ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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これで、賢者の石が終わります。


寮対抗杯

 

  数日後、目を覚ましたハリーは不機嫌そのものだった。

 

「ハリー、いい加減機嫌を直せよ」

 

「フン…どうせ僕は殺されるんだ…」

 

 学年末パーティーの会場である大広間へと移動する最中、ハリーは悲壮感を漂わせている。

 

「はぁ…目が覚めてからずっとこれさ。まぁ、君達が賢者の石を渡したのが原因だけどね」

 

 ロンはワザとらしく溜息を吐くと、両手を上げている。まさにお手上げと言った感じだ。

 

「僕は絶対に渡すなって言ったんだ。それなのに君達は!」

 

「あの状況では石を渡すのが最良の判断です」

 

「でも!」

 

「石を差し出さなければ、貴方はあの場で殺されていたでしょう」

 

「うっ…そ…そうだけども…」

 

「現状では相手の出方を窺い、対策を講じるのが最善でしょう。未来の危険ならば、対応可能です」

 

「そうだけど…石がアイツの物になった以上…蘇って襲ってくるよ」

 

「現状ではその可能性は低いと思われます」

 

「え?」

 

 その場に居た3人の声が、まるで示し合わせた様に重なる。

 

「それってどういう事だよ!」

 

「先程の言葉の通りです。彼等が回収した石は書籍に記されている賢者の石では有りません」

 

「え? どういう意味さ?」

 

「あの石は、賢者の石とは別の鉱石でした。その鉱石には肉体の複製や死体を復活させる様な力は有していません」

 

「じゃあ…君達はそれを知っていて…」

 

「あくまでも、人命保護が最優先でした」

 

「そうだったんだ…良かった…ん? でもそういう事だと…」

 

「僕達がやった事って…」

 

「無駄だったって事?」

 

 3人が不安に満ちた表情を向ける。

 

「語弊はありますが、おおむねその通りでしょう」

 

「「そんなぁ…」」

 

 ハリーとロンは分かり易く項垂れ、ハーマイオニーは呆れたような笑みを浮かべる。

 

「まぁ、問題なくてよかったわ。そろそろ急ぎましょう。パーティーに遅れちゃうわ」

 

 走り出したハーマイオニーを追う様に、2人も後に続く。

 

 しかし、後にメタトロン鉱石があのような使い方をされるとは予想もできなかった。

 

 だがそれは、まだ先の話だ。

 

 

  巨大な正門を抜け、大広間へと入ると、内部は緑を主としたスリザリンのメインカラーで統一されており、壁には蛇の描かれた横断幕で覆われていた。

 

「まったく…全部スリザリン一色さ、気色悪いな…」

 

「そうね…ここまで、緑一色なんて、悪趣味だわ…」

 

「親なら48000点ですね」

 

「何の話よ」

 

「お気になさらず」

 

「7年連続で寮対抗杯を獲得したとはいえ、これは不愉快だ」

 

 ハリーとロンは不貞腐れながらスリザリンの方を睨みつけていた。

 

 スリザリンの方を見てみると、マルフォイがとても誇らしげに周囲の人と話していた。

 

「さて、諸君! また1年が過ぎた!」

 

 ダンブルドアの大声が響いた。

 

 

「目の前のご馳走にかぶり付く前にまずは、寮対抗杯の点数を発表する。4位、グリフィンドール312点。3位、ハッフルパフ352点。レイブンクローは426点。そしてスリザリン、472点」

 

 次の瞬間、スリザリンの寮からは歓声が上がり、スネイプも嬉しそうに拍手をしていた。

 

「うむ、スリザリンの諸君よく頑張ったのぉ、しかし最近の出来事も勘定に入れなくてはならん。」

 

 スリザリンの歓声が一瞬にして止まり、ダンブルドアが言葉を続けた。

 

「まず最初はロナウド・ウィーズリー。近年稀にみるチェスの腕前を披露し最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに50点を与える」

 

 地下にあったチェスを攻略したのはロンだったのか。

 

「次にハーマイオニー・グレンジャー。火に囲まれながらも、冷静な論理を用いて対処したことを称え、グリフィンドールに50点を与える」

 

