ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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チートはさらに加速する。


飛行訓練

 

 

   この学園での生活が始まり数週間が過ぎ、多くの生徒が自身の生活リズムを確立した頃、ようやく私達は、この魔法界に付いて、大まかだが理解した。

 

 

 魔法界では機械の類が使用不可能になる魔法が施されている様だ。

 

 その為、初めて魔法界に訪れた時に、外部からのハッキングを受けてしまったと考えられる。

 

 現状では、対抗プログラムが着床済みなので問題ではない。

 

 現在、この対抗プログラムを改良し、攻撃魔法や、毒性の魔法薬、攻撃性の魔導具を無力化させる、対魔法防衛プログラムとしての応用も可能になった。

 

 具体的には、攻撃魔法など、こちらに害する魔法は無力化し、有利に働くものには発動しない様になっている。

 

 ちなみに、このプログラムは任意での切り替えが可能で、攻撃魔法を故意に受ける事も可能だ。

 

 

 その他の調査では、かつてこの魔法界には『闇の帝王』と呼ばれる1人の魔法使いと、その信奉者である『死喰い人』によって恐怖に陥れられていた。

 

『闇の帝王』の標的となった人物は、必ず殺されていたという…1人の人物を除いては。

 

 その人物こそ、幼き頃の『ハリー・ポッター』という話だ。

 

 ハリーが有名人な理由が理解できた。

 

 幼少期のハリーに敗北した『闇の帝王』は、その後姿を消したと言う。

 

 

 しかし、いくつかの疑問が残る。

 

 どの様な手段を用いて幼少期のハリーは『闇の帝王』を退けたのか。

 

 それについては、本人もよく分からないという話だ…

 

 それと、この世界特有の『ゴースト』と言う存在に付いて、若干だが理解できた。

 

 城内に存在するゴーストは、『魔力』と同質のエネルギーで構成されており、そこに自身の記憶データを移植したものだと推測される。

 

 しかし、それ以上の事は理解できなかった。

 

 やはり、この世界には、未知の情報が多く存在すると実感させられた。

 

 

 

 

 

  さらに数日程、月日は流れ、本日の授業は箒を使った飛行を行うという事だ。

 

 児童文学などで、魔法使いが箒で空を飛ぶ描写があるが、まさにその光景をこれから再現しようとしている。

 

 校庭に出ると、空は晴れわたり、雲一つない快晴だった。

 

 気温も適正温度であり、不快指数は感じられない。

 

 集合場所へ行くと、そこには不愉快そうな表情のスリザリン生徒、苛立ちを隠せていないグリフィンドール生が対立していた。

 

 どうやら、この授業も合同なようだ。

 

 スリザリンとグリフィンドールは創立時から対立関係にあるという話だ。

 

 何故、合同授業を行うのか理解できない。

 

「やぁ、突然だけど、君達は空を飛んだことはあるか?」

 

 スリザリンのグループから離れ、箒を片手に、マルフォイが挨拶をしながらやって来た。

 

「箒ではありません」

 

「へぇ、まぁマグルの世界じゃ、空飛ぶ乗り物があるって聞いたことがあるよ」

 

「存在します」

 

「なんでわざわざそんな不便な事をするのか僕には理解できないね」

 

「大量の貨物、及び物資の運搬や輸送、大人数での移動には、最適です」

 

「へぇ…まぁ、アイツ等の考える事なんて、僕にはわからないし、分かりたくないさ。そんな事より君達。『クィディッチ』って知ってるか?」

 

「理解しています」

 

「それなら話は早い。僕はねクィディッチが大好きなんだ。昔から練習していて、箒に乗るのは得意なんだ」

 

 自身に満ちた表情でマルフォイは箒を慈しむように撫でている。

 

「そうですか」

 

「あぁ、他の奴等よりすごい飛び方を見せてやるよ」

 

 笑みを浮かべたマルフォイはこちらに軽く手を振りながら、小走りでスリザリンのグループへと戻って行った。

 

