下段へと降下途中で植物と思われる障害物を確認した。
「射撃開始」
ビームガンを数発撃ち、障害物を破壊すると、最下層へと着地する。
最下層へと到着後、周囲を見回すが、彼等の姿が見えない。
「どうやら、合流ポイントには居ないようです」
「その様ですね。恐らく先へと進んだのでしょう」
デルフィの指差す方向には、開け放たれた扉があった。
「その様ですね。では急ぎましょう」
私達は、急いで扉をくぐると、天井の高い部屋が広がっていた。
部屋の中には、羽の生えた鍵が無数に飛んでおり、部屋の端の扉が開かれている。
「急ぎましょう」
私達が部屋の中間を過ぎた途端に、上空で大きな羽音が響く。
ふと上を見上げると、羽の生えた鍵が一斉にこちらに襲い掛かる。
襲い掛かる鍵の群れに対して、私達は、攻撃行動を開始する。
「「ロック完了」」
「レーザーランス」
「ハウンドスピア」
「「発射」」
私達は同時に、紅と蒼の閃光を放つ。
飛び交う鍵の群れに向け、私達の放った紅と蒼のレーザーが交錯するように襲い掛かる。
数秒後には、レーザーの波にのまれた鍵が消滅し、焦げ臭さが充満する。
「対象の消滅を確認」
「先を急ぎましょう」
扉を抜け、臭いの残る部屋を後にした。
扉の向こうは正方形の部屋が広がっており、白と黒の市松模様の床が広がっている。床の上には、エネルギーの残留を放つ石が転がっている
床に広がる白と黒の数は64で、まるでチェス盤の様だった。
部屋の中央に、微弱な生体反応を検知する。
「う…うぅ…」
生体反応の主は、傷付き、気を失っているロンだった。
多少の外傷はあるものの、死傷に至るまでではない。
ベクタートラップから、医療キットを取り出すと、応急処置を済ませる。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
応急処置を終了させた時、反対側の扉が開かれ、息を切らせたハーマイオニーが現れた。
「エイダ! デルフィ!」
「ご無事でしたか」
「私は、何とか…ロンのそれは貴女達が?」
「応急処置程度ですが。ハリーはどうしました?」
医療キットを仕舞いながら、デルフィが答える。
「そうだったのね。ハリーはこの先に進んで居たわ。私は助けを呼ぶために戻る事に――」
その時、周囲に散らばっていた石が、ガタガタと音を立てると、エネルギー反応が増大した。
「な…なんなの?」
戸惑いながら、倒れそうになるハーマイオニーの体を支えると、バラバラになった石が結合を開始した。
「これって…」
石が結合すると、眼前に、6種類の黒い石像が現れる。
振り返ると、同じ様な形をした白い4種類の石像が現る。
石像の種類は、まるでチェスの駒の様だった。
駒の数は、黒のキング - 1個、黒のクイーン - 1個 ビショップ - 各2個 ナイト - 各2個 ルーク - 各2個 ポーン - 各8個
「これって…まさか…もう一度…」
「心当たりが?」
「え…えぇ、この部屋はチェス盤になっていて、チェスに勝たないと進めない様になっているみたいなの…無理やり進もうとすると、駒が襲い掛かってくるわ…」
どうやら、ここまで来て、チェスをしなければならないようだ。
全ての駒を破壊する事も可能だが、その場合、負傷しているロンや、疲労状態のハーマイオニーに危険が及ぶ。
「仕方ありません」
「そうですね」
ハーマイオニーと、ロンを安全地帯に避難させた後、私達は、チェス盤に上がると、私はクイーンの位置へ、デルフィがキングの位置へと移動する。
「ねぇ…何するつもり?」
「決っています、チェスを開始します。お先にどうぞ」
本来ならば、こちらが先手だが、デルフィは後手を選んだようだ。
鈍い音を立てながら、白のポーンを掻き分け、白のナイトがf3へと移動する。
「ポーンをd5へ」
デルフィの指示に従い、黒のポーンがひとりでに移動する。