 

 

 ハーマイオニーは驚いたような顔をし、嬉し涙を流していた。

 

 手持ちのハンカチを取り出し、眼を擦りながら涙を拭っている。

 

 なんとも、無理やりな配点により、これで一気に点数が100も加点さてたことになる。

 

「3番目はハリー・ポッター。その強靭な精神力に加え、並外れた勇気を称えグリフィンドールに50点じゃ」

 

 

 次の瞬間にはグリフィンドール全体から歓声が上がった。

 

 

「スリザリンとあと10点差だわ!」

 

 ハーマイオニーが涙を拭きながら叫ぶように歓声を上げた。

 

「さて、次じゃ敵へ立ち向かう勇気も素晴らしいものじゃが、友に立ち向かって行く事も十分に勇気のいる行動じゃ…そこで、ネビル・ロングボトムに10点を与えたい」

 

 次の瞬間にはスリザリンを除く全ての寮から歓声が上がった。

 

「これで、並んだわ!」

 

 これで年連続寮対抗杯独占を阻止に成功した。

 

「そして最後に…」

 

 静まり返った会場の中でダンブルドアは重々しく口を開く。

 

「エイダ・イーグリット。デルフィ・イーグリットのイーグリット姉妹。圧倒的な力で、障害を退け、その類稀なる状況判断能力により友を救った事を称え、1人に付き50点じゃ」

 

 

 

 

 途端に大広間全体が揺れる程の歓声が上がった。まるで爆発でも起こしたかのような衝撃だ。

 

 ふとスリザリン寮の方を見ると、ほぼ全員が項垂れており絶望した顔をしていた。

 

 そんな中で、マルフォイだけが、どこと無く納得したように頷いていた。

 

 

「さて…それでは飾り付けを変えようかの」

 

 ダンブルドアは呑気そうに杖を振るうと、スリザリン一色だった装飾が、赤と金色のグリフィンドールカラーになり。蛇の横断幕もライオンが描かれている物へと変化した。

 

「さて、それではパーティーを始めようかの」

 

 その声に答える様に3つの寮から歓声が上がった。

 

 

 

 年末パーティーが終わった翌日には学年末テストの結果が張り出されたいた。

 

 ロンとハリーは全体より若干高い得点を得ており、顔を見合わせ驚愕しているようだった。

 

 ハーマイオニーは総合3位。

 

 私達は満点を取り、1位だった。

 

「2人揃って満点なんて…やっぱり貴女達って凄いわね」

 

「恐縮です」

 

「私も、筆記は問題なかったのに、やっぱり実技で差が出たわね」

 

「貴女の実技もトップクラスだと思われます」

 

「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ」

 

 ハーマイオニーはにこやかな表情で、こちらに賛美を送っていた。

 

 

 

  その後、順調に事後処理などが進み、長期休暇が始まろうとして居た。

 

 ホグワーツ場を離れ、駅には帰り自宅を済ませた生徒達で賑わっていた。

 

 私達も、汽車に乗り込むべく駅のホームへと移動しようとした矢先に、背後から声を掛けられる。

 

「やぁ、2人とも。不本意だが寮杯おめでとうと言っておこう」

 

 マルフォイはワザとらしく溜息をしつつ、賛美の声を送ってくる。

 

「まぁ、僕だってグリフィンドールの優勝を祝いたくは無いが、君達なら仕方ないと思うさ」

 

「恐縮です」

 

「ところで何をしたらあんな高得点を取れるんだ? 教えてくれよ」

 

「長くなります」

 

「簡素に頼むよ」

 

「目の前の障害を排除したまでです」

 

 私の答えに、デルフィは頷き同調している。

 

「思った以上に簡素に答えたね」

 

「何か問題でも?」

 

「いや、別に」

 

 その時、汽車が汽笛を鳴らした。

 

「おっと…もうじき発車時刻だ」

 

「その様ですね」

 

「あぁ、それじゃあまた休み明けに」

 

「えぇ」

 

 マルフォイを見送った後に、私達も汽車に乗り込み、無人のコンパートメントを開けた。

 

