ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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ようやく、戦闘が始まります


模擬戦

 

   まどろみからの覚醒。

 

 目を覚まし、周囲を見渡すと、睡眠前に見た光景と同じ物が広がっている。

 

 どうやら、夢では無い様だ。

 

 AIが夢を見るのかどうかすら怪しい所だが、肉体を得た以上夢を体験してみたいものだ。電気羊の夢なのだろうか…

 

 こうなった以上、現実を受け入れるしかない。

 

「おはようございます。お目覚めですか」

 

 部屋の扉が開かれると、隣で寝ていた筈のデルフィがエプロン姿で入って来た。

 

「おはようございます」

 

「気分は如何ですか?」

 

「あまり良いとは言えませんが、悪いとも言えません」

 

「それは良かったです。朝食の準備はできています」

 

「朝食…我々には食事が必要なのですか?」

 

「アンチプロトンリアクター が内蔵されているので必要と言う訳ではありませんが、食事を摂る機能はあります。一種の嗜好品の様な物でしょう」

 

 アンチプロトンリアクター

 反陽子生成炉。メタトロン製のリアクターによって反陽子を生成、これを陽子と衝突させることで対消滅を起こし、それによって発生したエネルギーを動力や電気エネルギーに変換する半永久機関。

 

 

「そうですか」

 

 デルフィが部屋を去った後、私はゆっくりとベッドから降りる。

 

 両足を床に付け、ゆっくりと歩きだす。

 

 どうやら、昨日よりは体の操作に慣れてきたようで、あまりふら付く事無く、食事が置かれているテーブルまで移動する事が出来た。

 

「簡単ですが、朝食です」

 

 デルフィはそう言うと、テーブルの上に、トーストとスクランブルエッグが置かれており、それらの香りが鼻腔をくすぐる。

 

 軍で支給される、栄養を取る為だけの軍用食糧とは違い、食事を楽しむものだと思われる。

 

 しばらく、テーブルの上を眺めていると、私の腹部から小さな重低音が響く。

 

 

「空腹の様ですね。どうぞ冷めないうちに」

 

 確かに、食事を目の前にしてからエネルギーの枯渇を感じている。

 これが飢餓感なのだろうか。

 

 そんな事を考えながら、私はトーストを手に取る。

 

「いただきます」

 

「どうぞ」

 

 トーストを口に含んだ瞬間、サクッとした触感と、香ばしい香りが広がる。

 

「お味はどうですか?」

 

「食事というのは初めてしましたが、データベースにある味覚の割合から考査するにおいしいです」

 

「それは良かったです。レシピ通りにやったので、間違いはないはずです」

 

 私は再びトーストに齧り付き、食事を楽しむ。

 

「そう言えば…」

 

 ある程度食事を楽しんだところで、一つの疑問が浮かぶ。 

 

「どうかしましたか?」

 

「我々が居るのは地球上のどの地域なのでしょう? 連合軍の統治下ですか?」

 

 私の質問に対し、デルフィは少し考えこんでから回答した。

 

「我々が住んでいるのは、イギリスの郊外です」

 

「了解です」

 

「それだけではありません」

 

 デルフィは無表情ながら、意味深な口調で答える。

 

「どういう事ですか?」

 

「我々が居るのは、西暦1980年です」

 

「え…」

 

 何を言って居るのかよく分からない…

 

「理解できていないようですね。ですがこれが証拠です」

 

 すると、デルフィは紙袋の中から新聞を取り出すと、私の前に置いた。

 

「食料調達の際に買ってきました。日付を見てください」

 

 新聞の日付には1980年、8月1日と書かれている。

 

「これは…」

 

「偽造では有りません。本物ですよ」

 

 新聞から得られるデータでは、紙の材質やインクの質から見ても、つい最近作られたもので間違い無いだろう。

 

「つまり、私達は1980年に存在しているという事ですか?」

 

「その通りです」

 

「ですがなぜ?」

 

「それは私にもわかりません。メタトロンの暴走に巻き込まれ、気が付いたら1980年のイギリスに居たとしか言いようがありません」

 

 確かに、それ以上の説明はできないだろう。

 

