ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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今回、ハーマイオニーが……


バジリスク

 

 

  本の盗難から、数日が経ち、グリフィンドール対ハッフルパフのクィディッチの試合日だ。

 

 気象状態コンディションは悪く、クィディッチの様な屋外競技には不向きな天候だが、観客席からは、歓声が響いている。

 

 私達は、観客席で歓声を上げているロンの隣に着座する。

 

 普段通りならば、ハーマイオニーも観戦に来ている筈だが、本日は、調べたい事があるという事で席を外している。

 

 彼女が所持しているタブレットの反応によると、図書館にいる様だ。

 

 図書館で調べ物をした方が集中力が高まるそうだ。

 

 選手達が入場し、試合開始のホイッスルが鳴り響き、歓声が上がる。

 

 試合も中盤に差し掛かり、ハリーがスニッチ捕獲に動き出した時、城内に大規模な生命反応を検知する。

 

 その生命反応は、図書館の付近に迫っている。

 

 そんな時、タブレットからの通信が入る。

 

『どうかしましたか?』

 

『バジリスクよ! 大きな蛇! バジリスクが解き放たれる恐怖だったのよ!』

 

 小声だが、勢いの良い声が聞こえる。

 

『今、図書館に居るんだけど、変な呻き声みたいなのが聞こえるの、それで…さっきまで一緒だったレイブンクローの監督生とはぐれちゃって…助けて…』

 

『図書館周辺に大規模な生体反応を検知しました。恐らく、例のバジリスクだと思われます』

 

『そんな…どうしたら良いの!』

 

『比較的安全なルートをタブレットに表示するので、私の指示に従って、バルコニーへ移動してください、そこを合流ポイントに設定し、こちらから迎えに行きます』

 

『でも、バジリスクの目を見たら死んじゃうのよ…移動するなんて…』

 

『タブレット上に、マップデータを転送しました。白い光点が貴女で、赤の光点がバジリスクです。水色の扇状で表される範囲が、バジリスクのエネルギー照射範囲です。範囲に入らないように注意してください』

 

『で…でも、そんな事言われたって…』

 

『現在、そのタブレットは私達の索敵能力とリンク状態にあります。誤差は0.005%以下です』

 

『でも…』

 

 その時、タブレット越しに、バジリスクと思われる、咆哮が響き渡る。

 

『ヒッ』

 

『時間が有りません、すぐに移動を開始してください』

 

『だけど…』

 

『信じてください』

 

『…わかったわ…貴女達の指示に従うわ」

 

『了解、こちらも移動を開始します』

 

 通信を切らずに、バックグラウンドで繋いだまま、私はデルフィの方へと視線を向ける。

 

「準備はできています」

 

「了解、では行きましょう」

 

 私達は、バーニアを展開し、飛び上がる。

 

『さぁ! ハリー・ポッターがスニッチを完全に捉えた! あと少しだ!』

 

 加速状態にある私達は、箒で浮遊しているハリーの真横を通過する。

 

『あれは一体何だぁ! グリフィンドールの制服を着た二人が、箒無しで飛んで行ったぞ!』

 

 唖然とするクィディッチ会場を背に、私達は合流ポイントへと移動した。

 

 

 

 『次の角を右です。周囲に敵影は無いのでご安心を』

 

『わかったわ…』

 

 タブレットから送られる情報によると、メンタルコンデションレベルが低下しているハーマイオニーは重い足取りで、図書館を抜け出し、移動を開始している。

 

『次の角を左へ』

 

『わかった。ねぇ、貴女達は今どこに居るの?』

 

『我々はすでに、合流ポイントで待機しています』

 

『早いわね。私は後どれ位で到着するの?』

 

『妨害などが入らなければ、5分も掛かりません』

 

『そう、早く合流したいわ』

 

 そう言うと、移動の足を速める。

 

『次を、左よね』

 

『えぇ、その通りです』

 

 その時、地を這うような低い咆哮が響く。

 

『いやぁ!』

 

 ハーマイオニーは声に驚いたのか、本来左へと移動する場所を、真っ直ぐ走り出してしまう。

 