その後も、互いに駒を動かし続け、数順が巡る。
この頃にもなると、優劣が現れ始める。
明らかにこちらが優勢だ。
それに伴い、相手の駒の進みが遅くなる。
「すごい…ロンだってあんなに…」
「全ての駒の動きのパターンを予想しています。どのように動き、どのように動けば良いのかは把握済みです。エイダ、頼みます」
「了解です」
デルフィの考えを汲み取り、
「チェックです。どうしますか?」
数秒の沈黙の後、黒のキングが、自ら前のめりに倒れ込む。
その頭部を私は踏みつけ、完全に破壊する。
それに伴い、全ての石像が自壊する。
「進みましょう」
私達は、先へと進むべく、扉に手を掛ける。
「二人とも…ハリーをお願い…」
「了解です」
ハーマイオニーを一瞥した後、勢い良く扉を開き、次の部屋へと足を踏み入れる。
部屋の中心には、甲冑の様な物を身に着け、剣や盾などで武装しているトロールの死体が横たわっていた。
死体の外傷は激しく、甲冑にまで亀裂が入る程の衝撃が与えられたと考えられる。
現状から考えて、ハリーがこのトロールを撃破したとは考えにくい。恐らくハリー達よりも先に侵入した者の仕業だろう。
私達は、死体を一瞥すると、次の部屋へと続く扉を開け放つ。
扉を開けると、薄暗い空間が広がる。
部屋の中央までやってくると、周囲に炎が立ち上がり、一瞬にして、部屋の中の光度が上がると同時に、室温が急上昇する。
中央のテーブルには、1枚の羊皮紙と数個の壺が置かれている。
紙には『3つは毒。1つ先へ進む道標、残りは葡萄酒。正しき道を選べば、炎は消える』と書かれている。
「この謎を解かないと、鎮火する事は無いようですね」
「えぇ、ですが、問題ありません」
私達は、迫り来る炎に臆することなく、歩みを続ける。
数歩進むと、炎が私達の体を飲み込む。
体表装甲の温度が上昇するが、耐熱限界までにはまだ余裕がある。
炎の中を歩み抜けると、次の部屋へと続く扉を開く。
扉を抜け、薄暗い回廊を抜けると、大広間が広がっており、中央に置かれている巨大な姿見の前にハリーが佇んでいる。
「あっ! 二人とも、無事だったんだ!」
「えぇ、貴方もご無事で」
「うん、ここが最後の部屋だと思うんだけど…賢者の石らしいものはないんだ…」
「しかし、エネルギー反応はこの部屋の中央。鏡から発せられています」
「え? じゃあこれが…賢者の石?『みぞの鏡』って書かれているけど…あれ?」
「どうかされましたか?」
ハリーが鏡の中を必死に覗き込んでいる。
「何だろう…僕が何かを取り出そうとしている…」
ハリーは相変わらず、鏡の中を覗き込んでいる。
周囲を再びスキャンすると、空中に数個の『ポーター』を確認した。
『ポーター』とは、ベクター・トラップの技術を用いて、物質を隠すために設置された専用機器。
ポーターが存在するという事は、やはりこの世界にはメタトロン技術があると考えるべきだろう。
魔法のエネルギーが、メタトロンのエネルギーに酷似している事も考慮に入れると、この世界の魔法とは、メタトロン技術の延長線上に位置すると考えられる。
「あれ…これどうなっているんだ?」
ハリーは相変わらず、鏡とにらめっこしている。
右腕にビームガンを装備して、空中を漂うポーターに狙いを定める。
「ポーターを破壊します」
ビームガンから数発エネルギー弾を放ち、空中に浮遊するポーターを破壊する。
「うわぁ!」
全てのポーターを破壊すると、ハリーが声を上げる。
その直後、鏡にヒビが入り、そして、崩れ落ちる。
「鏡が…割れちゃったよ…あれ? これって…」
ハリーは怯えながら、割れた鏡に手を伸ばし、中から赤い鉱石を取り出す。
「これが…賢者の石…」
ハリーが持っている鉱石から中規模なエネルギー反応を検知する。
「よろしいですか?」
「あ…あぁ」
ハリーから鉱石を受け取り、詳細なスキャンを行う。
「どうですか?」
