最初の内は、やはり大人しいですね。
換金作業
ホグワーツから帰還し数日が経った。
前回の不法侵入者の一件以来、私達は対抗策として、ある計画を実行する事にした。
計画遂行に必要なメンテナンス機材や発電機等、こちらに付いてからも何かと資金が必要なる。
ダイヤモンドを換金しても良いのだが、数が出回り始めた為、価格が低下し始めた。その為『ガリオン金貨』を換金して資金に回りている。
魔法界では金貨への変換率が良く、金の含有率も高い為、こちら側で換金する事で大きな利益を得る事が出来る。
その為、グリンゴッツに預けていた金貨の枚数がかなり減って来た。
後日、グリンゴッツでダイヤモンドを換金する必要があるだろう。
設備が整ってから数日間は、システムの微調整と、年齢に応じた、身体の成長を行った。
「これくらいでどうでしょうか?」
目の前のデルフィは赤を主体とした部屋着に身を包み、その場でゆっくりと1回転した。
「個人的には、もう少し胸を大きくしても良かったのですが」
「この年代の平均的な数値です」
「そうですか、了解です」
一通りチェックを終え、暇を持て余している。
「提案があります」
突如として、デルフィが口を開く。
「何でしょう?」
大方の予想は付くが、一応訪ねてみる。
「模擬戦を行いましょう」
私の予想は的中した。
何故かと言えば――
「賛成です」
私自身も、模擬戦を提案しようとして居た所だった。
やはり、根幹に埋め込まれた、戦闘用AIの本能だろうか。
「では、場所を移しましょう」
「えぇ」
私達は、家を出ると、森の中を数キロ程移動する。
「では模擬戦を行いましょう」
私の真横を歩いていた、デルフィはベクタートラップから、ウアスロッドを取り出し、30㎝程の長さにすると、まるで杖の様に構える。
「今回の模擬戦では、今後、魔法界で起こりえる自衛行動を重点に置き、魔法での戦闘を行いましょう」
「了解です」
デルフィの提案を承諾した私は、同じ様に、杖を取り出すと、右手に構える。
「仮想敵としてホログラムを配置します」
私達の眼前に、数体の人型のホログラムが配置される。
「では行きます。最初は武装解除。通常出力です」
デルフィと私はそれぞれ、別の目標に向けて、杖を振る。
杖の先端から発せられた赤い閃光がホログラムを貫通すると、背後の木に直撃し、木が大きく抉れ、倒壊した。
「威力が強すぎます」
「恐らく、人体に影響のあるレベルでしょう」
「では、更に出力を抑えます」
その後、数回に渡る練習の結果、数本の木を犠牲にしながらも、人体に死傷を与える事の無い威力にまで調整する事が出来た。
「これなら上出来です」
デルフィが最終調整を終えた魔法を放つ。
放たれた赤い閃光は、超高速で目標であるホログラムに直撃し、霧散した。
出力調整を終えた私が杖を構えた時、上空から2羽のフクロウが急降下してきた。
そのフクロウは嘴で手紙を咥えており、1羽は無事に着地したが、もう1羽の方は不時着するように、滑り落ちた。
「手紙ですね」
「古風ですね」
フクロウから受け取った手紙を開封した私の背後から、デルフィが覗き込む。
1枚はホグワーツからの教材リストだ。
どうやら毎年教材の更新が必要なようだ。
教材の購入先まで記載されている。
繋がりでもあるのだろうか。
そして、その大半が『ギルデロイ・ロックハート』と言う人物が作者の本だった。
もう一つの方はロンからの手紙だった。
彼らしく、読みにくい文章だった。
『やぁ久しぶりだね調子はどう?もし良かったら今度来年使う教材を一緒に買いに行かないか?ハリー達にも声をかけてあるんだ!それじゃあ楽しみにしてるよ』
「どうしますか?」
「断る理由は有りません」
「では返事をお送りましょう」
ベクタートラップから紙とペンを取り出すと、行く旨を認め封書しフクロウに咥えさせる。
手紙を受け取ったフクロウは、フラフラと飛び上がる。
「フクロウが連絡手段とは、不便そうですね」
「えぇ、ですが、ペットとしての意味合いが大多数を占めているようです」
「そうですか、我々もペットを飼いますか?」
「現状ではその必要性があるとは思えません」
「その通りですね」
私達は、次第に小さくなるフクロウを見送った。
「では戻りましょうか」
「そうですね」
フクロウを見送った私達は、周囲を簡単に片付けると自宅へと戻った。
数日の月日が経ち、ロンからの返信に書かれていた日が訪れた。
「もう少しで手紙に記されている時刻です」
正午を多少回った辺りでデルフィが口を開く。
「そうですね。準備は整っています」
「こちらも準備完了です」
すでに準備を完了させたのか、家の入り口でデルフィが待機している。
「では出発します」
共に家を出ると、ステルスシステムを起動し、バーニアを吹かし、合流ポイントである『ダイアゴン横丁』へと移動した。
