ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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今回は予想外の展開が起こります。




取引

   しばらく歩みを進め、巨大な蛇のオブジェクトによりロックされた扉をハッキングし開放すると、開けた空間に出る。

 

「何だろう…ここは…」

 

 部屋の左右には蛇の頭部のオブジェクトが鎮座しており、最奥には少女が横たわっていた。

 

 生体反応はあるが、とても微弱だ。

 

 

「あれって!」

 

「ジニーだ!」

 

 ハリーは少女に駆け寄ると、その肩を揺らす。

 

「ジニー! 目を開けてよ!」

 

「ジニー…」

 

 ハーマイオニーも駆け寄り、悲しみに満ちた表情を浮かべる。

 

 

「残念だけど、その子は目を覚まさないよ」

 

 背後から、エネルギー反応を検知する。

 

 振り返るとそこには、少年の姿をしたエネルギー体が、柱の奥から現れた。

 

「トム…リドル…」

 

「え? 彼が?」

 

 トム・リドルと呼ばれた少年は、ワザとらしく一礼する。

 

「こうして会うのは初めましてだね。会いたかったよ。ハリー・ポッター」

 

 

「君は一体何者なんだ?」

 

「僕かい? 僕は記憶さ。この日記には50年前の記憶が残されている」

 

 トムはそう言うと、黒い表紙の日記帳を取り出す。

 

「それで、どうしてジニーが目を覚まさないんだよ! 何がどうして!」

 

 ハリーが声を荒げると、トムは不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

「彼女の魂は、もう殆ど残っていないんだ」

 

 

 

「どうにかならないのか? 助けてよ…このままじゃバジリスクが来る…」

 

 

 

 ハリーは必死にジニーを抱えようとしている。

 

 

「安心していいよ。バジリスクはまだ来ない」

 

「なんでそんな事が言い切れるのよ」

 

「なぜって、それは、僕がスリザリンの後継者だからさ」

 

 突然の告白に、ハリーとハーマイオニーは目を白黒させていた。

 

 

「どうして…スリザリンの後継者はハグリッドだって…君がそう言ったじゃないか!」

 

 

「フッ…ハグリッド…あんなウスノロがスリザリンの後継者になれる訳ないだろ」

 

「まぁ…言われてみればそうよね」

 

「ハーマイオニー…」

 

「さて…折角だから、総て話そう」

 

 トム・リドルは自身が行ってきた事柄について、話し始める。

 

「そんな…まさかジニーが後継者だったなんて」

 

「日記を手にした時点で、彼女の運命は決まっていたのさ」

 

 黒い表紙の日記帳を手に収めたトム・リドルは不敵な笑みを浮かべる。

 

 

 

「そして…ハリー…君に一つ聞きたい…なぜこれといって特別な魔力も持たない赤ん坊が、神に選ばれし偉大な魔法使いをどうやって破った? ヴォルデモート卿の力が打ち砕かれたのに、君は、たった1つの傷痕だけで逃れたのか?」

 

「僕がどうやって生き残ったか、知ってどうするんだ?君には関係ないだろ!」

 

 

 

「無関係な訳無いじゃないかぁ! ヴォルデモートは、僕の過去であり、現在であり、未来なのだ! ハリー・ポッター」

 

 

 

 トムが杖を振るうと、空中に『TOM MARVOLO RIDDLE』の文字が浮かんだ。

 

 

 

 その後、杖を一振りすると、文字が動き出し、並びが変わる。

 

 

 

「あッ! 分かったわ! 簡単なアナグラムよ! 並べ替えると I AM LORD VOLDEMORTになるわ! って事は…まさか…貴方が闇の…帝王…」

 

「穢れた血は黙って居ろ!」

 

 ハーマイオニーによって話の腰を折られた事に腹を立てたのか、激怒したトム・リドルは蛇のような鳴き声を上げる。

 

 その直後、大きな地鳴りと共に、奥から黒い色の蛇が現れた。

 

 

 

 そして、部屋の反対側からは、1羽の派手な鳥が現れた。

 

 

 

「あれは…ダンブルドアの不死鳥か」

 