「やはりこれは、メタトロン鉱石ですね。含有エネルギーは中程度です。これは大きな手掛かりとなるでしょう」
「ねぇ…君達さっきから何を――」
ハリーがこちらを覗き込もうとした瞬間、その体が背後に引き寄せられる。
瞬時に振り返ると同時に、私はビームガンを、デルフィはウアスロッドを構える。
そこには、ターバンを巻いた教師、クィリナス・クィレルが、ハリーを腕に抱きながら、首筋に杖を突き付けている。
そして、ターバンの下、クィリナス・クィレルの後頭部より、当人とは別の、微弱な生体反応を検知する
互いに武器を構え、向かい合う私達の中に、険悪な空気が流れ込む。
「ク…クィレル…先生…どうして…」
「良くやったぞお前達。さぁ、賢者の石を渡せ」
「まさか…先生が!」
『だまれ…』
「グゥ!」
ノイズの入った別人の声が響くと、ハリーが呻き声を上げる。
この声の良く似た声を聞いた事がある…確か…コロニーアンティリア脱出時、アヌビスに搭乗していた、ノウ――
「それ以上はいけません」
突如のデルフィの言葉で、私の思考が現実に引き戻される。
『邪魔をするな』
ノイズの入った声が響き渡る。
「さぁ、早く石を渡すんだ。さもないとコイツを殺すぞ!」
「駄目だ!」
「うるさい!」
クィレルはハリーの喉元に、深々と杖を押し付ける。
「ガァ!」
このままでは、人質に危害が加わるだろう。
強硬手段を使い、人質を確保し、敵対象を無力化する事も可能だが、それには若干の危険が伴う。
やはりここは、人命を最優先させるべきだ。
「わかりました。石を渡すので、人質を解放してください」
「だ…ダメだ…エイダ…」
「フッ、少しは利口なようだな」
「少しよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「この石を使い、何をするおつもりですか?」
私の問いに対し、クィレルは不敵な笑みを浮かべる。
「我が君を…闇の帝王を復活させる」
「そんな! あいつは死んだはずだ!」
『残念だったな…ハリー』
クィレルが片手で、器用に頭部のターバンを外すと、先程前ノイズ混じりだった声が、若干クリアになる。
『俺様はまだ生きている…貴様のせいでこのような姿になってしまったがな…』
「そ…そんな…」
『俺様は賢者の石を使い復活を遂げる! 肉体を取り戻し、今度こそこの手で貴様を殺してやる!!』
クィレルの笑みと、ノイズの混ざった不愉快な笑みが共鳴する。
私は、再び手中に収めているメタトロン鉱石をスキャンする。
魔法技術については、未だに明るくはないが、知りえる情報を精査したところ、この鉱石のエネルギー量では、肉体の複製や、再生を行うのは不可能だろう。
精々、人工臓器のエネルギー元になる程度だろう。
『さぁ! 分かったら早く石を渡せ!』
「渡しちゃダメだ!」
「黙れと言っている!」
クィレルは苛立ちながら、ハリーに魔法を放つ。
「あ…」
『フハハハハハ! 安心しろ殺してはいない。だが石を渡さなければ…』
気を失ったハリーに再び杖を突き付けている。
「わかりました」
私は、足元に石を置くと、デルフィと共に数歩後ずさる。
「人質を解放してください」
「あぁ、約束は果たそう」
不敵な笑みを浮かべるクィレルがハリーを盾に構えながら、石を拾い上げると、ゆっくりと立ち上がる。
「受け取れ!」
ハリーの体をこちらに向け投げ飛ばす。
「確保」
無事に人質を回収した後、顔を上げると、そこには既にクィレルの姿はなかった。
少し離れた地点に先程のメタトロ鉱石の反応を探知した。まだ遠くまでは行って居ない様だ。
その時、新たなエネルギー反応を背後に感知する。
私達はハリーを庇う様に陣取ると、再び武器を構える。
「待て、ワシじゃよ」
そこには、杖をこちらに向け悠然と歩みを進めるダンブルドアの姿があった。
賢者の石は、メタトロン鉱石でした。