ダイアゴン横丁上空に到着すると、人気のない場所を探し、着地すると、ステルスシステムを解除する。
「集合地点はこちらですね」
手書きの不鮮明な地図を頼りにグリンゴッツの前へと移動する。
「あっ! デルフィ! エイダ!」
グリンゴッツ画面する大通りから、人混みを掻き分けながら、ハーマイオニーを先頭に、眼鏡にヒビが入ったハリー、ロン、そしてロンの家族と思われる一団が追従している。
「やぁ、二人とも。紹介するよ。僕のパパとママだ。後こっちに居るのが妹のジニー。今年からホグワーツに入るんだ」
「そうですか。私はエイダ・イーグリットです」
「デルフィ・イーグリットです」
「ご丁寧にどうも。アーサー・ウィーズリーです」
「モリーよ。ロニーちゃんから話は聞いているわ」
「ママ! 外ではやめてよ!」
「まぁ、細かい事なんか気にするなよ、なぁ、ロニー坊や」
「はぁ…」
溜息を吐くロンを見て、他の家族が笑みをこぼしている。
この時代の人間は、なかなか理解しにくい文化を持っている様だ。
その後、互いに社交辞令を済ませた後モリーが口を開く。
「さて…私達、まずは銀行でお金を下ろさなきゃいけないのよ」
「そうなのですか」
「我々も銀行に用事があります」
「そうなの? なら一緒に行きましょう」
「えぇ」
ウィーズリー家を先頭に、私達は銀行の扉を潜り抜けた。
グリンゴッツの中は、すでに人で溢れかえっており、行列が出来ている。
整理券を受け取ると、ウィーズリー家が並んだ。
その背後に私達も並んだ。
「君達も銀行に用があるらしいね」
「えぇ、換金です」
「かんきんって?」
ロンが不思議そうに首をかしげる。
「マグルのお金を、こっちのお金に変える事よ」
ウィーズリー家と一緒に居たハーマイオニーが答える。
「そうなんだ。なんか大変だね」
「君達はマグル界に住んでるのかい?」
ロンの父親、アーサーが興味深くこちらを見据える。
「えぇ、人気の無い郊外に住んでいます」
「そうなのか。どんな生活をしているんだ? 魔法が無いとやっぱり不便だったりするのかな?」
「比較的平凡な生活です。魔法技術が無い事が不便だとは感じません」
「そうなのか。でもやっぱり魔法を使いたいと思う事はあるんじゃないか?」
「特には」
「法律上では、魔法界以外での魔法の使用は緊急時以外は禁じられており、未成年者に関しては、『臭い』と呼ばれる発覚措置が施されている筈です。」
「あー…その通りさ。うん、よく勉強しているね…」
デルフィが詰まらなそうに答えると、アーサーは消沈気味に答えた。
「次。どうぞ」
列の先頭の人物が去り、小鬼が普段通りなのか、不機嫌そうに呟くと、ウィーズリー家の順番がやって来た。
「やぁ。どうも。今日はいい天気だね」
「ご用件は?」
「あー…その、お金を下ろしたいんだ」
「…………お値段は?」
「あー…これくらいで」
アーサーはカウンター越しに小さな紙を渡した後、小鬼と話している。
「少々お待ちを」
「あぁ、頼むよ」
不機嫌そうな表情の小鬼はカウンターの引き出しを開けると、数枚の金貨と銀貨を取り出す。
「ここに入れてくれ」
アーサーは古ぼけた鍋を小鬼に手渡すと、虚しい金属音を立て、小鬼の手からコインが滑り落ちる。
「どうぞ」
「どうも」
金属音を立てる鍋を受け取ったアーサーは数回頷くと、踵を返した。
「次の方」
「君達の番だよ」
擦れ違い様にアーサーが口を開く。
私達の順番がやって来たようだ。
「おぉ、これはこれは…いつもありがとうございます」
私達の姿を確認した小鬼は先程とは言葉遣いが違っていた。
「本日はどの様なご用件で」
「換金と入金です」
「毎度ありがとうございます」
デルフィが小箱を取り出すと、小鬼に手渡す。
「それは?」
「君達、人様の物を見るもんじゃないぞ。じゃあ外で待ってるよ」
ロンとハリーが興味深くこちらを見ているのを、アーサーが諭した後、外へと出ていった。
「では失礼して」
小箱からダイヤモンドを1つ取り出すと、小鬼は光にかざし、鑑定を開始した。
「確認できました。すべて換金でよろしいですか?」
「えぇ、換金後、必要枚数以外は金庫へお願いします」
「かしこまりました」
畏まった小鬼は一礼した後、奥へと消えていった。
数分後、30枚程の金貨をトレイに置いた小鬼が戻って来た。
「こちらです」
「ありがとうございます」
私達は、半分ずつ受け取ると、グリンゴッツを後にした。
扉を抜け、外へと出ると、ハリー達が退屈そうに待機していた。
「遅かったね」
「換金に時間を取られました」
「そうなのね」
「さて。用事も済んだ事だし、買い物に行きましょう」
モリーがそう言うと、ウィーズリー家全員が返事をして、移動を開始した。