 しばらくすると、校庭内に箒を持った教員が入って来た。

 

「全員整列! 箒の横に並びなさい! 急いで!」

 

 教員の指示が飛び、生徒達が、芝生の上に置かれている箒の横に整列する。

 

「今日の授業を担当する『ロランダ・フーチ』です。さて、まずは箒の上に手を出して『上がれ』と言いなさい。箒が手に吸い寄せられる筈です」

 

 フーチの指示に従い、その場の生徒達が箒の上に手をかざし、口々に『上がれ』と声を発している。

 

 しかし、殆どの生徒は箒を上げる事は出来ず、出来たのは先程まで自慢げに語っていたマルフォイと、意外にもハリーだった。

 

 私も箒の上に手をかざす。

 

 すると、若干だが、箒とのリンクを確立する。

 

 しかし、この程度のリンクでは十分な操作を行うのは不可能だろう。

 

 とりあえず、箒と手の間の空間をベクタートラップで圧縮し、手中に収める。

 

 手に取る事で、より詳しい構造を理解する事が出来る。

 

 柄の部分で吸収したエネルギーを穂の部分でエネルギーを増幅させ、穂先から放出し飛行を可能としている様だ。

 

 かなり単純な構造なので、体重移動での移動が主となるだろう。

 

 構造を理解したところで、エネルギーラインを確立し、エネルギーを送り込む。

 

 その瞬間、箒が一瞬で燃え尽き、灰と化した。

 

 隣に居たデルフィの方を見ると、その手にも、炭が付いていた。

 

『やはり、我々の規格とは適合しませんね』

 

『そうですね。ですが構造自体は単純です。後で複製する事は可能でしょう』

 

『そうですね。ですがわざわざ箒が必要だとは思えません』

 

『………その通りですね』

 

「そこ! 何をしているのです!」

 

 ふと顔を上げると、そこには、激怒した表情のフーチがこちらに駆け寄って来た。

 

「箒が消滅しました」

 

「消滅って…一体何を…」

 

「我々の過失です」

 

「後ほど請求書を。後日お支払いします」

 

「え…えぇ…」

 

 不服そうなフーチだったが、納得したように、数回頷いた。

 

 そんな私達のやり取りを周囲の生徒達が唖然とした表情で見ていた。

 

 そんな時……

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 突如として、校庭に悲鳴が轟く。

 

「何をしているのです!」

 

 悲鳴の方を見ると、ネビルの跨った箒が暴走している。

 

「こら! 戻りなさい!!」

 

「アァぁああ!!」

 

 声にならない悲鳴を上げながら、ネビルを乗せた箒は急上昇して行く。

 

 

 高度200フィート(60.96m)でネビルが力尽きた様に手を放し、その体は重力に引き込まれるかのように、加速度的に落下する。

 

「きゃぁああ!」

 

 女子生徒を始めとした、悲鳴が響き渡る。

 

 あの高さだと、約3秒で地面と衝突するだろう。

 

 落下開始から0.2秒経過。

 

「サブウェポン。ウィスプ展開」

 

 私の背後に3基のウィスプが展開される。

 

『ウィスプ』とは、サブウェポンの一種であり、距離の離れた目標に急速で接近し、捕縛する小型の飛行ユニットだ。

 

 落下開始から1秒経過。

 

「目標ロック、ウィスプ・リリース」

 

 3基のウィスプが急加速し、ネビルに接近する。

 

 落下開始から2秒経過。

 

「目標確保」

 

 空中でネビルを確保したウィスプが3方向から彼の体を固定し、滞空する。

 

 落下開始から3秒経過。

 

「回収開始」

 

 滞空しているウィスプを手元に引き寄せ、ネビル安否を確認する。

 

「………………」

 

 どうやら、気を失って居るだけで、命に別状はない様だ。

 

 ウィスプをベクタートラップに収納し、地面に彼の体を横たえる。

 

