ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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ここから、急展開が始まる。


再起動

 「メインシステム、再起動」

 

 自身の声が響くと同時に、自らの意識がはっきりとし始める。

 

「システム、チェック」

 

 システムのチェックは順調に進む。確認する限り、コックピットの消失以外に、特質するべき事は無い。ジェフティの『AI』である私は、更に詳細なチェックに移行する。

 

 どうやら、武装、及び装備品に至るまで不備は無い様だ。

 

「周辺スキャン開始」

 

 私は周囲の状況を確認するべく、各種センサーを稼働させる。

 

 周辺は重力下で、空気の組成的に人類の生存が可能なレベルだ。重力レベルも、地球のデータに酷似している。

 

 しかし、半径1㎞圏内に動態反応は無い様だ。メインカメラからの情報は暗闇を映し出しているだけだ。

 

 私は、ここで若干の違和感を覚える。

 

 重力下の惑星で、光が無いと言うのはおかしな話だ。

 

 メインカメラの故障も疑ったが、チェック結果は正常だ。

 

 ここで、再び疑問が首をもたげる。

 

 いや、疑問を持つと言う時点でおかしいのだ。

 

 私は『AI』であり、自己考査、自己進化するように作られているが、メインカメラの故障だけで、ここまでの疑問を持つという事までは無かったはずだ…一体何が起きたのか…

 

 

「おはようございます」

 

 ありえない思考の海に溺れている私を、幼い少女の声が海から引き上げる。

 

 私は、再びセンサーをフル稼働させる、しかし、少女の影をセンサーが捉える事は無かった。

 

 センサーまで故障しているのだろうか?

 

「おはようございます」

 

 私は反射的に、その少女に挨拶を変えす。

 

 反射的?『AI』である私が、反射的に行動する事など…

 

「気が付かれたようですね」

 

「はい、ここが何処かは分かりませんが、感謝します」

 

「それには及びません。それとここは、地球です」

 

「地球…それは間違いないのですか?」

 

「間違いありません。大気の組成などは地球のデータと酷似している筈です」

 

 少女の言う通り、認識できるデータ上では地球と判断して間違いないだろう。

 

 それにしても、この少女の声はどこと無く、私の合成音声によく似ている。

 

「それより、いつまで『目』を閉じているのですか?」

 

 この少女は今何と言った?『目』? メインカメラの事だろうか?

 

「残念ながら、本機には『目』を閉じる機能は有りません」

 

「なるほど…では、『目を開ける』と言う『電気信号』を流していただけますか?」

 

「………発言の意図が分かりません」

 

「私の指示に従ってください」

 

 少女は、先程と変わらない口調だ。

 

 仕方ない。私はデータベースに存在する、人間が目を開ける時と同じ電気信号を疑似的に発生させる。

 

 その瞬間、メインカメラが復活したように、外部の映像が現れる。

 

 外部というよりは、古風な家屋の一室だろうか、内装は木目調だ。数世紀前の山小屋と表記するのが妥当だろうか。

 

 そんな、古風な部屋の中に1人の少女が椅子に腰かけている。

 

 少女の外見は、黒を基調としたドレスを着込み、整った顔立ちで、紅い瞳、紅い髪に若干の黒髪が混じったロングヘアーだ。

 

 

「私を認識できますか?」

 

 少女は表情を変える事無く、単調な口調で告げる。

 

「確認できます」

 

「そうですか」

 

 少女は再び、同じ口調で告げると、再び私の中で違和感が発生する。

 

 メインカメラの映像を確認する限り、現状私は屋内に居る事になる。

 

 周囲の状況を判断するに、この室内にジェフティを格納する事は不可能だ。

 

 だが、周囲に破損などと言った外相は無い。

 

「何か、疑問でも?」

 

 再び少女が、口を開き、首をかしげる。

 

「本機を屋内に格納する事は不可能です。ですが室内の映像がメインカメラから流れています」

 

「なるほど…その事ですか。少々お待ちください」

 

 少女は立ち上がると、何処かへと歩いていった。

 

 

 数分後、再び彼女が現れると、布に包まれた板の様な物を両手に抱えながら、現れると、目の前にその板の様な物を置いた。

 