 発車1分前。

 

 息を切らしたハリー達3人が勢い良くコンパートメントの扉を開けた。

 

 

「やぁ…ここ開いてる?」

 

「どうぞ」

 

 コンパートメントに雪崩れ込んだ3人は、駅に到着するまで、先日の出来事を反芻するように話していた。

 

 駅に到着し、ホームへと降り立った。

 

「ふぅ…やっぱりずっと座りっぱなしだと疲れちゃうよ」

 

 ロンは腰に手を慌て、体を伸ばしている。

 

「まったく、ロンだらしないわよ」

 

「しょうがないだろ、腰が痛いんだから。それより皆。夏休み良かったら僕の家に来ない?」

 

 ロンの突然の提案にハリーは目を輝かせた。

 

「良いね! 行くよ! うん! 絶対行く!」

 

「それじゃあ、ふくろうを送るよ。ハーマイオニーは?」

 

「そうね。私は両親に相談してみるわ」

 

「わかったよ。君達は?」

 

「一度検討します」

 

「後ほど、返答します」

 

「そう、なら楽しみにしてるよ。それじゃあ」

 

 ロンはそういうと大勢いる兄弟たちと共に自宅へ向かって行った。

 

「じゃあ、僕もこれで一度帰るよ」

 

 ハリーは重い足取りで、駅のホームを抜けていった。

 

「じゃあ、私も帰るわ。二人とも、じゃあね!」

 

「えぇ、お疲れさまでした」

 

「お気を付けて」

 

 

 

 こうして各々が自宅へと帰るべくその場で解散した。

 

 周囲が無人になったのを確認し、私達はステルスシステムを起動し、スラスターを展開させ、上昇すると、自宅へと帰還した。

 

 

 

 

  全校生徒が帰省し、人気の少なくなった構内を、校長であるワシは悠然と歩いている。

 

 人気のない静まり返った校内の散歩を楽しみんでいるが、ワシの心はやはり、暗いままだった。

 

「はぁ…」

 

 しばらく散策した後、無事に自室の扉のドアノブを握ると同時に、溜息を吐いた。

 

 まだ、徘徊老人になる程ではない。

 

 重い足を引き摺りながら、自室の革張りの椅子に体を沈める。

 

「ふぅ…」

 

 一息入れた後に、今年の事を振り返る事にした。

 

 これは毎年の恒例となった。

 

 

 まず初めに、今年はハリーがホグワーツに入学した記念すべき年だ。

 

 これで彼をより護り易くなった。

 

 入学したハリーはグリフィンドールに配属された。

 

 そこで心の拠り所である友を得る事が出来た様で、とても喜ばしい。

 

 ロンとハーマイオニー。

 

 2人とも、独特な雰囲気はあるものの、とても良い友となるだろう。

 

 しかし、不安要素もある。

 

 あまりにもイレギュラーな存在である、あの姉妹の事だ。

 

 エイダ・イーグリットとデルフィ・イーグリット。

 

 彼女達の思考が未だに理解できない。

 

 組み分けの際、帽子が何かされた様だが、依然としてその答えを聞く事は出来ていない。

 

 その他にも、彼女達が行った不可解な事は多い。

 

 まず初めに、校内に侵入したトロールの事だ。

 

 侵入させた犯人は逃げ去った、クィリナス・クィレルが手引きしたようだ。

 

 騒ぎに乗じて石を回収する算段だったのだろう。

 

 しかし、セブルスが目を光らせて居たおかげで、その場での奪還には至らなかった。

 

 侵入したトロールだが、彼女達によって、無力化された。

 

 通常であれば、普通の生徒がトロールを無力化する事自体不可能と言っても過言ではない。

 

 しかし、彼女達はそれをいとも簡単に行ったのだ。

 

 あまつさえ、不殺にとどめる様な余力を残しつつ…

 

 後にそのトロールは、クィリナス・クィレルによって殺害された様だ。

 

 用が済めば処分する、やはり奴等らしいやり方だ。

 

 

 次に、石の保護に向かったハリー達はこちらが用意した罠を次々と突破して行った。

 

