ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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タイムパラドックスだ!


タイムパラドックス

 

   ホグワーツへと到着すると同時に、マクゴナガルを始め、複数人の教員が出迎え、重軽傷者に駆け寄る。

 

 医療知識のある教員によるトリアージ後、処置が必要な生徒は、医務室へと運ばれて行った。

 

「何があったのです?」

 

 負傷者の搬送が終わった後、マクゴナガルが問いかける。

 

「ディメンターによる襲撃を受けました。数体撃破後、R・Jルーピン教授により、撃退が成功しました」

 

「え?」

 

 マクゴナガルは困惑の表情を浮かべた後、私達の背後で申し訳なさそうな表情のルーピンが佇んでいた。

 

「はぁ…後で詳しい話を。いいですねルーピン先生」

 

「あっはい」

 

「貴女達はもう戻っていいですよ」

 

「了解しました」

 

「失礼します」

 

 大広間へと戻ると、既に入学式が始まっていた。

 

 例年通りに、指揮は進み、組み分けも終了する。

 

 その後、組み分け帽子による歌が始まる。

 

『なんか去年とは違う歌詞ね』

 

『そのようですね』

 

『毎年そうなのさ。まぁ、言い回しが違うだけで、大半は同じ事を言って居るだけだ』

 

 帽子が歌を終えると、ダンブルドアが登壇する。

 

「新学期おめでとう! 皆にいくつかお知らせがある。1つはとても深刻な問題じゃから、皆がご馳走でぼぅっとなる前に片付けてしまうほうがよかろう…」

 

 ダンブルドアはワザとらしく咳払いを数回する。

 

「皆も知っていると思うが、先程ホグワーツ特急で起こった(事故)についてじゃ」

 

『事故…ねぇ』

 

 ディメンターの襲撃を、事故の一言で片付けるダンブルドアに対して、トムは不信感を募らせている様だ。

 

「我が校は今アズカバンのディメンターを受け入れておる。魔法省のご用でここに来ておるのじゃ」

 

『ホグワーツにディメンターねぇ…こりゃ、物騒な事になったものだ』

 

『そうよね、私達に危害は及ばないかしら…』

 

『さぁねぇ。まぁ下手に手出ししなければ問題ないんじゃないかな』

 

『まったく、他人事だと思て』

 

『AIには魂を吸われる心配は無いからね』

 

 AIに危害が無いのならば、私達にも該当するのだろうか。

 

「ディメンター達は学校への入り口という入り口を固めておる。あの者たちがここにいる限り、誰も無許可で学校を離れてはならんぞ。絶対にな。ディメンター達は悪戯や変装に引っかかる程馬鹿ではない。透明マントでさえ無駄じゃ。姿現しでもしたら外に出ることは可能じゃろうがのぉ…じゃが、ホグワーツでは姿現しは出来ん。ワシがその様な呪文をかけておるからのぉ」

 

 つまり、ゼロシフトによる、亜光速移動や、ステルスシステムは通用する様だ。

 

「それとじゃ、ディメンター達に言い訳やお願いを聞いてもらおうとしても、通用せん。あ奴等は聞く耳を持たん。そもそも耳があるのかすら分からん。それから一人ひとりに注意しておくのじゃが。あの者たちが皆に危害を加える口実を与えるでないぞ。絶対に自分から近づいて行ってはいかん。対抗や、封じる術を持っていたとしてもじゃ。絶対に手出しは禁止じゃ」

 

 言い終えた後、ダンブルドアは私達を睨み付けているようにも見える。

 

 恐らく、同席していたルーピンの報告を受けたのだろう。

 

 最低限の自衛行動すら封じろと言うのだろうか。

 

「さて…暗い話は以上にして、楽しい話に移ろうかの」

 

 ダンブルドアが、ルーピンを見ながら話し続けた。

 

「今学期から新任の先生を2人もお迎えする事となった。まずは、ルーピン先生。有り難いことに空席になっている闇の魔術に対する防衛術の担当を引き受けてくださった」

 

 

 生徒からは疎らな拍手が起こる。

 

 近年の闇の魔術に対する防衛術の担当教諭が起こした不祥事によって不信感を募らせているのだろうか。

 

 拍手を受けているルーピンは、若干の心拍数の上昇から判断するに、嬉しさと恥ずかしさが入り混じっているのだろう。

 

 対面のスネイプのメンタルコンデションレベルが急激に低下する。

 

 最早殺意を抱いていると言っても過言ではないレベルだ。

 

「さて、次は魔法生物飼育学にハグリッドじゃ」

 

 予想外の展開に生徒達から歓声が上がり、グリフィンドールからは盛大な拍手が送られた。

 

『まさか、あの木偶の坊が教師になるとはね』

 

『まぁ、ちょっと意外よね。でも面白そうな授業になりそうだわ』

 

