翌日、また犠牲者が出た。
とあるゴーストと、先日の決闘クラブの際に、蛇に睨まれていた生徒が石にされたようだ。
しかも運の悪い事に、今回の第一発見者もハリーだったようだ。
そのせいか知らないが、ハリーは殆どの生徒からスリザリンの後継者なのではと疑われている。
ダンブルドアも疑って居るのかどうかは知らないが、先程ハリーを呼び出したという話だ。
このような事が続いたため、今年のクリスマスには多くの生徒が帰省し、ハリーを含めた数名の生徒のみが残された。
しかし、今年はハーマイオニーとロンも残るようだ。
「どうして、君達まで残るんだ? 家に帰ればいいのに」
「まぁ、そういうなって、君1人だけ置いておくと、何かと心配だろ?」
「ロン、君って奴は…」
「それに、家に居たら、アレは作れないからね」
ハーマイオニーは意味深な笑みを浮かべ、それを見た2人は引き攣った笑みを浮かべていた。
「ところで、エイダとデルフィは今年も家に帰るの?」
ハーマイオニーの問いに対して、私達は数回頷く。
「そう、残念だわ。ちょっと手伝って貰おうかと思って居たのだけど…」
「おい」
ハーマイオニーの言葉を遮る様に、ロンが声を上げ、小声で話し出す。
「良いのかよ、あの事を話して」
「あの二人になら、話しても大丈夫よ。それに、協力してくれた方が、心強いでしょ?」
「まぁ…確かに…」
「お話はお済ですか?」
「えぇ、終わったわよ」
デルフィの問いに対して、ロンとハーマイオニーは数回頷く。
「それでね、さっきの話の続きなんだけど…」
そこで、私達は彼等が立てている計画の概要を説明される。
どうやら、『ポリジュース薬』を使い、スリザリンに潜入し、後継者が誰なのか聞き出そうとしている様だ。
「それで今ね、ポリジュース薬を作ってるんだけど、少し難しい所があって…そこを手伝って貰えないかしら?」
「構いませんが、その工程に差し掛かるのは、いつ頃でしょう?」
「クリスマス休暇の真ん中ね…帰っちゃうんだもん。やっぱり無理よね」
ハーマイオニーは肩を落とし、項垂れている。
「ご心配なく、連絡をいただけでは、必要に応じて駆け付けます」
「駆けつけるって…第一、どうやって貴女達と連絡とるのよ。ふくろうで手紙を送ったって数日かかるわ」
「タブレット端末に、通信機能があります。それで連絡を」
「え? そんな事出来るの?」
「可能です」
試しに、タブレット端末に通信を繋ぐ。
その瞬間、タブレット端末から、着信音が鳴り響き、3人は慌て始める。
「え? どうなってるの? 急に音が出たけど」
「通話ボタンを押してください」
「通話ボタンって…これ?」
デルフィの指示に従う様に、ハーマイオニーが通話ボタンを押すと、タブレットと通話が繋がる。
『通信状態は良好です』
「凄い、本当にタブレットから声が聞こえる」
「え? 何これ? この石板どうなっているの?」
「だから、タブレットだって言ってるでしょ。凄いわ。まるで電話みたい」
通話を切ると、一通り通話機能について説明をすると、今度はハーマイオニーから通話が掛かってくる。
『もしもし、聞こえる?』
『はい、問題は有りません』
「おぉ、凄いわ、本当に繋がっちゃった」
「休みの期間は、これで連絡を」
「うん! 分かったわ。ねぇ…」
タブレットを抱えたまま、ハーマイオニーがこちらに目線を向ける。
「どうかしましたか?」
「もし、もしもよ、用事が無くて連絡したりしたら怒る?」
「いいえ」
「良かった。少し寂しかったりしたら、連絡するわ」
「御構い無く、ですが、大した話し相手になれるとは思えませんが」
「良いのよ、話を聞いてくれるだけで十分よ」
「どうして、女の子って、お話が好きなんだろう?」
「さぁ、僕にはわからないよ」
嬉しそうなハーマイオニーを横目に、ロンとハリーは理解できないっといった表情で、手を上げていた。
クリスマス休暇に入ってから数日間。
