数日後、学期末テストが始まった。
具体的な物では、変身術では、ネズミを嗅ぎ煙草入れに変化させると言う物だった。
私達は、課題が出されてから、早急に嗅ぎ煙草入れをベクタートラップ内で作成し、課題である、ネズミにステルスシステムを施したシートで隠すと同時に、完成した嗅ぎ煙草入れをテーブルの上に置く。
判定が終了後、嗅ぎ煙草入れをベクタートラップ内に収納し、ネズミに掛けていたシートを回収し、嗅ぎ煙草入れからネズミに戻したような演出をする。
その他、様々なテストの内容だったが、私達は全ての教科で、満点で終了した。
テスト終了後、自室で待機していると、ハーマイオニーが勢い良く入室してきた。
「ちょっと来て!」
私達は、ハーマイオニーに腕を取られて、無理やり、談話室へと引きずり出される。
談話室には、神妙な面持ちのハリーとロンがソファーに腰かけている。
「何事でしょう?」
「さっき皆で話をしていて気が付いたんだ、ハグリッドがドラゴンを欲しがっているところに卵を持った奴が現れるなんて都合がよすぎるって」
「それで私達、ハグリッドに聞いてみたの、卵を持ってきたのはどんな人かって」
「ハグリッドの奴、顔は覚えてないって言うんだ、それに、そいつにフラッフィーを手懐ける方法を教えちゃったんだ!」
「校長先生に伝えようとしたけど、魔法省から呼び出されて居ないらしいの!」
「こうなったら、僕達で石を守らなきゃいけないんだ…」
一息吐いてから言葉を続けた。
「僕…今夜抜け出して石を守りに行くよ」
「ハリー! 正気かよ!」
「そうよ、もしバレたら退学になっちゃうわ!」
「でもこのままじゃスネイプが石を手に入れちゃうよ! そうなったらヴォルデモートが復活するんだ! そうなったら減点や退学なんて問題じゃない! 僕は行くよ! 君達が何を言っても行く!」
ハリーは熱の籠った演説を終え、肩で息をしている。
「意見具申よろしいですか?」
デルフィが、右手を軽く上げてる。
「なんだよ…」
ハリーは不満そうな声を上げる。
「具体的な、作戦案は?」
「とりあえず、透明マントを使って談話室を抜けて…それで…えーっと…フラッフィーが寝てるはずだから、その隙に扉を開けて…後は…」
「考えていないのですか?」
「あー…うん…」
「あまりにも無計画です。現状、貴方が、目標の確保、及び、保護のミッション達成確率は3.85%です。これでも、かなり甘く見積もっての数字です」
「………」
ハリーは俯き、他の3人は気不味そうな表情をしている。
「ですが、お二方の協力を得られれば、達成確率は上昇するでしょう」
「え…」
ハリーが振り向くと、2人は仕方なさそうに頷いた。
「ありがとう…2人とも…」
「ですが、それでも達成確率は10%未満です」
デルフィの言葉を聞いた3人の表情は再び暗い物へと変わった。
それと同時に、3人と目線が合う。
「なにか?」
「いやぁ…僕達3人なら10%位かもしれないけど、もし君達が一緒に来てくれたら、もっと上がるんじゃないかなぁって」
「その通りです」
「それなら…」
3人は、こちらを見たまま、目線をずらそうとはしない。
このままでは、埒が明かないだろう。
「仕方ありません。私達も協力しましょう」
「本当かい!」
「不本意ですが」
「では、ブリーフィングを開始しましょう」
デルフィはホログラム化した、城内のマップデータを移した出す。
マップデータ上には、複数の点が表示されている。
「うわぁ! なんだよこれ…」
「ホグワーツのマップデータです。赤い光点で記されているのが、我々です。白い光点が番犬『フラッフィー』青の光点が目標と推測されるエネルギー体の位置です」
「な…なんか…凄いね…」