『あんな奴が教師になるくらいなら、僕だって教師になれるだろうね』

 

『貴方の場合は何の担当かしら?』

 

『闇の魔術に対する防衛学かな』

 

『使用禁止の魔法ばっかり使いそうね』

 

『偏見だね』

 

『妥当な判断かと』

 

『デルフィもああ言って居るわよ』

 

『もう好きにしてくれ』

 

 トムは呆れた様に通信を切る。

 

 

「さて…これで話は終わりじゃな、それでは食事を始めよう」

 

 その合図を皮切りに、目の前に料理が現れる。 

 

 多くの生徒が待ち侘びていたのか、料理に齧り付いている。

 

 

  翌朝、朝食を取る為に、大広間へと向かうと、不機嫌そうなハリーを発見する。

 

 対面には、先日のディメンター襲撃の際に気を失ったハリーの模写をして笑いを取っているマルフォイの姿があった。

 

 誇張されているがなかなかの再現率だ。

 

 

「なんであんな馬鹿らしい事を…」

 

 呆れた様子のハーマイオニーは首を横に振り、溜息を吐く。

 

 その際に、手にしていた本の束から、一枚の紙が零れ落ちる。

 

「なんだこれ?」

 

 紙を目にしたロンは、急激にその表情を曇らせる。

 

「ハーマイオニー、その時間割、滅茶苦茶じゃないか。ほら、1日に10科目もあるんだぜ? そんなに時間があるわけないのに…どうするんだよ」

 

 

「何とかなるわ。マクゴナガル先生と一緒に決めたんだから」

 

 

「でもほら、午前中、わかるか? 9時、占い学。そしてその下だ。9時、マグル学。それから…おいおいその下に数占い、これも9時ときたもんだ。そりゃ、君が優秀なのは知ってるよ、僕よりも頭がいい。でもねハーマイオニー。同じ時間では、1つの授業しか受ける事は出来ない。僕の頭でもそれは分かる…それなのに3つの授業にいっぺんにどうやって出席するんだ? ん?」

 

「マクゴナガル先生と相談したのよ。大丈夫だから心配しないでって言ってるでしょ」

 

 ハーマイオニーは何かを知られるのを恐れているかのように、ロンを疎ましく遠ざける。

 

 しかし、一体どのような手法で授業を受けるのだろうか? 恐らく未知の魔法技術だろう。

 

「もう良いでしょ。それより私、これから占い学の授業なの。そう言えば貴女達も選択していたわよね」

 

「えぇ」

 

「そう。なら一緒に行きましょ」

 

「でも…」

 

「しつこいわよ」

 

 ハーマイオニーは荷物をまとめ始める。

 

「おい待てよ。この時間はマグル学と後、えーっと数占いがあるぞ」

 

「大丈夫よ。さぁ行きましょう」

 

 私達は、ハーマイオニーの後に続き、大広間を後にした。

 

 

 大広間を出てからしばらく歩くと、北塔の最上階付近まで来た。

 

「ごめんなさい。私ちょっとトイレへ行ってくるわ」

 

「了解です」

 

「うん。だから二人は先に行ってて」

 

「わかりました」

 

 北東の最上部は小さな踊り場が設置されており、更にその上部に空間を検知する。

 

 上部には丸形の撥ね扉が設置されており、『シビル・トレローニ占い学教授』の看板が張られている。その先の空間が教室なのだろう。

 

「ごめんなさい。待った?」

 

 背後から、教科書を抱えたハーマイオニーが軽く息を切らしながら階段を上ってくる。

 

 しかし、現在ここを含めて3か所でハーマイオニーの生体反応とトムのタブレット端末を検知している。

 

 この反応は、トイレへ行った後急激に増殖した反応だ。

 

 しかし、眼前の反応以外は、若干時空や空間の波長に乱れを検知する。

 

『質問してもよろしいですか?』

 

『え…えーっと何かしら?』

 

 

 デルフィの唐突な通信に対して、ハーマイオニーのメンタルコンデションレベルが若干低下する。

 

『現状、貴女とトムの反応を同時期に3か所で検知しました』

 

『そうなの。なんか不思議ね』

 

『何をされているのですか?』

 

 デルフィの問いに対して、数秒の間を置いてハーマイオニーが回答する。

 

『そのぉ…この事は誰にも言わない?』

 

『ご安心を』

 

『ふぅ…私ね、『逆転時計』っていう時間を遡る時計を使って居るの』

 

『つまり『逆転時計』を使用し、複数の授業を同時間軸で受けているという事ですか?』

 

『まぁ…その通りよ』

 

『やっぱりこの時間割じゃ無理があったね。大人しく僕に頭を下げれば、教えてやったと言うのに』

 

『お断りよ。それ以上言うなら削除するわよ』

 

『まったく、すぐ気に入らないと削除削除って。これだからけが――』

 

『これ以上言ったら本当に消すわよ』

 