『ルートを逸れました。すぐに修正してください』

 

『そんな事言ったって!』

 

 ハーマイオニーが走り出した音を検知したのか、バジリスクが移動を始めた。

 

『敵に気付かれたようです』

 

『気付かれたって?』

 

『背後に接近しております。走ってください』

 

『ウソでしょ!』

 

『本当です。次を右へ』

 

 しかし、ハーマイオニーは再び直進する。

 

『そんな事言われても、急には曲がれないわよ!』

 

 ハーマイオニーは形振り構わず、直進を進める。

 

『ウソ…行き止まり…』

 

 直進し続けたハーマイオニーは袋小路へと入ってしまった。

 

『どうしよう…』

 

『敵、接近。エネルギー照射範囲内。振り返らないでください』

 

『助けてよ!』

 

 半狂乱で声を荒げるハーマイオニーだが、既にバジリスクは間近に迫っている。

 

『了解、右端へ移動し、体制を低くし、衝撃に備えてください』

 

 私達は、急ぎ移動を開始する。

 

『どうするのよ…』

 

『城壁を破壊し、内部に突入します』

 

『えぇ!』

 

『衝撃に備えてください』

 

 ハーマイオニーは驚きの声を上げながらも、右端へ移動する、しゃがみ込む。

 

「バーストモードへ移行。破壊範囲を決定」

 

 私は、バーストモードを起動し右手を掲げ、青白い高エネルギーの球体を生成する。

 

『バーストモード』とは、エネルギーのリミッターを解除し、一時的に増幅する機能だ。

 

 破壊時の破片などがハーマイオニーに当たらないように、そして、ホグワーツ自体を破壊しないように出力を調整する。

 

「城壁破壊後は、私が突入します。破壊タイミングはエイダに一任します」

 

「了解」

 

 デルフィはウアスロッドを構え、突入態勢を整える。

 

 私は、エネルギーの調整を終えると、ハーマイオニーに通信を繋ぐ。

 

『計算終了。カウントゼロで城壁を破壊します』

 

『早くして!!』

 

『了解、3・2・1・0』

 

 カウントゼロでバーストショットを城壁に向け撃ちだす。

 

 着弾すると、轟音と共に、城壁の一部が崩壊する。

 

「突入」

 

 ウアスロッドを前方に構えたデルフィが土煙を上げ、掻き分け、城内へと侵入する。

 

『保護対象を確保、敵を目視で確認』

 

 私も、急ぎ城内へと侵入する。

 

 そこには、デルフィに泣きつくハーマイオニーと、爆破時の衝撃を受けたのか、全身に傷を負った巨大な蛇の姿があった。

 

「シャァァァアアアアアア!!」

 

 バジリスクはこちらを睨み付けると、高エネルギーを照射する。

 

 生身の人間なら即死だろうが、私達には何の意味も無い。

 

 ハーマイオニーもシールドの範囲内に居るので、影響は皆無だ。

 

 傷付いたバジリスクは、その場で咆哮を上げると、高速で移動し、パイプ内へと逃げ込んだ。

 

「ご無事ですか」

 

「怖かったぁ…」

 

 ハーマイオニーは安堵した事により、腰を抜かしたように倒れ込む。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ごめん、ちょっと立てそうにないわ」

 

「了解です」

 

 デルフィがハーマイオニーを抱きかかる。

 

「え? ちょっと」

 

「医務室へ移動します」

 

「わ、わかったわ」

 

 医務室へと移動を開始する。その時――

 

「これは一体何事じゃ!!」

 

 ダンブルドアを先頭に、血相を変えた教師陣が、杖を私達に突き付けている。

 

「えーっと、その、私、秘密の部屋に付いて調べていて、それで、えーっと」

 

「彼女は、バジリスクと呼ばれる大蛇に襲撃されて居ました。先程我々が救助しました」

 

「そう! その通りです!」

 

「バジリスクじゃと…では、その大穴は何じゃ?」

 

「対象を保護する際に、緊急措置として破壊しました」

 

「ご希望であれば、後日請求書をお送りください。全額負担します」

 

