ハリー・ポッターと終末の魔法使い   作:サーフ

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ボガード登場です。


形態模写妖怪

 

   翌日、大広間には、大手を振りながら、取り巻きを引き連れているマルフォイの姿があった。その腕に包帯を巻き、首から吊るしている。

 

「怪我の具合はどうですか?」

 

「あぁ、もう少しすれば治るって言ってた。昨日の応急処置はマグルのやり方か?」

 

「最適と判断した為、医療キットでの処置を行いました」

 

「なるほどね。医務室で腕を見てもらった時、なかなか珍しいやり方だって驚いていたよ」

 

 マルフォイの取り巻き達は、動きを合わせた様に、首を縦に振っている。

 

「まぁ、君達のおかげで助かったよ」

 

「礼には及びません」

 

「まぁ、君達はグリフィンドールだしね。あまり礼を言いたくは無いが、感謝はしているよ。それじゃあ」

 

 大広間から出て行く一団を、見送り、私達は次の授業を受けるべく、教室へと向かった。

 

 

  次の授業は、闇の魔術に対する防衛術の授業だ。

 

 

 

 担当は、ホグワーツ特急で同席となった、ルーピンだという話だ。

 

 ハリーとロンは適当な席に着くと会話を始める。

 

「今年はまともな先生だと良いな」

 

「まぁね、去年は特に酷かった。あのロックハートさm――」

 

 背後に現れたハーマイオニーによって、ロンの後頭部がタブレット端末の角で殴打される。それに伴い、鈍い音が響く。

 

「いってぇ!」

 

「や、やぁ、ハーマイオニー。いつ来たんだい?」

 

「今着た所よ」

 

「そ、そう…いい天気だね」

 

「曇ってるわよ」

 

「あはは…」

 

「あぁぁ! いってぇ! ハリー? 僕の頭欠けてない?」

 

「大丈夫だよ。ロン。君の頭なら多少欠けても問題ないから」

 

「ん? それどういう意味だよ?」

 

 ハリーは適当にはぐらかすと、話題を変えている。

 

 若干不機嫌そうなハーマイオニーは私達の隣へと座る。

 

『まったく、ロンには困っちゃうわ。いつまであの話をするつもりなのかしら?』

 

『僕からすれば、君の方が何倍も迷惑さ。良いかい。タブレットは鈍器じゃないんだぞ』

 

『丁度良い大きさなのがいけないのよ。それに強度もあるし』

 

『メタトロン製なので、並大抵の事では破損しません』

 

『だからと言って、鈍器として使うのはどうかと思うよ』

 

『なら今度は盾に使うわ』

 

『あのなぁ』

 

『簡易的な防御シールド発生システムをアップデートしました。通常の魔法ならば防御可能です』

 

『発動時のエネルギーは僕のを使うのか…これ以上酷使されるのか…』

 

 しばらくすると、古ぼけたスーツに身を包んだルーピンが教室に現れる。

 

「やあ、みんな。おはよう。さっそくだけど教科書は鞄にしまってくれるかな? 今日はいきなりだけど実習をすることにしよう。杖だけあればいいよ」

 

 ここ数年の例もあり、生徒達は皆一抹の不安を隠せずにいる。

 

 生徒達は、教科書を鞄に仕舞い込むと、杖を取り出す。

 

「よし、じゃあ皆、私に付いて来てくれ」

 

 ルーピンは杖を構えて、一振りすると、教室内の机が片付き、広いスペースを確保した。

 

 そして、教室の奥から、ガタガタと震えている、古ぼけた箪笥を持ってきた。

 

「この中には『ボガート』が入っている、君達にはこれからこいつと戦ってもらう」

 

「え?」

 

 周囲の生徒達からどよめきが上がる。

 

「あー大丈夫だよ。魔法生物飼育学では怪我人が出たみたいだけど…それ程危険じゃない。多分、安全さ。さて、この中の『ボガード』に付いて知っている人は居るかな?」

 

「はい」

 

 その言葉に、ハーマイオニーが真っ直ぐ手を上げた。 

 

「じゃあ、君」

 

「形態模写妖怪です。私達が一番怖いと思うものに姿を変えることが出来ます」

 

「その通りだ。完璧な説明だったね。10点あげよう」

 

 ルーピンの言葉に、ハーマイオニーが少し恥ずかしそうに、微笑んだ。

 