 若干低めの声により、トムはセーフモードへと移行した。

 

『分かったよ』

 

『さて…話を戻しましょ。この時計はマクゴナガル先生にいただいたの。誰にも言わないって約束でね』

 

『そうなのですか』

 

『だから、この事は黙っていて欲しいの』

 

『公言するつもりは有りません』

 

『よかったぁ』

 

『ですが、時間軸に干渉するという事は、タイムパラドックスを引き起こす事にも繋がります。過去の改編等はなさらないように。どのような影響が出るか分かりかねます』

 

『マクゴナガル先生にも似たような事を言われたわ。その点は気を付けるわ』

 

『もし、不都合が生じた場合は、我々も協力します』

 

『口裏を合わせてくれるって事?』

 

『概ねその通りです』

 

『助かるわ。ロンはしつこく聞いて来るから嫌になっちゃうわ』

 

『あれで純血なんだろ? 信じられないね』

 

 

「あれ? ハーマイオニー。君もここに居たの?」

 

 背後に現れたロンとハリーの姿を見てハーマイオニーは若干驚いている様だった。

 

「え、えぇ。そうよ」

 

「さっき、南棟に向かうのを見た気がするんだけど…」

 

「人違いじゃ無いかしら?」

 

「そうかな?」

 

 ハリーが首をかしげた時、上部の撥ね扉が開き、銀色の梯子が降ろされる。

 

「これを上れって事?」

 

「そうじゃないかな?」

 

 その場に居た生徒たちが、順番に梯子を上っていく。

 

 最後に残った私達は、バーニアを展開し、内部へと移動する。

 

 

 

  占い学の教室は複数のテーブルと椅子が置かれており、教室と言うよりも、小屋の中の様な雰囲気だ。

 

 そして、教室には不愉快な線香の香りが充満している。

 

 人体に影響は無いが、不愉快に感じるレベルだ。

 

 壁には水晶や、ティーカップなどが乱雑に置かれている。

 

 

 

 適当な場所に腰を掛けると、部屋の奥から胡散臭い見た目の痩せた女性が現れた。

 

 

 

「占い学へようこそ。あたくしがトレローニー教授です。たぶん、あたくしの姿を見たことがある生徒は少ないでしょうね。学校の俗世の騒がしさの中にしばしば降りて参りますと、あたくしの心眼が曇ってしまいますの」

 

 非現実的な事を口走りながら、周囲の生徒を見回す。

 

「皆様がお選びになった教科は…占い学。そう、魔法の学問の中でも一番難しいものですわ…初めに、お断りしておきましょう…眼力の備わってない方には、あたくしがお教えできる事は殆どありませんのよ。この学問では書物はあるところまでしか教えてくれませんの…」

 

 つまりは、才能の無い者は学んだところで無駄だという事だろうか。

 

「いかに優れた魔法使いや魔女であっても、派手な音や匂いに優れ、雲隠れに長けていても、未来の神秘の帳を見透かすことはできません。限られた者だけに与えられる天分とも言えましょう。あなた、…そう、そこの男の子」

 

「え? ぼ…僕?」

 

「えぇ、そうですよ。ネビル・ロングボトム」 

 

 指名されたネビルは目を白黒させている。

 

「えっと…なんですか?」

 

「ご家族、特におばあ様元気?」

 

「えっと…元気だと思います」

 

「そう…私が貴方の立場だったら、私はそんなに自信ありげに言えません事よ」

 

 

 トレローニーは鼻で笑いながら、首を左右に振った。

 

「えっと…それはどういう――」

 

「そこのあなた!」

 

「え? 私?」

 

 突如として指名された生徒は、先程のネビル同様に、目を白黒させている。

 

「近いうち、不幸が起きるわよ」

 

 その後も、トレローニーは生徒達に対して、不吉な予言を与えていく。

 

『何か、胡散臭いわね』

 

『占い学なんてそんな物さ。まぁ、予言に左右される事もあるがな』

 

『そうなの』

 

『まぁ、君にはあまり向かないんじゃないかな』

 

『何よそれ』

 

「さて、お次は貴女達ですね」

 

 トレローニーはこちらを覗き込む。

 

「お…おぉおおぉおおお!」

 

「どうかしましたか?」

 

「ひぎぇあぁぁあ!!!」

 

 絶叫したトレローニーは、腰を抜かして後退る。

 

「恐ろしいです! えぇ、とても恐ろしい! まさに終末を呼び寄せる程の!」

 

 トレローニーは一頻り叫び声を上げた後、気を失う。

 

 

 それと同時に、終業を告げる鐘が鳴り響く。

 

「えっと…先生はどうしようか…」

 

「放っておけばいいんじゃないかな?」

 

「そうね。次の授業へ行きましょう」

 

 こうして、私達は、教室を後にした。

 

 




逆転時計ほしいですね。
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