3人は状況が呑み込めないといった表情で固まっている。
「話を続けてもよろしいですか?」
「あ…うん」
「入り口に到達したら、我々で障害を排除します。その後――」
「ちょっと待って!」
驚いた表情でハーマイオニーが声を上げる。
「排除って…まさかフラッフィーを殺す気なの?」
「抵抗が激しい場合など、やむを得ない時は殺処分します」
「なんでそんな事するんだよ!」
「障害を排除しない限り、彼方達3人に危害が加わる可能性があります」
「そんな…」
「そんなのダメだよ!」
「そうさ。そんな事したらハグリッドが悲しむ」
「ねぇ、何とか殺さないで行く方法って無いかしら?」
「多少の危険は伴いますが、我々が目標を撹乱し時間を稼ぎます。その間に扉を抜けるという手があります」
「わかった、それで行こう」
「了解、では扉を抜けて降下後――」
「え…ちょっと待ってよ! 降下って…落ちろって事?」
ロンが困惑したように声を荒げる。
「隠し扉向こうは垂直な通路となっています。降下後も何があるかは不明なので、その場で待機してください」
「わかった」
「なんだか…急に怖くなって来たよ…」
「今更そんな事言うなよ…」
「君達…何してるの?」
振り返るとそこには、部屋の扉から半身を出した、パジャマ姿でトレバーを抱えたネビルがいた。
「なんでもないよ、それよりまたトレバーが逃げ出したのか?」
「誤魔化さないでよ、また抜け出すんだろ」
ネビルはトレバーを強く抱きしめながら、こちらを睨みつける。
「見つかったらグリフィンドールの減点になっちゃう…行かせないぞ! 僕…僕は君達を行かせないよ! た…戦うぞ!」
ネビルはトレバーを手放すと拳を握りしめてファイティングポーズをとった。
「ゲイザー投擲」
私は、最低出力に設定した、ゲイザーをネビルに投げつける。
本来ならば、オービタルフレームの電子回路をショートさせ、拘束するサブウェポンだが、出力は押さえてあるので、人体にも影響は無い。
「アバアアガガガバババッババ!」
「ネビル!」
奇声を発した後、ネビルはその場に倒れ込んだ。
「何をしたんだ?」
「少しの間気を失ってもらいます。出力は最低レベルなので、後遺症などの心配は有りません」
「君達って思ったけど…容赦ないよな…」
「ミッションを遂行する上では仕方ありません」
「まぁいい…行こうか」
3人は、急いで、マントに身を包んだ。
すると、マントに覆われた3人の姿が透過する。
しかし、生体反応や、熱反応は検知できる。
完全に隠れている訳ではないようだ。
「これなら、足音さえ気を付ければバレない筈だ…でもこれじゃ3人が限界だ…」
「ご安心を」
私達は、ステルスシステムを起動させる。
「え?」
「消えたよ…」
「もう何でもありね…」
私達は、姿を消し、目的地まで移動する。
「ここね」
幸運な事に誰にもバレる事無く、無事に目標の扉まで到達した。
無論、周囲をスキャンし、動体反応等を探った上での行動だったので、何ら問題は無い。
「この扉の向こうにフラッフィーが居るはずだ…スネイプが眠らせて入ったと考えると、まだ安全なはずだけど…」
「よし!行こう」
「えぇ」
ステルスシステムを解除し、扉を開けると、ハープの音色が鳴り響き。目の前で『フラッフィー』が寝息を立てている。
「眠っているようだね…」
「そうだね、あれ、足元…」
ハリー達は小声で隠し扉を指差した。
「ここから入れそうね、行きましょう」
「あぁ」
隠し扉に近付いたとたん、ハープの演奏が止まってしまった。その瞬間狂ったように唸り声をあげこちらを睨む。
「どうしよう…ハリー! どうするんだよ!」
「何とか隙を見て中に入るんだ!」
「そんなこと言ったって!」