 

 

 現れた不死鳥はハリーに薄汚い帽子を渡すと、上空を大きく旋回している。

 

「フッ、不死鳥と組み分け帽子が応援とは、ダンブルドアも立派な援軍を送って来たな!」

 

 トム・リドルは小馬鹿にするように、嘲笑っている。

 

「さぁ? それでは本題に戻ろう。ハリー…君はどうやって生き残った?」

 

 

 

 ハリーはトムを睨み返すと、力強く答えた。

 

 

 

「お前が僕を襲ったとき、どうして力を失ったのか、誰にも分からない。僕自身にもわからないんだ。でも、なぜお前が僕を殺せなかったのか、僕にはわかる。母さんが、僕を庇って死んだからだ!」

 

 

 

 それを聞いたトムは、その表情を歪めながら、笑う。

 

 

 

「そうかぁ…母親が君を救うために死んだ。なるほど、それは呪いに対する強力な反対呪文だ。結局の所、君自身には特別なものは何もないわけだ。僕と違ってね」

 

 

 

 再び、トムが不気味な笑みを浮かべる。

 

 

 

「さて…そろそろ遊ぼうじゃないか! ハリーポッター! そして、巻き込まれてしまった哀れな小娘達!」

 

 

 

 トムはその場でお辞儀をすると、その場を離れ、スリザリンの石造の前でパーセルタングで何か囁いている。

 

 

 

 その声を聴いて、ハリーはとても怯えている様だった。奴が何を言っているのか理解したのだろう。

 

 

 

 次の瞬間、石造の口が開かれ、その奥から黒々とした、巨大な蛇が姿を現した。

 

 

 バジリスクは現れると同時に、こちらにエネルギー照射を開始する。

 

「目を見ちゃダメだ!」

 

「シールド展開」

 

 

 私はハリー達の前に立つと、シールドを発生させエネルギーを無効化する。

 

 これにより、背後に居るハリー達に影響は及ばないだろう。

 

 デルフィは、ウアスロッドを構える。

 

「駆除行動に移行します。所要予定時間10秒」

 

「了解、カウントを開始します」

 

 カウント開始と同時に、デルフィが飛び上がり、バジリスクに襲い掛かる。

 

「10秒だと! 笑わせるな! 行け! バジリスク!」

 

 大口を開けたバジリスクがデルフィを飲み込もうと突進する。

 

「攻撃開始」

 

 デルフィは大口を開けたバジリスクの口の中に自らの腕を突っ込む。

 

「ハッ! 他愛も無い! そのまま腕を噛みちぎれ!」

 

 しかし、バジリスクの動きが急激に鈍くなる。

 

「ウアスロッド可変機構展開。開口処置を開始」

 

 次の瞬間、バジリスクの口がデルフィの手にしているウアスロッドによって強制的に開かれる。

 

「すごい…」

 

「戦闘開始から5秒経過」

 

「了解。ベクタートラップ起動」

 

 デルフィがバジリスクの体内でベクタートラップを起動する。

 

「解放」

 

 そして、次の瞬間、空間圧縮の反動によりバジリスクの体が内部から爆破する。

 

 ゼロシフトと同じ要領でバジリスクの体内の空間を圧縮し、その反動を利用し爆破させたのだろう。

 

「戦闘終了。所要時間は6秒でした。想定より早いです。お見事です」

 

 周囲に飛び交う肉片をシールドで防ぎながら、私はデルフィに戦況報告をする。

 

「そんな…バジリスクがこうも…簡単に…」

 

 焦燥しきった表情のトム・リドルが黒い表紙の日記帳を抱えると、宙に浮きあがった

 

 

「こ…このままでは分が悪い…残念だが、今回は、これで失礼させて貰おうか」

 

 

 

「待て! 逃げるのか!」

 

 

 ハリーが叫び、杖を振り魔法を放つ。

 

 放たれた魔法はトムに直撃するが、まったく効果が無い様に見える。

 

 

「フッ、無駄だ!」

 

 高揚しているのかトム・リドルが声を荒げる。

 

