スリザリンの生徒はハリーが退学になると考えていた様だ。
しかし、結果は予想外だった。
次の日になっても、ハリーは在学していた。
それどころかクィディッチのシーカーと呼ばれる、重要なポジションに選ばれたという話だ。
1年生は選手に選ばれる事は無いと言う話だったが、どうやらマクゴナガルが無理に通したのだろう。
そして、それに嫉妬したのか、マルフォイがハリーに決闘を申し込み。
介添人として、ロンが同行するという話にまで発展した。
「ねぇ、貴方達。本当に決闘なんかに行くの?」
「当たり前だろ。アイツ、『ウィーズリー家は品の無い家系だから、由緒正しい決闘のやり方すら知らないだろう』だって、ふざけるなよ。あんな奴に馬鹿にされてたまるかよ」
落ち着かない様子のハリーとロンは、談話室で歩き回っている。
「はぁ…バカね…どうせ、騙されて減点されるのがオチよ。少し考えたら分かる事だわ。」
そんな二人を見たハーマイオニーは、溜息を吐き、肩を竦めている。
「女の君にはわからないだろうけどね。男にはどうしても戦わなきゃならない時が有るんだよ!」
「そう。でもね、ロン。貴方達、魔法使いが決闘で使うような魔法使えるの?」
「そ…それは…」
「ん? どうなのよ?」
ハーマイオニーの追及に対し、二人は顔を見合わせる。
「どうする? まともな攻撃なんて…」
「あー…あれだ。いざとなったらぶん殴ってやる。困った時は、この手に限る」
「はぁ…その手しか知らないの間違いじゃないの?」
「うるさいな…それより、この事は絶対先生には言うなよ」
「言わないわよ。言ったところで、グリフィンドールが減点されちゃうだけだもん」
ハーマイオニーは呆れた様に溜息を吐いて2人を細い目で見ていた。
その夜。
「エイダ…デルフィ…2人とも…寝てるわね…」
出て行った彼女の動体反応は、決闘会場の2人と合流した。
数分経ったが、その場にある生体反応は3つだけだった。
「仕方ありませんね」
私は、布団から起き上がる。
「どうするつもりですか?」
「彼等が戻った時の為に、室内を温めておきます」
「そうですか。なら私は紅茶を準備しましょう」
談話室に出た私は、暖炉に火を付ける。
数分もすると、室温は上昇し、デルフィが準備をした紅茶の香りが充満する。
しばらくすると、3つの動体反応が急速にこちらに接近する。
恐らく彼等だろう。
動体反応が扉に接近する寸前で、扉を開く。
「おかえりなさいませ」
「「「うわあぁああぁああ!!!」」」
突如として開かれた扉に悲鳴を上げながら、彼等が談話室になだれ込む。
彼等と衝突する寸前、私は一歩後ずさり、衝突を回避する。
「はぁ…はぁ…あぁぁ…」
「なんだったんだ…あれ…」
「あんな怪物を学校に閉じ込めておくなんて…おかしいよっ!」
「あんなバケモノ見たことないよ!」
「彼方達、他に見るところはなかったの! あれは番犬よ!」
「番犬? なんで、校長が行くなって言っていた部屋にあんなものがいるんだよ!」
「足元に隠し扉があったの見てなかったの!」
「そんな所まで気が行くかよ…」
混乱状態の3人は、しきりに何かを口にしている。
「落ち着いてください」
デルフィが3人分の紅茶を入れると、テーブルに並べる。
紅茶の香りにより、彼も若干落ち着くを取り戻す。
「あ…あぁ…ありがとう」
紅茶を受け取った3人はゆっくりと飲み干し、一息入れている。
「それで、番犬がどうかしましたか?」
デルフィの問いかけに対し、3人は口を閉ざした。
反応から察するに、若干の罪の意識故、口を開きたくないのだろう。
私は、データベースのライブラリの中から、進入禁止区域の3つ首の犬の写真を選択すると、ホログラム化し、彼等に見せる。
「番犬と言うのはこちらですか?」
「うわぁ!」
「そうだよ! こいつだよ!」
「いつの間に…と言うかこれって写真?」
驚き方は三者三様だったが、どうやら彼等が目にしたと言うのはこの写真の犬で間違い無いだろう。
「そうですか。その反応からすると、襲われたのですか?」
「まぁそんな所。危うく食べられるところだったよ」
「でも…なんであんな危険な奴が扉を護っているんだろう…」
ハリー達は混乱した状況で必死に考察を組んでいる。
「あぁあ! もう分らない!」
しびれを切らしたロンは、頭を掻き毟り声を荒げている。
「もう考えるのはやめよう。なんか疲れた」
「そうだな…ハリー。もう寝ようぜ」
「うん」
ハリーとロンの2人はトボトボと歩きながら、男子寮へと戻る。
「では、私達も戻りましょう」
私達の後ろを覚束無い足取りでハーマイオニーに付いて来る。
室内に戻ると、ハーマイオニーはその場で座り込み、その体が震えだす。
「どうかされましたか?」
「さっきの事を思い出して…それで…」