3人がパニックを起こし大声で言い争っていると、『フラッフィー』が飛びかかって来る。
「「「うあぁあああああ!」」」
「ガントレット投擲」
私は、瞬時にベクタートラップからガントレットを取り出し、装備する。
『ガントレット』
エネルギーフィールドを纏った実弾兵器。
今回は、周囲のエネルギーフィールドの出力と投擲時の出力を押さえた物を『フラッフィー』の胴体部目掛けて投擲する。
「ギャン!!」
ガントレットが直撃した『フラッフィー』は部屋の壁に激突し、瓦礫に埋もれる。
「今のうちに」
「あ…あぁ!」
3人は扉を開ける。
「う…うあぁ…真っ暗だ…」
「急げよ! ロン!」
「だって…高いし…暗いし…」
「もう! さっさとして!」
「ちょ…押さなっ! あぁぁあぁあぁぁあぁぁぁぁぁああああ!!」
激怒したハーマイオニーがロンを扉の中へと突き落とす。
「容赦ないね…」
「時間が無いのよ! ハリーも急いで!」
「わかった! わかったから! ちょっと――」
「えいっ」
「うわぁ!」
ハリーも暗闇へと吸い込まれて行く。
「じゃあ、私も行くわ」
「グアガアァァア!!」
突如、瓦礫を掻き分け、『フラッフィー』が咆哮を上げる。
「早急に」
「えぇ! 二人とも、気を付けてね…」
「貴女も」
無事に彼女が扉の向こうへと消えるのを確認した後、私達は眼前で咆哮を上げる、『フラッフィー』を見据える。
先程の衝撃で、興奮状態にあるようで、暴走の恐れがある。もし暴走すれば、城内に甚大な被害が出るだろう。
「眼前の目標沈黙まで、戦闘行動を開始します」
「了解15秒で片付けましょう」
「10秒あれば十分です」
私達は同時に飛び上がり、『フラッフィー』との戦闘を開始する。
「ガアアガアアアアアアアア!!」
『フラッフィー』が右前脚の鋭い爪を剥き、こちらに迫り来る。
「右へ回避」
「左へ回避」
私は右へとスラスターを吹かして攻撃を回避する。
「3秒経過」
デルフィは反対側の左へと回避する。
「ガントレット投擲」
右前脚の関節部に先程よりも出力を上げたガントレットを叩き込む。
フルパワーの場合、間違いなく死に至る程のダメージ量になる。
「がぁああああああああ!!」
ガントレットが叩き込まれた右前脚は、関節部が逆方向へと曲がっている。
どうやら、衝撃により、複雑骨折を起したようだ。
デルフィの方を見ると、丁度左前脚の破壊を完了させた様で、バランスを崩した『フラッフィー』はその場に倒れ込む。
「戦闘終了、所要時間は7.58秒です」
「予想より早かったですね」
私達は、無事『フラッフィー』を無力化する事に成功した。
殺処分ならば、会敵直後に、射殺するだけだったので、大幅な時間と労力のロスだ。
「やはり、不殺行動は難しい物です」
「その通りですね」
「ぐがあ…ああ…」
両前足を破壊された『フラッフィー』は苦しそうな声を上げながも。戦闘継続の意思を示している。
「このまま放置するのは危険でしょう」
「そうですね。鎮静剤を投与します」
ベクタートラップ内で生成した鎮静剤をペン型の注射器に装填する。
「鎮静剤投与します」
『フラッフィー』の真ん中の首元に跨ると、そのまま首筋に注射を打つ。
「あ…がぁ…」
首筋に数本の注射を打つと、『フラッフィー』の意識が混濁し、その場で大人しくなる。
その後2分程で、規則的な寝息を立て始める。
「スキャン完了。外的損傷は軽微」
『フラッフィー』の生体スキャンを終えたデルフィの報告を聞きつつ、私は足元の扉を開く。
「会敵から3分経過、急ぎましょう」
「えぇ」
私達は、扉の中へと飛び込むと同時に、スラスターを全開にし、一気に下層へと移動する。
前作では犬の餌になったフラッフィーですが、今回は無事でした。