さらに数日が経った後。
再び犠牲者が出た。
容疑者を拘留しておきながら、犠牲者を出すとは、魔法省としても、予想外の事態だったのだろう。
「ジニー…なんで…ジニーが…」
グリフィンドールの談話室にて、ロンが膝から崩れ落ち、嘆いている。
その周囲には、ホグワーツに在学しているウィーズリー家が集まっており、互いに涙を流している。
そして、ハリーとハーマイオニーはそんなロンに寄り添っている。
ジニー・ウィーズリー。ウィーズリ家の末娘の事だ。
そんな彼女が先日スリザリンの後継者によって連れ去られたという事だ。
そして、壁には血文字を模した赤いペンキで『彼女の白骨は永遠に秘密の部屋に横たわるであろう』と書かれていた。
しばらくし、ロン以外のウィーズリ家が自室に戻った。
「さぁ、僕達も自室へ戻ろう」
ハリーが、ロンの肩にそっと手を添えた時、項垂れたロンが首だけを上げ、こちらに声を掛ける。
「なぁ…エイダ…デルフィ…」
「何でしょう?」
「秘密の部屋の入り口はあの女子トイレなんだよな…」
「はい」
「なら――」
「待って!」
ハーマイオニーがロンの話を遮り、声を上げる。
「どうするつもりなのよ!」
「どうするって…助けに行くんだよ! 妹なんだから当たり前だろ!!」
「でも…魔法省の人達だって手を焼く程の相手なのよ! それを私達だけでどうやって…」
「僕等3人の場合、成功する確率はどれくらいだ…」
「救助のみならば3.58%。全員が生還する確率は0.08%」
項垂れたロンの質問にデルフィが答える。
「分かったでしょ、私達だけじゃ何もできないわ!」
「もし…」
ハリーがゆっくりと口を開く。
「もし、君達が去年みたいに協力してくれたらどれくらいになる?」
「ハリー…」
「条件により左右されますが、90%以上です」
「そうだよな…君達はハーマイオニーは助けたんだもんだ」
「どういう意味よ!」
「別に…でも、気になるんだよ…君達はバジリスクが出たら分かるんだろ?」
「巨大な生命体なので検知自体は可能です」
「なら、なんで、ジニーの時は何も分からなかったんだ!」
「対象が行方不明になった際。生命反応は検知されませんでした。何者かによって連れ去られた可能性は低いです」
「じゃあ! あれか! ジニーは自分の意志で秘密の部屋へ行ったって言うのか!」
「状況から判断するに、その可能性が一番高いです」
「なんだよ!」
ロンは不貞腐れた様に、項垂れるだけだ。
「分かりました、では早急に救出作戦を開始しましょう」
「でも、ダンブルドアは勝手な事はするなって…」
「緊急措置です。これ以上彼の指示に従う事は、対象の生還率を著しく低下させます」
「そうだね。ここに居ても始まらないよ」
ハリーに諭され、ロンはゆっくりと立ち上がる。
「それでは移動を開始します」
「あっ! ちょっと待って!」
「どうしたんだよ、ハリー? 急いでるんだぞ」
「ちょっと先生を呼んでくるよ、人手は少しでも多い方が安全さ。君達は先に行ってて!」
ハリーは談話室を抜け出すと何処かへと消えていった。
「では、我々も移動しましょう」
こうして、私達は入り口がある、女子トイレへと移動した。
女子トイレへ到着すると、既にハリーが待機しており、その横にロックハートが怯えながら立っていた。
「ハリー! なんでそいつを連れて来たんだ」
「一番近くに居たんだ」
「ハリー…先程も言ったが、私はこれから用事があるから、部屋に戻らなくては…」
「なんだって…逃げるのかよ!」
「いやぁ…逃げるなんてとんでもない」
「そうよ! ロックハート様がそんなことする訳ないわ!」
「もっ…もちろん!」
大きく胸を張るロックハートを見つめるハーマイオニーに対して、ロンとハリーは呆れた表情をしている。
「じゃあ、行きましょうか先生」
ロンは折れた杖をロックハートに突き付ける。
「ちょっと! ロン! 何してるのよ!」
「コイツが逃げるかもしれないだろ! さぁ! 杖を渡せ!」
「逃げる訳ないじゃないか」