「逃げちゃうわよ!」

 

「逃しません。ウィスプ展開」

 

 私はサブウェポンのウィスプを起動させると、移動中のトム・リドルに向けて放つ。

 

 しかし、ウィスプはエネルギー体であるトム・リドルを捕えるのではなく、手にしていた黒い表紙の日記帳を捕えた。

 

「なに!」

 

  焦りの表情を浮かべるトム・リドルに対し、私は手中に収めた黒い表紙の日記帳をスキャンする。

 

 どうやら、この日記帳がトム・リドルへのエネルギー供給源の様だ。

 

「スキャン完了。エネルギー遮断開始」

 

 エネルギーの供給を断つと、トム・リドルの体が地面へと堕ちる。

 

「なぜ…君達は…一体…」

 

「貴様!」

 

 ハリーはトム・リドルに掴み掛ると、数発殴る。

 

 しかし、エネルギー体である彼にそれは全くの無意味だった。

 

「それ以上は意味が有りません」

 

「でも…」

 

「それよりも、救援を要請する方が先決かと。対象は我々で監視します」

 

「わかったよ…僕はちょっとロンの事も気になるし、ちょっと様子を見て来るよ」

 

「了解」

 

 ハリーはそう言うと、来た道を戻って行く。

 

「ジニー…大丈夫かしら…」

 

 ハーマイオニーはジニーに寄り添うと、心配そうに覗き込む。

 

「もう手遅れさ。僕が居る限り彼女は助からない」

 

「なんで…」

 

「ふっ…君達みたいに今を生きている奴等に分からないだろうけどな。僕はこの50年間ずっと薄汚れた本棚に閉じ込められていたんだ! まぁ…自業自得と言われれば仕方ないかもしれないが…」

 

「なんか…可哀想ね…」

 

「まさか、穢れた血に哀れまれるとはね。僕も落ちるところまで落ちたな」

 

 トム・リドルは何かを悟った様に笑って居る。

 

「で? 僕をどうする? 本を手にしている君ならもう分っていると思うが、その本が僕の本体だ。生かすも殺すも君達次第さ。君達なら簡単に破壊できるはずさ。まぁその場合。彼女も道連れにしてやるよ」

 

「そんな…ねぇ…何とかならないの?」

 

「そうだな…なら、取引をしないか?」

 

「取引ですか?」

 

「そうだ。僕は日記帳を手にした奴の事が分かるんだが、君は凄い力を持っている。それ程の力があれば、僕を復活させられるんじゃないか?」

 

「そうなの?」

 

 ハーマイオニーとトム・リドルの視線が、私達に集中する。

 

「新たな肉体を生成する事は現在の設備では不可能です」

 

「じゃあ、交渉決裂さ」

 

「結論を出すのはまだ早いかと」

 

「それってどういう事?」

 

「詳しく説明します。ですが、その前に」

 

 デルフィがゆっくりと上を指差すと、二人が顔を上げる。

 

「なるほど、ダンブルドアか」

 

「えぇ、ですから」

 

 私は日記帳を開くと、ペンを取り出す。

 

『筆談に切り替えます。よろしいですか?』

 

『あぁ、問題ない』

 

 ハーマイオニーはゆっくりと頷く。

 

『説明を開始します。本に残されている貴方の記憶データをスクリーニングし、純粋な記憶データのみを別の端末へと移植します』

 

『なるほど…で? 僕の新しい住処は?』

 

『ハーマイオニー、タブレット端末を』

 

「え?」

 

 ハーマイオニーはポーチからタブレットを取りだす。

 

『こちらに移植します』

 

『変な石板だな…まぁ…古本よりはましか…』

 

『交渉成立ですか?』

 

『分かったよ。彼女の魂は返そう』

 

『了解』

 

 次の瞬間、ジニーの生体反応が回復する。

 

 やはり、魔法とは不思議な物だ。

 

 私は本を閉じると、タブレット端末を一度ベクタートラップ内へと収納する。

 

 ベクタートラップ内で、タブレット端末に小型のメタトロン製アンチプロトンリアクターを組み込むなどの改造を加える。

 

