なかったか?」
「その様ですが、気でも変わったのでしょう」
「そうかい。おっと…そろそろ先生のお目見えだ」
マルフォイはそう言うと、正面を向く。
それと同時に、教室の扉が開かれ、不機嫌そうな表情で、前進を黒いローブで包んだ教員が入室した。
「貴様等の魔法薬学の授業を担当する。セブルス・スネイプだ」
セブルス・スネイプ、噂ではスリザリンの担当教員であり、グリフィンドールには不当とも思える対応をするという。
「これはこれは…ハリー……ッポッターか…フン…スター気取り…か」
スネイプは皮肉交じりに鼻で笑うと、それに釣られる様にスリザリンの生徒達も嘲笑を始める。
その後、一通り出席確認が終わると、スネイプが教科書を片手に教室内をゆっくりと歩き始めた。
「さて…この授業では杖を振り回すだけの馬鹿げたことはやらん、魔法薬調剤の微妙な科学と厳密な芸術を学ぶ授業である」
かなり自分に酔っている様だ。
かなりのナルシストだと推測できる。
「ポッター!!」
「へ?」
スネイプの怒号が教室内に響き渡る。
「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」
唐突な質問に対して、ハリーは目を白黒させ、隣に座っていたロンと顔を合わせ、首をかしげている。
後方の席のハーマイオニーが手をまっすぐ上げていが、スネイプはそれを無視している。あくまでも標的はハリーだけらしい。
「どうしたのだ、早く答えたまえ!」
「その…わ…わかりません。」
小声でハリーが答えるとスネイプは嘲笑うように「有名なだけではどうにもならんな」と続けた。
「なんとも嘆かわしい…さて、ポッターもう一つ質問だ。ベゾアール石を探すとすればそれはどこを探すのが一番だ?」
ハリーは相変わらず目を泳がせており、ハーマイオニーは相変わらず手を上にまっすぐとあげていた。
「どうしたのだね、わからんのか?」
「はい…」
「授業が始まる前に予習しようとは思わんかったのかね?」
「ハーイオニーが分かっているようなので、聞いてみたらどうですか」
ハリーがそう言うとスネイプは少しため息をついた。
「なんと嘆かわしい、私は貴様に聞いているのだぞ、そのふざけた態度は無礼すぎるな、よってグリフィンドール、-15点」
「そんなの無茶苦茶だ!」
ロンが席を立ちあがり声を荒げて、スネイプを睨みつける
「吾輩は貴様に発言の許可を出した覚えはないぞウィーズリー…-15点だ、これ以上授業の妨害をするようなら退室してもらうぞ」
ロンが悔しそうに手を握りながら席に着く、結果としてこの数分の間で30点も減点を受けてしまった。
「さて…そうだな…エイダ・イーグリット答えてみろ。アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものは何になる?」
スネイプは私を指差した。
データベースを検索し、該当の情報を引き出す。
「了解。生ける屍の水薬と呼ばれる睡眠薬が生成されます」
「………正解だ」
スネイプは悔しそうに視線を落とす
そんな時、隣に座っていたデルフィが口を開く。
「余談ですが、アスフォデルの花言葉は『私は君の物』ニガヨモギの花言葉は『愛の離別』『離別と恋の悲しみ』です」
「なっ………」
途端にスネイプの心拍数が上昇し、体温が上昇し、発汗を感知した。動揺している様だ。
「どうかされましたか?」
「余計な事を言わんでいい! 授業を続けるぞ!」
スネイプは苛立った声を上げながら、踵を返し、黒板に板書を始めた。
「まさか答えるとはね…それにしても、君達の知識量には驚かされたよ。まさか花言葉まで知っているとはね」
若干振り返ったマルフォイが小声で話しかけて来る。
「必要な情報は既にリサーチ済みです」
「ですが、花言葉に対してあれ程、動揺するのは予想外でした」
「まぁ、そうだろうね」
マルフォイは小さく笑うと、正面を向きなおした。
その後、簡単な魔法薬を作ることになった。
どうやら、吹き出物に有効な薬を作るようだ。
「まぁ…人数の都合上とはいえ、まさか君達とペアを組まされるとはね」
本来なら2人1組で作るはずだったのだが、私達の他にマルフォイも同じグループになったようだ。
「不服ですか?」
「そんな事は無いさ。君達と一緒ならまず失敗は無いだろう」
「では、始めましょうか」
その後、手元に配られた魔法薬の材料を薬品鍋へ入れようとする。
「ちょっと待ってくれ。魔法薬学は分量を正確に測る必要があるんだ。天秤で計量してからだ」
マルフォイは机の上に置かれている、旧世代の天秤を指差している。
「不必要です」
「いや、だが…」
「我々は天秤を使うより正確に計量できるので」
そう言うと、私とデルフィは手順通りに薬品の配合を進める。
数分もすれば、私達の鍋の中には完成した薬品で満たされていた。
「ほぉ…やるな。よくやったぞマルフォイ。スリザリンに15点だ」
スネイプはそう言うと、私達の作った薬品を小瓶に詰めるとサンプルとして回収した。
「えーっと…後は…」
その時、背後の席で調合を行っていたネビルが山嵐の針を片手に、火にかけられている薬品鍋を覗き込んでいる。
本来ならば、山嵐の針は薬品鍋を火から降ろしてから入れるものだ。
「よしッ」
何を確認したのか分からないが、ネビルはそう言うと、薬品鍋に山嵐の針を投げ入れる。
「危険です」
ベクタートラップを起動し、鍋に入る寸前の山嵐の針との距離を圧縮し、デルフィがそれを回収する。
「え? 何するんだよ!」
突然の出来事に、ネビルは困惑したように声を上げる。
「この材料を入れるのは、鍋を火から降ろしてからです。そのまま投入すれば、大惨事になるでしょう」
「え…そうなの?」
ネビルは周囲を見回していたが、ある一点を見てから、表情がどんどんと青褪める。
「イーグリットの言う通りだ。この程度の薬品の調合すらミスをするとはな…まったく嘆かわしい」
嫌味を言いながら、嘲笑するスネイプを目にしたネビルのメンタルコンデションレベルは今後の行動に影響の出るレベルにまで下がっていた。精神安定剤の投与が必要だろう。
「流石だね。やっぱり君達はスリザリンかレイブンクローに入るべきだったね」
「そうかもしれませんが、もはや変更はできないでしょう」
「まぁ、そうだね」
マルフォイは手元の山嵐の針を指先で遊ばせると、机の上に置くと、ネビルを一瞥し、鼻で笑って居る。
その時、丁度終業を告げる鐘が鳴り響く。
「フッ、まぁ良い。今日作った薬品に関するレポートを羊皮紙3枚にまとめて提出が今回の課題だ。以上」
突然の課題に、多くの生徒が不満を漏らすが、スネイプはそんな事を気にする様子も無く、教室を後にした。
「さて、今日は助かったよ。君達はグリフィンドールと言う点さえ除けば、とてもいい仲になれそうだ」
「そうですか」
「あぁ、それじゃあ失礼するよ」
そう言うと、マルフォイは荷物をまとめ、教室を後にした。
私達も退室する生徒達に倣い、出て行った。
安全に授業が進んで行きます。