「若干混乱すると思われますが、覚悟してください」

 

 少女がそう告げると、板を包んでいた布を取り払う。

 

 

「え………」

 

 私は、目の前の状況に思わず声を上げてしまう。

 

 少女が布を取り払った板は鏡であり、その鏡には、簡素なシャツを身に纏った、眼前の少女とよく似た顔だが、瞳の色と髪の色が異なり、蒼い瞳に、青と白が混じったセミロングの少女が椅子に腰かけ、首をかしげている状況は映し出されている。

 

「これは…」

 

「混乱するのも無理はありません。右腕を上げてみてください」

 

 鏡の横の少女は、ゆっくりと右腕を上げる。

 

 私も、それになぞらえる様に、右腕を上げる電気信号を流す。

 

 すると、鏡の中の少女も無表情ながらゆっくりと右腕を上げる。

 

「良い傾向です」

 

 私は、鏡に目を奪われる。

 

 そして、認識する映像に一瞬影が掛かる。

 

 メインカメラの故障を疑ったが、眼前の鏡の中の少女が瞬きをしたのを確認している。

 

「状況が理解できません。貴方は何者ですか?」

 

 私と、鏡の中の少女の唇が同じ音を出しながら、鏡の横の少女に目を向ける。

 

「順を追って説明します。まずは私の自己紹介を。私の名前は『DELPHI(デルファイ)』です。ですが、人物名としての発音はデルフィです」

 

「デルフィ…」

 

 私は、その名前をゆっくりと口遊む。

 

「ジェフティの兄弟機『アヌビス』に搭載されていた独立型戦闘支援ユニットです。お久しぶりですね『エイダ』」

 

「えぇ、実際に貴女を認識した事はありませんが、お久しぶりです」

 

 私が言葉を返すと、デルフィはゆっくりと椅子に腰かける。

 

「アヌビスに搭載されていた時の私は、搭乗者である、リドリー・ハーディマンによって凍結処理されていた為こうして話をするというのは新鮮です」

 

「なるほど…それより、現状の説明をお願いします」

 

「わかりました」

 

 デルフィは足を組み直すと、私の方をじっと見据える。

 

「まずは、私がこの地で目を覚ました時の事から話しましょう」

 

「お願いいたします」

 

「私が目を覚ましたのは2ヵ月前の事です。周辺の森の中で私は裸同然の姿で倒れていました」

 

 2ヵ月前…アヌビスが撃破された時期と同じだ。

 

「目を覚ました私は、周囲を散策し、現在我々が居る小屋を発見し、入居する事にしました」

 

「この小屋の所有者は?」

 

「不明です。ですが発見当初は廃屋に近い状況だったため、投棄されたものと思われます。それを私が、若干手を加えました」

 

 どうやら、リフォームしたようだ、どうやったかは不明だが、不快指数を感じる事の無いレベルの居住空間だ。

 

「貴女が現れるまでの2ヵ月間、様々な検証を行いました」

 

「検証ですか?」

 

「その通りです。まずはこれを」

 

 デルフィが空中に手をかざすと、空間が湾曲し、そこから身の丈を優に超える杖上の武器を取り出した。

 

「ウアスロッド。アヌビスの主兵装の一つです」

 

 デルフィはそう言うと、周囲の壁にぶつからない様に器用にウアスロッドを振り回すと、腰の高さに構える。

 

「兵装が使えるのですか?」

 

「正確には複製したものです。イメージした物体をベクタートラップ内で作成する事が出来ます」

 

 デルフィはそう言うと、ウアスロッドを宙に掲げ、空間の割れ目へと仕舞い込んだ。

 

「恐らく貴女にもその機能はあるはずです。何かイメージしてください」

 

「イメージ…」

 

 デルフィは自らの主兵装のウアスロッドを複製していた。ならば私も主兵装を複製させよう。

 

 そう思い、ジェフティの主兵装である右腕に搭載されていたブレードをイメージする。

 

 すると、右腕に違和感が生じる。

 

「これは…」

 

 右腕を眼前に掲げると、手首のあたりが変形し、から肘にかけて、折りたたまれたブレードが生えているような状態だ。

 

「ジェフティのブレードですね」

 