震えている彼女のメンタルコンデションレベルは著しく低下している。このままでは寝付く事も出来ないだろう。
精神安定剤の投与が必要だ。
私は、医療キットから、カプセル状の精神安定剤を取り出すと、彼女に差し出す。
「これは?」
「精神安定剤です。現状のメンタルコンデションレベルでは投与が必要だと判断しました」
「………ありがとう。いただくわ…」
精神安定剤を飲み込んだハーマイオニーは数分経った後、メンタルコンデションレベルが平均レベルになり、ベットに横たわる。
「スゥ…スゥ…」
しばらくすると、ハーマイオニーは規則的な寝息を立て始める。
「無事に眠ったようですね」
「その様ですね」
デルフィは表情を変えずにハーマイオニーの頬を手の甲で数回撫でると、自身のベッドへと潜り込む。
「それでは、我々も眠るとしましょう」
「そうですね」
私もベッドに横になり、
先の決闘騒ぎから、しばらくの間は平和な日々が続き、10月の末を迎える。
その頃になると、学園中がハロウィーン一色に染まり、食事にまでカボチャ料理が振舞われるほどだ。
私は別段気にしないが、デルフィは過剰に増えすぎたカボチャ料理に嫌気が差している様だ。
そんなある日、多くの生徒が興味を示していた浮遊魔法の授業が行われることになった。
授業が始まると、教室には背の低い1名の教師が現れた。
名はフリット・ウィックで、ドワーフと呼ばれる種族なようだ。
「さて、早速だが2人一組を作ってもらいましょう」
彼の指示通り2人1組を作る。
どうやら、私はデルフィと組むようだ。
教室の端に視線を向けると、不機嫌そうなロンと、バツの悪そうな表情のハーマイオニーがコンビを組んでいた。
ここ最近、彼等の仲は悪化している。
ハーマイオニーの助言を快く思わないロンは悪態を付き、それに釣られる様にハリーも存外な態度でいる様だ。
ちなみに、ロンは私達の事もあまりよくは思って居ないようだ。
噂では、デルフィの事を、スリザリンのスパイだと思い込んでいる様だ。
どうも、人間と言うのは面倒な思い違いを引き起こす。
「皆さん2人1組は作れましたね。それでは今日は羽根を浮かせてみましょう!」
そう言うと、私達の前に白い羽が1枚置かれる。どうやらこれを浮遊させるようだ。
「さぁ、皆さん始めますよ、ビュ~ン、ヒョイで『ウィンガーディアム・レヴィオーサ』優しく呪文を言うのですよ」
簡単な杖の動きを擬音で説明され若干理解に苦しむが、多くの生徒が我先にと、魔法を発動させている。
周囲を見回すと、教室の端の方でハーマイオニーとロンが言い争いをしている。
「違うわ!! 呪文が間違っている、『ウィンガーディアム・レヴィオーサ』貴方が言っているのは『ウィンガーディアム・レビオサー』ちゃんと発音しなきゃダメよ」
「御高説どうも! そこまで言うなら君がやってみろよ!」
二人は口論をしているようでハーマイオニーが杖を振ると羽はゆっくりと宙に浮いて行った。
「ね、こうやるのよ」
ドヤ顔のハーマイオニーがロンに向かってそんなことを言っている。
「ハッ、そうかよ」
ロンは不貞腐れた様に椅子に深く座り込んでいる。
先程の羽根の浮遊を観察し、原理を理解できた。
どうやら、魔法を使い羽根の真下に、反重力作用のある力場を発生させ、その出力により浮遊高度を変更させている様だ。
「では、我々も始めましょう」
デルフィはそう言うと、ベクタートラップからウアスロッドを取り出す。
しかし、狭いよう室内では、身の丈程のサイズでは思ったようには振るう事は出来ないようだ。
「そのサイズは適していませんね」
「仕方ありません」
デルフィは渋々杖を仕舞うと、手を軽く振る。
すると、羽の下に力場が発生し、宙に浮き始める。
「お見事です」
「この程度朝飯前です」
実際、私達は杖を使う必要は無く、形だけの物だ。
その後、私も難なく羽根を宙に浮かべる。
その頃には、殆どの生徒が魔法を成功させており、授業は無事終了した。
授業が終わるとロンが嫌そうな顔をしながらハリーの元にやってきて先程のハーマイオニーの事で愚痴を言っていた。
「見てたかい? アイツの自慢げな表情…あんなんだから友達ができないんだよ! 誰だってアイツには我慢できないっていうんだ。全く、悪夢のようなヤツさ」
ロンがそんなことを言うと彼等を追い越す様にしてハーマイオニーが走ってどこかへ行ってしまった。
「ロン…多分だけど、聞かれてたね。流石に言い過ぎたかな…謝ったほうがいいんじゃないかな…」
「ハッ! あんな奴の事なんか知るかよ! ほっとこうぜ」
そう言うとロンは急いで教室を後にしハリーもそれに続いた。
次回は、皆さん大好き、あのチュートリアルさんが出てきます。
さて、どうしてくれよう。