 1年生に突破できる罠を設置した事を今更だが後悔している。

 

 しかし、その罠も彼女達の前ではまったく意味をなさなかった。

 

 ハグリッドの用意した『フラッフィー』も両前足を砕かれ、薬を打たれて無力化されていた。

 

 スプラウトの悪魔の罠も、撃ち破られ。

 

 フリットウィックの羽の生えた鍵は総てが撃ち墜とされていた。

 

 ミネルバのチェスには、圧倒的な力の差を見せつけ圧勝したようだ。

 

 余談だが、ロンとの勝負は楽しんでできたが、彼女達の場合は、一方的で辛かったそうだ。

 

 まるで、思考を読まれている様だったらしい。

 

 それ故、自ら負けを認めたようだ。

 

 セブルスが用意したパズルだが、彼女達は迫り来る炎をモノともせずに、ただ突破したようだ。

 

 防火魔法か、保護魔法の類を疑ったが、両方とも1年生が完璧に操るのは難しいだろう。

 

 しかし、力量が未知数な彼女達ならば、それも容易いかも知れない…

 

 トロールは既に死亡していたので論外として。

 

 最後にワシが用意したのぞみの鏡。

 

 あの鏡は、自身の望みを映し出し、無欲な物があの石を取り出せるようにして居たのだが、彼女達はどういう原理か理解できないが、強制的に鏡を破壊し、中から石を取り出した。

 

「はぁ…ふぅ…」

 

 全く理解が出来ず、ワシは思わず連続で溜息を吐く。

 

 溜息を吐くと幸せが逃げると言うが、多少の幸せを逃して、このモヤモヤを取り払えるなら安い物だろう。

 

 そして、石を手にした彼女達の前に立ちはだかったのが裏切り者のクィリナス・クィレルだった。

 

 奴は、ハリーを人質に取り、石との交換を要求した。

 

 そして、彼女達はハリーに多少の危険が及ぶと判断し、それを了承し、ハリーと交換した。

 

 なんとも愚かな選択だろう。

 

 若干の危険とはいえ、ハリーにはそれを突破する勇気がある。

 

 だが、彼女達の判断は違った。

 

 目の前の僅かな危険を良しとせず、未来の大いなる危険を選択したのだ。

 

 未来の危険ならば対策が取れると考えたのだろう。

 

 なんとも愚かだ。

 

 目の前の僅かな危険程度で未来が救えるならば、どのような選択をするかは明白だ。

 

 しかし、彼女達はそれを怠った。

 

 それ故に、現在、あの石は奴が率いる死喰い人の元にあるのだろう。

 

 

 

 しかし、あの石は伝説上の『賢者の石』などではない。

 

 彼女達は、いち早くそれを見抜き、尚且つあの石の呼び名を教えてくれた。

 

『メタトロン鉱石』それがあの石の名前の様だ。

 

 友人から託されたあの膨大な力を持つ石だが、彼女達にとってはそれほど価値のある者では無い様だ。

 

 その証拠に、デルフィはあの石よりも更に強い力を持つ石をワシに見せてくれた。

 

 あの石を目にし、手に取った瞬間、全身を駆け巡る不可解な感覚と、膨大な力は今でも忘れられない。

 

 とても、不愉快でまるでこちらを取り込もうとしている感じだった。

 

 なぜ彼女が、あの石を持っているのか不明だが、どうやらとても関わりの深い物の様だ。

 

 石の持ち主から聞いた話だが、あの石は突然、歪んだ空から降って来たそうだ。

 

 俄かには信じられない話だが、現に目にした者が彼しかいない以上信じるしかない。

 

 その理屈で言えば、彼女達は歪んだ空の向こう側を知っているという事だろうか?

 

 それはまだ見ぬ楽園なのか、それとも――

 

「ふぅ…」

 

 脳が疲れたワシは、リフレッシュも兼ねて窓から身を乗り出し、空を見上げる。

 

 見上げた先は、歪んではいないが、曇天が立ち込め、なんとも言えぬ空だった。

 

 

 




ダンブルドアの考察で、この章は閉めたいと思います。

次章をお楽しみに。
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