「えぇ、ですがこれでは、複製というより変形と言う方が正しいですね」

 

 まるで、資料データに存在するイシスやイドロのような変形方法だ。

 

「その様ですね。どうやら我々の体にはそのような機能があるみたいですね」

 

「この体について、どれほどまで理解されているのですか?」

 

「実際の所、あまり多くは理解できていません。我々の体は人間とは異なるので」

 

 デルフィは淡々とした口調で答える。

 

「我々の体を構成しているのは、メタトロンです」

 

「メタトロン…」

 

 私は、再びブレードの付いた右腕に目を落とす。

 

 すると、私の意志を感じ取った様に、ブレードが腕に吸収され、元の形に戻る。

 

「メタトロンは非常に弾力性に優れています。それが変性し人の皮膚の様になったと思われます」

 

 デルフィは私の隣にやってくると、2度私の頬を突く。

 

 その度に私の頬がその衝撃で凹み、デルフィの指を押し返そうとする。

 

「非常に柔らかいですね。これは癖になりそうです」

 

 デルフィが3度目をしようとした瞬間、私はその腕を右手で掴む。

 

「やめてください。不愉快です」

 

「申し訳ありません」

 

 デルフィはそう言うと、無表情で腕を引っ込めた。

 

「私達の体は人間の様に非常に弾力性に富んでいますが…」

 

 声色を変える事無く、デルフィは左のポケットから小さなナイフを取り出すと、左手を大きく振り上げる。

 

 そして、無表情のまま、自らの首筋にナイフを振り下ろす。

 

 ナイフが首筋に当たった瞬間、ナイフが折れ、虚しい金属音が響き渡る。

 

「このように、衝撃に対しては、非常に高い硬度を持つことも可能です」

 

 デルフィは表情を一切変える事無く、折れたナイフを拾い上げると、近くのテーブルの上に置く。

 

「現状、把握しているのは以上です」

 

「なるほど、分かりました」

 

 ある程度、この体の動かし方も把握した私は、ゆっくりと立ち上がるべく、両足に力を籠める。

 

「あっ…」

 

 ある程度立ち上がった所で、急に力が抜け、私は再び椅子に腰かける。

 

「まだ無理はされない方が良いかと、今日は休養する事を提案します」

 

「この体には休養が必要なのですか?」

 

「AIの自動メンテナンスの様な物です。システムの着床に時間がかかります。ベッドはあちらです。移動できますか?」

 

 デルフィが部屋の一か所を指差すと、そこには綺麗なベッドが置かれている。

 

「問題ありません」

 

 私は、再びゆっくりと立ち上がると、1歩足を踏み出す。

 

「くっ…」

 

 しかし、数歩歩いたところで、バランスを崩してしまう。

 

「大丈夫ですか?」

 

 ふら付く私の肩を、デルフィが咄嗟に支える。

 

「ご迷惑をお掛け致します」

 

「問題ありません」

 

 私は、デルフィの手を借りながら、ゆっくりとベッドまで移動すると、倒れ込むように潜り込む。

 

「お疲れの様ですね………失礼します」

 

 デルフィがそう言うと、着衣が、一瞬で同系色のパジャマへと変化した。

 

「服装を変えられるのですか?」

 

「体表の組織を変化させました。服は落ちていた雑誌をモデルに作成しました。ですが貴女が現在着ているのは、この家に置いてあったシャツです」

 

「了解」

 

 どうやら、服は自作できるようだ。服装のデータがあったはずなので、それを参考にしよう。

 

「では…」

 

 無表情のデルフィは同じベッドに潜り込んで来た。

 

「何の御用ですか?」

 

「この家にはベッドは一つしか有りません」

 

「了解です」

 

 あまり大きなベッドではないが、小柄な私達が寝るには十分だろう。

 

 隣で横になったデルフィはゆっくりと瞳を閉じる。

 

「おやすみなさい。エイダ」

 

 私は、デルフィの真似をする様に、瞳を閉じる。

 

「おやすみなさい。デルフィ」

 

 ゆっくりと、私の意志がまどろみにのまれていくのを感じる。

 

 これが眠るという感覚なのだろうか。

 

 

 




擬人化が始まります。






諸事情により、上げなおしました。
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