時々入るハーマイオニーからの通話の内容は、ロンが休暇中に双子の兄弟に杖が折れた事がバレ、黙っている代わりに、トロフィー磨きを押し付けれたなど、些細な出来事が大半だった。
『ポリジュース薬』の作成は順調に進んでいる様で、こちらから援護に行く必要は無い様だ。
クリスマス休暇も終わろうとしある日、ハーマイオニーから通信が入る。
『もしもし、聞こえる?』
『通信状態は良好です』
『良かったわ。それでね。ついにポリジュース薬が完成したのよ!』
通話越しでも分かる程、ハーマイオニーのテンションは高かった。
『おめでとうございます』
『難しい薬だったけど、やってみれば何とかなるものね』
『それで、材料はどの様に調達したのですか?』
『え? そ…それは…』
デルフィの問いに対し、やはりハーマイオニーは黙り込む。
『ある程度の予想は付きます。今後はあまり危険を冒さない様にお気を付けて』
『わ…わかったわよ。それより、このポリジュース薬は、クリスマス休暇が終わって皆が戻ったら使おうと思って居るの』
『それがよろしいかと』
『早く使わないと、駄目になっちゃうもんね』
『うわぁ! またマートルが出た!』
通話の奥で、ロンとハリーの喚き声が響く。
『まったく、騒がしいわ。じゃあ、今日はもう切るわ。今度は休み明けにまた会いましょう』
『えぇ、それでは失礼いたします』
次の瞬間、プツリと虚しい音を立て、通話が終了する。
クリスマス休暇も終わり、再びホグワーツに到着する。
「待っていたわ!」
自室に戻ると、嬉しそうな表情のハーマイオニーが出迎える。
「えぇ」
「到着早々で悪いんだけど、ちょっと一緒に来てくれる?」
「何があるのです?」
「ちょっとね、移動中に説明するわ」
自室を出た後、ハーマイオニーに連れられ校内を進む。
しばらく歩みを進めると、人気のないエリアまでやってくる。
「クリスマス休暇中にポリジュース薬が完成したって言ったでしょ」
「覚えています」
「それでね、今日使おうと思って居るの」
「そうなのですか」
「うん、そこで、貴女達には先生とか他の生徒が来ないように見張り役をお願いしたいの。
「了解です」
「承知しました」
しばらく話と歩みを進めると、人気の無い女子トイレへ到着した。
トイレの手洗い場の一部に、地下へと通ずる隠し通路を検知した。
「手洗い場なんて見て、どうしたのよ?」
「巧妙にカモフラージュされていますが、あの手洗い場から、地下空間へと通ずる抜け穴を検知しました?」
「え? 抜け穴?」
「恐らく、件の『秘密の部屋』へと繋がっているかと」
「えぇ!!」
「おいおい…それは本当かよ!」
背後から、女子トイレであるにもかかわらず、ロンとハリーが驚いた表情で入ってくる。
「失礼ですが、ここは男性が来る場所ではないかと思われます」
「あー、それについては大丈夫、滅多に人が来ない所だし、僕等、クリスマス休暇の間はずっとここに居たから」
「ロン、その言い方だと変な誤解を招くよ」
「へ?」
「まぁ、ロンの説明じゃ分からないと思うけど…簡単に説明すると、私達はこの休みの間、ここでポリジュース薬を作っていたの」
「そうだったのですか」
デルフィが適当に答えると、3人は同時に頷く。
「それより、ここが秘密の部屋に繋がっているって本当?」
「えぇ、目視では判断不可能ですが、手洗い場の壁の奥に空洞を検知しました」
「まじかよ…どうする?」
「どうするって…先生に伝えた方が良いかな?」
「でも、なんて説明する?」
「そりゃ…えーっと…」
「女子トイレでポリジュース薬を作ってたら、見付けましたって言うのか?」
「そんな事が知れたら、僕…学校に居れないよ…」
「まぁ…今回の作戦で全部が分かるんだ。そしたら、後継者から聞き出したって事で先生に言えばいいよ」
「そうだな」
「まぁいいわ、今回の作戦の要でもあるポリジュース薬がこれよ!」
自慢げな表情で、ハーマイオニーは禍々しい臭気を放つ鉄鍋を掲げる。
「だけど、あと1つ大切な物が必要なのよ」
「まだあるのかよ」