ロックハートは乾いた笑みを浮かべるるが、ロンの視線を感じ、渋々杖を渡す。
「えーっと…このあたりかな?」
ハリーは蛇口を覗き込んでは何やら考え事をしている。
近辺に、プロテクトが掛けられた扉を検知する。
「退いてください」
「どうするの?」
「ハッキング開始」
プロテクトに侵入し解除する。
すると、大きな音を立て、水飲み場が動き、入り口が現れた。
「すごい…」
「さぁ行きましょう」
「あぁ、そうだね。じゃあ」
ロンはロックハートに杖を突き付けると、入り口へと追いやる。
「え? ちょっと…」
「先に行くんだ」
「待って…待ってってば!」
しかし、ロンは躊躇う事無くロックハートを突き飛ばす。
「あぁあぁぁぁあああ」
かなりの深さだったのか、反響音と化したロックハートの叫び声が聞こえてきた。
「じゃあ…僕たちも行こうか…」
「えぇ、行きましょう」
ハリー、ロン、ハーマイオニーの順番で飛び降りた後。私は穴へと降りていく。
その後に続き、私達もバーニアを展開し、緩やかに降下して行く。
「いてて…もっと気を付けて降りればよかった…みんな平気か?」
「私は大丈夫よ」
「あぁ、なんとかな」
「まったく、君達は何を考えているんだ! こんな所に突き落すなん…て…」
ロックハートは言葉に詰まりながら、奥の方を指差す。
「なんだこれ?」
「バジリスクの抜け殻だ」
「じゃあ…この先に…」
「生体反応を検知しました。休眠状態にあるようです」
「良し! 急ごう!」
私達を先頭に、ハリー、ハーマイオニー、ロックハート、ロンの順番で歩みを進める。
しばらく進むと、ロックハートが徐に歩みを止める。
「どうしたんだよ」
ロックハートの背後から、ロンが杖を突き付ける。
「うりゃ!」
「うぉ!」
突如として、ロックハートがロンを突き飛ばすと、杖を奪い取る。
「ハハハッ! これで形勢逆転ですね!」
折れた杖を掲げ、大声を上げながら、こちらに杖を突き付けてくる。
「残念ですが、ここまでです! 貴方達には、この一件は忘れてもらいましょう!」
「ちょっと! それどういう事よ!」
「うーん、大切なファンを傷付けるのは、心が痛みますが、この際、お教えしましょう!」
その後、ロックハートが自分が行ってきた詐称や他者の逸話の奪還について等を自白する。
「そんな…嘘よ…」
「残念だけど、事実だよ。でもご安心を! 私は忘却魔法は大得意なんだ!」
ロックハートは勢い良く杖を掲げる。
「ちょっと! 何とかしてよ!」
「不必要でしょう」
「え?」
「それでは、いきますよ!オブリビエイトぉぉぉぉぉおおぉぉお!」
ロックハートが魔法を放った瞬間、折れた杖により逆流し、その体が吹き飛ばされる。
吹き飛ばされたロックハートはゆっくりと起きると、周囲を見回す。
「あれ? ここはどこだ? 君達の家?」
「そんな訳ないだろ」
「ハハッ、そりゃそうだ」
「ロン…」
「放っておこうぜこんな奴」
ロックハートをその場に置き、歩みだそうとする。その時。
「大規模な地盤の揺れを検知、岩盤の崩落に注意してください」
次の瞬間、大きな地鳴りと共に、地面が大きく揺れ、岩盤が崩れ落ちた。
「うぉおおおお!」
私達以外は、その場にしゃがみ込む。
「「ロン!」」
私達の眼前に岩盤が落ち、ロンとロックハートが取り残される。
「ロン! 無事かい!」
「なんとか、あぁ…残念なお知らせだ。ロックハートも無事だよ」
「よかった…」
ハリーとハーマイオニーは落ち着いたのか、安堵の表情を浮かべる。
「これ、何とかならない?」
「スキャン完了。地盤が安定していない為、爆破などによる除去は不可能。手作業による除去をお勧めします」
デルフィのスキャン結果を聞き、3人は分かり易く落胆する。
「しょうがないわね、私達は先に行きましょう」
「そうだね。ロン! そういう事だからロックハートの事を見ててくれ!」
「あぁ、分かったよ」
「では、先に進みましょう」
私達は崩落した岩盤を背に、歩みを進めた。
次回、トムが………