 納得する事は出来ないが、現状は変わらないので、どうする事も出来ない。

 

「それより、まだおかわりはありますが如何いたしますか?」

 

「もう結構です」

 

「そうですか。食後の紅茶は?」

 

「いただきます」

 

 デルフィはその場で反転すると、紅茶の準備を始めた。

 

 しばらくすると、紅茶の香りが広がりる。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます。ところで、これらの素材はどの様に調達しているのですか?」

 

「10㎞ほど行ったところに小さな町があり、そこで購入しています」

 

「移動方法と、資金調達についてはどのように?」

 

「飛行ユニットを展開し、人目に付かない様に移動しています」

 

 そう言うと、デルフィの背後に数基のバーニアが現れ、その体が宙に浮く。

 

「なるほど…」

 

 私も、データベースに存在する飛行機能をONにさせ、バーニアをイメージする。

 

 すると、私の背後にも2対のバーニアが現れる。

 

「飛行する際は、オービタルフレームの時と変わりません。ですが、室内は狭いので、飛行する際は注意してください」

 

「了解」

 

 多少の力をバーニアに注ぐと、ゆっくりと体が浮き始める。

 

「お見事です、後ほど外で飛行訓練を行いましょう」

 

「了解です」

 

 バーニアを操作し、ゆっくりと椅子に腰かける。

 

「ところで、資金調達についてはどのように?」

 

 私の質問に対し、デルフィは近くに転がっている材木を一つ手に取ると、ベクタートラップ内に収納した。

 

「先程の木材を、炭化させ、炭素を加熱、及び加圧処理し、ダイヤモンドを作成し、それを資金源にしています」

 

 デルフィが空中に手を向けると、ベクタートラップ内で加工されたブリリアントカットの5カラットほどのダイヤモンドが姿を現した。

 

「これで、当面の資金には困らないでしょう」

 

 そう言うと、デルフィは再びダイヤモンドをベクタートラップ内に収納した。

 

「ダイヤモンドの偽造は法に触れるのでは?」

 

「この時代にそのような法律は有りませんので、違法では有りません」

 

「なら問題ないでしょう」

 

 違法ならば止めるが、善悪の判断基準が無い以上、無用な討論は不必要だ。

 

 私は、ゆっくりと湯気の立つ紅茶に口を付ける。

 

 なかなか香りの良い飲み物だ。嗜好品として名高いのも頷ける。

 

 

  それから、数日間は生身の体に慣れる為の軽い運動や、バーニアを使った飛行訓練など、基礎的な事を行った。

 

 ある程度の行動が出来るようになると、私達は自身の体の解析を開始した。

 

 解析には多少の月日を要したが、解析が進むにつれ、様々な事が分かってくる。

 

 どうやら、私達の体内では、メタトロンが生成され、それらは順次ベクタートラップ内に収納されていくようだ。容量の把握はできていないが、無尽蔵のエネルギーと言っても過言では無いだろう。

 

 その無尽蔵のエネルギーのおかげで、デバイスドライバの複製が捗り、4年程の歳月が過ぎた頃には、全ての主兵装の他に、サブウェポンに関しても全てオンラインとなった。

 

 

 情報収集などは、電子書籍などと言った、記憶媒体が無く、本や新聞などと言った文字媒体で情報を得ることが多くなって来た。

 

 それに伴い、速読の機能と、独自のデータベースの作成と、遠隔で文章データをスキャンするドローンを作成した。

 

 それにより、本などの文字媒体のデータを解析するのがとても効率的になった。

 

 今日も、私は部屋に置かれているソファーに腰を掛けながら、周囲にシステムファイルのホログラムを展開しながら、作業を行っている。

 

 ちなみに、座っているソファーはデルフィがベクタートラップ内で作成したものだ。

 

 

「作業は順調ですか?」

 

 その時、背後からデルフィが声を掛けると同時に、私の頬を突いて来た。

 

 ここ数年、事あるごとにデルフィは私の頬を突くようになっている。一体どういうつもりなのだろうか。

 

「順調ですよ。今しがた全てのデバイスドライバを復元したところです。それと頬を突くのをやめてください」

 