ロンは疲れた様に、溜息を溢す。
「ポリジュース薬はね、変身したい相手の体の一部が必要なの。だから髪の毛が必要なのよ」
「で? 僕等はどうすればいいの?」
「そうね、マルフォイの腰巾着やってる2人の髪の毛でも取ってきたら?」
「2人って…クラッブとゴイルか?」
「そうそれ」
「まじかよ…でもどうやって髪の毛なんか?」
「大丈夫よ。これを用意してあるわ」
そう言うとハーマイオニーはカップケーキを2つ取り出す。
内部には睡眠成分の高い魔法薬が仕込まれている。
「この中には、強力な睡眠薬が入っているわ。食べれば1日は起きないんじゃないかしら?」
「どうやって食べさせる?」
「目の前に浮かせておけば食べるんじゃない?」
「いくらアイツ等でもそんなに馬鹿じゃ無いだろう」
ロンとハリーは笑いながら、カップケーキを受け取ると、その場から立ち去った。
数分後、二人が戻ってくる。
「アイツ等やっぱり馬鹿だわ」
2人の手には人毛とスリザリンの制服が握られていた。
「あの2人はどうしたの?」
「ロッカーに隠しておいた。明日になれば目を覚ます筈だよ」
「そうね。材料は揃った事だし。じゃあ始めるわよ」
ハーマイオニーは鉄鍋から3つのガラス製のコップに均等に不気味な液体を注いで行く。
「ところで、ハーマイオニーはどうするんだ?
「私はもう用意してあるわ。スリザリンのミリセント・ブルストロードの髪の毛よ」
「そんなの、いつの間に用意したんだよ?」
「この前の決闘クラブ。ヘッドロックを掛けられた時ね」
「あー…あのん時の…」
「えぇ、そうよ」
ハーマイオニーは焦点の定まっていない目で虚空を眺めていた。
「さっ、さっさと髪の毛を入れるわよ」
ロンとハリーはそれぞれ嫌そうな顔でポリジュース薬に髪の毛を入れる。
「うげぇ…2人のエキスがたっぷりだ」
「気持ち悪い事言うなよ」
「だってよぉ…」
「まったく、何言ってるのよ…」
ハーマイオニーはポケットから白い毛を取りだす。
しかし、その成分はどう見ても人の物とは違い、ネコ科の物だった。
ポリジュース薬は、人への変化への利用に制限されている。
「さて、私も…」
ハーマイオニーが猫の毛をポリジュース薬へと入れようとする。
「お待ちください」
「え?」
私がハーマイオニーの腕を掴み、デルフィが猫の毛を回収する。
「ぐえぇ…え?」
「何してんだよ?」
既にポリジュース薬を飲んだ2人は唖然とした表情をしている。
「それは、猫の毛です」
「え?」
「じゃあ、どうする…ヴォエ!」
「ロン! だいじょ――ヴォッ!」
突如として嘔吐いた(えずいた)2人は走り出すと個室へと駆け込んだ。
「大丈夫かしら?」
デルフィはハーマイオニーが持っていたポリジュース薬を躊躇い無く一口含む。
「ちょっと!」
「毒性は検知されていません。人体に影響は有りません」
「そ…そうなの?」
「問題ありません」
数分後
トイレの個室から現れた2人は、死にそうな表情をした、クラッブとゴイルだった。
「凄いわ。本当にあの2人になってる」
「あまり嬉しくないよ…」
「それより、君はどうするのさ?」
「私?」
「そう」
「そ…そうね…体の一部が無いから…どうしようも無いわ…」
「じゃあ、僕達2人だけで行けってのかい?」
「まぁ…そうなるわね…」
「はぁ…まぁ、しょうがないか」
2人は溜息を吐くと、トボトボとトイレを後にした。
数十分後、姿が戻った2人が慌てた様子で戻ってくる。
「はぁ…はぁ…危なかった」
「もう少しでバレる所だったよ」
「結果はどうだった?」
「あぁ、マルフォイは知らないって言ってたよ」
「本当?」
「あぁ、本当だよ」
「なんだぁ、結局無駄骨だったのね」
「まぁ…しょうがないね」
結局、この作戦は無駄に終わった。
このような結果に、3人は落胆していた。
「とりあえず、秘密の部屋の事はどうする?」
「まだ黙ってようぜ。下手に言うと、危険だろう?」
「そうだな」
3人は、後片付けを終えると、自室へと戻って行った。