「エイダ…」

 

「準備完了」

 

 

 端末を手にした私は、本からデータを抜き取ると、タブレットへと移植を開始する。

 

 淡い光が周囲を包むと、本にあるデータは特殊な物を1つ残し移植する。

 

 それと同時に、トム・リドルのエネルギー体も消滅する。

 

「トランスプランテーション完了」

 

 タブレット端末に電源を入れると、文字が浮かび上がる。

 

『なんだこれは…凄いじゃないか。この情報量、この快適さ。古本なんかとは比べ物にならない』

 

 タブレット端末に通信を繋ぐ。

 

『お気に召しましたか?』

 

『まさか、通話もできるとは、なるほど…これが…』

 

「ねぇ、何がどうなってるの?」

 

「こちらを着用ください」

 

 私はハーマイオニーに、イヤホン型の通信機を手渡す。

 

「耳に付けるの?」

 

「そうです」

 

 慣れない手つきで、耳に何とか装着する。

 

『現状、貴方はその端末の管理AIとして存在します。いくつかの制限を設けましたが不自由なく行動できる筈です。ホログラムとして、先程同様体を投影する事が可能です』

 

 次の瞬間、ホログラム化したトム・リドルの体が現れる。

 

『まぁいいさ。満足しているよ。ところで、完全に移せた訳じゃ無いみたいだね』

 

『えぇ、一部特殊なデータの為、移植すると崩壊する恐れがありました』

 

『なるほど…やはり魂までは移せなかったか…』

 

『ちょっと待って!』

 

 ハーマイオニーが特殊なデータが残った本に文字を書き込む。

 

『私のタブレットに居るって事?』

 

『その通りです』

 

『何か、複雑な気分』

 

『まさか、穢れた血の所有物になるなんて…屈辱だ』

 

『ねぇ、これって削除できる?』

 

『可能です』

 

『え? ちょっと――』

 

『そう、なら私に逆らわないようにね』

 

『なんてこった…これなら古本の方がマシだったかもな』

 

『まぁいいわ。これからよろしくね。トム』

 

『もうトム・リドルじゃないんだけど』

 

『なら、ただのトムで良いじゃない。二人もそう思うでしょ?』

 

『よろしいかと』

 

『賛成です』

 

『ね』

 

『はぁ…了解さ』

 

『それでは、トム。貴方の体を拘束します』

 

『なんでさ?』

 

 ハーマイオニーも首をかしげて、不思議そうな表情をしている。

 

『恐らく、ダンブルドアは不死鳥を利用し、こちらを監視している筈です。このまま貴方を拘束せずに逃走させれば、疑惑の目を向けて来る筈です』

 

『まぁ、アイツの事だから、疑うだろうね』

 

『そこで、貴方を拘束しダンブルドアの前へ連れて行きます。その後、エネルギー供給源であった本を消去します』

 

『それに乗じて、僕には消える演技をしろと?』

 

『その通りです』

 

『なんてこった…それじゃあ、僕の魂は完全に消滅するじゃないか』

 

『現状、貴方はタブレット上に存在します。魂の有無は分かりませんが、それでは不服ですか?』

 

『まぁ…快適だし別に問題無いさ。で? どんな演技をすればいいんだ?』

 

『お任せします。何らかの行動を起した後、本を消却します』

 

『分かったよ』

 

『なんでそんな事しなきゃダメなの?』

 

『恐らく、そこまでしないと、あの男は納得しないさ』

 

『そんなぁ…何か、私悪い事をしている様な気が…』

 

『実際悪い事さ。でも仕方ない、この場に居る全員が共犯さ』

 

 トムは諦めたのか、ホログラム上にて、後ろ手で拘束される。

 

「では行きましょう」

 

「はぁ…そうね」

 

 デルフィが拘束したトムを誘導し、私がジニーを抱きかかえると、その場を後にする。




トムはAIとしてハーマイオニーに今後こき使われる予定です。

少し無理やり感がありますが、人格をコピーしたAIが存在するので、AIトムの誕生です。

そして、次回ハーマイオニーが――
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