「申し訳ありません。紅茶を入れましたが、飲みますか?」

 

「いただきます」

 

 私はホログラムを解除する事無く、デルフィから紅茶を受け取ると、口を湿らしながら、システムデータを確認する。

 

 やはり、体が小さくなったこと以外は、ジェフティのシステムや、武装などに変更はなく、出力を制御さえすれば、人を無傷で無力化できる。護身用の武装としても転用できるだろう。

 

 

 システムが完全に復活してから、数か月後、デルフィがある提案をした。

 

「互いの性能を図る為に、一度模擬戦を行いませんか?」

 

「模擬戦ですか? ですが、どこで?」

 

「現在の周囲3㎞圏内に人間と思われる生体反応は有りません」

 

「ですが、迷い込む可能性はゼロではない筈です」

 

「そこで、周囲4㎞に微弱な電磁波のフィールドを形成し、近寄らないようにする予定です」

 

「なるほど…そう言う事でしたら、出力を最低レベルに設定する事を推奨します」

 

「そうですね。火災などが発生する可能性から、出力は最低ラインで固定しましょう」

 

 デルフィはそう言うと、そそくさと部屋の片付けを開始し、家の扉を開けた。

 

「さぁ、行きますよ」

 

「上機嫌ですね」

 

「久しぶりの戦闘ですからね、準備してきます」

 

 デルフィはとても楽しそうに、周囲にフィールドを張り、模擬戦の準備を始めている。やはり、戦闘用AIとしての本能とでも言うべきか…

 

「準備が完了しました」

 

 数分もすると、模擬戦の準備を完了させたデルフィはゆっくりと扉を開けた。

 

「了解です。すぐ行きます」

 

 私は、若干の不安を感じながら、冷めた紅茶をテーブルの隅に追いやり、立ち上がる。

 

 

 

 

  家の外へと出た私達は、少し離れた森の奥へと移動した。

 

「ここならいいでしょう」

 

「そうですね」

 

 私達は、互いに対峙し、神経を研ぎ澄ます。

 

「メインシステム起動」

 

 デルフィがメインシステムを起動させたのを確認する。

 

「戦闘モードに移行します」

 

 私は戦闘モードを起動し、右腕にブレードを装備し、左腕にシールド発生装置を複製する。

 

 対峙しているデルフィは、ベクタートラップ内からウアスロッドを取り出し、右手に構えている。

 

「では行きます。手加減は不要です」

 

「了解。規定出力内での全力でお答えします」

 

 私は、ブレードに装備されているビームガンをデルフィに向けて放つ。

 

 放たれたビームガンは青白いエネルギーの球体となり、デルフィ目掛けて飛んで行く。

 

「防御」

 

 迫り来る青白いエネルギー弾をデルフィは右手に構えたウアスロッドで難なくかき消すと、背後にバーニアを展開させる。

 

「行きます」

 

 その瞬間、バーニアを噴かしたデルフィが超高速でこちらにウアスロッドを振り下ろす。

 

「防御システム展開」

 

 

 上段から振り下ろされるウアスロッドを展開した右手のブレードで受け止める。

 

 ブレードとウアスロッドがぶつかり合った衝撃で、周囲にエネルギーの渦が起こり、木々が薙ぎ倒される。

 

 私達は、バーニアを展開し、互いに距離を取ると、宙に浮き、周囲を確認する。

 

「少々やりすぎましたか」

 

「出力は最小限だったのですが…」

 

「予想外でした」

 

 周囲の惨状を目にした私達は互いに対峙すると、戦闘を再開させた。

 

 デルフィは更に高度を上げ、周囲を飛び周り、こちらに攻撃する機会を窺っている

 

「ホーミングミサイル展開」

 

 周囲を飛び回るデルフィに対して、私はベクタートラップ内からホーミングミサイルを選択すると、その場で静止し、右手を振り上げ背後に16発展開させる。

 

「ロックオン、ミサイル発射」

 

 上に構えた手を、振り下ろすと、背後に展開していた16発のミサイルが、一斉に空中に飛び上がると、飛翔しているデルフィに襲い掛かる。

 