「一体…何が…」

 

「気を失って居るだけです。外的損傷は確認されません。安静にして居れば問題はないでしょう」

 

「わ…わかりました。私は彼を医務室へ連れていきますから、その間に誰も箒に乗ってはいけませんよ! 乗ったらクィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出て行ってもらいますからね」

 

 フーチがそう言うとネビルを担いで城の中へ消えていった。

 

 2人の姿が見えなくなった途端周囲がざわつき始める。

 

「エイダ。今のは一体…」

 

「ネビルを助けるなんてすごいわ!」

 

 私達の周囲に右手に箒を持った状態の、ロンとハリー、そしてハーマイオニーが歩み寄ってくる。

 

「人命救助は最優先事項です」

 

「でもすごいぜ。先生だって茫然として居たな。案外やるじゃないか」

 

 ロンは笑いながら肩を竦めている。

 

 そんな時、マルフォイが地面に転がっていた、ガラス玉を拾い上げ、右手で遊ばせながら、こちらに歩み寄る。

 

「なんだ? これは、ロングボトムの思い出し玉か? これで飛び方を思い出していれば。君に迷惑をかけずに済んだだろうに」

 

「マルフォイ! そいつを返せ!」

 

 ハリーがそう言ってマルフォイを睨みつける。その場の殆どの生徒の目線が私達から彼等へと移行した。

 

「おっと。嫌だね、これは奴自身に見つけさせる」

 

 ハリーが拳を振り上げマルフォイに殴りかかる。

 

「おっとぉ」

 

 マルフォイは当たる瞬間、後ろへ飛びのき、箒に乗って空に回避する。

 

「取りに来いよ! ポッター!」

 

 空中のマルフォイは挑発するように、両手でガラス玉を遊ばせている。

 

「くそぉ!」

 

 ハリーは躊躇い無く、箒に跨るが、隣に居たハーマイオニーがそれを制する。

 

「ダメよ! 先生が言っていたわ! そんなことしたらまた減点されちゃうわ!」

 

「………」

 

 しかし、ハリーはハーマイオニーを無視し、箒に跨ると、ふら付きながらも上昇する。

 

「返せよ! さもないとお前を叩き落とすぞ!」

 

「やってみろよ!」

 

 ハリーがマルフォイを睨みながら正面から突撃していった。しかしマルフォイは難なく横へ避ける。

 

 

「そんなに返してほしいなら、取ってこい!」

 

 

 そう叫ぶとガラス玉を空中高く放り投げる。

 

 ハリーは急旋回してガラス球のキャッチを試みる。

 

 しかし、ガラス玉は放物線を描き、建物へと激突しそうだ。

 

「届けぇ!!」

 

 壁に激突する寸前に、ガラス玉はハリーの伸ばした手に何とか収まった。

 

「取ったぞ!」

 

 無事ガラス玉を確保したハリーは、軌道を修正し、校庭へと軟着陸した。

 

 それを見た、グリフィンドール生は歓声を上げ、マルフォイを始めとしたスリザリン生は不満そうな声を上げている。

 

「ポッター!!」

 

 突如、マクゴナガルの怒声が響き渡り、周囲の喧騒が一瞬にして収まる。

 

「まさか……こんなことはホグワーツで一度も……。」

 

 マクゴナガル先生は言葉も出ないといった感じでポッターに歩み寄る。

 

「でも、先生」

 

「黙りなさい、ミス・グレンジャー。ポッター。付いてきなさい」

 

 ハーマイオニーの反論を制したマクゴナガルは踵を返し、塔へと戻って行った。

 

 その後を、重い足取りでハリーが付いて行く。

 

 

 この状況に、グリフィンドール生の間に、重い空気が流れた。

 

「ハッ! これは滑稽だ! ポッターの奴きっと退学だな!」

 

 マルフォイの一言にスリザリン全体が盛り上がる。

 

 

 




ネビルは気を失っただけで、命に別状は有りません。
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