「さっきの説明の通り、形態模写妖怪。だからボガートの本当の姿を見たものが居ないんだ。そして、姿を変えるのはいつも一人で居る時だけだ。それは何でかわかるかかな?」

 

 すると、再びハーマイオニーが手を上げた。

 

「複数人で居ると、誰の怖い物に化ければいいかわからなくなるからです」

 

「正解だ、よく勉強しているね。グリフィンドールに追加で15点あげよう」

 

 褒められた上、点数まで貰えたのが嬉しいのか、ハーマイオニーが嬉しそうに、ガッツポーズをした。

 

「さて、ボガートを退治させる呪文は簡単だ。こいつらを退治するのに必要なのは、笑いなんだ。そして、強い精神力も必要になってくる。君達は、見ていて滑稽だと思える姿をボガートに取らせる必要がある。そしてその呪文が『リディクラス』()()()()()()だ。じゃあ一緒にやってみようか」

 

 ルーピンの声に続き、多くの生徒が復唱する。

 

 

 

「よし、これで大丈夫そうだね。じゃあ実際にやってみようか。じゃあ君から」

 

「え?」

 

 ルーピンは楽しそうに言うと、近くに居たネビルを指名した。

 

 

「よーし、ネビル。君の一番怖いものは何だい?」

 

「……プ……い…」

 

 ネビルは、蚊の鳴くような、小さな声で、ボソボソと呟いた。

 

 

「ん? もう一度言ってくれないか?」

 

 

「スネイプ先生」

 

 

 ネビルが少し恥ずかしそうに言うと、その場に居る生徒が大笑いした。

 

 思いのほかうけたのが嬉しかったのか、ネビルがニヤリと笑った。

 

 そんな中、ルーピンだけは少し気不味そうな表情を浮かべていた。

 

 

 

「スネイプ先生か…悪い人じゃないんだけどね。ちょっと怖いかもしれないね…ところで君は、おばあさんと暮らしているよね」

 

 

 

「はい…」

 

 

 

「じゃあ、スネイプ先生が君のおばあさんと同じ格好をしているところを想像してみよう。おばあさんの格好はすぐに想像できるだろ?」

 

 

 

 まじめな表情でとてつもないことを言うので、クラス全体におかしな空気が流れた。

 

 

 

「ネビル、心配する事は無いよ。ただ、スネイプ先生が出てきたら、おばあさんの格好を想像するんだ。いいね。じゃあ行くよ…1! 2! 3!」

 

 

 

 ルーピンが杖を振ると、箪笥の扉が勢い良く開かれ、中から漆黒のローブを着込み、不機嫌そうなスネイプがネビルの元へと歩み寄っていく。

 

 

 

 そんな状況に、ネビルは口をパクパクとさせながら、後ずさった。

 

 極度のストレス下に置かれている。

 

 

「ネビル! 落ち着くんだ! そしておばあさんの姿を想像してリディクラスと言うんだ!」

 

 

 

「りっ…り…リディクラス!」

 

 

 

 次の瞬間、バチンと音を立て、スネイプが躓いた。

 

 そして、みるみるうちに漆黒のローブが緑色のドレスへと変わり、大きな羽根つきの帽子をかぶり、手には真赤のエナメル製バッグを携えたスネイプが、おろおろと周囲を見回している。

 

 

 

 その光景に、日頃スネイプに目の敵にされているグリフィンドール生全員が何かが弾ける様に大笑いした。

 

 

 

「ネビル、よくやったね。さて次は君達の番だ。今のうちに考えておいた方がいい。自分が何が怖くて、どんな姿に変えるのかを。きっと楽しいぞ」

 

 

 

 ルーピンが楽しそうに笑いながら、レコードで曲を流すと、その場に居た生徒達のメンタルコンデションレベルも上昇しテンションも最高潮へと達した。

 

 

 

「皆、準備はいいかい! 次は君だ!」

 

 

 

 ルーピンに指名された生徒が少し恐怖を感じつつボガートの前へ進んだ。

 

 

 

 すると、今までスネイプだったのだが、一瞬で姿を変え、血塗れのミイラが現れた。

 

 

 

「リディクラス!!」

 

 

 

 魔法を放った途端に、ミイラの包帯が剥がれ、その包帯に躓き、盛大にこけた。

 

 その姿に、再び教室が笑いに包まれた。

 

 

 

 それ以降は皆楽しそうに、自分の番を今か今かと待ち侘びているようだった。

 