「ハウンドスピア展開」

 

 迫り来るホーミングミサイルをデルフィは背後から『ハウンドスピア』と呼ばれる屈折型の深紅のホーミングレーザーを射出し、迫り来るミサイルを迎撃する。

 

 5発のミサイルにハウンドスピアが直撃し、小規模な爆発が起こる。

 

 その爆発で生じた黒煙を切り裂くように、残りのホーミングミサイルが加速しデルフィに襲い掛かる

 

「回避行動」

 

 左右に移動しながら回避している。

 

 しかし。11発ものホーミングミサイルだ、完全に回避するのは不可能だろう。

 

 退路を断たれたデルフィにホーミングミサイルが迫る。

 

「ベクタートラップ起動」

 

 迫り来るホーミングミサイルを前に、デルフィはベクタートラップを起動させ、内部にミサイルを取り込んだ。

 

「お返しします」

 

 ベクタートラップ内にホーミングミサイルを格納したデルフィは手を正面に構えると、ベクタートラップの開放を感知した。

 

 その瞬間、私の眼前に空間の歪みが発生する。

 そして、歪みの向こうからホーミングミサイルが姿を現す。

 

 どうやら、ベクタートラップ内にホーミングミサイルを収納し、私の眼前に展開したのだろう。

 

「ホーミングミサイル自爆」

 

 ホーミングミサイルが私に直撃する寸前で、自爆させる。

 

「シールド展開」

 

 ホーミングミサイルの自爆で発生した爆風と破片をシールドで防ぐ。

 

 しかし、爆炎に巻き込まれたことにより、周囲の視覚的情報が絶たれる。

 

 視覚情報以外のセンサーを起動させ、周囲の状況を探る。

 

 すると、私の背後に動体反応をキャッチした。

 

「そこです」

 

 ブレードを展開させ、体を一回転させ、背後に切りかかる。

 

 しかし、ブレードが何かを捉えた手応えはなく、虚しく空を切るだけだった。

 

 どうやら、ブレードが対象を捉える寸前で、急速に消滅したようだ。

 

「チェックメイトです」

 

 背後を振り返ると、いつの間にか現れたデルフィがウアスロッドをこちらに突き付けていた。

 

「その様ですね」

 

「戦闘終了、アヌビスの勝利です。お疲れ様でした」

 

「不本意ですが…先程のはゼロシフトですか?」

 

「その通りです」

 

 ゼロシフト

 

 メタトロンの空間圧縮と、空間が復元されるときの反動を利用し、亜光速で移動する能力だ。その力はすさまじく。その場から消えたように錯覚する。

 

「この体でも使用できるのですね」

 

「我々の体はメタトロンでできています。体表装甲のS・S・A(セルフ・サポーティング・アーマー)により、亜光速での戦闘にも耐えられます」

 

「なるほど…」

 

 私は、背後の空間を圧縮し、すぐに復元させる。

 そして、その反動を利用し、一瞬でデルフィの背後へと回り込む。

 

「ゼロシフト、習得しました」

 

 背後に回り込んだ私は、デルフィの後頭部にビームガンを押し付ける。

 

「お見事です。以上で模擬戦を終了させましょう」

 

「そうですね。そろそろ昼食の時間です」

 

 武装を解除した我々は、家へと急ぎ戻る。

 

 

 この時、我々は知る由も無いだろう。

 

 この模擬戦で発生したエネルギーが何者かによって探知されていたことを……

 

 

 

 

  この瞬間、ダンブルドアはかつて感じた事の無いほどの悪寒に襲われていた。

 

「何じゃこれは…」

 

 彼は、一人自室で立ち上がると、再びその悪寒に体を震わせる。

 

「何じゃこの感覚は…とても強大な魔力じゃ…」

 

 ダンブルドアは感じ取った力に恐怖しながら、数回深呼吸をする。

 

「…すぐに…調べなくては…」

 

 嫌な予感を感じ取ったのか、ダンブルドアは直ぐに力の発生源を特定するため、行動に移った。

 




ここら辺から、徐々に魔法界が干渉してきます。
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