「まさか…お主達が城壁を…」

 

「緊急措置です」

 

「わかった…して、襲い掛かって来たのは、本当にバジリスクだったのか?」

 

「こちらです」

 

 私は先程眼前に現れたバジリスクの映像をホログラム化する。

 

「見てはならぬ!!」

 

 ホログラムが現れた瞬間、ダンブルドアが声を上げ、それに従う様にその場の職員全員が手で視界を遮る。

 

「ご安心を、ホログラムからエネルギー照射は有りません」

 

「なんじゃと…」

 

 それを聞いたダンブルドアはゆっくりと視界を遮る手を除けホログラムを食い入るように見る。

 

 それを見た他の職員も、恐る恐る視線をホログラムへと向ける。

 

「これは…バジリスクじゃ…正面から見るのは始めてじゃが…手負いのようじゃが」

 

「城壁を破壊した際に発生した破片及び衝撃波を浴びたのでしょう。パイプを使い逃走しました」

 

「左様か…」

 

「不思議な魔法だな。しかし、静止画か」

 

 スネイプはホログラムに目線をやると、鼻で笑う。

 

 そこで、私は静止画から、動画へと切り替える。

 

「シャァァァアアアアアア!!」

 

「ウォオ!」

 

「ご希望通り、動画へと変更しました」

 

「も、もう良い! 戻せ!」

 

「了解」

 

 私は、動画を、静止画へと戻す。

 

 その時、マクゴナガが血相を変えダンブルドアに近寄る。

 

「先程、レイブンクローの監督生。『ペネロピー・クリアウォーター』が石に変えられた姿で発見されました」

 

「なんじゃと…」

 

 ダンブルドアは狼狽し、こちらに視線を向ける。

 

「これ以上被害が出る前に、駆除する事をお勧めします」

 

「しかし…相手はバジリスクじゃ…いくら手負いとは言え…それに…どこに居るかもわからん」

 

「バジリスクは現在、秘密の部屋に居ます。恐らく休養を取っている物かと」

 

「秘密の部屋じゃと…それは厄介じゃ…一体どのように…」

 

「既に侵入経路は判明しています」

 

「それは本当か!」

 

「えぇ、手負いである今が最も最良なタイミングかと」

 

「し…しかし、相手はバジリスクじゃぞ。ここは、魔法省の応援をじゃな…」

 

「現状の戦力であれば、我々だけで十分に対処可能です」

 

「ならん!! 生徒にそんな事はさせられん! ワシが魔法省へ応援を頼もう。決して勝手な行動はしてはならんぞ!」

 

 ダンブルドアは突如として怒声を上げ、肩を上下させる。

 

「了解です。ですが、可及的速やかに行動を起す事をお勧めします」

 

「わかった」

 

 ダンブルドアは不満そうに了承すると、大勢の教員を引き連れ、その場を後にした。

 

「では、我々も移動しましょ」

 

 こうして、私達は背後の大穴を残し、医務室へと移動した。

 

 

  数日後、魔法省への応援要請は取り消された様だ。

 

 その上、不用意に状況を混乱させたという事で、ダンブルドアが校長職を更迭された様だ。

 

 全てが後手に回った結果だろう。

 

 城内をスキャンしたが、バジリスクの怪我は完全に回復している様だ。

 

 これでは、魔法省からの応援が来たとしても、不用意に死者を出すだけだろう。

 

 それに伴い、ハグリッドがアズカバンと呼ばれる監獄へと収監された様だ。

 

 罪状は、50年前のスリザリンの後継者として、殺人の容疑によるものだそうだ。

 

 この時代ならば、時効がすでに成立していてもおかしくは無いが、それでは、魔法省としても収まらないのだろう。

 

 

 結果的にすべてが後手に回り、最悪な状況が訪れた。

 

 それを知ってか知らずか、ダンブルドアは校長職を失ってなお、移転先が無いのか依然として校長室の椅子に座っている様だ。

 

 最早その椅子に意味はあるのだろうか…

 

 




ハーマイオニーは無事です。


城壁破壊はやりすぎた感がありますが、まぁ、緊急措置ですから。
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