「じゃあ、次だ」

 

 ハーマイオニーは立ち上がると、ボガードの前へと移動する。

 

 ボガードと対峙してから十数秒経つが、依然として進展が無い状態だ。

 

「えっと…どうしましょう?」

 

「どういう事だろう…」

 

『恐らく、ボガードが心を読めていない状態だね』

 

『え? どういう事よ』

 

『ナノマシンによる精神防壁は現在オンラインになっています』

 

『じゃあ、心が読まれていないから、ボガードが動けないでいるって事?』

 

『概ねその通りです』

 

『ナノマシンって便利なのね』

 

『そうだね。それじゃあとりあえず一時的に精神防壁は解除しておくよ』

 

『え? ちょっと!』

 

 トムの介入により、ハーマイオニーの精神防壁が一時的に解除される。

 

 それにより、ボガードが水を得た魚の様に、活発に動き出すと、赤黒い胴体の大蛇へと姿を変えた。

 

 昨年のバジリスクがトラウマになっている様だ。

 

「もう…リディクラス!」

 

 先程までバシリスクだった物が、音を立て、巨大なピエロが飛び出たびっくり箱に姿を変えた。

 

「素晴らしい!」

 

 ルーピンは楽しそうに称賛を送ると、次は私を指差した。

 

「では次! エイダ。君だ」

 

 突如として、先程までの喧騒が水を打ったように静かになる。

 

 私はボガードの前に立ち、開示可能な情報を公開する。

 

「ギギギ…ガギギ…ガッ!」

 

 すると、眼前のボガードが、情報処理が追い付かないのか、蛇から姿を変え様々な立体的な幾何学模様に変化した後、爆発し、消滅した。

 

「あー…っと…これは。どういう事だろう…」

 

「生命体の消失を確認」

 

「まさか…ボガードが消されるなんて…ちょ、ちょっと待っててくれ」

 

 ルーピンは急ぎその場を後にする。

 

 周囲の視線を受けつつ、私も自身の席へと戻る。

 

 数分後、小さな箱を持ったルーピンが再び現れる。

 

「すまないね。一応予備で用意していたボガードさ。じゃあ次は。ハリーだ」

 

 ルーピンの言葉に、多くの生徒の視線がハリーに集まる。

 

 

 ハリーは緊張した面持ちで、ボガートの前にその身を晒した。

 

 

 

 次の瞬間。小箱から飛び出したボガードがバチンと音を立て、古ぼけた黒いマントを頭から被ったディメンターへと変形した。

 

「ハリー! クソッ! こっちだ!」

 

 恐怖からか動けずに居るハリーとディメンターの間に、ルーピンが割って入る。

 

 ハリーから、ルーピンへと標的が変わったのか、ボガートがバチンと音を立て、姿を変えた。

 

 

 ルーピンの前に現れたのは、小さな満月だった。

 

 

 だが、多くの生徒は月という事が分からないのか、不思議そうな表情で眺めている。

 

 そんな中、ルーピンは面倒くさそうに呪文を唱えた。 

 

「リディクラス」 

 

 すると、月は風船へと姿を変え、萎みながら箪笥の中へと戻っていった。

 

 

 

「よーし…皆良くやった。ハリーも上手だったよ。君達の年齢で、コイツと向き合うのはとても勇気が必要だっただろう。よって、ボガートと対面した子には5点ずつあげよう」

 

 

 

 突然の事に、多くの生徒が状況を理解していないといった表情だった。

 

 ルーピンは少し咳払いをすると、困ったように続けた。

 

 

「今日はここまでにしよう。宿題は、ボガートに関するレポートの提出だ。ハリー、ちょっと君には少し聞きたい事がある。少し残ってくれ」 

 

 終業を告げる鐘が鳴ると、生徒達が一斉に教室を後にした。

 

 そんな中、ハリーだけがルーピンと一緒に、奥の部屋へと消えていった。

 

 ルーピンの真面目であり、体験型の授業はたちまち評判を呼び、闇の魔術に対する防衛は人気教科の一つに挙げられるようになった。

 

 去年、一昨年の担当教諭に不備があった事も考慮されているだろう。

 




ボガード程度では、情報処理が追い付かず、脳を焼き切られました。

精神防壁については、同監督作品である、MGSから引用しました。

そちらは、手術によるものですが、数世紀先の世界ではナノマシンによって応用可能なのではないかと、想定しました。
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